陳情文書表

受理番号第6号 付託委員会経済労働委員会
受理年月日令和5年1月5日 付託年月日令和5年2月14日
件名 「復帰50年 平良孝七展」における人権侵害に係る展示の撤去等を求める陳情
提出者平良孝七展の修正を求める会
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要旨


 戦後沖縄を代表する写真家平良孝七氏の「復帰50年 平良孝七展」(以下「本件写真展」という。)が、県立博物館・美術館(以下「同館」という。)主催により昨年11月3日に始まった。平良の写真展は、同人存命中の1993年及び没後の2002年に開催され、特に後者は多くの写真家や関係者の検討作業により成功した。
 一方、本件写真展は、20年前の写真展で使用した作品(プリント)をそのまま使ったもので、膨大なネガフィルム資料があるにもかかわらず、新規にプリントしたものは一つもなく、実に安易な展示である。加えて過去に出版された写真集を一冊丸ごと拡大コピーして展示している。同写真集に収録された写真の何点かは既にネガフィルムの存在が確認されているにもかかわらずあえてコピー展示にしたこと、収録された写真の全部が平良の撮影ではないこと、及び各写真の説明文までもがあたかも平良が書いたとの前提で展示していることなどは、最も批判されるべきことである。次に大きな問題となるのは、「売春婦たち」という説明文が付された女性正面向き写真や、「混血児」の顔写真が展示されていることである。50年以上前の撮影とはいえ個人が特定される可能性があり、何の配慮等もなくこうした写真を展示することは、今日では個人のプライバシーと肖像権の侵害、ひいては人権無視と言わざるを得ない。20年前の写真展では、多くの人の共同作業を通じて展示内容が検討されその成果が十分に生かされたのに対し、本件写真展は、それよりもはるかに質の落ちたずさんなものであり、このような写真展を実施するという問題は、同館の基本姿勢に起因する。
 同館の責任者である田名館長は琉球近世史の研究者でもあるが、12月15日の私たちの要請に対し、副館長は、本件写真展は歴史学の考えとして何ら問題はないとの田名館長の見解を示した。これを受け、私たちは同月21日に次のとおり同館へ抗議・要請した。第1に、平良の写真でないものも展示されていること。第2に、平良が書いたと確定できていない説明文を展示していること。第3に、被写体の人物の人権保護がおろそかにされていること。第4に、公立の同館がこれら重大な問題を2か月も放置していること。これら重大な問題について、同館は県民が納得するような説明を行う義務があること。第5に、本件写真展の第1章にあるコピー写真をプリントによる展示に改めること。
 これに対して、同月28日、副館長から口頭で次のような回答があった。第1については、同じく写真家の東松照明氏がグラフ雑誌で、掲載されている100枚の写真は全部平良が撮ったものであると書いており、また平良が所蔵していた写真集の奥付にある記述「写真撮影:平良孝七ほか」のうち「ほか」の2文字が塗りつぶされている。第2については、平良の記述でない説明文は一部、参観者が読めないよう覆い隠し、写真下方に新たな説明文を掲げ一部展示の変更を認めた。第3については、説明文を覆い隠したので顔をそのままにして引き続き展示する。第4については、無回答。第5については、写真集からのコピーと取り替えることはしない。
 これらの回答に対して、私たちはその場で次のとおり反論した。第1については、東松氏の記述及び平良所蔵写真集の奥付の塗りつぶしは、いずれも平良本人の意思を正確に表明したものとは確認されていない。第2については、覆い隠した説明文以外にも多々、平良本人の記述でないものがあること、出版社の許可なく説明文を覆い隠(訂正)してコピー展示したことは、出典資料の無断改ざんであり著作権侵害に当たること。また、あるグラフ雑誌の12月号に本件写真展が数ページにわたり掲載されているが、問題の「混血児」の写真が説明文ごと掲出されていることについて、覆い隠しできるのか。第3については、説明文を覆い隠しても、被写体が誰かはっきり分かる写真を公衆の面前に展示することは、今日では重大な人権侵害になるのみならず平良の名誉毀損にもなること。第5については、本件写真展の作品は、写真家のネガからのプリントこそが第一であり、復帰の政治運動を紹介する歴史概念をつけるべきではなく、参観者に作家の作品を見せるのが個人展覧会のあるべき姿であること。
 私たちの反論に副館長から回答はなく、田名館長は一度も姿を見せず、本人自ら説明することを拒否した。加えて、公式見解を文書で回答することもしなかった。
 こうした経過を踏まえ、同館を管轄する県当局、すなわち玉城知事は早急に断固たる指導を行い、改善処置をなすべきである。
 ついては、下記事項につき県当局に強力に働きかけるよう配慮してもらいたい。
                 

1 知事は、田名館長に対して、同館副館長が回答しなかった私たちの質問及び反論に誠意ある回答をするよう、指示すること。
2 問題となっている「売春婦」及び「混血児」の写真を即時撤去すること。
3 本件写真展を「復帰50年 平良孝七展」とするからには、写真集からのコピー展示ではなく、オリジナルネガからのニュープリントでの展示を行うこと。
4 知事は、人権じゅうりんを惹起させている田名館長の責任を明確にすること。