平成12年(2000年) 第 4回 沖縄県議会(定例会)
第 3号 12月 8日
宮里 政秋
 

 質問に入る前に稲嶺知事に要望しておきたいと思います。
 昨日、前島議員が留学内定取り消しの問題を取り上げました。私も全く同感であります。
 不登校を克服して学業に専念し上位の成績をおさめ、英語検定準2級の資格を取得した女子生徒であります。過去の不登校を理由に合格内定を取り消すことは、全く教育的配慮に欠けるものと言わなければなりません。
 「女生徒の母親は「内定通知を受けた時、娘はこれまで育ててきた中で一番の喜びの表情をしていた。一方的な内定取り消しの通知を見て、私も夫も娘と一緒に泣いた。今すぐに内定取り消しを撤回してほしい」と涙ながらに訴えていた。」、このように報道されています。この女子生徒の希望がかなえられるよう、稲嶺知事の教育的配慮を強く求めるものであります。
 通告に基づいて質問をいたします。
 まず最初に、花卉栽培農家支援についてであります。
 我が党県議団は、北部のラン栽培の生産農家の皆さんと懇談し現地調査を行いました。
 そこで、次のような訴えがありました。
 ランの年間の生産量は沖縄が145万4000本に対し、タイは1527万7000本、沖縄のランの単価が125円に対し、タイの単価は48円で安く、とても太刀打ちできません。借金は平均して5000万円で、中には1億円の借金でついに自殺者も出ました。農協の取り立てに追われ仕事が手につかない。農協は延滞利息と遅延損害金を元本に充当するため、借金は雪だるま式にふえていきます。経営の見通しが立つまで農協の債務取り立ては猶予してほしい。その間は延滞利息と遅延損害金を元本に充当することは中止してもらいたい。私たちのこの苦境を市や県は知ってほしい。北部振興策で園芸農家を救ってほしいと深刻な訴えがなされました。
 沖縄の花卉産業は、本土市場においても高く評価され、1998年度は160億円の売り上げとなり、さとうきびに次ぐ農作物として将来が期待されていたのであります。ところがタイから安い切り花が大量に輸入されるため、沖縄の生産農家は苦境に立たされています。
 専門家は、ランについても競争相手は東南アジアで、労務費の安い東南アジアや中国で技術革新が進めば、今後より一層輸入作物が押し寄せてくることが予想され、したがって沖縄農業は視野を広げてアジアや世界に向けた販売システムを構築しながら、その上で技術革新を図り品質と価格の面で勝ち抜ける体質をつくる必要があると指摘しています。
 そこで質問いたします。
 1点目、野菜は価格安定対策がとられています。ラン栽培の農家にも価格安定対策がとられるべきだと思うがどうか。
 2点目に、営農資金の活用で生産農家の保護を図ってもらいたい。
 3点目に、農業経営が軌道に乗るまで農協の債権取り立ての中止と延滞利息及び遅延損害金の元本への充当を中止できないか、農協に対する県の指導を求めるものであります。
 亜熱帯総合研究所の大城喜信氏は、昨今の沖縄農業は高齢化や後継者不足、さとうきびの収穫放棄等の内的問題のほか、国内における産地間競争や海外からの安い農産物輸入攻撃などの外的問題を抱え生産は低迷し、前途に明るい展望が見えなくなっていると指摘しています。
 生産コストが安い海外からの輸入の急増は、国内農産物の価格の暴落の大きな原因の一つとなっています。自由化は県内産の価格暴落を招き、産地においては産地廃業を余儀なくされています。このまま輸入農産物の増加が続けば国内・県内農業は衰退どころか壊滅せざるを得ない危機的な状況に瀕しています。
 そこで4点目に質問いたします。農産物の輸入制限を政府に求めるべきだと思うがどうか。
 知事にも御質問いたします。
 花卉栽培農家との懇談で、北部振興策で園芸農家を救ってほしいと切実な訴えがなされました。沖縄振興策と基地をリンクさせ、県外からの企業誘致を主張されておりますが、地元の産業経済への支援こそ最善の振興策だと考えますが、知事、いかがでしょう。
 次に、赤土防止対策について伺います。
 近年、諸開発に伴う赤土等の流出はサンゴ礁の美しい海や河川を汚染し、そこに生息する生き物たちの営みに深刻な影響を与え、また自然と私たちとのかけがえのない交流の場を損ないつつあります。
 世界遺産委員会は30日、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が世界遺産に登録されました。東アジアや東南アジアと交易し独自の文化を築いた先人たちの足跡が世界共通の後世に残すべき宝として認められたことは、沖縄の宝が世界の宝として認められたことであり喜びにたえません。先人たちが残した遺業に学んで、我が県の恵まれた美しいサンゴの海も人類共通の遺産として子孫に引き継がなければなりません。
 11月15日の地元新聞は、「赤土汚染 石垣全域に広がる」と深刻な事態を報道しました。石垣島の周りはどこも赤土だらけ、これは石垣市の市民グループが9月下旬から10月末までに実施した赤土汚染調査で、石垣全域の沿岸部に赤土が堆積している実態が判明したものであります。民間によるこのような大規模な調査は初めてと言われています。
 汚染の状況は、県衛生環境研究所がこれまで調査した結果と一致したと報じられています。比較的きれいなところでもかきまぜると汚れがわかるランク3で、河口域を中心に一見して汚れがわかるランク6、さらにひどいランク7が広がっている。牧場しかない北部の平久保半島東海岸や観光名所として有名な川平湾内もランク5で、観光にも影響を与えかねないと警告を発しています。
 農地約2000平方メートルの工事中に136ミリの大雨が降り、大量の赤土が川平湾に流れ出したものでした。工事に伴って沢が一部せきとめられたような状態になったところに大雨が降り、あふれた水が畑や道路の土を押し流したと言われています。
 我が党は、赤土防止対策の実態調査のため北部の名護市の農地改良地を組合長の案内で調査いたしました。砂防ダムや沈砂池などがつくられ、赤土流出防止に役立っているとの説明を受けました。組合長の説明では、土地改良事業として実施しているところは県の指導のもとに砂防ダムや沈砂池等が敷設されて赤土流出を防止することができている。ところが、平成5年以前に実施された農地改良は勾配が高く沈砂池もつくられているが、赤土流出防止対策としては十分な効果を上げていないとのことでした。
 赤土流出防止で一番問題なのは、農地改良のされていない一般の農耕地からの赤土流出が問題だという指摘を受けました。県の調査でも同様なことが指摘されています。
 これによると、農地からの赤土流出量の割合は66.4%と最も高くなっています。これは収穫時に農耕地は裸地状態となり、そこに大雨が降ると赤土が流出してしまうということでした。
 そこで質問いたします。
 第1点目は、全国一律の流出抑制対策では効果が十分でないことが明らかとなっています。よって、平成5年以前に実施した農地改良は勾配や沈砂池の改善が必要であります。どのように対処されるのか。
 2点目に、一般の農耕地からの赤土流出を防止するために沈砂池や砂防ダムを設置すべきだと思うがどうか。その際、用地取得は県が買収すべきだと思うがどうでしょうか。
 第3点目に、赤土流出の人為的要因として農地、開発事業、米軍基地、これからの流出量が圧倒的に多く、俗に「三大流出源」と呼ばれています。県が出した赤土等年間流出量によると、開発事業による赤土流出量は19.8%、農地は66.4%、米軍基地は11%となっています。特に米軍基地からの赤土流出は、実弾演習が廃止されたとしても演習によってはげ山にされ赤土がむき出しの状態で放置されています。
 防衛施設局に対してどのような対策をとらせているのか、お伺いいたします。
 次に、電波障害について。
 小禄の具志に設置されている運輸省の監視レーダーから怪音が発信され、付近住民の安眠を妨害しており、怪音の即時中止をしてほしいとの要望が出されました。実態調査して緊急にしかるべき措置をとるよう要請しておきましたが、どのように対処されましたか、お伺いいたします。
 松くい虫の被害をどう防ぐかについて質問いたします。

 松は、林業的に重要であるばかりでなく、農地や住宅を台風や潮害から保護し、盆栽として古来より日本国民に最も親しまれてきた樹木であります。名勝地の松などは何とか保存して子孫に伝えたい、みんなの願いではないでしょうか。
 ヤンバルに調査に行く途中、松くい虫で枯れた松が至るところで見られ、その被害状況はまさに蔓延の状況で心が痛む思いでした。県は毎年防除対策として予算化して取り組んでおられますが、効果が余り見られません。
 そこで、次のことについて伺います。
 防除区域を設定しているのか、予防対策はどうか、駆除対策はどうか。
 特に銘木と言われる久米島の五枝の松、伊平屋の念頭平松、今帰仁の琉球松の並木道等は特別の防除対策がとられているようだが、対策は万全か。松くい虫の生態系に合った抜本的な対策はあるのか、伺いたい。
 最後に、我が党の代表質問に関連してお伺いいたします。
 我が党の新垣米子議員の代表質問で基地問題を取り上げました。私は関連して15年問題と地位協定の見直しについて伺います。
 まず、地位協定の見直しですが、さきに稲嶺知事が先頭になって政府各省庁に地位協定の見直しを要請されました。知事の御努力を評価したいと思います。
 ところで、県内53市町村議会で地位協定の見直しに関する意見書の採択をしたのは那覇市、石川市、具志川市、宜野湾市、平良市、浦添市、名護市、糸満市、沖縄市、北中城村、嘉手納町、北谷町、読谷村の13市町村にとどまっています。すべての市町村で見直しの決議をして全国の市町村及び都道府県で決議させ、世論を喚起する必要があります。
 知事も御存じのように、地位協定の本質を端的に言えば我が国の主権を侵害し、国民の基本的人権の制限の上に成り立っているもので、米軍人・軍属に治外法権的特権を保障したまさに屈辱的な不平等条約であります。12月議会で全県で決議されるよう知事の特段の努力を求めるものであります。知事の御所見を伺います。
 次に、15年問題について伺います。
 ことし10月に発表されたアメリカ国防大学国家戦略研究所の特別報告で、民主、共和両党の外交・軍事の中枢的専門家が共同して日本に集団的自衛権を公然と採用することを要求しています。これは日本が戦争法を発動して米軍の軍事行動に参戦する場合に、日米軍事同盟を前線での戦闘行動にまで共同で行うというものであります。これは、国際紛争を解決する手段としての武力の行使は、これを永久に放棄するとうたった我が日本国憲法の精神を真っ向から踏みにじるものであります。
 名護の新基地建設は、まさにガイドラインの先取りであり、前線での戦闘行動に県民を巻き込むもので事態は重大と言わなければなりません。名護への新基地建設がいかに危険なものであるかはこの報告が教えています。きっぱりと新基地建設を拒否すべきと思いますが、知事の御見解を承りたい。

 
20000403130190