昭和58年(1983年) 第 8回 沖縄県議会(定例会)
第 5号 10月 3日
第 5号 10月 3日
 

議 事 の 概 要
       昭和58年10月3日(月曜日)
         午前10時1分開議

日程第1 一般質問
日程第2 甲第1号議案から甲第4号議案まで、乙第1号号議案から乙第8号議案まで及び認定第1号から認定第3号まで(質疑)
日程第3 陳情第188号、第189号及び第191号の2の付託の件
         午前11時5分散会

○議長(大田昌知君) これより本日の会議を開きます。
 日程に入ります前に報告いたします。
 本日、質問予定の我那覇祥義君及び儀間光男君から、発言通告の撤回がありました。
 次に、9月21日から10月1日までに受理いたしました陳情は12件で、そのうち特別委員会に付託すべき陳情3件を除く9件は、お手元に配付の陳情文書表のとおりそれぞれ所管の常任委員会に付託いたしました。
 なお、説明員として出席を求めた国民体育大会準備事務局長久貝誠善君及び地方労働委員会会長楚南兼正君は、別用務のため本日の会議に出席できない旨の届け出がありました。よって、それぞれその代理として国民体育大会準備事務局次長宮城栄雄君及び地方労働委員会事務局長宮城調一君の出席を求めました。
○議長(大田昌知君) 日程第1及び日程第2を一括しこれより直ちに一般質問を行い、甲第1号議案から甲第4号議案まで、乙第1号議案から乙第8号議案まで及び認定第1号から認定第3号までを議題とし質疑に入ります。
 質問及びただいま議題となっております議案に対する質疑の通告がありますので、順次発言を許します。
 瀬良垣守正君。
   〔瀬良垣守正君登壇〕
○瀬良垣守正君 おはようございます。
 さきに通告いたしました下水道汚泥の肥料化について質問したいと思います。
 昭和59年度重点施策の「農業の振興」の中で、「有機質肥料の増産、下水道汚泥の活用化等地力増強対策を進める」と書かれております。地力低下が指摘されて久しくなるが、県では毎年重点施策にも取り上げ行政面でも一応対応しているようですが、余り成果が上がっているとは思えません。
 本県の農業の来歴は知りませんが、サトウキビが導入されてからでも300年余になります。この長い歴史を通じ数百年にわたって同じ畑でイモをつくり、サトウキビの生産を繰り返してきたわけですが、それを可能にしたのは、人ぶんや家畜ふん尿等の有機質肥料を丹念に農地に還元し、地力の維持増進に大変な努力を払ってきたからだと言われております。戦前の農村では畑に行くときには堆肥を担ぎ、帰りには草や枯れ葉を持ち帰って家畜を養い、肥料づくりに努めたものであります。しかし最近では農業の分業化が著しく進展し、個々の農家で家畜を飼い堆肥をつくることができなくなり、化学肥料と農薬に依存する農業へと変化しております。このため土壌は酸性化し、土地生産力は極端に低下してミミズさえすめなくなったと言われております。
 最近におけるサトウキビ生産の動向を見ましても、10アール当たり収量は六、七トン台を低迷し、一向に生産性の向上が見られません。中でもサトウキビ単作地帯では病害虫の異常発生、株出しの不萌芽、生産力低下等のいや地現象が進んでいると言われております。またサトウキビのブリックスも停滞傾向で推移し、製糖関係者は非常な危機感を抱いております。
 県は、これまで家畜を導入し、畜舎をつくり、肥料工場や堆肥盤を建設し、土地改良や土壌改良を推進するなど多種多様な土づくり関連事業を推進しております。さらに昭和59年度から重点施策の一つとして下水道汚泥の肥料化を促進するということですが、時宜を得たりっぱな施策展開だと思います。
 先日、経済労働委員会の産業視察で勝連町の下水道汚泥捨て場を視察しましたが、あのような汚泥の捨て方は問題だと思います。ハエがたかり悪臭がするなど環境衛生上好ましくないと思います。新聞でも苦情があったが、地域住民にとって迷惑な話だと思います。また9月29日の新聞によると、沖縄市議会では、泡瀬国体主会場に野積みされている那覇及び伊佐浜下水処理場の汚泥が海に流れ込んで悪臭を放ち、しかも水銀の含有量が基準値を超えており、人体への影響も考えられ問題だと市当局に迫っております。
 勝連町の汚泥捨て場もそうだが、法律に抵触さえしなければという安易な姿勢がこのような結果を招いたのではないですか。水質保全の役割りを持つ下水道事業が逆に環境を汚染したのでは、何のための下水道事業かと言いたくなります。また環境保健部は、産業廃棄物である汚泥の処理に関して指導する立場にあるはずだが、あのような処理の仕方で産廃法上の問題はないですか。
 さらに農林水産部にも言っておきますが、あの汚泥は植栽用に使うというが、肥料取締法との関係で指導が必要だと思うが行ったでしょうか。なれ合い行政では困ります。相互のチェック機能を十分に生かして厳正な行政執行を望むものであります。勝連町と沖縄市にかかわる汚泥の公害問題でありますので、中部選出議員として、以上厳重に注意しておきます。
 論点がそれましたが、下水道汚泥は、有機質、窒素、燐酸等の肥料成分を多分に含有しており、豚ぶん等の家畜堆肥にまさるとも劣らないすぐれた有機質肥料だと言われております。ちり捨て場に単に捨てるのではなく、有機質肥料として再生利用するのが県益に資する方向だと考えます。
 下水道汚泥を肥料化する場合、重金属類の含有率の問題と経費が高くつくという2つの問題があると言われております。
 第1の重金属類の含有率の問題については水銀が問題だということですが、水銀の流入源は病院等数が限られているので本気になって行政指導をやれば水銀の流入量を減らすのは案外容易ではないかと思いますが、どうでしょうか。産業廃棄物の処理に関する法律及び肥料取締法の基準値をクリアできるようがんばってもらいたい。
 第2の問題は、汚泥を肥料化すると経費が高くつくということでありますが、これは当然のことであって、ただ捨てるより再生利用のために加工を施し丁寧に処理するわけですから経費がかさむのはあたりまえの話であって、ただそれだけの価値があるかどうかが問題だと思います。しかしその経費を下水道特別会計で賄えないということは、土木建築部にとって難儀な話ではあると思います。だが何も遠慮することはないと思います。特別会計で調達できない不足分については一般会計から繰り入れてもらえばいいではありませんか。下水道事業は、産業活動や生活活動の排せつ物をきれいに処理し、環境浄化を図って社会的な再生産を確保するための事業ですから、人間の社会活動が続く限り汚泥は排出され、それは膨大な量になります。
 県営の那覇下水処理場と伊佐浜処理場だけでも日産60トン、年にして2万トン余の量になります。現在本県には県営2カ所、市町村営3カ所の下水処理場が設置されておりますが、今後さらに住みよい生活環境を確保していくために下水道の普及は高まっていくことと思います。この増大する大量の汚泥を一体どこに捨てるのでしょうか。現在ですら、もてあまし気味のこの汚泥は自然の浄化能力を考慮に入れても高度化しつつある現在の産業経済活動の水準から見て必ず近い将来行き詰まってしまうのは自明のことであります。過去において当県議会でも取り上げられたが、とにかくこの下水道汚泥は量が膨大であること、捨て場がきわめて限定されていること、公害に結びつく物質であること等、その処理方法の確立は大きな課題となっております。県当局は、この課題を解決するため発想を大ぎく転換して産業廃棄物としてではなく、社会的有用物、すなわち有機質肥料として再利用の方向で汚泥の処理を実施されるということであるが、賢明な方法だと思います。結局、再利用以外に永続的な処理方法の道はあり得ないと考えるからであります。現在の汚泥処理の経費は、ただ捨てるだけですから1トン当たり5000円しかかかりませんが、肥料として製造する場合、約2倍の1万円前後の処理費が必要だということです。経費は高くついても、下水道事業の円滑な運営と農業振興に資するということであれば一挙両得ではないか。何にもちゅうちょすることはありません。次年度から早速下水道汚泥の肥料化を実施していただきたい。
 そこで知事及び関係部長に以下質問したいと思います。
 まず、西銘知事には、昭和59年度の重点施策の中で下水道汚泥の肥料化を進めると言っておられるが、御所見をお伺いしておきたいと思います。
 次に、久高土木建築部長には主管部長としてたくさんの質問を準備しておりますが、意欲的に取り組んでおられると聞いておりますので今回は3点にしぽって質問したいと思います。
 第1点は、汚泥の農地還元を阻む大きな要因は水銀の含有量が高いことだと言われているが、流入源と見られている事業者等に対しこれまでどのような行政指導をしてきたか、また今後の取り組みについてもあわせてお聞きしておきたい。
 第2点は、重金属の濃度を逓減させるため努力していると聞いているが、その進捗状況はどうなっているでしょうか。
 第3点として、汚泥を肥料化する場合、その財源確保はどのように考えているか。また他県でも汚泥の肥料化を実施している所が多いと聞いておりますが、処分の実施状況等はどうなっているかあわせて御答弁いただきたいと思います。
 最後に、喜久山農林水産部長にお聞きしますが、次年度から汚泥の肥料製造が開始された場合、使う側としてどのような作物にどの程度の量を施すかという施肥基準等を作成する必要があると思いますが、受け入れ準備はどうか。また製造された肥料が需要者である農家の手に届くまでの流通経路をどう考えているか。さらに農業サイドは受益者になりますので、農業振興にどう寄与するかについても所見を伺っておきたいと思います。
 以上、知事及び関係部長の明快な御答弁を願いたいと思います。
 終わります。
○議長(大田昌知君) 西銘知事。
   〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 瀬良垣議員の御質問に対しましてお答えいたします。
 汚泥の肥料化についての御質問でございますが、御案内のとおり沖縄の土壌と本土の土壌を比較いたしてみた場合、その有機質分が本土の土壌の半分でございまして、戦後この方、緑肥・堆厩肥の奨励等何としても有機質分をふやさなきゃならぬということでいろいろ施策を展開しているところであります。そしてこの作物別の土壌別の施肥、どれだけ肥料をやったらいいか肥料の量、そういう施肥の基準等についても今日まで農業試験場においていろいろ研究されているわけでございますが、まだりっぱな成果を見ておりませんことは残念なことだと思っております。したがいまして金肥肥効逓減の原則というのがございまして、土壌における有機質分が少ないと金肥を幾ら入れても肥料がききませんので、ある程度土壌の生産力を保持する上からも有機質分というのは土壌にとって大変大事なものでございます。前の議会におきましても友利議員から御指摘がございましたが、そういう点においてこの汚泥は窒素、燐酸等の有機質分を多量に含んでおりますので、これの肥料化については全力を挙げて取り組んでいきたいとかように考えているところであります。
 あとはそれぞれの部長から答弁させることにいたします。
○議長(大田昌知君) 土木建築部長。
   〔土木建築部長 久高将栄君登壇〕
○土木建築部長(久高将栄君) 下水道汚泥の肥料化につきまして3点の御質問がございますが、お答えを申し上げます。
 まず1点目でございますが、水銀の流入源であります各事業者にどのように行政指導し、そして今後どのように取り組みをするかという御質問でございますが、県は、公共下水道管理者であります市町村に対しまして、工場または事業場等の特定施設から下水を排出して公共下水道を利用する者につぎましては、その水質が下水道法に基づく基準に適合するよう除害施設を設置することにつきまして強く指導助言をしてきたところでございます。現在、その結果、特定施設につきましてはほとんど設置済みとなってございます。さらに一般事業者に対しましては市町村に条例を制定させ、それに基づきまして下水道に流出する水質の確保を図れるよう指導助言を行ってきたところでございまして、大部分の市町村が条例はすでに制定をされているところでございます。
 次に、含有水銀を逓減するための取り組み、この取り組みにつきましては1点目の御質問の取り組みとあわせてお答えを申し上げます。
 汚泥を有効利用するには、汚泥中のいわゆる含有水銀を2ppm以下まで逓減する必要がございまして、このためには水銀の除害施設基準を他府県の実施例等を調査の上策定作業を進めてまいっておりましたが、その設置基準がこのほどでき上がりまして、近く関係市町村並びに関係部局とも共同いたしまして設置方について各事業者に強力にその設置を呼びかけるようにいたしております。それによりまして含有水銀の濃度の逓減が十分に図れるんじゃないかとかように考えているところでございます。
 最後の3点目の肥料化に向けての財源並びに他府県の状況についてお答えを申し上げます。
 まず最初に、各県の状況から申し上げますと、各県の汚泥処分状況を調べてみますと、埋め立て処分が72%、それから海洋投棄が8%、緑地、農地還元が16%、その他4%という状況になっております。本県の汚泥を長期的かつ安定的に処分するためには緑農地への還元が最も有効な方法だと考えております。そこで現在関係部局であらゆる面から技術的な問題、あるいは財源等も含めて検討を進めているところでございまして、汚泥の有効利用の早期実現に向けまして今後積極的に取り組んでまいりたいとかように考えているところでございます。
 以上であります。
○議長(大田昌知君) 農林水産部長。
   〔農林水産部長 喜久山盛忠君登壇〕
○農林水産部長(喜久山盛忠君) 下水道汚泥の肥料化が実施されます段階におきましては、その施用に必要な指導指針を作成する必要がありまして、現在専門の職員に検討させているところでございます。この汚泥肥料につきましては酸性土壌の中和力が非常に高い。そのために中部の一部や南北大東、さらに大きな面積を有しますところの北部を中心とする国頭マージ土壌地域、こういう地域への施用を促進したい。対象といたします作物につきましてはサトウキビ、施用量につきましては10アール当たりおおむね1トンから1.5トン。また販売に当たりましては肥料取締法に定めるいわゆる特殊肥料としての届け出が必要でございますけれども、こういう届け出が出されたものを各農協を通じまして販売するよう販売ルートの確保にも努めたい。
 汚泥肥料に関する所見でございますけれども、下水道汚泥は大変すぐれた有機質肥料でありまして、資源の有効利用上、そのまま産業廃棄物として捨ててしまうのは実に惜しいとかように思っております。肥料化の実施に当たりましては利用する側としての受け入れ体制を整えますとともに、地力の維持増進を通じまして農業振興に大いに役立てていきたいとかように思っております。
○議長(大田昌知君) 伊良皆高吉君。
   〔伊良皆高吉君登壇〕
○伊良皆高吉君 質問の前に、先日、たつまきの被害に遭われた伊是名村並びに台風10号の被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧を願って質問に入ります。
 まず、離島における水産物の流通についてであります。
 本県は、昭和55年6月定例議会でも離島振興、特に水産振興の立場から本員が取り上げたものでありますが、いまなお本島と離島との漁業者の流通経費負担と所得格差は大きく、離島であるための不利性が解消されていないことから改めて質問をいたす次第であります。
 県においては、昭和55年度より沖縄県漁業振興基金で離島からの水産物流通対策として400万円の予算措置をし地域漁業の保護育成に努力され、その実績も年々高まり離島の漁業関係者に大変喜ばれておりますが、現在のところ補助対象魚種が多獲性魚だけに限られているためにその恩恵が全く受けられない離島もあります。このような状況においては、水産振興並びに離島における経済の自立的発展の可能性を生かし切れないと言っても過言ではありません。
 そこで質問でありますが、多獲性魚種漁業の不可能な離島では補助対象魚種を新たにふやす等の措置により離島における水産物流通の対策を拡充される考えはないかお伺いいたします。
 次に、農業基盤整備事業についてであります。
 一昔、天を仰いで雨のみに頼っていた本県の雨ごい農業も、国、県の力強い指導と援助によって進められております農業基盤整備事業により農家の意識も高まり、ようやく現代的な農業へと脱却してきました。特に去る5月より90日余も続いた先島地方の干ばつ時においては水の大切さ、灌漑施設の重要さ、つまり農業基盤整備事業の必要性を強く感じたものであります。
 ちなみに八重山で去る干ばつ時に灌漑施設のない畑地への灌漑のため御協力くださった地元農協あるいは自治体を初め八重山支庁、県土木事務所、農林土木事務所、宮良川土地改良事業所、それから国営宮良川水利事業所並びに地元の土木建築関係者の方々に対して深甚の意を表するものであります。このようにサトウキビを初め多くの農作物に甚大な被害を出した大干ばつもまたいつやってくるかわかりません。もとより補助整備事業並びに灌概事業は、通常時においても農作物に十分な水を与えて良質かつ生産性の高い計画的な農業が営まれることが目的であり、したがって農業基盤整備事業が計画どおりに遂行できるかどうかは、本県農業の確立及び本県経済の自立的発展の上からもきわめて重要なことであります。
 そこでお伺いいたしますが、厳しい国の財政状況にあって農業基盤整備事業が当初計画どおりに事業執行が可能かどうか。
 2番目に、本県では水資源確保が容易でない島々、たとえば竹富町の波照間島や黒島のような島々がありますが、このような島々はどのようにされるのか。ちなみに黒島においてはサンゴ石灰石に覆われた平たんな島であり、そのほとんどが肉用牛の放牧地として利用され、現在1650頭余の肉用牛を飼って生計を営んでおりますが、表土も浅く地下水が全くない状態であります。そのため干ばつ常襲地帯となっております。今後、安定した畜産振興を図るためにどのような草地造成や施設を計画していかれるのかお伺いをいたします。
 次に、パインの問題についてであります。
 本県のパインは、本県農業の基幹作物としてサトウキビと並んで本県経済に大きな役割りを果たしてきたことは御案内のとおりでありますが、これまで冷凍パインや外国産パインかん詰めの攻勢による危機や市況悪化による危機と、幾度となく危機を体験してまいりました。このたびアメリカからのパインかん詰め及び果汁の輸入自由化を迫られ、本県パイン産業の今後が継続できるかどうか重大な岐路に立たされております。知事は9月30日、城間議員の質問に対して、今回のパインの輸入自由化は阻止できる見通しであると答弁されましたが、パインが輸入自由化が阻止できれば大変喜ばしいことであり、パイン関係者を初め多くの県民も安堵したことと思います。
 しかしそのことはパイン問題の真の解決ではないと思うのであります。日本に対する外国からの貿易自由化のための圧力は今後ともますます強まることは十分に予想されることであり、したがって本県パイン問題の真の解決とは、輸入自由化の中でも十分外国産と戦っていけるだけの足腰の強い産業に育てることであります。
 では本県パイン産業が外国と戦っていけるかどうかということでありますが、本員は戦っていけると判断しております。現在、本県産パインかん詰めが外国製品に対してどうしても戦って勝てないという理由は、1かん当たり、問屋仕入れ価格で約25円高いこと。つまり本県産パインはもうけが1かん当たり、グローバルよりも25円少ないということが原因であります。ちなみに本県と外国のパイン原料並びに製造コストを比較してみますと、本県が約5倍も高くなっております。品質においては、先日東京で行われましたかん詰め品評会の開かん検査で県産パインかん詰めはグローバルよりもすぐれていることが認められておりますので、1かん当たりの製造コストを25円以上引き下げることができればそれは十分可能となります。製造コストを25円下げることが可能であるかということについては、現在本県パイン収穫量は平均反当たり2.7トンでありますけれども、成績のよい生産者は1反当たり6トンから7トンもの収穫をしております。今後品質の改良や肥培管理、栽倍技術の改善と努力によって反当たりの収穫を高めること。パッカー側においては、本員の調査によれば、昭和55年度の調査で借入金の利息や倉庫料等で約8円の余剰コストが加わっておること。また工場の稼働率が著しく低く、そのためによるコスト高もかなりあります。合わせて10数円もコスト高となっております。3番目に、流通面では工場が分散しているための資材やあるいは製品の輸送ロットが小さく、そのためのコストもかなり高くなっております。したがいまして生産者、パッカー側、流通、おのおのがその分野で努力し、やるべきことは速やかにやる。特にパッカー側の統合を図って生産性を高めることは前提条件であると考えます。さらにパイン産業を今後足腰の強いものに育てるために産地の指定を初め作付面積の割り当て等を行うなど、以上提言を含めて申し上げましたが、今後の施策とパインかん詰めの輸入自由化阻止の見通しについて、いま一度確認のために知事にお伺いをいたしたいと思います。
 次に、新石垣空港の整備促進についてであります。
 石垣空港では、昭和49年ごろより急増した旅客の需要に対応するため、昭和54年5月から暫定空港としてボーイング737型機がエンジンの換装あるいは滑走路にグリーピングをするなど、ほか数多い条件つきの上で就航しているものでありますけれども、滑走路の短いことから起こる事故が2度ありました。そのため地元では、その安全性の確保のためにも一日も早い新石垣空港の整備促進を望む声が高まっております。
 去る9月19日、南西航空、那覇発石垣行き621便ボーイング737型機がフラップ故障のため石垣空港に着陸することができず、滑走路の長い宮古空港に着陸いたしました。幸い、過去2度の事故とも人身にかかわる事故ではなかったが、またいつ事故が発生するか利用者はいつも気が気でなりません。地元の利用者は、ほとんどのものが石垣空港着陸時の際は心配して窓から滑走路の距離標識を注意深く数えて、飛行機がとまったときに滑走路にあと何メートル残されているか絶えず心配して注意深く外をながめているのが実情でございます。また昭和58年度の8月までの同空港の利用客は、前年度比約2万人の減少であるとマスコミは報じております。そのことは2次振計の柱である観光振興にも大きく影響してきます。それらの問題を解決するためには、どうしても将来大型機や本土直行便の就航によって航空運賃の低減と旅行者のための利便性を確保することが必要であります。また物資の輸送コストの低減を図ることにより、地域の振興及び地域経済に活性化をもたらすことは明白であります。地元白保では一部の反対者が空港の建設に反対をしておりますが、同じ地元白保でも多くの住民が地域振興のためにも、県は新石垣空港整備促進に対してもっと積極的に取り組むべきであるとの声も多いのでございます。今後の見通しについてお伺いいたします。
 次に、移住政策についてお伺いいたします。
 まずこのたび、県がアルゼンチンヘの移住計画を断念したことに対し適切な判断であり、勇気ある決定であったと高く評価をいたすものであります。移民を送り出す場合、送り出される移住者の側に立って物事を判断し、その時点で最もベターな措置をすることが責任ある者として最も大切なことと思うからでございます。
 次に、私見を述べながら中北米を回ってまいりましたときの状況を県人会の方々との話し合い等も交じえて御報告並びに所見を述べたいと思いますが、まず中北米に行かれた県人のすべてが勤勉で高く評価されており、中には成功者も少なくありませんでした。ところがやはりふるさとを遠く離れて母県、母国といつまでも強いつながりを長く持っていたいという念願と、それから一日も早くその地で定着したいと、安定した生活を送りたいということが多くの人の声でございました。
 そこで質問になりますが、移住者が定着、安定するための援護策について県はどのように考えておられるか。
 2点目に、移住地における流通機構の整備のための資金援助等はできないか。これはどういうことかと申しますと、たとえばチャイナタウンを例にとってみますと、チャイナタウンはどの地でも中国の方々が経済的にも安定し、あるいは地域社会でもいろいろな面で活躍をしているところでございます。いまチャイナタウンの特徴は、みんなで資金を出し合う、あるいはまず資金力をもとにしてこの地域社会と経済的に結びついていくというのが一番の特徴でございますが、沖縄から行かれる移民の方々は経済的なつながりというよりも、物を作るということだけに専念して、売って金にかえるという点では二次、三次的なことのように考えられているのじゃないかと思います。そのことが経済的にも地域で安定するという点でおくれていると思いますので、その点をこういう形で申し上げたわけでございますが、たとえばアルバータ州に玉城さんという方がおられました。直接お会いすることはできなかったんですが、北米、西海岸では屈指の流通王といいますか、流通問屋で非常に成功しておられる方であると。こういった方々のお力をおかりして県人に売れる商品をどんどんつくってもらうというふうなこととか、あるいはこのようにお力をかりることのできない遠い地域では県の方から援助をして販売ルートと直接結びつけていくような経済機構をつくってあげるという点での援助をすることが大変波及効果も大きいというふうに思うのでございます。ちなみにメキシコでは日本会館等をつくって、九州の各県の方々との連携で非常にすばらしいといいますか、安定した生活のできる状態をつくりあげているということも印象に残りました。
 次に、移住者と母県とのつながり、すなわちきずなを継続するための施策についての県の考え方をお伺いしたいと思います。これはさきに仲原議員からの質問にもありましたが、留学生の受け入れを今後とも続けてもらいたいし、なお人員の枠を広げてほしいと同時に、年数も延ばしてほしいというふうな希望でございました。
 次に、非常にこの沖縄県人の移住者の最も悩みといいますか、最も注意しなければならないと思う点に触れてみたいと思います。
 実は、ある人にカナダで会ったんでございますが、彼がアメリカに来てみると言葉が余り通じないので極力言葉を使わない所で仕事をしてしまう。たとえば農場に行くとかあるいは機械のオペレーターに取り組むと。そのためにますます島の言葉を忘れ、日本語を忘れる、ところが英語を覚えることができない。ますます人と会うことがこわくなってしまう。そういった状況で第1世の方々はほとんどただ苦渋に耐えて、あるいはさびしい思いに耐えて第2世が学校とかあるいは地域社会に出て友達をつくってちょっと枠を広げる。第3世は本当にその国の人となっていくという形で、いま第1世は本当に犠牲といいますか、そういった形になっているような気がいたしました。今後移住者を送り出すときに第1世からでもその地の人として、国民として十分に活躍していけるような形での援護、施策が必要じゃないかというふうに思いました。
 以上、提言をあわせて申し述べましたが、知事の御所見を賜りたいと思います。
 終わります。
○議長(大田昌知君) 西銘知事。
   〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 伊良皆議員の御質問に対しましてお答えいたします。
 まず、パインの問題でございますが、城間さんの御質問に答えたのでありますが、これは自由化はやらない、枠拡大はやらないということではございません。去る7月の1日にアメリカが13品目についてガット違反だということで提訴をいたしておるのは御案内のとおりでございまして、そういうことで全国知事会が開催されましたときに、金子農林大臣に対しまして、特にパインが自由化されるというと沖縄農業にとっては大変な打撃を与えるので自由化と枠拡大については特段の御配慮をいただきたいということを強く要請したのであります。これに対しまして、自由化の問題については金子大臣からは一言もなかったのでございますが、特に枠拡大について明確な答弁がありました。沖縄のパインは北部、八重山地区の酸性土壌にできる代替作目のないものであるから、したがって枠拡大については絶対やらないと明確な答弁を受けているわけでございます。したがいまして自由化・枠拡大の問題が見通しがついたと、阻止できるということではないのでございますので御理解を賜りたいと思います。
 かん詰めについて、外国産かん詰めと十分競争できるという御提言でございますが、大変むずかしい問題でございます。まず圃場における努力の点から申し上げますというと、外国産品と比較いたしまして反収がまだまだ足りないということ。品種の改良等についてもこれから改善しなければならない問題等があるということ。それだけではなくして、一番かん詰めの大きなネックになっておりますることは生果代が非常に高い。外国産におきましては人件費が安いということで、その点から生果代が安くなっておりまするし、かん詰めの製造代金がそれだけ安くなっているわけでございまして、流通の問題についてもまだまだ改善をしなければならない問題があるわけであります。したがいましてこれら諸般の情勢からいたしましてできるだけ農林省、また関係省庁に対しましては、かん詰めについては琉球産を優先消化して、その後外国物を輸入してもらいたい。そういうことで国産の優先消化というものを原則としてやっていただきたいということを今日まで要請いたしておるのであります。御案内のとおりこれまでもいろんな形でパイン産業に対して助成をやっているわけでございますが、この問題についてはなお引き続いて助成の方策についてこれを堅持して、ずっと継続してやっていかなければならないとかように考えておるところであります。
 次に、移住政策についての御質問に対しましてお答えいたします。
 海外移住政策は、自己の発意と責任のもとに海外において自己の能力を一層発揮しようとする者に新たな可能性を与えるという意味で側面から個人の幸福追求の道を指導し助成するものであると考えております。県は、移住者の主体性を損なわないよう各種の指導、援助を通じて移住者の自助努力を促し、移住者が速やかに受け入れ国の体制に融合し、生活の基盤を確立するよう指導いたしておるところであります。また移住者に対する援助は受け入れ国によっては好まない場合もございますので、外務省の指導助言を得ながら、移住者の自立心を損なわないよう十分配慮しつつ側面から適切な援護策を推進していく考えであります。
 移住地における流通機構の整備のための資金援助はできないかということでございますが、移住地における農産物等の流通機構の整備に対する資金援助の問題につきましては貴重な御意見としてこれを受けとめ、今後検討してまいりたいと思います。
 次に、移住者と母県とのつながり、きずなを継続するための施策について県の考え方を申し上げます。
 移住者及びその子弟が、受け入れ国において高い評価を受けることは母県、母国と移住先国との友好親善に寄与するものであります。またこのことがひいては移住者と母県とのつながり、きずなを強化することにつながるものであると考えております。このような観点から、県は海外県人会等との連携を密にいたしまして、移住者子弟留学生の受け入れ、海外技術研修員の受け入れ、郷土新聞の海外県人会への送付、県広報誌の送付、県人会活動費の助成、移住記念式典への参加、郷土訪問団の受け入れ等々各種事業を実施しているところでありますが、今後とも各種の交流事業を積極的に推進することによりまして移住者とのつなが
り、きずなをより一層強化してまいりたいと考えております。
 農林関係、水産関係についても質問がございましたが、それぞれ担当の部長から答弁させることにいたします。
○議長(大田昌知君) 農林水産部長。
   〔農林水産部長 喜久山盛忠君登壇〕
○農林水産部長(喜久山盛忠君) 離島におきますところの水産物の流通対策でございますけれども、タカサゴ、いわゆるグルクン、トビウオ等の多獲性魚類以外を対象に漁業を営む離島におきます流通対策は、まず流通コストをカバーする量に見合う生産を確立しなければならないのではないか。そして採算性の高い魚種を対象といたしました漁業の振興が必要でございます。そのために当面漁業技術の改良普及指導を強化しながら、現地におぎます漁業生産の向上にあわせまして、冷蔵庫等の流通施設を整備いたしまして円滑な流通を図ってまいりたい。
 国の財政が厳しい状況にあるけれども、基盤整備は予定どおり進められるかということに対しまして、確かに厳しい時期ではありますけれども、これまでの予算につきましては、たとえば昭和58年度予算の対前年比に対する伸び率を見ますというと全国が0%でございまして、それに対しまして沖縄県は5.8%と配慮されております。引き続き昭和59年度予算につきましても確保されますように強く要請をしているところでございます。
 波照間島におきます農業用水の確保につきましては、自然条件上大変厳しい状況にございますけれども、去る干ばつにおきましてはコーラルをとった、いわゆる土取り場跡の溜水を緊急的に利用してございます。恒久対策といたしましては現在進めております圃場整備約430ヘクタールと関連いたしまして地表水、地下水、湧水を土取り場跡に貯水し利用する方法が考えられますけれども、地主と相談をしながら、当局とも相談をしながらその実現に向けて話し合いを進めてまいりたい。
 干ばつ常襲地帯となっている黒島の関係でございますけれども、黒島におきます肉用牛経営につぎましては、立地条件からいたしまして放牧形態以外にはないのではないかとかように考えておりますけれども、これまで82ヘクタールの造成、さらに58、59にかけまして飼料基盤の整備を50ヘクタールほど、さらに62年度までの計画で畜産基地建設事業によりまして草地造成、畜舎、機械等の施設整備を進める予定でございます。干ばつの被害を軽減いたしまして、粗飼料を年間を通して安定的に供給いたしますためには干ばつに強い草の普及とそのための採草地の造成、さらにまた乾草庫の整備が必要でございますけれども、目下草の種類、いわゆる品種につきましては現地試験を行っているところでございますが、今後とも採草地の造成、粗飼料貯蔵施設につきましては地元と調整を図ってまいりたい。
○議長(大田昌知君) 土木建築部長。
   〔土木建築部長 久高将栄君登壇〕
○土木建築部長(久高将栄君) 新石垣空港の整備促進につきましてお答えを申し上げます。
 新石垣空港整備事業につきましては、57年3月の設置許可以来、実施設計あるいは用地買収及び漁業補償等につきまして推進をしてまいったところでございますが、漁業補償につきましては漁業組合及び市当局の御理解と御協力によりまして先般合意に達したところでございます。しかしながら一部用地買収につきましては補償額の面で若干折り合いがつきませんで、いまだに難航している状況でございますが、今後とも引き続き話し合いを続けておりますので早期妥結に向けて努めてまいりたいとこのように考えております。
 建設工事につきましては、59年度から予定どおり着工する計画でございまして、当初計画どおり整備を図ってまいりたいとこのように考えております。
 以上でございます。
○議長(大田昌知君) 以上をもって通告による一般質問及び議案に対する質疑は終わりました。
 これをもって質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。
 決算については、9月16日の議会運営委員会において、15人から成る決算特別委員会を設置して審議することに意見の一致を見ております。
 よって、ただいまの議題のうち、認定第1号から認定第3号までについては、15人の委員をもって構成する決算特別委員会を設置し、これに付託の上審査することにいたしたいと思います。
 これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(大田昌知君) 御異議なしと認めます。
 よって、さよう決定いたしました。
○議長(大田昌知君) 次に、お諮りいたします。
 ただいま設置されました決算特別委員会の委員の選任については、委員会条例第5条第1項の規定により
   伊集 盛元君   我那覇祥義君
   崎浜 秀三君   桑江  良逢君
   照屋 忠英君   瀬良垣守正君
   村山 盛信君   仲原  英典君
   新垣 秀吉君   与那嶺光雄君
   崎浜 盛永君   上原亀一郎君
   赤嶺 幸信君   渡名喜藤子君
 及び上江洲トシ君
を指名いたしたいと思います。
 これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(大田昌知君) 御異議なしと認めます。
 よって、決算特別委員会の委員は、ただいま指名いたしましたとおり選任することに決定いたしました。
 休憩いたします。
   午前11時  休憩
   午前11時1分再開
○議長(大田昌知君) 再開いたします。
 ただいま決算特別委員会に付託されました決算を除く、甲第1号議案から甲第4号議案まで及び乙第1号議案から乙第8号議案までについては、お手元に配付してあります議案付託表のとおりそれぞれ所管の常任委員会に付託いたします。
○議長(大田昌知君) 休憩いたします。
   午前11時2分休憩
   午前11時3分再開
○議長(大田昌知君) 再開いたします。
 日程第3 陳情第188号、第189号及び第191号の2の付託の件を議題といたします。
 お諮りいたします。
 ただいまの陳情3件につきましては、米軍基地関係特別委員会に付託の上審査することにいたしたいと思います。
 これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(大田昌知君) 御異議なしと認めます。
 よって、ただいまの陳情3件につきましては、米軍基地関係特別委員会に付託の上審査することに決定いたしました。
○議長(大田昌知君) この際、お諮りいたします。
 委員会審査及び議案整理のため、明10月4日から10日までの7日間休会といたしたいと思います。
 これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(大田昌知君) 御異議なしと認めます。
 よって、明10月4日から10日までの7日間休会とすることに決定いたしました。
○議長(大田昌知君) 以上で本日の日程は全部終了いたしました。
 次会は、10月11日定刻より会議を開きます。
 議事日程は、追って通知いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
   午前11時5分散会

 
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