平成13年(2001年) 第 2回 沖縄県議会(定例会)
第 4号 2月26日
宮里 政秋
 

 日本共産党県議団を代表して知事に質問をいたします。
 相次ぐ米海兵隊員による事件が発生する中で、今度は連続放火事件が発生しました。米軍は、警察の被疑者の身柄引き渡し要求を拒否しました。
 平成7年10月、「刑事裁判手続に関する日米合同委員会」で、凶悪犯罪の場合、合衆国は、被疑者の起訴前の身柄引き渡しがあった場合はいかなる要請に対しても好意的配慮を払うと改められました。ところが好意的配慮どころか、連続放火という凶悪犯罪にもかかわらず起訴前の犯人逮捕を米軍は拒否したのであります。「運用上の改善」では限界があることを今回の事件は示しています。
 犯人の国籍のいかんを問わず、我が国で犯罪を犯せば日本の法律で裁かれるべきは当然であります。治外法権的な特権を保障している地位協定は、まさに主権の放棄につながるものと言わなければなりません。稲嶺知事が被疑者の引き渡しを要求し、地位協定の見直しを再度政府に求めたことは当然の措置であったと思います。
 2月15日の衆議院外務委員会で、我が党の赤嶺衆議院議員が河野外務大臣に起訴前の身柄引き渡しを要求しました。これに対し河野外務大臣は、起訴となれば、その段階では当然身柄は引き渡されるということになるわけでございますが、できるだけ早い身柄の引き渡しを求めて努力中でございますと答弁されました。ところが起訴前の身柄引き渡しは実現できませんでした。アメリカにしっかり物が言えない対米追従の外交の結果ではありませんか。
 連続放火という凶悪犯の被疑者を起訴前に逮捕できないという国の外交を知事はどう思うか、御見解をお聞かせください。
 これまで政府は、運用上の改善に努力するとしてまいりました。地位協定の見直しをかたくなに拒否してきました。地位協定の抜本的見直しがなければ県民は絶対に納得しません。この際、地位協定の見直しについて強力な折衝が必要と思います。どのような対策をとられるのか、知事の御決意を伺いたい。
 次に、警察本部長に伺います。
 「殺人・婦女暴行」以外は、起訴前の身柄引き渡しもできないでは公正な捜査は期待できません。平成10年の「刑事裁判手続に関する日米合同委員会」での「運用改善」の中で「殺人又は強姦」と書かれているのは明示的表現ではなく、例示的表現と解釈するのが相当であります。その意味で警察が起訴前に犯人の身柄引き渡しを求めたのは当然の措置であったと思います。
 放火事件は、社会的法益を侵害する重大な犯罪であります。延焼したら個人の生命財産に対する危険はもとより、社会の平穏と安全を侵害する極めて危険な犯罪であります。連続放火犯人の逮捕を米軍が拒否したことは断じて許せるものではありません。
 そこで質問の第1点目、捜査は任意捜査が原則です。ところが米兵犯人は、過去にも国外に逃亡した例があります。今回も身柄を拘束して取り調べることができませんでした。捜査上、どのような支障があるのか。
 2点目、今回の連続放火被疑者を起訴前に身柄引き渡しを要求したのはなぜか。その根拠。
 第3点目に、警察の起訴前の逮捕要求を米軍が拒否した理由は何か、明らかにしていただきたい。
 次に、知事の政治姿勢についてお伺いいたします。
 海兵隊員による女子高校生への強制わいせつ事件で1月19日の臨時議会で、在沖米海兵隊の削減を求める意見書と抗議決議を全会一致で可決いたしました。県議会の決議を受けて各市町村議会でも海兵隊の削減を求める決議が相次ぎ、北谷町と石川市議会では海兵隊の撤退決議を採択しました。県内各界の代表らも一様に県議会の決議を評価しました。地元紙も社説で「海兵隊の削減要求は当然」と報道しました。
 海兵隊削減の声は、県民の総意として日増しに高まりつつあります。県議会が海兵隊の削減要求を全会一致で打ち出した背景には、米兵による犯罪が発生するたびに日米両政府は綱紀粛正、再発防止を約束してきたが守られたためしがないこと、県民の感情を逆なでする米軍や有効な外交交渉を講じ得ない政府に対して、与党、野党が立場の違いを超えて海兵隊の削減抜きに事件・事故を防止できない、海兵隊削減の姿勢を示さない限り同じ決議の繰り返しでは県民は納得しないとの認識の一致によるものでありました。
 ところで、稲嶺知事はこれまで海兵隊の削減要求を表明してきませんでした。地元紙は、稲嶺知事の政治姿勢を次のように取り上げました。県当局も県議会とともに両政府に海兵隊の削減を正面から強く主張すべきだ、稲嶺知事みずからリーダーシップを発揮しなくては基地問題の前進は期待できないと批判しています。
 米軍に反対している政治家が事件を宣伝しているという元司令官の発言が報道されました。県民の怒りを逆なでするこの暴言は絶対に許せません。
 しかしこの発言を裏返せば、事件を政治的に利用しているのは米軍に反対している一部の政治家であって、稲嶺知事は海兵隊削減を要求していないではないかとも受け取れます。政治的ないろいろな思惑もあってあれこれと取り繕おうとするから、少女の人権が侵害されても怒りが伝わらない。
 1995年の県民大会で大田知事は、一人の少女の人権を守り得なかったことを知事として県民に深くおわびしたいと訴えました。人間の尊厳が侵されたことに対する知事の怒りは、県民に大きな励ましと感動を与えました。知事の発言はそれほど重いものです。人権侵害に対しては、稲嶺知事は毅然たる態度をとるべきではありませんか。
 次に、ヘイルストン発言について。
 在沖米軍調整官は、海兵隊の削減を求める全会一致の県議会決議を「米軍に損害を与える決議」と攻撃した上で、決議の通過を見過ごした知事を「ばかな腰抜け」とののしりました。この発言は県民の怒りを呼び、四軍調整官の辞任要求へと発展しました。県民の代表である知事を「ばかな腰抜け」とはまさに県民を侮辱する暴言であり、県民への挑戦であります。与野党を問わず言語道断と一斉に反発したのは当然であります。
 ところが稲嶺知事は、個人的なメールでコメントは難しい問題であると前置きして、個人的には不快であると語っておられます。司令官が部下あてに出した指示、命令の文書は私信ではありません。私信とは、プライバシーに関する通信を言うのではありませんか。この四軍調整官の発言を私信と受けとめ、抗議もしないでは腰抜けと批判されかねません。
 この暴言の背景には、海兵隊の新基地建設を容認し最もアメリカに協力的な稲嶺知事が、なぜ米軍に損害を与える決議の通過を見過ごしたのかというアメリカ側のいら立ち、不信のあらわれとも受け取れます。すなわち海兵隊司令官が稲嶺知事をどう見ているかをよくあらわしているとも言えます。
 海兵隊削減の全会一致の決議に対しても、知事はこれまで明確な態度を表明していません。四軍調整官の発言についても抗議の姿勢を示していません。この2つの問題に対する稲嶺知事の政治姿勢に県民は納得していないのです。
 そこで知事に伺いたい。
 海兵隊削減はまさに県民世論となりつつあります。執行部と議会は、それこそ両輪となって体を張って海兵隊削減を日米両政府に要求する気概が今こそ問われているのではありませんか。知事の御決意を伺いたい。
 四軍調整官に対しても厳重に抗議する姿勢を示すことが県民感情に沿う対応と思うがどうか、お答えいただきたい。
 次に、ヘリパッド候補地の見直しについて伺います。
 米軍基地関係特別委員会は、1月30日に北部のゲリラ訓練場を調査いたしました。司令官の説明と案内で訓練施設を視察いたしました。司令官の説明によると、同訓練施設はアメリカ国防総省唯一のジャングル訓練施設で、地形が変化に富み訓練に最適だとの説明を受けました。
 ところが防衛施設庁の調査によると、1849種の動植物が確認されています。しかもそのうち145種は特別天然記念物のノグチゲラ、国指定天然記念物のヤンバルテナガコガネなど絶滅のおそれのある希少動植物が確認されています。建設予定地は、世界の環境団体も日米両政府に保護を求めていた地域であり、今回の調査結果はこうした指摘を裏づけるものであります。

 北部訓練場にはヘリパッドが22カ所あり、7カ所のヘリパッドを新たにヤンバルの森に移設すれば、世界的にも保護への機運が高まっているヤンバルの希少動植物は絶滅するおそれがあります。
 昨年秋の総会で国際自然保護連合は、ヤンバルに生息する希少種の保護を求める勧告決議を行っています。したがってSACO合意に基づく早期返還と新たなヘリパッド建設の中止を国に強く要求すべきであります。知事の御答弁を求めます。
 次に、15年使用期限問題について伺います。
 米軍基地関係特別委員会は、1月31日に北部訓練場の視察に続きキャンプ・シュワブの調査も行いました。隊員の案内で基地内を視察しました。海兵隊の宿舎、病院、売店、食堂、教会、海水浴場、運動場があり、一つの町を構成しているような印象を受けました。
 海に面した小高い場所で司令官は、海兵隊の施設としてはとてもすばらしい施設と説明していました。普天間基地の移設先はどこかとの質問に、このことは日米両政府が決めることだと断った上で、国際保護動物のジュゴンが生息する海を指さして説明していました。建設が予定されている新基地はほとんどが海上基地で、一部陸上につなぐ工法になるのではないかとの印象を受けました。
 名護市民は、住民投票で海上基地を明確に拒否しました。投票で表明された市民の意思を権力で押しつぶして新しい基地を押しつけることは、民主主義の原理に照らしても到底容認できるものではありません。
 さて、15年使用期限という知事の公約は既に破綻していると言わざるを得ません。なぜなら15年の使用期限問題が棚上げされたまま既に具体的な工法だけが先行しているからであります。これまでに代替施設協議会は5回開かれています。防衛施設庁では、既に代替施設の建設工事を部外団体に依頼しています。具体的な工法はくい式桟橋、ポンツーン、埋め立ての3つを想定しています。3つの工法の仮設条件は、滑走路の長さはオーバーランを含めて2400メートルを提示しています。同資料をたたき台とする協議は第6回以降と言われています。
 政府は、こうした既成事実をつくり上げる一方で、15年期限を実現するための対米交渉を一度も行っておりません。
 知事は、15年使用期限問題について、今後とも協議会の場においても要望のほか、あらゆる機会に政府の責任において早急に解決策が示されるよう引き続き強く求めていく考えでありますと答弁をされてきました。知事の任期も2年が過ぎました。公約を政府に守らせるタイムリミットはいつか、明確にすべきではありませんか。
 そこで質問いたします。
 第1に、代替施設協議会は5回開かれています。ところが15年使用期限と基地の使用協定については、代替施設協議会では全く取り上げられていません。知事の公約である15年問題はアメリカの同意が必要です。日米両政府の合意が得られるまで主張し続けるでは県民は納得しません。次回の協議会では15年問題を取り上げるべきだと思うがどうか、知事の御答弁をいただきたい。
 2番目に、岸本名護市長は、使用期限や基地使用協定などを論議するため新たな協議機関の設置を提案しています。知事はどう対応されますか。
 第3に、15年問題が棚上げされたまま代替施設の建設がスタートすることもあり得るのか。
 次に、介護保険問題について。
 昨年10月から、半額とはいえ1万5000円以上の年金からの天引き徴収が始まりました。本県は平均所得は全国の半分しかないのに、逆に保険料は全国の3割高です。本県は高齢者の84%が住民税非課税です。保険料の滞納は全国的にも深刻です。政令都市9市全体で7万5000人が保険料を滞納していることが明らかになっています。本県の実態をお聞かせいただきたい。
 保険料、利用料の負担の軽減について。
 高い保険料、利用料の軽減を求める声は全国に広がっています。既に200の自治体で保険料の軽減措置がとられており、利用料では838自治体で軽減措置がとられています。しかし本県は残念ながら軽減措置がとられておりません。市町村任せにせずに、県としての財政支援が求められております。国に対する要請とあわせて改めて県の知事の決意を伺いたい。
 ポスト3次振計での提言について。
 昨年の完全失業率は、復帰後最悪と言われた一昨年の8.3%から7.9%に持ち直したとはいえ、依然全国の2倍の5万人、負債額1000万円以上の企業倒産は一昨年の1.4倍にもふえています。
 第1に、沖縄の中小企業や農水産業を危機に陥れるような産業経済政策をやめさせ、農漁業、観光、地場産業の経営を強化し雇用を拡大することではないでしょうか。
 2、新基地と引きかえにした国の財政支援ではなく、本当の意味での沖縄の経済発展と県民生活向上に役立ち、沖縄県民が自分の計画に基づいて使える財政支援を国に強く要求すべきではないのか。
 3つ目は、基地のない沖縄を展望した県土づくり、この計画を進めることです。
 その立場から次の質問を行います。
 1、国の責任による第3次沖縄振興開発計画が2001年度で終了しますが、1次、2次、3次の到達点を県民の立場から見きわめて、それをさらに発展・充実させた振興策を国に要求していただきたい。

 2、昨年6月から大型店の出店は、都市計画法や大型店立地法によることになっています。生活環境を保持するために必要な施策を講じるという条項を活用して店舗面積に上限を設け、出店に歯どめをかける要綱を制定するなど県独自の中小業者や商店街を守る施策を具体化していただきたい。
 3、さとうきび農業は生産費を償えない価格を強いられ、農家は経営の維持が困難になっています。さとうきび生産価格に見合う価格補償、国産糖の入札制度の廃止を国に強く求め、沖縄の地形、規模に合った収穫機・ハーベスターの開発を急ぐこと。イモゾウムシ、ハモグリバエの根絶など病害虫の研究に力を入れること。わしたショップの機能を強化し県産品の販路拡大に一層力を入れること。学校給食やホテル・旅館での積極的な活用など県内産品の県内での新たな市場開拓に本腰を入れること。
 4、沖振法に基づく県の公共工事は地元優先、分離・分割発注を徹底すること。特に県の公共工事が極端に特Aに偏り、A以下の企業には仕事がほとんど回ってこない。この事態は深刻であり直ちに改善すること。
 5、行政が「IT革命」を真剣に考え、起業と雇用の創出を直ちに着手すること。
 6、離島県沖縄の産業経済発展のかなめは、本島と各離島、本土と沖縄を結ぶ海と空の交通路の確保と低廉化、航空運賃の引き下げ、高速冷凍・冷蔵船の就航を県と政府が一緒に早急に進めること。
 以上の各項目ごとに御答弁をいただきたい。
 最後に、教育問題について質問いたします。
 我が党は、子供と教育の問題を21世紀の社会の存続にかかわる問題として重視し3つの分野での教育改革を提言し、国民的な取り組みを呼びかけています。
 その第1は、学校教育の抜本改革、2番目に社会での道義の確立、3番目に性や暴力の映像などから子供を守る、この3点であります。特に第1点目の学校教育の抜本改革の具体化として学力の危機ともいうべき事態は、子供の成長と発達にとって放置できない深刻な問題としてその打開のための提起を行ったものであります。
 学力の危機とは、単純な学力低下というものではありません。今学校現場では子供たちの勉強意欲の減退、学力格差の広がりなどさまざまな側面から子供たちの学習に異変が起こっていることが問題になっています。
 学力の危機の2つの特徴を文部省の調査で見ると、学校の授業が「よくわかる」と答えた子供たちの割合は小学校全体で19.9%、中学校2年生で4.7%、高校2年生で3.5%です。まさに学力の危機が進行していることを文部省の調査は示しています。
 学校生活の大半が授業です。その授業が「わからない」、「つまらない」というのでは子供にとって本当につらいことです。学ぶことは人間にとって成長であり、「わかる」ことは子供にとって喜びであります。「わからない」、「つまらない」という状態で放置されることは人間としての誇り、尊厳を傷つけることにほかなりません。この学力の危機ともいうべき事態が子供に苦しみを押しつけ、さまざまな発達のゆがみや社会的な逸脱をもたらす一つの根源になっているのではないでしょうか。

 このような学力の危機の原因は何か。それは長年にわたって学校教育に押しつけてきた競争主義、管理主義の押しつけがその根源にあることを指摘しなければなりません。
 学力の危機の打開策として、学習の中の基礎・基本的な事項は時間をとってわかるまで教えるようにすること。各教科には、これだけはという基礎的な事項があります。それを深くきちんと理解することは、勉強のつまずきをなくする上で極めて大切なことです。少人数学級の実現や教員定数をふやす措置は、今各地で広がっています。
 そこで教育長に伺います。
 学力の危機という事態を打開するためどのような対策をとられるのか、お伺いします。
 1点目に、我が党は、その打開策として1つ、きめ細かく教えられるような30人学級の実現に向けて努力すること。
 2点目は、教員の増員と学校の民主的運営の実現に努めること。
 3点目に、受験中心の競争教育を改め、学習の中の基礎・基本的事項を時間をとって教えること。
 以上3点について提起いたします。それぞれについて教育長の御答弁を求めます。
 以上で代表質問を終わり、知事の答弁によって再質問を行わさせていただきます。

 
20010204040060