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平成22年(2010年) 第 6回 沖縄県議会(定例会)
第 5号 12月22日
比嘉 京子
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おはようございます。
平成22年第4回議会乙第1号議案「沖縄県立看護学校の設置及び管理に関する条例を廃止する条例」に対して反対の立場から討論をいたします。
なぜ県立を堅持しなければならないのか。
第1の理由は、離島・僻地医療を守るためであります。
県立病院の役割は言うまでもありません。不採算医療、高度医療、特殊医療等を担っているところです。民間の医療機関が採算性の困難な医療や離島・僻地などの医療を担っていることは、議員各位が御承知のとおりであります。県立病院を存続させることは、県民の命を守る最後のとりでを守ることであります。
採算がとれなくても、24時間、365日どのような緊急な手術にも対応できるスタッフをそろえているのが県立病院です。我々は、この環境が危機に瀕していることを認識しなければなりません。御承知のとおり、病院の崩壊は、1つには経営の破綻、もう一つには人材が集まらないことと言われています。
今、県立病院では毎年医師不足、看護師不足が続いています。中でも看護師不足は深刻です。現在でも中部病院の52床、南部医療センターでの14床が閉鎖されています。看護師が40人不足しているためであります。県民の入院の機会を狭め、病院の診療報酬を年間約8億円減らしています。この状況は、慢性的に毎年続いています。このような看護師不足は、看護師の過重労働を招き、毎年早期退職者を生み出しています。ちなみに、ことしは80人に上り悪循環に陥っています。ことしは、宮古・八重山病院の看護師を10対1で充足させ、中部病院と南部医療センターで看護師不足を66ベッドを閉鎖するという形でしのいでいます。県立病院の経営健全化をみずから阻害しているこの現実をどう考えたらいいんでしょうか。
民間医療では看護師獲得のために奨学金を出すなど、卒業後の確実なる確保に向け具体策を講じています。さらに、7対1看護体制の制度施行と同時に看護師を大幅に採用して制度を導入し、入院医療費の増収を迅速に行っています。県は、民間におくれること4年、ことしの5月から南部医療センターで初めて7対1看護体制を導入いたしました。看護師にとっても、患者にとっても、経営の面からも効果的であることが報告されています。このような7対1体制を中部病院を初め県立病院に導入しなければなりません。
11月17日に開催されました南部医療センターにおける7対1看護体制シンポジウムで、中部病院の院長は、来年の4月から導入できなければ中部病院はつぶれると逼迫した発言をされ、看護師の過重労働が限界に来ていることを訴えていました。ちなみに、中部病院の病床稼働率は102%であります。
現場の悲鳴を聞きながら、毎年続いてきた看護師不足を県はどのように解決していくのか、いまだ具体策は示されておりません。それどころか、病院事業局と福祉保健部の連携のなさは、県の修学資金貸与における卒業後の返還免除対象に県立病院を除外してきたことからも明らかであります。県独自の修学資金であるにもかかわらず、県立病院の看護師を養成しようとする意思が全く見えません。
「民間でできることは民間で」と県は言います。では、県立看護大学や芸術大学は民間でできないから県立なんでしょうか。大学は、国公立もあれば私立もあります。どう説明がつくんでしょうか。また、県は、「限られた財源の中で」とも説明をしていますが、県民の命の最後のとりでを守らずして、何を優先するというんでしょうか。
今こそ県は発想を転換して、県立看護学校を核として県立病院の看護師養成を政策的に行い、宮古・八重山を初め地域枠を設け、中長期的に地元出身者を育成していくことも県立であればこそできるのではないでしょうか。
離島へ看護師を送っている本島内の2カ所のこの高度・多機能病院は、その機能に支障を来しています。
さらに、今回新たに新看護師研修センターの建設を初め研修事業が浦添看護学校を民間移譲して実施するとの提案をしておりますが、限られた財源の中で3億円のハード事業は県民の理解が得られるわけではありません。当面は、既存の施設を活用して行うことではないでしょうか。また、さまざまな研修は、民間移譲と引きかえにすることではなく、現場と連携し待ったなしで実施されるべきことであります。
第2の理由は、家庭の経済状況に左右されず、看護師を目指す学生の道を閉ざしてはならないということです。
県の調査によると、全看護学生の58.4%は奨学資金を借りているとの報告がありました。沖縄県の修学資金は月額3万2000円ですが、学生支援機構では3%の利子がつくものでは月額12万円まで借りることができ、また、別途50万円まで増額して受けられる制度があるようですが、県の無利子の3万2000円を借りている学生よりも高額利子がつく資金を借りている学生が圧倒的に多いのが実態です。
県が今回民間移譲することによって、県の修学資金に2000万円上積みし総額9000万円にすると発表していますが、学生の実態はかなり高額な修学資金を借り入れしていることから、ニーズにこたえるには億単位の財源が必要と推察されます。
学生は、卒業時に300万円から400万円の返済金をしょっていることから、月収が県内より10万円ほど高い本土へ就職し、早く返済のめどをつけたいと希望する学生がいることも事実です。ちなみに、昨年は県内の卒業生の約20%近い学生が県外へ流出しています。本土の看護師募集の一例ですが、こんな条件がネット上にありました。移動費15万円、特別支援金30万円、年収450万円から500万円です。
浦添看護学校のことしの受験倍率は去年を上回り、一般で6倍近く、社会人枠で10倍を超えています。この人気はやはり授業料です。県内の経済状況や県民所得から勘案しても、県立として存続させていくことが県民的にも理解が得られることではないでしょうか。本県の雇用拡大への貢献もしています。正規職員率も高く、グッジョブ運動を推進することとつながっています。
最後に、看護師不足は県立病院の崩壊へとつながります。県は、離島・僻地医療を守るため看護師養成を政策的に行い、実効性のある看護師確保をしなければなりません。
「沖縄県立看護学校の設置及び管理に関する条例を廃止する条例」に対し反対の立場から討論をいたしました。
議員各位の御賛同をお願い申し上げ、社大・結の反対討論といたします。
ありがとうございました。
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20100605020020