陳情文書表

受理番号第45号 付託委員会土木環境委員会
受理年月日令和3年3月2日 付託年月日
件名 糸満市・「魂魄の塔」近くでの土砂採取の中止を求める陳情
提出者沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会
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要旨


 沖縄防衛局が辺野古新基地建設事業の設計概要変更申請書を提出し、辺野古埋立てのための土砂採取地が県内全域に広がることが明らかになった。特に、南部地域(糸満市・八重瀬町)からは、県内全域の調達可能量の7割、埋立てに必要な量の2倍もの大量の土砂調達が可能とされている。しかし、同地域はさきの大戦で多くの県民が犠牲となった場所で、今も多くの遺骨が残されている。戦没者の遺骨が混じっている土砂を軍事基地建設に使うことは、戦没者を冒瀆するものである。糸満市・魂魄の塔横の斜面(熊野鉱山)では、昨年、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」による遺骨収集作業が行われていたが、突然、自然公園法、森林法、農地法に違反した開発行為が始まった。そのため、県は昨年11月、自然公園法に基づき工事の中止を指示した。しかし、昨年末、業者から同法の開発の届出書が糸満市に提出され、市は本年1月18日、意見書を付して届出書を県に送付した。この一帯は、自然公園法に基づき沖縄戦跡国定公園に指定されている。同法上、普通地域で開発行為をするには知事への届出が必要であり、熊野鉱山付近は普通地域とされているが、普通地域であっても国定公園の場合、知事は同法第33条2項に基づき、風景を保護するために当該行為の禁止を命じる権限を有する。しかし、この措置命令は受理から30日の間しか行使できず、事態は急を要している。市は、県に提出した意見書で、大規模な採掘により稜線に著しい改変が生じ眺望も著しく損なわれること及び米須地域らしい風景が損なわれる懸念を示し、戦跡等とともに斜面緑地も歴史の風景として保全を図る必要があるとして、届出地は風景の保護の必要性が高いため同法第33条2項に基づく措置命令を検討すべきであるとしている。現地は、魂魄の塔、東京の塔、有川中将以下将兵が自決した壕で戦争当時避難していた7家族が米軍に焼き殺されたという証言もあるシーガーアブ等の戦争遺跡に隣接し、土砂採取による影響も危惧される。また熊野鉱山は、斜面を掘削するため遠くからも目立ち、糸満市米須集落景観形成重点地区の「緑のつながりが織りなす豊かな風景」は、著しく破壊されてしまう。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 現在、自然公園法に基づき県に提出されている熊野鉱山の開発届について、知事は、「当該地域の土砂が辺野古埋立てに使われることは、悲惨な戦争を体験し、多くの犠牲者を出した県民の心を深く傷つけるものであり、到底認められない」と表明したが、上記開発届に対しどう対応するのか明らかにすること。
2 県は2月末から熊野鉱山での遺骨収集作業に着手しており、今後の遺骨収集作業の予定を説明すること。また、一通りの遺骨収集作業を行ったとしても小さな骨はどうしても取り残されてしまう。同作業が終わったとして鉱山開発が始まれば、県の遺骨収集作業は結果として業者に協力したものとなってしまう。遺骨収集作業が終わったとしても熊野鉱山の開発を認めないこと。
3 沖縄戦跡国定公園に指定されている熊野鉱山周辺の一帯は、「緑のつながりが織りなす豊かな風景」が続いており、しかも魂魄の塔、東京の塔、シーガーアブ等の戦跡にも近く「歴史の風景として保全を図る必要がある」地域である。自然公園法第33条2項の「風景の保護」には、単なる景観としての風景だけではなく、こうした「歴史の風景」も含まれていることから、知事は、同法に基づき一帯の風景を保護するために熊野鉱山の開発行為の禁止を命じること。