陳情文書表

受理番号第242号 付託委員会総務企画委員会
受理年月日令和3年11月29日 付託年月日令和3年12月8日
件名 「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律の廃止を求める意見書」に関する陳情
提出者沖縄平和運動センター
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要旨


 令和3年6月16日、第204回通常国会において「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「法」という。)が成立した。法第2条第2項において「重要施設」とは、①自衛隊施設や米軍施設、②海上保安庁の施設、③「機能阻害行為」としている。法第5条において、その「重要施設」の1キロメートル範囲や国境離島等が「注視区域」、または法第12条において「特別注視区域」と指定できるとしている。
 法自体には、何ら重要施設の1キロメートル範囲や国境離島の住民を「監視」するとは書かれていないが、専門家は「自衛隊の準機関誌「朝雲」(2021年4月8日付)で有効な監視への第一歩と評されており、同誌が指摘するように、法の目的の一つは「市民監視」である。「重要施設」周辺約1000メートル、国境離島等は島全体が「注視区域」「特別注視区域」に指定され監視対象とされる。重要施設とは自衛隊基地・駐屯地や米軍基地であり、日本には約650か所とされる。さらに法2条2項3号では「重要施設」として「生活関連施設」が挙げられるが、「国民保護法施行令第27条」では「生活関連等施設」として最大出力5万キロワット以上の発電所、使用電力10万ボルト以上の変電所、ガススタンドやガスを精製する工場、水道事業のための取水、貯水、浄水のための施設と配水池、1日当たりの平均利用者が10万人を超える鉄道や路面電車などの駅、NHKや国内放送を行う放送局の無線施設、ダム等が挙げられる。国会審議ではこれらの施設は含まれないと政府は答弁しているが、法では明確に規定されておらず、これらの施設の約1キロメートルが監視対象となる可能性は否定できない。」(飯島滋明名古屋学院大学教授)と指摘している。米軍基地で例示すると「重要施設」と想定される米軍嘉手納飛行場周辺1キロメートルの範囲では、嘉手納町、沖縄市及び北谷町の合計約3万9800世帯約9万人がその対象となる。普天間飛行場周辺1キロメートルの範囲では、宜野湾市民約3万9000世帯、約9万8000人のほぼ全市民が対象となる。
 さらに衆院内閣委員会における法案審議の際、国境離島の対象として、陸上自衛隊情報保全部隊やミサイル部隊が配備された与那国島と宮古島全域が挙げられ、那覇市にある第11管区海上保安本部と石垣市の石垣海上保安部も例示された。その区域指定は、内閣総理大臣が委員の任命権を持つ重要土地審議会等が審議する。不適切な運用がなされることが強く懸念され、離島も含め沖縄は約145万全県民が対象となりかねない。
 さらに法第8条では、土地等の利用状況調査や情報提供を自治体や関係者に求めることができ、法第27条では違反者への30万円の罰金が科される。また法第9条では、内閣総理大臣が「阻害要因」と判断した場合、禁止命令等を出すことができる。同時に法第25条では命令に従わない場合、2年以内の懲役もしくは200万円の罰金の規定もあり両方が科される。この法は、土地や建物の自由な売買、取引をも阻害する可能性があり、土地の価格の下落を招くおそれもある。あるいは雇用への影響も起こりかねず、憲法の保障する個人の尊厳、プライバシーの権利、幸福追求権が侵害される危険性がある。
 ついては、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」の廃止を国に求める意見書を提出し、県民の安全を守るよう配慮してもらいたい。