陳情文書表

受理番号第11号 付託委員会文教厚生委員会
受理年月日令和6年1月12日 付託年月日令和6年2月14日
件名 沖縄県立中部病院に関する陳情
提出者うるま市長
中村 正人
要旨

 沖縄県立中部病院(以下「中部病院」という。)は、高度医療を提供する中核病院、基幹病院として多数の機能を備え、中部圏域や本市における地域医療の拠点として果たす役割は大きい。しかし、現在の中部病院には様々な課題がある。
 初めに、同院南病棟は耐震基準を満たしていないことが平成26年に指摘され、入院患者及び職員の労働環境において、安全・安心が図られていない危機的な状況が続いている。現在、同院将来構想検討委員会の検討案では、工期が最短でも8年間と見込まれているが、耐震基準を満たしていない南病棟を工事完了までの間稼働させることは、命を守る県立病院として絶対にあってはならない。
 次に、医療機能の専門化や高度化、設備機器等の増加など医療環境の変化から、既存の本館建物において狭隘化の問題が生じている。病床や診療に必要なスペースの確保を優先しなければならず、その結果、最新医療機器の導入やハイブリッド手術室の設置への支障が生じており、また会議室や休憩スペース、待合室などが縮小されるなど、狭隘化がもたらす医療サービスの低下や環境の悪化が顕著になっている。加えて、増改築を繰り返したことから、患者や職員の動線が分かりにくい上にその分離が難しく、感染症対策に必要なスペースや個室数の不足も要因となり、新型コロナウイルス感染拡大時には院内クラスターを起こすなど、第2種感染症指定医療機関としても非常に好ましくない状態である。
 また、基幹型災害拠点病院に指定されているにもかかわらず、ヘリコプター離着陸場もなく、有事の際に転用できる施設やスペースは皆無にひとしく、受水槽や井戸設備なども十分に満たせていないなど、解決しなければならない課題は複合的に山積している。
 同院将来構想検討委員会で様々な議論、検討がなされ、耐震基準を満たさない南病棟を優先する議論が起こるのは一見理にかなっているように思われるが、上記の課題や駐車場の問題などを踏まえると、現地整備工事(以下「工事」という。)ではこれまで同様、延々と大小ある整備を繰り返すこととなり、将来の中部病院が果たすべき機能・役割を果たせないどころか、病院自体の衰退につながり、この地域の医療崩壊へと進みかねない。また、工事による搬送受入れの減少等が懸念されるが、医療提供体制や医療機能の低下は地域医療へ与える影響が大きく、避けなければならない。加えて、災害が発生した場合、工事中と重なれば最低限の機能さえ発揮できるか疑問を抱かざるを得ない。
 南病棟耐震化の過去の入札不調においては、病院機能を維持したままでの工事は厳しいことから病棟閉鎖案を関係機関へ説明したが、協力は得られなかった。このまま進めると同様の結果を招き、新病院建設はさらに延期となり、地域の医療崩壊へとつながる。また、高齢者人ロの増加により病床不足、医療逼迫が予想されている中、民間医療機関や高齢者施設などと連携し、患者を支える地域包括ケアシステムを実視することも求められている。そのためには土台となる医師や看護師等の育成が重要であり、全国の医師や研修医、看護師にとって魅力的な中部病院となる必要がある。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                  

1 移転による新中部病院の整備を行うこと。
2 中部病院の持つ機能を落とすことなく、整備すること。整備に際しては、県内医療機関等との役割分担を図ること。
3 移転後の跡地利用については、本市及び地域意見を取り入れた方針を策定し、 まちづくりに資する計画とすること。
4 現在の南病棟患者等について、早急に転院等による対策を行うこと。