陳情文書表

受理番号第176号 付託委員会文教厚生委員会
受理年月日令和2年9月30日 付託年月日令和2年11月25日
件名 「1年単位の変形労働時間制」を導入しないことを求める陳情
提出者名護市議会議長
大城 秀樹
要旨


 教職員の「働き方改革」の一つとして「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下「給特法」という。)の一部改正案が昨年可決成立し、これにより、都道府県・政令市の条例で公立学校に1年単位の変形労働時間制の導入が可能となった。入学式や新学期で忙しい4月の労働時間を長くして、夏休みなどで授業等が減る8月の労働時間を短くして、教職員がまとまった休みを取れるようにすることを想定したものである。
 そもそも労働基準法上では、変形労働時間制を採用するためには、労使協定または就業規則において所定の事項を定めることが必要とされているが、改正給特法では、当該規定について、勤務条件条例主義を盾に条例により定めるとの読替えがなされ、労使交渉すら無視しようとしている。
 また、労働基準法の規定では1日8時間を超えて残業した場合は残業代を請求できるが、教職員は給特法の規定により、残業代を支給しない代わりに給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されている。文科省の2018年勤務実態調査では1日平均の超過勤務時間は小学校3時間30分、中学校3時間37分となっており、調整額4%の根拠となった1966年当時の勤務実態調査での月8時間(1日20分)と10倍以上の格差がある。
 さらに「勤務時間」ではなく「在校等時間」という造語で、授業準備や部活などは「自主的活動」として実際の勤務時間を短く見せようとする意図も見え隠れする。文科省働き方改革答申では「在校等時間」の縮減について、8時15分出勤など登校時間等の適正化による年間150時間の縮減目安を提示しているが、学校現場からすると実態を見ない「机上の計算」との指摘もある。ましてや「閑散期」とされる夏休み期間中の「休みのまとめ取り」についても、部活動や各種大会・コンクール、校内研修、初任研・2年研・3年研あるいは日直等など業務は多く、5日間の夏季休暇ですらまともに取れていない現状がある。
 今日、教職員の長時間労働は全国的に問題化し、文科省調べ(2016年)でも時間外労働・月80時間の「過労死ライン」を超えて働く教職員は、中学校で約6割、小学校で約3割に上る。特に沖縄の教職員の病気休職者率・精神疾患者率は全国ワーストで、しかも11年間更新しており、深刻な事態である。
 加えて小学校は今年度から、中学校は来年度から新学習指導要領が完全実施され、その対応で教職員の業務はむしろ増加傾向にある。ましてや新型コロナウイルス感染拡大により、全国一斉休校や夏休み短縮、行事見直し等を余儀なくされ、感染防止対策での新たな負担増の中で、児童生徒の学習権保障のための努力がなされている。
 このような学校現場の実態を見るにつけ「1年単位の変形労働時間制」の導入は、教職員の働き方改革・長時間労働の解消とは程遠いものでしかなく、現場実態の是正にそぐわない当該制度の導入には大きな懸念が残る。
 ついては、各市町村教育委員会や教職員団体等関係団体との協議を重ね、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 改正「給特法」による「1年単位の変形労働時間制」を導入しないこと。
2 深刻な教職員の長時間労働実態を早急に是正するため、「給特法」の抜本的改正に向け、国、文科省に強く働きかけること。