陳情文書表

受理番号第95号 付託委員会経済労働委員会
受理年月日令和5年6月16日 付託年月日令和5年6月28日
件名 「(仮称)石垣リゾート&コミュニティ計画」農地転用手続に関する陳情
提出者石垣島カンムリワシ「自然の権利」弁護団
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要旨


 石垣市において、株式会社ユニマットプレシャス(以下「ユニマット社」という。)が、「(仮称)石垣リゾート&コミュニティ計画」(以下「本件事業」という。)という大規模なリゾート・ゴルフ場開発を進めている。令和4年3月22日、県は、地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(以下「地域未来投資促進法」という。)第13条に基づき、ユニマット社に対し地域経済牽引事業計画を承認した(以下「本件承認」という。)。現在は、ユニマット社は本件承認後の手続として、農地法に基づく農地転用の審査請求を行っている。地域未来投資促進法に基づく知事承認がなされている場合、農地転用許可における立地基準については適用除外となる一方、一般基準については審査対象となることから、農地転用手続においては次の事項につき慎重に吟味しなければならないが、いずれの要件についても許可要件を満たしていない。
 ① 農地法第4条第6項第3号の該当性について
  ア 同号では、「申請に係る農地の全てを住宅の用、事業の用に供する施設
   の用その他の当該申請に係る用途に供することが確実と認められない場合」
   には、農地転用は不許可となるとされている。本件事業では、事業予定地
   内に市条例によって設置された「石垣市民の森」が含まれており、市条例
   によると、市民の森は幅広く市民が森林空間に触れ合うことを目的として
   いることから、一企業に使用させることは条例の目的に反する。また、市
   民の森は市民が広く森林に接することができるよう管理方式を厳格に定め
   ているが、当該地域を開発区域内に含めることは一企業に排他的な使用権
   限を認めた上で管理主体とするものであり、この意味でも条例に違反する。
   そもそも、市民の森を開発区域にするということは市の土地を無償で一民
   間企業に貸し渡す行為であるため、地方自治法に違反する。よって、本件
   開発計画は初めから違法行為を前提としているものであり、法的に実現で
   きないものである。
  イ 本件では都市計画法上の開発許可が必要だが、都市計画法上では「工事
   の実施の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意」を要し、本件事業を
   用途の目的としての公園利用は、上記のようにそもそも一企業に開発行為
   を付与するような同意は予定されておらず、石垣市が権利者として同意を
   与える行為は条例に違反し違法な行為と言え、法的に無効と言える。また、
   この同意は開発区域として永遠に存在することを認める行為だが、行政目
   的の財産の貸与は期限が区切られていることから、都市計画法が求めてい
   るような同意を与えることもできない。よって、都市計画の観点から言っ
   ても本件は開発の見込みが立たない。
  ウ 森林法第10条の2の許可に当たっては、残置森林を設ける必要があるが、
   石垣市民の森公園をもって残置森林に当てるということが予定されている。
   森林法上の残置森林とするためには、残置森林として永続的な管理ができ
   るようその所有権その他使用権を持つことが求められる。本件では石垣市
   民の森として利用しなければならない土地であるため、ゴルフ場用地のた
   めに森林を管理することはできない。また、ユニマット社に森林の管理権
   を与えることもできない。よって、本件では森林法上の開発許可が得られ
   る見込みがない。
 ② 農地法第4条第6項第4号の該当性について
  ア 同号では、「土砂の流出または崩壊その他の災害を発生させるおそれが
   あると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすお
   それがあると認められる場合その他の周辺の農地に係る営農条件に支障を
   生ずるおそれがあると認められる場合」には、農地転用は不許可となると
   されている。本件計画では、1日約1000トンの水を消費し、その7割を地
   下水で賄うとされているが、その地下水利用により、名蔵アンパルや周辺
   の農地、生態系に深刻な影響が予想されるものの、十分な調査・評価がなさ
   れていない。加えて、ゴルフ場の維持管理のために複数種類の農薬を継続
   的に使用することとされているが、農薬や赤土の流出に対する具体的な予
   防策についても十分な回答が得られておらず、営農に影響が生じる危険性
   がある。よって、同号の「支障を生ずるおそれ」について、ユニマット社
   は十分検討を行っていない。
 ③ 農地法第4条第6項第5号の該当性について
  ア 同号では、「地域における効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対す
   る農地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合」には、
   農地転用は不許可となるとされている。本件事業用地には、石垣市が所有
   する広大な農地があり、パイナップル等が栽培されているほか、ブランド
   牛である石垣牛の開発・育成も行われており、対象地一帯が畜産振興目的
   で土地利用が行われていた。そもそも本件事業の土地は優良農地として指
   定されている場所であり、農業の維持発展に寄与しなければならない。農
   地転用がなされることにより、畜産等の農業経営ができなくなることは明
   らかであり、耕作者等の農家はもちろんのこと、石垣市全体が推進してき
   た畜産を含む農業の推進にも逆行することは明白である。これらの点につ
   いては、農業委員会においても、地元農家への影響に対する懸念や、減少
   する農地の代替地についての指摘がなされている。
 ④ 開発区域の境界が不明であることについて
  ア 開発予定地をめぐっては、土地交換契約についての住民訴訟が那覇地方
   裁判所に係属している。その中で石垣市は、ゴルフ場予定地と石垣市の土
   地境界が不明であり、これを整理するためには膨大な時間と労力を要する
   と主張している。これは本件転用対象農地と石垣市との境界が不明である
   と述べていることにほかならない。弁護団の調査では、この違法交換契約
   事件対象土地以外にも境界が不明な土地が多数ある。石垣市の主張のとお
   りだとすれば、転用対象農地の境界も明確になっていないと思われる。境
   界が不明確な状況で転用対象土地を決めることができないのは言うまでも
   ない。
 ついては、ユニマット社から上記事項に対する適切な回答がない限り農地転用許可を行わないよう配慮してもらいたい。