陳情文書表

受理番号第188号の2 付託委員会経済労働委員会
受理年月日令和2年11月13日 付託年月日令和2年11月25日
件名 美ぎ島美しゃ(宮古・八重山)圏域の振興発展に関する陳情
提出者美ぎ島美しゃ市町村会
会長 宮古島市長 下地 敏彦
要旨


 このたび、美ぎ島美しゃ市町村会は、宮古・八重山圏域における喫緊の課題や財政的に解決が困難な課題等を次のとおり取りまとめた。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 新型コロナウイルス感染症により影響を受けている宮古・八重山圏域経済への支援について
  新型コロナウイルス感染拡大に伴う国・県の緊急事態宣言による離島への渡航自粛等から、入域観光客減少によって観光産業は大きく落込み、国・県による各種支援策の実施によっても、観光関連事業者から事業継続に対する不安の声が上がっている。また、各航空会社の運休・減便等に伴う貨物輸送体制の縮小により、農畜水産物の出荷停滞など離島の流通条件不利性が増しているほか、マグロはえ縄漁船等の休業により外国人技能実習生に対して給与を支払えないなど、農林水産業の分野でも大きな経済的影響が生じている。
  ついては、休業や自粛を余儀なくされた事業者の事業継続や持続可能で安定的な農林水産物輸送体制の確保等、観光産業・農林水産分野への支援を強化すること。
2 新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けた水際対策について
  新型コロナウイルス感染症について、今年5月末の国による緊急事態宣言解除により、都道府県をまたぐ移動制限がなくなり、徐々に観光客の入域も見られるようになったが、再び全国的に感染者が増加しており、島外からの感染症の流入を懸念している。全国的に流行する感染症の流入を防止するには、観光客等の入域の玄関口となる空港・港湾での検温・検査等の水際対策が重要である。
  ついては、新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、県内の空港や港湾における水際対策を強化するとともに、国に対して対応を強化するよう要望すること。
3 獣医師の確保について
  宮古島市の牛競りは高値で取引され順調に推移しているが、成牛・子牛・胎児等の死亡頭数は年々増加している。令和元年度は疾病で476頭が死亡し、獣医師の診療回数が多くなり宮古家畜診療所職員での対応が困難な状況であった。現在は同診療所以外の獣医師等にも診療を依頼しているが、畜産農家等から獣医師の増員を求める声が多く、畜産振興を図る上で獣医師の増員が不可欠である。
  ついては、獣医師の確保について早急に取り組むこと。
4 天然ガス資源の有効活用へ向けた支援について
  宮古島市に賦存する水溶性天然ガス資源は、県が平成25年度及び26年度に試掘調査を行い、その存在が確認された。その後、試掘井は県と市の共同所有となり、市が主体となって利活用に向けた実証を進めてきた結果、実現可能性が見いだされたため、本格的な利活用に向け、令和元年度、利活用に前向きな企業とともに推進協議会を立ち上げた。
  ついては、天然ガス資源を最大限に利活用するため、新しい井戸の掘削等開発への補助を含めた支援制度の検討や、関係市町村・企業との意見交換及び情報共有を行う会議の開催等、県と一体となった推進体制を構築すること。
5 豚熱ワクチン非接触地域からの種豚等の輸送に係る支援について
  県は沖縄本島の全頭約24万頭を対象に予防的豚熱ワクチンの接種を本年3月6日から開始したが、ワクチン接種した種豚等は非接種地域への移動ができないため、従来の県内取引先から種豚や精液が導入できず、九州等のワクチン非接種地域の農場から種豚や精液を導入しなければならない。これに伴い養豚農家は輸送費や事務費など追加費用が生じ、経営上大きな負担となっている。
  ついては、九州などの豚熱ワクチン非接種地域からの種豚、精液等の導入に係る輸送費や事務費などに対する助成金を創設すること。
6 鳥獣被害防止対策総合対策事業の割当予算の拡充について
  平成30年度鳥獣被害防止総合対策事業の石垣市有害鳥獣対策協議会への割当額は、推進事業で120万円、整備事業で248万円と過去5年間同額べ一スで推移し、竹富町でも100万円と同様な状況である。一方、イノシシ捕獲数は平成28年から右肩上がりで被害額は毎年増加しており、猟友会等による有害鳥獣駆除活動にも限界がある。農家各自の自衛対策が急務であるものの、防除効果の高いワイヤーメッシュ柵の導入は費用面でハードルが高く、また、本島北部地域全体の割当額と八重山地区への割当額の差があまりにも顕著である。
  ついては、鳥獣被害防止総合対策事業の割当予算を早急に拡充すること。
7 海底遺跡の利活用について
  与那国町では、文化財としての価値及び観光資源としての価値として大きな可能性を持つ「海底遺跡」を町の重要な財産として地域活性化への活用を模索しているところである。大学機関の協力を得て、同遺跡を含めた与那国島近海の海底精密地形図を作成し、当該地図を学術的な重要データとして多面的な活用を図る方針である。
  ついては、与那国町の海底遺跡の利活用について、観光資源としての新たな活用案として構想中の施策を具体化させる取組について支援すること。
8 農業農村整備事業について
  多良間村の土壌は島尻マージ土壌地帯で、サトウキビを中心とした農業を展開しており、年々土地改良事業で畑地整備を進めている。従来、耕土深60センチメートルを確保するため、地区内での不足分を宮古島からの搬入土による客土工で補って施工してきたが、近年、事業費の高騰で不足分を村でストックしてある礫混ざり土で補い、60センチメートルの耕土深を確保している。新規地区を含む施工箇所は耕土深が浅いため、土、礫混ざり土の絶対量の不足が予想される。
  ついては、多良間村の農業農村整備事業(土地改良事業)において、他地区と同等の農作物増収につながるよう、宮古島からの搬入土による客土工を取り入れること。

採択された請願・陳情の処理経過及び結果について(報告)

報告を求めた者知事
報告内容

(処理経過及び結果)
1について
【農林水産部】
新型コロナウイルス感染症に伴う航空便減便の影響に対処するため、県は、令和2年4月30日、航空会社に対し貨物輸送の確保について要請するとともに、臨時便の就航や機材の大型化が図られるよう同年5月1日から6月30日の期間について、農林水産物流通条件不利性解消事業の補助単価の特例を設け、支援を行いました。
また、同年7月から令和3年6月にかけては航空物流機能回復事業により先島路線の臨時便の就航を支援しました。引き続き、県産生鮮品の円滑な航空輸送体制を確保するため状況を注視してまいります。
さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で所得が減少したマグロ延縄漁業者等に対しては、漁業共済制度を活用した漁業収入安定対策事業等により影響緩和を図ってまいりたいと考えております。
県としましては、引き続き、農林水産業に対する影響について注視しながら、生産、物流、消費の各段階において総合的に対策を講ずることにより、生産者の事業継続や経営安定に努めてまいります。
【文化観光スポーツ部】
県では、令和2年度から離島を含め新型コロナウイルス感染症拡大により落ち込んだ旅行需要の回復を図る「おきなわ彩発見キャンペーン事業」をはじめ、感染症拡大防止対策を奨励するため、民宿やツアーガイド等の事業者へ、一律10万円の奨励金を給付する「安全・安心な島づくり応援プロジェクト」を実施しました。
また、離島周遊の促進として、離島へのチャーター便支援やメディア等を活用した離島観光プロモーションを実施しております。
さらに、令和3年11月1日からは、貸切バス利用料金の一部を補助し、県内の平和学習や遠足などの貸切バス利用料金の一部を補助する「おきなわ彩発見バスツアー促進事業」を実施しました。
令和3年度は、緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う外出自粛等による影響により、対前年同月比などで50%以上売上げが減少した事業者を支援する国の「月次支援金」を受給した県内事業者に対し、個人事業者に最大10万円、法人に最大30万円を2月分支給する「観光関連事業者等応援プロジェクト」を実施しました。
令和3年11月15日からは、宿泊・旅行代金の割引に加え、土産品店、観光施設、体験・アクティビティなどの観光事業者の施設、店舗で利用できる地域クーポンを発行し、幅広い観光事業者を支援する、おきなわ彩発見キャンペーン第4弾(県民割)の利用を開始しております(感染拡大に伴い令和4年1月9日から一時停止、3月3日から感染再拡大を防止しながら利用再開)。
また、令和4年10月11日より、全国を対象とした新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」を開始すると国が発表したことを受け、県としては、同日付けで「おきなわ彩発見キャンペーンNEXT」を開始しております。
加えて、令和4年度における新たな取組として、新型コロナウイルス感染症の影響により、対前年同月比などで売上が30%以上または50%以上減少し、国の事業復活支援金を受給した県内事業者に対し、個人事業者に最大10万円、法人に最大50万円を支給する「おきなわ事業者復活支援金」により支援を実施しております。
当初を超える申請が見込めるため、令和4年9月補正にて増額計上をしたところです。
また、コロナ禍における原油価格・物価高騰に伴い、経営に大きな影響を受けている観光事業者を支援するため、「観光事業者事業継続・経営改善サポート事業」を実施しております。
同事業においては、赤字企業であって、かつ、事業計画を策定した事業者に対して、従業員規模に応じて最大600万円を補助することとしており、関係機関と連携のうえ、観光事業者へ周知を図ってまいります。
さらに、沖縄観光は回復傾向にあるものの、コロナ前と比較し、観光事業者の受入体制が整っていないことから、令和4年11月補正(追加提案)において、受入体制の再構築を支援する「観光事業者受入体制再構築等緊急支援事業」を計上したところであります。
同事業は、赤字企業、黒字企業を問わず、受入体制の再構築に必要な経費であって、令和4年10月以降に要した人材の確保、バリアフリー等受入に必要な施設改修や今後の観光需要に対応する前向き投資等に要する経費に対し、最大500万円を補助することとしております。
県としましては、今後も引き続き、観光関連事業者の事業継続に向けた支援を図り、離島を含めた各地域の観光振興に努めてまいります。

2について
県では、旅行者が安心して訪れ、県民や観光産業従事者が安心して迎え入れられる環境整備に取り組んでおり、令和2年6月に、那覇空港の水際対策や旅行中における旅行者に対する相談支援のための「旅行者専用相談センター沖縄(TACO)」を設置しました。
同空港では、発熱が検知された旅行者に看護師が問診を行い、空港内でだ液検体を採取して検査へと繋ぐ体制を整備しております。
さらに、離島における水際対策も大変重要であることから、久米島空港、宮古空港、新石垣空港、下地島空港にTACO分室を設置しました。
また、全国からの来訪者に出発地での事前のPCR等検査による陰性判定を受けてからの来県を求めるとともに、やむを得ない事情により事前に検査が受けられなかった者について、那覇空港でPCR検査が受けられる体制を整備しております。
さらに、令和3年4月に県庁内に設置した水際対策強化プロジェクトチームにおいて検査体制の拡充等に取り組み、本土から直行便の就航する宮古空港、下地島空港、新石垣空港、久米島空港でPCR検査が受けられる体制を整備するとともに、那覇空港においては短時間で結果が判明する抗原検査の実施体制を整備しました。
令和3年12月25日からは、那覇空港において、年末年始の往来に備え、PCR検査を一日当たり最大300件から500件に、オミクロン株による感染急拡大後の令和4年1月19日からは、抗原検査を一日当たり最大700件から1,000件に拡充しました。
また、4月25日からは、ゴールデンウィークに備え、PCR検査を500件から700件に拡充し、那覇空港においては一日当たり最大1,700件に拡充しました。
令和4年1月から、本土と直行便の就航する離島空港(宮古、下地島、新石垣、久米島空港)においても、PCR検査枠を一日当たり最大300件から500件に拡充するとともに、宮古、下地島、新石垣空港におけるPCR検査については、結果通知の迅速化を図りました。
また、ゴールデンウィークに備え、4月28日から5月27日までの間、離島空港のPCR検査を一日当たり最大500件から900件に拡充しました。
加えて、旅行前PCR等検査の徹底・強化など、旅行前に陽性者を発見できる体制の構築を国に求めるとともに、国内空港での検査体制の整備等、戦略的なPCR等検査体制の構築を直接政府に要望しました。
国において令和3年7月20日から9月30日の夏季期間中に羽田空港等と沖縄県内の空港を結ぶ便の搭乗者のうち、希望者に無料でPCR等検査を実施する搭乗前モニタリング検査が実施されました。
県では、本取組の10月以降の継続や検査体制の拡充とともに、出発地における事前検査の実行性を高めるため、航空便の搭乗等に際して、PCR等検査の陰性判定あるいはワクチン接種完了の確認を必要とする制度の創設等を国に対し要請しました。
沖縄県の要請を受け、搭乗前モニタリング検査については、沖縄路線のみを対象として延長されましたが、10月31日で終了となりました。
県では、制度化等について、国に対しその実現を求めるとともに、搭乗前モニタリング検査と同等以上の検査体制を整備するよう要請をしたところ、オミクロン株による感染の急拡大を受け、令和4年1月20日から2月28日までの間、羽田、成田、中部、伊丹、関西、福岡空港と沖縄県内の那覇、宮古、下地島、新石垣空港を結ぶ便の搭乗者のうち希望者に対し、国が搭乗前無料検査を実施しました。
県では、春休みシーズンを迎え本土との人の往来が活発になることが見込まれたことから、同検査の3月以降の継続を2月に国へ要請したところ、検査期間が3月31日まで延長されました。
また、4月以降の同検査の継続を国に要請したところ、飲食、イベント、旅行・帰省等の活動に際して、全国の自治体等で受検できるPCR等の無料検査が令和4年8月31日まで延長され、同日で終了となりました。
県は、全国知事会を通して、旅行やイベントに参加する他の都道府県在住者を無料検査の対象となるよう国に求めたところ、年末年始の感染拡大を防止する観点から、令和4年12月24日から令和5年1月12日の間、飲食、イベント、旅行・帰省等の活動に際して、全国の自治体等で受検できるPCR等の無料検査を実施しました。
県では、国際線の本格的な再開に併せて関係機関や関係部局等との連携を強化するとともに、外国人観光客へ観光情報等を案内する多言語コンタクトセンターや医療に関する通訳を行う医療通訳サポートセンターの活用等により、外国人観光客の受入体制の充実を図ってまいります。

3について
産業動物獣医師の不足については、本県を含め、全国的な課題となっております。
そのため、県では、安定的な獣医師確保と育成を図るため、
①獣医大学生を対象とした修学資金の給付
②獣医大学訪問による説明会の開催
③インターンシップの受入
などを積極的に実施しております。
県としましては、引き続き、関係機関と連携し、新たな施策の検討も含め、県内の産業動物獣医師の確保・育成に努めてまいります。
なお、宮古家畜診療所では、本年10月に2名増員し、現在5名体制で診療を行っております。

4について
宮古島市の水溶性天然ガス資源については、地域振興を図るうえで最大限に利活用することが重要であると考えています。
県では、令和4年度において、地下資源の複合的な利活用モデルの構築を実現するため、水溶性天然ガスをはじめ、かん水及びヨウ素等を含む地下資源の需要調査や資源開発に向けた立地条件の整理等を行う「地下資源利活用推進事業」を本島中、 南部で実施し、民間事業者による水溶性天然ガスの事業化につなげてまいりたいと考えております。
また、本事業において構築を目指す利活用モデルについては、宮古地域を含む水溶性天然ガスの賦存する地域への展開を見据えて検討してまいります。
今後も引き続き、市と協力し資源活用に関する情報共有の場を設ける等、資源の有効活用に向けて取り組んでまいります。

5について
経過・処理方針については、令和2年第155号の1と同様であります。

6について
農作物等への鳥獣被害防止対策については、関係団体で構成する市町村協議会等を設置し、鳥獣被害防止総合対策事業において総合的に推進しているところであります。
具体的には、
①市町村協議会等が主体となった銃器・捕獲箱による有害鳥獣捕獲
②ワイヤーメッシュ柵や電気柵などの侵入防止柵、防鳥ネットの整備
などを実施しております。
当該事業においては、各市町村協議会等からの被害防止対策に関する要望を基に、国に対して予算要求を行っており、八重山地域においては要望額に基づき、予算措置をしているところであります。
県としましては、各市町村協議会等からの要望を踏まえ、引き続き予算の確保に務め、鳥獣被害防止対策に取り組んでまいります。

7について
県では、市町村や地域の観光協会が抱える課題に対して、専門的な知識を持つ観光まちづくりアドバイザーの派遣を実施しており、令和3年3月に、与那国町企画財政課へ観光資源を活用した観光商品の開発を専門とする観光まちづくりアドバイザーを派遣し、課題抽出とアドバイスを行いました。
また、沖縄の観光資源を活かした観光商品の開発に取り組む民間事業者や観光協会に対し、補助金を含めて総合的な支援を行う、沖縄観光コンテンツ開発支援事業を実施しております。
県としましては、引き続きこれらの制度を利活用いただきたいと考えております。

8について
耕土深確保のための宮古島からの客土運搬については、現行の倍程度の事業費となり、費用対効果等の観点から困難であると考えております。
そのため、多良間村内の区画整理事業の予定地区内において土層の調査を実施し、土層の厚い地区から薄い地区への客土等の可能性を調査検討しているところであります。
県としましては、引き続き多良間村等と連携し、島内地区間における客土等の検討を進めてまいります。