陳情文書表

受理番号第198号 付託委員会経済労働委員会
受理年月日令和2年11月25日 付託年月日令和2年12月8日
件名 サトウキビ価格・政策確立に関する陳情
提出者沖縄県さとうきび対策本部
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要旨


 島嶼県である沖縄県では、小規模・零細で、かつ台風・干ばつの常襲地帯という不利性の下、長年、サトウキビ生産と製糖業が営まれており、生産農家や地域社会経済を支える重要な役割を担っている。これまで、国や県の政策支援の下、関係機関が一体となってサトウキビの生産振興とともに、担い手育成や甘蔗糖企業の製造合理化に取り組んでいる。
 サトウキビ生産量は、平成29年以降は減産傾向にあり、今期産においても台風来襲による減産が懸念されるなど、引き続き増産対策に向けた取組が求められる。一方、TPP11やEUとのEPA発効、日米貿易協定の締結・発効による今後の影響については、本県の実情に即したきめ細かい対策を講ずる必要がある。
 ついては、令和2年度のサトウキビ価格・政策の確立に向けて、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 「糖価調整制度」の堅持と財源確保について  
  現行の糖価調整制度について、安定的かつ持続的な運営が保たれるよう、その枠組みを堅持すること。
2 再生産可能な甘味資源作物交付金水準の確保について
  サトウキビ生産者の高齢化が進む中、作業委託や機械化に伴う生産コストの増嵩によって生産者所得の確保が困難になりつつあるため、生産基盤を守り、生産者が意欲と希望を持って再生産に取り組める交付金の水準を確保すること。
3 さとうきび増産基金(セーフティネット基金)事業の継続と予算確保について
  大型化する台風や病害虫・干ばつ等による生産への影響が恒常化していることから、セーフティネット基金事業による早期回復への取組を促進するため、当該基金のきめ細かい支援対策と併せ、次年度以降の継続と万全な予算を確保すること。
4 さとうきび生産振興総合対策の拡充について
(1)サトウキビ増産対策の予算確保について
   サトウキビ増産には、植付けから管理作業、収穫等の一連の流れに対し、継続的な支援対策が不可欠なことから、さとうきび増産計画と併せた中長期的な生産振興対策を講ずること。
(2)機械化・農作業受委託体制の整備に関する予算確保について
   サトウキビの生産性向上を図るため、ハーベスタ等の高性能機械のリースや株出管理機、防除機等の小型管理機の導入及び整備等、機械化を進める上で必要な予算枠を確保するとともに、農作業機械オペレーターや収穫作業員の育成確保等、農作業機械化一貫体系の確立に向けた支援策を講ずること。
(3)サトウキビ生産の基盤を支える試験研究・技術革新の促進について
   地域の生産実態に適した優良品種の育成や病害虫防除技術の確立、サトウキビの高付加価値化に向けた試験研究予算等の充実強化を図るとともに、ICT、GPS等を活用した農作業機械の自動操縦や、ドローンなど無人航空機の使用に関する規制緩和等、IT・スマート農業の普及に向けた環境を整備すること。
(4)土地基盤整備等の促進について
   サトウキビの生産性向上と安定的生産を確保するため、農業用水源の確保及びかんがい排水施設・圃場等の土地基盤整備や、防風・防潮林の整備並びに土壌条件の改良による地力増進に必要な予算枠を確保すること。
5 分蜜糖及び含蜜糖企業の経営安定対策について
(1)「働き方改革関連法」を含む経営安定対策について
   働き方改革関連法への対応として、人材確保や増員に向けた宿舎整備、集中管理等による省力化対策に向けた高率補助による事業・予算の確保と併せ、現場の実情に応じた柔軟な運用を図ること。また、離島地域においては医療体制が不十分であることから、新型コロナウイルスが持ち込まれないよう水際対策を講じること。
(2)製糖工場・設備の老朽化対策について
   甘蔗糖企業の継続的な安定操業は、サトウキビ生産を支える上で不可欠であるが、一部の分蜜糖工場では老朽化が著しく、機械・設備のトラブルにより操業停止が頻発することから、生産者が安心して生産に取り組めるよう、工場の安定操業の確保に向けた対策・予算措置を早急に講ずること。
(3)「沖縄黒糖」の販売環境整備に向けた支援について
   小規模離島のサトウキビ生産を支える含蜜糖企業について、加工黒糖及び輸入黒糖との競合や不安定な需給バランスの下、極めて厳しい販売環境にあるため、製糖工場の安定操業、沖縄黒糖の販売促進及び流通体制の強化に向け、必要な支援策を講ずること。
6 畑作物共済の充実強化について
  台風や干ばつ等の多発する本県農業の実態を踏まえ、サトウキビ生産者の経営安定と再生産を確保するため、農業共済加入率の向上に向けた掛金の負担軽減など制度の改善を図ること。あわせて、収入保険事業の加入促進に向けて、生産農家の負担軽減に係る支援策を講ずること。

採択された請願・陳情の処理経過及び結果について(報告)

報告を求めた者知事
報告内容

 さとうきびは、本県農業の基幹作物であり、台風や干ばつ等の自然条件下にあって他作物への代替が困難な地域で生産されていることや、製糖を通して雇用機会を確保するなど、農家経済はもとより地域経済を支える重要な作物であります。
 このため、県としましては、JAおきなわ等と連携し、さとうきび生産者が意欲を持って生産に取り組み、甘しゃ糖企業の経営安定が図られるよう、令和2年11月20日に国等に要請を行っております。
 主な要請内容については、
① 糖価調整制度の堅持と財源確保については、現行の糖価調整制度の下で安定的に維持・発展できるよう、同制度の堅持と予算を確保すること。
② 甘味資源作物交付金については、生産農家が安心して生産に取り組めるよう地域の生産条件や経済事情を考慮し、再生産が可能となる交付金水準を確保すること。
③ 台風、干ばつ、病害虫等による生産への影響が恒常化する中、早期回復への取組を促進するため、さとうきび増産基金事業(セーフティネット基金)の予算を確保すること。
④ 製糖企業の経営安定対策について、製糖企業は、地域経済において重要な地位を占めることから、働き方改革を踏まえた持続的な製糖工場の操業体制を確立し、糖業が維持・発展できるよう、製糖業の人材確保や省力化、季節労働者の宿泊施設の整備などについて、各対策事業において地域の要望に応じた計画的な予算を確保すること。
また、製糖工場の老朽化への対策については、製糖企業に対する万全の対策を講ずること。
さらに、含蜜糖地域におけるさとうきび生産者の所得確保及び含蜜糖企業の経営安定を図るための所要の予算を確保すること。また、沖縄黒糖の安定供給及び販売促進に関する対策を講ずること。
 などであります。
 なお、国においては、令和2年12月2日に令和3年産のさとうきび生産者交付金単価を、トン当たり1万6,860円と前年同様の単価水準に決定しました。また、「さとうきび増産基金」についても、予算を引き続き確保することとなりました。
 県としましては、今後とも、国及び関係機関と連携し、さとうきび・糖業の振興に取り組んでまいります。