陳情文書表

受理番号第183号 付託委員会文教厚生委員会
受理年月日令和2年10月29日 付託年月日令和2年11月25日
件名 第32軍司令部壕の保存・公開の実現を求める陳情
提出者第32軍司令部壕の保存・公開を求める会
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要旨


 第32軍司令部壕は沖縄戦の指揮拠点となった場所である。その作戦は米軍を長く沖縄にとどめおいて本土決戦を遅らせようとした国策に基づく持久戦法であり、結果として、緑の山野は焦土と化し、巻き込まれた住民にも多数の犠牲者を出した。沖縄の心は、毎年の戦没者追悼式や「平和の礎」に込めた思いとともに発信されているが、今、第32軍司令部壕が劣化に任せて内部の状態が把握できないまま放置されていることは、沖縄戦の記憶の継承という観点から看過できない。その上に築城された首里城は1年前の焼失後、復元に向けた動きが始まっており、これを機に第32軍司令部壕を首里城の周辺整備の一環として認識し、適切な保存・公開によって平和発信の拠点として位置づけてほしい。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 第32軍司令部壕は、沖縄戦遂行の機能と役割を担い、悲惨な戦争を招いた核心的な場所であり、「命どぅ宝」の価値観を持ち平和を願う県民の心を大事にして、「平和の語り部」の拠点と位置づけて、保存・公開すること。
2 第32軍司令部壕の戦史的な役割の調査、壕内の実測・発掘・遺骨・不発弾調査などを実施し、全容解明を行うこと。
3 首里城周辺にあるコンクリートの構造物、垂直坑口、トーチカ、陣地壕など第32軍関連の戦争遺跡や留魂壕、忠魂碑、弾痕のある石垣・塀などの戦争遺跡の調査を行うこと。
4 第32軍司令部壕は、沖縄戦の実相を知る上での「生き証人」であり、「負の遺産」として歴史的な価値があることを認識し、文化財指定すること。
5 保存・公開検討委員会には、沖縄戦研究、平和教育、平和ガイド、戦跡考古学などの専門家を委員として選出すること。

採択された請願・陳情の処理経過及び結果について(報告)

報告を求めた者知事、教育委員会
報告内容

(処理経過及び結果)
1について
 県は、平成初期からこれまでの間、壕の保存に努めてきましたが、壕内は岩塊(がんかい)の崩落、酸素の欠乏などが発生しており、安全確保の観点から、現状においては一般公開は困難な状況です。
 しかしながら、壕が果たした役割などの歴史的価値を次世代へ継承することは重要であることから、令和3年1月に専門家等による保存・公開検討委員会を設置し、同委員会の中で壕の保存・公開の可能性や平和発信・継承のあり方等について、議論を進めております。

2について
 現在、壕の大部分は埋没しており、内部を直接確認することが困難な状況にあります。
 県では、第32軍司令部壕に関する文献や証言等を収集・分析し、壕における戦没者の実態等について、史実面から解明することとしており、併せて保存・公開検討委員会において、様々な議論が進むものと考えております。

3 第32軍司令部壕に関連する戦争遺跡については、県立埋蔵文化財センターが平成11~14年度に分布調査を実施し、トーチカや陣地壕など関連遺跡の所在を確認しております。このうち首里城跡内に所在する留魂壕については、首里城跡の整備に伴い同センターが平成24・25年度に発掘調査を行っております。

4 第32軍司令部壕は、沖縄戦における日本軍の軍事的中枢であったことから、沖縄戦の実相を知る上で貴重な戦争遺跡と考えております。
  第32軍司令部壕を文化財に指定するためには、壕の詳細な構造や遺物の存在について調査を行い、評価する必要があります。しかし、本壕の内部は崩落の危険性が高く、酸素の欠乏している箇所もあることから、過去の調査においても一部の現状を確認したのみにとどまっております。
  文化財指定については、今後、県子ども生活福祉部と連携しながら、同部が設置する検討委員会での議論をふまえ、対応したいと考えております。

5について
 令和3年1月に設置した保存・公開検討委員会では、沖縄戦研究、平和教育、戦跡文化財、地盤工学等の様々な分野から委員を選出し、多角的な視点から議論を進めております。