陳情文書表

受理番号第52号 付託委員会総務企画委員会
受理年月日令和3年3月5日 付託年月日令和3年3月17日
件名 沖縄県水難事故の防止及び遊泳者等の安全の確保等に関する条例 (水上安全条例)の改正に関する陳情
提出者特定非営利活動法人 沖縄県カヤック・カヌー協会
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要旨


 現行の沖縄県水難事故の防止及び遊泳者等の安全の確保等に関する条例(以下「水上安全条例」という。)は公布後25年を経過し、現在まで変更がない。公布時と比べ入域観光客数は1000万人と3倍以上に増加し、マリンレジャー事業者数も現在2100を超えると言われており、アクティビティーも多種多様となりマリンレジャー業界の範囲を超えているのが現状である。一方、離島では反社会勢力のマリンレジャー業界への進出が目立ち、事業者間、消費者間のトラブルなどが発生している。また、中国、台湾、韓国等東アジア地域からのインバウンド客の増加に伴い、就労する外国人労働者に対する不法労働等の問題点も指摘されている。
 当協会は、前身の沖縄県カヤックガイド協会が平成17年の西表島でのカヤック事故を機に設立され、その後、業界のスキル向上と安心・安全なツアーの催行をスローガンに現在の組織となり、県内95事業者が加盟し、平成23年からスタートした技能講習で受講者数1000人、その後の検定会にて合格した認定ガイド110人を輩出し、県内唯一無二のカヤック・カヌー認定ガイド制度を設け実績を残している。
 現行の条例では、マリンレジャー業を営むには管轄内の警察署へ海域レジャー事業として届け出ることとなっており、当該届の中にあるプレジャーボート提供業に区分されており、必要資格として潜水業のダイブマスター資格以上、また水難救助員資格と明記されている。しかし、カヤック・カヌーの技能やライフジャケット着用義務などの明記はなく、これでは観光立県沖縄として危機感を覚えずにはいられない。マリンレジャー業界の多様化に伴い専門性に即した条例改正が必要である。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 現行の海域レジャー事業届出書の種別「プレジャーボート提供業」から新たな種別「カヤック・カヌー業」に移行(変更)すること。
2 事業届出書に必要な「カヤック・カヌーガイド名簿」に明記する資格として現行の水難救助員資格と併せて、当協会の講習受講と認定ガイド資格を取得することで、「潜水業」のガイドダイバー資格(ダイブマスター)と同等資格であるとみなすこと。
3 現行の届出制度を許可制度に変え、技能・資格が伴わない事業者について、行政(県警)が許可取消しを含む処分を行えるようにすること。
4 条例改正等の審議の場に当協会理事の参加並びに意見交換の場を設けること。

採択された請願・陳情の処理経過及び結果について(報告)

報告を求めた者公安委員会
報告内容

(処理経過及び結果)
1 現行の海域レジャー事業届出書の種別「プレジャーボート提供業」から新たな種別「カヤック・カヌー業」に移行(変更)する事の要望につきましては、条例や規則の在り方に改善すべきところはないか、関係機関・団体と連携すべく、昨年7月には、マリンレジャー関係団体(22団体)等に対し、水上安全条例の改正に関するアンケートを実施して意見を取りまとめたほか、昨年9月から11月の間(3回)、開催されたマリンレジャー関係業者等を委員とする「水難事故防止に関する有識者会議」の提言結果、行政手続法に基づくパブリックコメントの実施結果等を踏まえ、また過去における県内事業者に係るカヤック・カヌーの水難事故の発生が極めて少ない状況等を検討した結果、現行の水上安全条例上の安全対策措置のほか、カヤック・カヌー等の民間指導団体等による安全対策も有効に機能しているものと判断でき、いまだ事業者に義務を課す必要性が高い、つまり「立法事実」があるとまでは言えない状況であることから、引き続き、現行のプレジャーボート提供業として安全対策等の措置を講じていく考えであります。

2 事業届出書に必要な「カヤック・カヌーガイド名簿」に明記する資格として現行の水難救助員資格と合わせて、当協会の講習受講と認定ガイド資格を取得することで、「潜水業」のガイドダイバー資格(ダイブマスター)と同等資格であるとみなすことの要望につきましては、検討した結果、先述1のとおり、引き続き、現行のプレジャーボート提供業とし「水難救助員」を資格とするとともに、改正水上安全条例において、プレジャーボート提供業に対し「事業に従事する者及び水難救助員の知識及び能力の向上を図ること」と努力義務を新設することなどにより、安全対策等の措置を講じていく考えであります。

3 現行の届出制度を「許可」制度にすることで、技能・資格が伴わない事業者の「許可取り消し」を含む処遇を行政(県警)が可能とすることの要望にきましては、憲法においては公共の福祉に反しない限り、職業選択、営業の自由を保障していることから、その営業を禁止することは行政目的を推進するために、より制約的ではない他の手段がないかといった点の検討を含め、慎重に検討した結果、令和3年第1回沖縄県議会(2月定例会)に提出し可決された改正水上安全条例において、新たに「事業の停止等」を規定し、条例における安全対策上の義務規定に違反した場合及び罰則に該当する行為をした場合において、遊泳者その他の海域等利用者の生命、身体及び財産を保護するために、特に必要があると認める場合に事業の「全部又は一部に停止」を命じ、さらに欠格事由に該当した場合に事業の「廃止」を命ずることができるとし不適格者等の排除が可能であることから、引き続き、現在の届出制で安全対策の措置を講ずるべきものと考えております。

4 陳情するにあたり、条例改正等の会議の場に当協会理事の参加ならびに意見交換の場を設けて頂ける事の要望につきましては、条例や規則の在り方に改善すべきところはないか、関係機関・団体と連携すべく、昨年7月には、マリンレジャー関係団体(22団体)等に対し、水上安全条例の改正に関するアンケートを実施して意見を取りまとめたほか、昨年9月から11月の間(3回)、開催されたマリンレジャー関係業者等を委員とする「水難事故防止に関する有識者会議」の提言結果、行政手続法に基づくパブリックコメントの実施結果等を踏まえ、検討した結果、水上安全条例の改正作業を進め、令和3年第1回沖縄県議会(2月定例会)に、水上安全条例の改正案を提出し、可決されたところであります。
なお、本陳情の提出団体である特定非営利活動法人沖縄県カヤック・カヌー協会につきましては、先述の「水難事故防止に関する有識者会議」において「ゲストスピーカー」として貴重な御意見を頂いております。