陳情文書表

受理番号第186号 付託委員会文教厚生委員会
受理年月日令和3年9月2日 付託年月日令和3年9月10日
件名 新型コロナウイルス対策におけるトリアージ実施に関する陳情
提出者特定非営利活動法人 沖縄県自立生活センター・イルカ
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要旨


 新型コロナウイルス感染症の蔓延による被害が世界中で拡大し、これまでに医療崩壊した国や地域では、現場の医療スタッフの判断で患者の選別が行われ、高齢者や重度障害者には人工呼吸器を装着しなかったり、装着している人工呼吸器を外してより若く治療効果のある人に着け直すということが起きている。本県でも専門家会議が患者の治療の優先順位を判断する「トリアージ」の指針を議論する方針を確認したとの報道に、障害者の命の選別につながるのではないかと大変な危機感を抱いている。感染症対策は、感染者への対応に数日の猶予がある点から突発的な自然災害などとは根本的に条件が異なる。これまでの経験を総動員し、あらゆる方策を検討し、優生思想につながる障害を理由とした命の選別がなされることがないようにしてほしい。
 ついては、下記事項に掲げる対応を行い、そのための施策を国に求めるよう配慮してもらいたい。
                 

1 障害を理由とした命の選別が行われないようにすること。
2 精神科病院や入所施設(障害児・者、高齢者)でのクラスターに対し、原因の究明及び公表を行い、速やかに適切な対応を取ること。
3 クラスターの激化や新規発生を防ぐため、全精神科病院・入所施設の職員及び出入りする全員に抗原検査(簡易検査、PCR検査)が徹底されるよう検査検査キットを配給すること。
4 アクセシビリティー(手話、字幕、点字印刷、音声対応、知的障害者などにも分かりやすい形の情報提供)の確保を徹底すること。
5 障害者サービス継続のための柔軟な対応と支援を推進すること(在宅勤務切替えのための就労中の重度訪問介護サービス利用及び支給量の一時的増加の速やかな容認、重度訪問介護従事者研修・医療ケア3号研修などの受講要件の緩和等)。
6 感染者全員の人工呼吸器の装着を想定し、人工呼吸器を確保すること。
7 重症者のための集中治療室を増設すること。
8 人工呼吸器を取り扱える医療従事者を増員すること。
9 消毒用アルコール、マスク、防護服など、感染者の在宅療養に必要な物資を定期的に配給すること。
10 感染者の医療、看護、介護に当たる者とその家族の安全安心のための保障を行うこと(保育園の継続、感染したときの保障等)。
11 感染者の医療、看護、介護に当たる者を報酬の上で評価すること。
12 PTSDに近い症状が報告されていることから、感染者の医療、看護、介護に当たる者の心のケアを行うこと。

採択された請願・陳情の処理経過及び結果について(報告)

報告を求めた者知事
報告内容

1について
 新型コロナウイルス感染者への医療について、障害を理由にその提供がなされないということはあってはならないと考えております。
 県においては、感染が拡大した際に、障害の有無に関わらず、適切な医療が受けられるよう、医療機関における病床確保、医療機器等の整備及び医療従事者の支援等により、医療提供体制の維持、強化に努めてまいります。

2について
 精神科病院及び入所施設で陽性者が発生した場合は、保健所において疫学調査を実施しており、感染源及び感染経路を明らかにした上で、濃厚接触者を特定し、感染拡大防止に努めております。
 また、新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生した場合は、感染症に関する情報を広く県民に提供するため、県の公表基準に基づきマスコミ等に公表することとしております。

3について
県は、クラスターを未然に防ぐため、症状がある場合にはその場で速やかに検査ができるよう、希望する精神科医療機関等に対して、抗原定性検査キットを配布しております。
 なお、抗原定性検査キットで陽性となった場合には、PCR検査による確定検査を行った上で、周りについて一斉に検査を行っているところです。

4について
 新型コロナウイルス感染症の予防、発生状況及び感染防止対策等に関する情報提供にあたっては、知事記者会見での手話通訳や字幕付き動画の公開などアクセシビリティの確保に取り組んでおります。
 県としましては、引き続き情報の受け手の特性に配慮したアクセシビリティの向上に努めてまいります。

5について
重度障害者等に対する通勤や職場等における障害福祉サービスの利用については、介護給付費等の対象となっておりませんが、令和2年度から市町村が利用者の状況等に応じて実施する地域生活支援事業において「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」が創設され、在宅を含む職場等における必要な支援の提供が可能とされたことから、県は、市町村への周知等を行っているところです。
 障害福祉サービスの提供においては、新型コロナウイルス感染症の影響等で一時的に人員基準等を満たすことができない場合の柔軟な取扱が認められております。なお、重度訪問介護従事者研修及び介護職員等による喀痰吸引等研修(特定の者対象・第三号)については、受講要件等は定められておりません。

6について
 医療が必要な方に対して、適切な医療が提供されるよう、人工呼吸器等の設備整備等の支援を行っております。

7について
 コロナの重症患者を受け入れる重点医療機関に対して、高度な医療を提供するために必要な超音波画像診断装置やCT撮影装置等を整備する経費を補助しており、重症病床の確保に活用いただいております。

8について
 県において、新型コロナ受入医療機関を対象に人工呼吸器等の取扱いに関する研修を実施することを予定しており、高度な医療を担う人材の育成を行ってまいります。

9について
 県においては、自宅療養者に対して、毎日の健康観察、パルスオキシメーターの無償貸与、配食サービス、必要に応じた訪問看護等の在宅医療の調整等の支援を行っております。

10について
 新型コロナ対応を行う医療従事者について、家族への感染の不安がある場合があるため、県では、負担軽減のために当該医療従事者が利用する宿泊施設の確保について支援を行っております。

11について
 新型コロナ対応を行う医療従事者への支援については、県において、患者の受け入れに協力した医療機関に対し、医療従事者の処遇改善等に活用できる協力金を交付しております。

10及び11の「介護」に係る部分について
 障害福祉サービス等は、障害者やその家族の生活に欠かせないものであり、感染防止対策を徹底した上で継続する必要があることから、従事者にとって安心・安全な環境を整えることが重要であると考えております。
 そのため、感染者等が発生した障害福祉サービス事業所等に対する施設の消毒や割増賃金等への支援、感染防止対策に関する研修のほか、ワクチンの優先接種、PCR検査や抗原検査の促進等に取り組んでおります。
 また、全国知事会を通して、障害福祉サービス事業所や従事者などへの支援や、地域の実情や要望等を踏まえた感染対策への十分な財政措置を講ずることなど、国の責任において行うことを要請しております。
保育所等については、県では、市町村に対し、国の通知に基づき、感染症対策等を徹底した上で、継続的な保育の提供を依頼しており、感染拡大で臨時休園等を検討する場合においても、社会生活の維持に必要なサービスに従事する保護者等の児童への対応を、依頼しているところです。
 引き続き市町村と連携し、適切に保育が提供されるよう、取り組んでまいります。

12について
 厳しい業務環境の中、業務を継続している感染者の医療、看護及び介護に当たる者のメンタルヘルスの維持を目的に、県公認心理師協会へ心のケア支援事業を委託し、相談体制を整備しております。