平成14年(2002年) 第 8回 沖縄県議会(定例会)
第 5号 12月20日
宮里 政秋
 

 おはようございます。
 乙第3号議案の修正案に賛成し、乙第3号議案の原案に反対する討論を行います。
 この条例案は、公務員の給与引き下げに伴い、ことし4月以降の給与にさかのぼって差額を期末手当から差し引く減額調整を実施するための給与改正の条例案であります。
 第1に、今回の給与条例改正案は、不利益不遡及の原則に反するものであるということを指摘しなければなりません。
 総務企画委員会における執行部の説明は、改正給与条例施行日以降に支払われる3月分の期末手当で、将来に向かって調整を図るもので不利益遡及ではないとの説明であります。これはまさにごまかしであります。
 減額調整の対象となる給与は、ことしの4月にさかのぼって減額調整をしておきながら、その差額を3月の期末手当から差し引くというものであります。すなわち減額対象を4月以降の給与に遡及しておきながら、差し引くものは将来だから不利益遡及に当たらない、これが執行部の説明です。不利益不遡及の法の原則を全く理解していないものと指摘せざるを得ません。
 第2に、長引く不況、全国一高い失業と倒産、そのもとでの消費の冷え込みが県経済を一層深刻にしています。政府の経済政策の失政で最も犠牲にされているのが沖縄県民です。悪政のツケを公務員に押しつけることは許されません。公務員給与の減額は、消費の冷え込みに拍車をかけるもので県経済に大きな影響を与えるものです。
 第3に、人事委員会は、これまで復帰後、昭和47年11月に第1回の人事委員会勧告を行って以来これまで31回の勧告を行っております。人事委員会の勧告に対して県は、昭和57年に改定を見送っています。昭和58年、昭和59年は勧告の一部実施をしております。あと27回は人勧どおり完全に実施されています。過去には人事委員会の勧告を全く無視したことがあり、一部勧告どおり実施したことが、このことが部長答弁で明らかになりました。
 ちなみに、人事委員会の勧告を尊重する立場を堅持していますが、昭和57年は勧告を見送っております。人勧史上初のマイナス勧告で人勧尊重というのでは納得できません。 
 第4に、減額調整を行う自治体、行わない自治体、他県の状況も明らかにしてほしいとの質問に答えて、減額措置を行うのは25市町村で、国と異なる措置をとっているのが27市町村である。他県では東京都、神奈川県、大阪府は差額調整していませんとの答弁でありました。その最大の理由は不利益不遡及だとの認識に基づいた措置であります。
 第5に、衆参総務委員会の附帯決議の趣旨に反するということであります。
 附帯決議は、「政府は、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、公務員制度改革に当たっては、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限の努力を払うこと。」、このようになっています。立法機関が法改正に当たってこのような附帯決議をしたということ自体、異例の措置と言わなければなりません。
 申すまでもなく、労働者は労働組合を結成して団結する権利、その当然の帰結として団体交渉権、同盟罷業権(ストライキ権)が保障されています。労働者が一定の要求を実現するため団結して罷業権を行使することが労働基本権の中心をなすものであります。
 ところが、公務員労働者からストライキ権が剥奪されています。その代償措置として人事院勧告制度ができました。だから今国会決議が職員団体の意見を十分に聴取すること、理解を得ること、納得を得ること、最大限努力することを強く求めているのであります。
 立法機関がこのように法の施行に当たって附帯決議で注文をつけるのは、何よりも労働基本権の制約下にある職員団体の理解が前提だということと、民間給与との格差是正とはいえ不利益を遡及するものである以上、不利益を受ける職員団体の意見を十分聴取し理解を得るために最大限努力を求めたものであります。理解が得られなければ実施してはならないと解釈するのが相当であります。
 適法に行われた行政行為に瑕疵があればともかく、さかのぼって取り消しはできません。
 よって、乙第3号議案の修正案に賛成し、乙第3号議案の原案に反対する討論を終わります。
 議員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げて討論を終わります。

 
20020805010110