要旨
沖縄県には情報公開条例があり、同条例によって行政の情報公開の責務が確保されたとはいえ、当該制度の適切な運用には公開対象となる公文書がきちんと作成され、適正に保管されていなければならない。国は2009年に公文書等の管理に関する法律を制定し、作成・収受から公文書館等での保存・利用までの「公文書のライフサイクル」にわたる体制を整備してきた。同法は、地方公共団体に対し、
その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定・実施するよう努力義務を課しているが、地方公共団体においては情報公開条例がほぼ100%施行されている一方、公文書管理条例が制定されているのはわずか1%余である。2021年5月以来、県内地元紙の報道により、米軍普天間飛行場返還問題に関する県の意思決定過程の公文書が保管されていないことが判明した。このような状況では、
現在及び将来の県民に説明責任を果たしているとは言えない。沖縄県が再び設置されてから50年を迎えた今こそ、将来を見つめ過去に学ぶ沖縄県を築くため、公文書管理条例の制定に取り組むべきときである。県のこうした姿勢は、県内市町村での公文書管理への改革の追い風となり、県民に支えられ開かれた県政は、民主主義の実践者として世界中から高く評価されるだろう。市民や公文書に基づき調査・研究を行っている者にとって情報公開こそが政治や行政への信頼の第一歩をつくり出すのである。
ついては、県が公文書管理条例を制定するよう配慮してもらいたい。 |