要旨
第32軍司令部壕は沖縄戦の指揮拠点となった場所である。その作戦は米軍を長く沖縄にとどめおいて本土決戦を遅らせようとした国策に基づく持久戦法であり、結果として、緑の山野は焦土と化し、巻き込まれた住民にも多数の犠牲者を出した。沖縄の心は、毎年の戦没者追悼式や「平和の礎」に込めた思いとともに発信されているが、今、第32軍司令部壕が劣化に任せて内部の状態が把握できないまま放置されていることは、沖縄戦の記憶の継承という観点から看過できない。その上に築城された首里城は1年前の焼失後、復元に向けた動きが始まっており、これを機に第32軍司令部壕を首里城の周辺整備の一環として認識し、適切な保存・公開によって平和発信の拠点として位置づけてほしい。
ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
記
1 第32軍司令部壕は、沖縄戦遂行の機能と役割を担い、悲惨な戦争を招いた核心的な場所であり、「命どぅ宝」の価値観を持ち平和を願う県民の心を大事にして、「平和の語り部」の拠点と位置づけて、保存・公開すること。
2 第32軍司令部壕の戦史的な役割の調査、壕内の実測・発掘・遺骨・不発弾調査などを実施し、全容解明を行うこと。
3 首里城周辺にあるコンクリートの構造物、垂直坑口、トーチカ、陣地壕など第32軍関連の戦争遺跡や留魂壕、忠魂碑、弾痕のある石垣・塀などの戦争遺跡の調査を行うこと。
4 第32軍司令部壕は、沖縄戦の実相を知る上での「生き証人」であり、「負の遺産」として歴史的な価値があることを認識し、文化財指定すること。
5 保存・公開検討委員会には、沖縄戦研究、平和教育、平和ガイド、戦跡考古学などの専門家を委員として選出すること。 |