要旨
国が提起した、辺野古・設計変更申請を知事に代わって代執行するための訴訟の判決が12月20日に言い渡される。この代執行訴訟は、第１回口頭弁論では具体的な審理に入らず、即日結審となってしまい、県には厳しい判決が出される見通しと報じられている。このままでは年内にも国土交通大臣が知事に代わって設計変更申請を承認することが予想される。沖縄防衛局は既に大浦湾での地盤改良工事や護岸工事等を発注し、契約を終えた。代執行が行われたら、すぐに工事が始まり、大浦湾の貴重な環境は致命的に破壊されてしまうだろう。
埋立承認後の事情の変化等によりその効力を持続するのが適当でないと判断された場合、知事は埋立承認を撤回することができるが、埋立承認再撤回の事由となる埋立承認後の事情の変化として、次の事項やその他の事由について検討を行う必要がある。
① 辺野古新基地の耐震設計は中小地震を対象とした「レベル１」で設計されているが、令和４年３月、政府の地震調査委員会が「南西諸島でマグニチュード８級の巨大地震のおそれ」という長期評価を公表したため、「レベル２」での耐震設計に見直すことが必要となっている。また、県の津波浸水想定（平成27年）では、津波の最大遡上高が辺野古崎で11.7メートルと想定されており、辺野古新基地の外周護岸の標高は8.1メートルであることから津波の際に新基地は全て破壊されてしまう。
② 防衛局は、設計変更申請の耐震設計は平成30年に改正された港湾施設基準に準拠したと説明したが、実際には平成19年の旧基準を使用していることが明らかになった。新基準に基づいて設計すれば最大加速度が約1.5倍となり、護岸の安定性が確保できないおそれがあるために旧基準を使ったと思われる。
③ 防衛局は平成19年の土質調査で「軟弱な沖積層が広く、厚く分布している。追加のボーリング調査が必要」と報告されていたにもかかわらず、埋立承認申請ではその事実を隠蔽し「Ｎ値11の砂層。軟弱な粘性土層は確認されていない」としていたことが明らかになった。
④ 防衛局は、辺野古側の埋立工事が完了したにもかかわらず、設計変更申請の内容である大浦湾の埋立てのための土砂の搬送を続け、沖縄県の照会に対して「埋立用土砂は搬送していない」と虚偽の回答を繰り返してきた。このような違法工事や、留意事項違反が相次ぎ、41回にわたる知事の行政指導にも従ってこなかった。
⑤ 令和５年３月に閣議決定された「陸域及び海域の30%以上を保護地域にする」という生物多様性国家戦略2023－2030に反していること。
⑥ 陸上自衛隊と米海兵隊が辺野古新基地に陸上自衛隊の離島防衛部隊である水陸機動団を常駐させる等、共同使用することで合意していることが明らかになった。また、米海兵隊もＥＡＢＯ（遠征前方基地作戦）構想等で再編された。辺野古新基地のような大きな基地が、ミサイルの時代に有効に機能す
るのか。
⑦ 令和５年11月６日、在沖米軍幹部が「軍事的に言えば、普天間から辺野古に移った場合は機能が低下する」「辺野古が完成した後も普天間の維持を希望する」と発言している。普天間飛行場の改修・強化工事も続いており、辺野古新基地が完成しても普天間飛行場が返還されないおそれがある。
⑧ ３回の知事選や県民投票で、辺野古新基地には反対という県民の民意が明確に示されてきた。
ついては、上記①から⑧までの各事項及びその他の事由について検討するため、平成27年に翁長前知事が埋立承認を撤回した際のように、有識者による第三者委員会を設置するよう配慮してもらいたい。 |