陳情文書表

受理番号第39号 付託委員会土木環境委員会
受理年月日令和6年3月6日 付託年月日令和6年3月14日
件名 沖縄県内での海砂採取の規制強化を求める陳情
提出者沖縄平和市民連絡会
**************
要旨


 現在、沖縄県が直面している深刻な環境問題の一つが、沿岸海域での海砂採取問題である。海砂採取は、海底の泥を根こそぎポンプで吸い上げ、砂だけをふるい分けた後に、礫・泥等を高濃度の濁水とともに海に戻すという方法で行われるため、自然環境や水産資源、さらに護岸等の海岸部の公共施設の管理にも深刻な影響を与える。そのため、海砂採取を全面禁止する県や、年間採取量の総量規制(採取量の上限)を設けている県も増えている。こうした各地の海砂採取規制の現状と比較すれば、沖縄県は大きく遅れている。
 私たちは、令和元年から沖縄県に対し、海砂採取の規制を強化し、環境破壊を抑えるための要請を続けてきた。その結果、県も令和2年7月から採取中の船の位置情報や採取量測定時の写真を提出させる等、監視強化の改善策を講じるようになったが、海砂採取の総量規制については今も具体化していない。今回、辺野古新基地建設事業の設計変更申請を国が代執行で承認したことにより、大量の海砂が採取される事態になった。現在の県内での海砂採取量は年間81万立方メートルから146万立方メートル程度だが、今後、辺野古新基地建設事業では地盤改良工事の敷砂や砂くい、中詰め材として394万立方メートルもの海砂が必要とされている。現在の年間採取量の約3倍から5倍もの海砂が採取されることら、沖縄沿岸海域の環境に深刻な影響を与えることが危惧される。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 「沖縄県海砂利採取要綱」(以下「要綱」という。)に定めている海砂採取場所についての許可基準・条件が遵守されているか確認するため、令和2年から試行している採取中の船の位置情報が示された船内モニター画面、砂利採取月報等に係る荷姿全景写真、採取量計算書等の提出を早急に要綱に明文化すること。
2 特に環境に深刻な影響を与える海砂の深堀りに関し、要綱では部分的な深堀りをしてはならないとしているが、具体的な内容の定めがないことから、深掘り防止のため海砂採取の許可申請時に提出させている等深線1メートルごとの深浅測量図を海砂採取後についても提出させること。
3 海砂採取は環境に深刻な影響を与えるだけではなく、海砂そのものが限られた資源である。しかし、現在の要綱では個々の申請が許可条件さえ満たせば全て許可されることから、申請数が増えれば全体では大量の採取量となってしまう。来年度から膨大な量の海砂採取が予定されていることから、早急に海砂の年間総量規制を実施すること。
4 沖縄の主要な海砂生産地であるヤンバルの東西海域はジュゴンの餌となる海草藻場の繁茂地である。辺野古新基地建設事業ではジュゴンの回遊ルートや餌場に近い沖縄島北部の4か所で海砂を採取するとされており、ジュゴンや海草藻場への影響が危惧されるため、ヤンバルの東西海域では、海岸線から10キロメートル以内での海砂採取を禁止すること。
5 要綱では、自然公園区域、自然環境保全区域等での海砂採取を禁止しているだけだが、環境省が指定した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」や同省が設定した「海洋保護区」である共同漁業権区域での海砂採取も禁止すること。