陳情文書表

受理番号第26号 付託委員会文教厚生委員会
受理年月日令和4年2月7日 付託年月日令和4年2月15日
件名 「沖縄県人種差別撤廃条例」の制定を求める陳情
提出者********
要旨


 ヘイトスピーチなどの人種差別行為の害悪は、国際社会の共通認識であり、自由権規約は、第20条第2項で差別、敵意または暴力の扇動となる国民的、人種的または宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止すると定めている。1965年に採択された人種差別撤廃条約では、締約国にいかなる個人、集団または団体による人種差別も後援せず、擁護せずまたは支持せず、禁止し、終了させる義務を負わせている。
 2016年5月24日、国内外の世論の高まりを受けて「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ解消法」という。)が成立し、同年6月3日から施行された。ヘイトスピーチ解消法は、日本で初めての反人種差別法であり、前文で差別的言動が被害者に多大な苦痛を与え、地域社会に深刻な亀裂を生じさせているという差別による深刻な被害を認め、差別的言動は許されないことを宣言し、第1条で解消が喫緊の課題であるとし、国等が差別解消に向けた取組を推進することを目的として掲げている。同法第4条第2項で地方公共団体は、解消に向けた取組に関し、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとするとしてその責務を明記している。
 2016年6月の同法施行以降、各地での具体的な動きが広まりつつあるが、他方で同法は、どのようにしてヘイトスピーチを解消していくのかという基本的枠組みや具体的な施策についての規定を持たないため、どのように取り組むべきなのか地方公共団体側が困惑している実情もあり、国の指示待ちや他自治体の取組の様子を見ているところも少なくない状況が明らかになっている。しかし、地方公共団体は、人種差別撤廃条約上のヘイトスピーチを含む人種差別を禁止し終了させる義務も負っており、また沖縄県は、その歩んできた困難な歴史的背景、そして国連の継続的な勧告を踏まえ、これ以上、人権侵害状況に手をこまねいていることは許されず、人種差別撤廃条約上の義務を具体化し、ヘイトスピーチのみならず差別的取扱いを含めた包括的な差別撤廃政策を取るべきである。したがって、氏名公表・過料等の制裁、公の施設の利用制限、第三者機関の設置等の内容を含んだ「沖縄県人種差別撤廃条例」を制定する必要がある。他方、ヘイトスピーチを法規制するに当たっては、表現の自由とのバランス、濫用防止策を取ることは憲法上の要請であり、注意深い検討が必要となる。さらに、人種等を理由とする差別の禁止等は、異なることへの権利、自らを異なると考える権利及び異なる者として尊重される権利と両立すること等を確認する必要がある。
 全ての人の尊厳が尊重され、人種等による差別のない地域社会をつくるためには、民主主義の成熟が不可欠である。上記条例制定のための検討過程においては、議会、行政、専門家、そして県民が共に議論を深めていく必要がある。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 日本国憲法、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約及び国際人権規約などの理念に基づき、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律を実効化し、人種等を理由とする差別の撤廃を実現するため、他の人権に配慮しつつ、ヘイトスピーチ及び差別的取扱いの禁止、氏名公表・過料等の制裁、公の施設の利用制限、第三者機関の設置等の内容を含んだ「沖縄県人種差別撤廃条例」を制定すること。
2 上記条例制定のための検討過程においては、県民とともに議論が深められるよう透明性を確保すること。