平成11年(1999年) 第 5回 沖縄県議会(定例会)
第 6号 7月15日
文教厚生委員長(喜納昌春)
 

 ただいま議題となりました乙第4号議案について、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 委員会におきましては、執行部から病院管理局長の出席を求め慎重に審査を行ってまいりました。
 以下、審査の過程における執行部の説明及び質疑の概要等について申し上げます。
 乙第4号議案は、平成7年7月7日、県立八重山病院産婦人科において起きた医療事故に伴う損害賠償の額を定めるものであります。県立八重山病院において双胎児(いわゆる双子)分娩の際、不注意により最初の子が仮死の状態で生まれ、心臓蘇生法等で一命は取りとめたものの、脳を初め身体に重大な後遺障害を受け、その後、第一子は当病院で集中治療を受けていたが、治療のかいもなく平成10年4月10日に死亡したものであります。
 この医療事故について、平成10年8月20日に患者の両親から那覇簡易裁判所へ調停申し立てがあり、簡易裁判所の調停委員のもとで5回にわたる調停の結果、損害賠償額3000万円で合意に達したものであるが、損害賠償額を定めるためには議会の議決が必要であるとの説明がありました。
 本案に関し、病院がこれを医療過誤だと知った日はいつかとの質疑がありました。
 これに対し、3カ月後であるとの答弁がありました。
 次に、医者本人が知った時期、間違いを認めた時期はいつかとの質疑がありました。
 これに対し、平成7年10月19 日に父親からクレームがあり、医者が面談をし、吸引分娩でなく帝王切開をした方がよかったかなとの認識を持ったようであるとの答弁がありました。
 次に、医師個人は吸引分娩の時点では間違いを認識していなかったのか、医者単独でやったのか、あるいは複数かとの質疑がありました。
 これに対し、医者と看護婦2人である。主治医は誠心誠意医療行為を行ったが、結果としてこういう結果になったとの答弁がありました。
 次に、二度と死亡事故を起こしてはいけないが、その後どのような対応をしたかとの質疑がありました。
 これに対し、事故予防対策委員会を開いてそこで集中的に検討を行った。また保険会社等の専門官を八重山病院に呼び事情聴取等を行い、病院側に有責事案があるとの結論に達したとの答弁がありました。
 次に、医師個人の問題というより病院全体の医療スタッフの体制の問題である。事故予防対策委員会を設定して、そこから出てきた対応策はどのようなものがあるかとの質疑がありました。
 これに対し、こういう医療事故は起こしてはいけないということで病院管理局内で医療事故予防対策委員会をつくり、医療事故の未然防止、事故原因の調査を行っている。また診療部門ごとに医療事故予防対策マニュアルをつくって病院と調整し対策を講じているとの答弁がありました。
 次に、専門的な観点からの診療部門ごとのマニュアルではなく、地域住民が安心して医療を受けられるそのような対策はないのかとの質疑がありました。
 これに対し、医療行為そのものがリスクを伴うこともあり、普通、事故は起こり得るものと認識して常に緊張感を持って対応しなければならない。ひやっとしたとき、はっと気づいたこととか、そういうものを集めてシステム化し共通認識を持つことによって医療事故防止につながると考えているとの答弁がありました。
 次に、帝王切開を行う時期、タイミングを逸したとのことであるが、これはどの医者にも通ずるものなのか、それとも医療知識の熟度に問題があったのかとの質疑がありました。 
 これに対し、タイミングがおくれた背景として母親が23歳と若く2回目の妊娠であったこと、最初の診察から順調だったこと、自然分娩にこだわっていたこと等からタイミングを失したのではないかとの答弁がありました。
 次に、吸引分娩は多くの医療過誤を生んでいるが、帝王切開をするとなると医師のタイムスケジュール、医療スタッフの確保、手術室の準備等ジレンマがあると思うが、この事案から学ぶものとして吸引分娩に対する県としての見解、対応、対策はどうかとの質疑がありました。
 これに対し、お産というのは非常にリスクが高くいろいろ事故が起こりやすい状況にある。明らかに予測できるケース、予測できないケースについてはそのときの妊婦の体力、あるいは子供の状態とか含めて幾つかの治療手段を選択できる体制、複数の治療手段が選択できるような状況を整備することが大事だと考えているとの答弁がありました。
 そのほか、離島の病院へのインターン派遣、死亡事故が起こらないようにするための医師間での話し合い等についての質疑がありました。
 以上が委員会における審査の概要でありますが、審査の結果、乙第4号議案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げまして報告を終わります。

 
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