前発言
平成11年(1999年) 第 7回 沖縄県議会(定例会)
第 5号 12月10日
平敷 昌一
次発言
★ここをクリックすると、この日の発言が全て表示されます。★
私は、第三セクターの問題一本に絞って持論を述べ、提言をしながら質問をしたいと思います。
第三セクターについて、私はかねがね問題意識を持っております。
と申しますのも、かつて私が執行部におりますときに海外漁業株式会社という第三セクターがありました。設立の当初は大変好調に推移したものの、円高、魚価の低迷等の外的な要因によって経営が悪化し、ついに休眠状態に陥ったわけです。
そのことについて県議会では、行政責任、政治責任を追及する論議で紛糾し、私の脳死発言がもとで深夜まで空転をするという苦い経験がございます。結局は破産処理になってしまいました。今から考えますと、傷口が浅いうちでよかったとこう思っております。
しかし、県はこれまで第三セクターの経営に関し随分と高い授業料を払ってきたと思います。にもかかわらずその後も全く反省がなく、次々と第三セクターに関与をしてきております。そのことに対し警鐘を鳴らすつもりでこの問題を取り上げてみました。
本論に入ります。
昨今、全国の自治体では民活法やリゾート法にのって急増した開発型、リゾート型の第三セクターの多くが破綻しつつあり大きな問題となっております。そこに共通しているのは、自治体の信用をバックにして少ない資本でありながら多額の借金で大きな事業を行ってきたという構図であります。
さらにまた、自治体は出資のほか融資、補助金の支出、職員の派遣などさまざまな支援を講じてきたわけですが、この間のツケが重くのしかかり多くの第三セクターが破綻状態に陥っていると言われております。
そうした破綻状態の第三セクターに対し、自治体はさらなる融資、補助金の支出をし、つまり税金の投入によって後始末をしようとしているわけですが、経営責任もあいまいなままに税金による処理策が進行しつつあるというわけでございます。
このような状態の第三セクターに対し、今、全国各地でその公共性や公金の支出の公共性を問う住民訴訟や運動が起こっております。
そこで、まず問わなければならないことは、第三セクター事業は自治体が果たして手を出す意味があったのか、すなわち事業に公共性、公益性があったのかという点だと思います。
地方自治体の出資行為は地方自治法によって認められておりますが、公共団体としての出資はあくまで何らかの行政目的の実現を図ろうとするものであり、したがってそこには明確な公共性と公益性が存在しなければならないのは当然であります。
公共性とは、自治体の出資行為が内容的にも手続的にも違法性がないばかりか、議会や住民に十分な公共性の説明がなされ合意のあることが必要であります。
また公益とは、地域社会あるいは地域住民全体の利益という意味でありますが、果たして第三セクター事業が住民全体の利益に関係し、かつ住民の日常生活に不可欠と言えるかどうかであります。
そこで、第三セクターの法的地位について考えてみます。
株式会社形態の第三セクターは、商法に定める通常の手続によって自治体と民間が共同出資をして設立される営利法人であります。自治体とは異なる法人格を持つ団体であります。地方自治法第2条によりますれば、自治体がみずから企業を経営したり収益事業を行うことはできるわけですが、そのような自治体みずからの経済活動は公共事業として行われるものであり、地方自治法や地方公営企業法による法的制約のもとに行われます。
それに対して、第三セクターの事業は法的には自治体の事務・事業としてではなく、営利法人の事業として行われますので、公共事業の場合に適用される地方自治法や地方公営企業法による法的コントロールの及ばないことはもちろんであります。
このように第三セクターの組織及び事業について地方自治法上の規律はなく、法形式上一般の株式会社と同じ地位にあります。しかし、実体的には単なる株式会社とは著しく異なる特色を持っております。それは第三セクターの設立、運営に自治体が密接にかかわっているということであります。すなわち自治体が相当の出資をするなど主導権を持って設立し、さらに財政的支援や人的支援を与えつつ、その経営に深く関与していくということにあります。
そのように考えてきますと、自治体には第三セクター事業の行政目的実現性、言いかえるとその事業目的や事業内容の公共性を確保する行政責任が当然にあることになります。
以上、第三セクターの現状及び法的地位について述べてみましたが、次に第三セクターへの財政支援について論及してみたいと思います。
設立の際の出資は株式の取得行為という意味を持ち、取得をした株、出資による権利は自治体の公有財産となります。地方自治法第237条は、条例または議会の議決による場合でなければ出資してはならないことを定め、その趣旨は、自治体の財産の適正かつ効率的な管理運用を図ることにより、結果として住民の負担が増大することを事前に防止しようとするところにあると考えます。
また、地方財政法第8条は、「地方公共団体の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて最も効率的に、これを運用しなければならない。」としております。
さらに、地方財政法第4条第1項は、「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」としております。
そこで、経営破綻をした第三セクターの債務処理について自治体が公費支出をする場合の問題はどうかということでありますが、これについては注目すべき判例が出ております。
この判例によりますと、「補助金の財源は、当該地方公共団体の住民が納付した税金である上、本来、第三セクターとはいえ、民間企業がこれに参加する場合は、その自己判断と責任の下に、危険を負担することも当然あり得ることを前提にして、営利の追求をなさんとしていることは、経済法則に照らし自明の理とみられることをも考慮すると、かかる補助金の交付すべてに公益性があるとは到底解し難い」としまして、また補助金が投入された時点では、そのことによって第三セクターが立ち直り再建される見込みがない状態に陥っていたことなどから見れば、補助金の交付は公益性の要件を満たしておらず違法であるとしております。
この判決における法解釈の特徴は、第1に、補助金の交付が公益性を有するためには、主観的な側面のみならず、客観的な面においても肯定されなければならないと解したことであります。
第2に、補助金の交付とそれによる地方公共団体の住民の利益との間における因果関係の有無を客観的な側面から個別具体的に判断したことであります。
以上、第三セクターについてその現状、法的地位、財政支援等について考察し所見を述べてみました。
さて、それでは本県における第三セクターの現状はどうなっているかということについて検証してみたいと思います。
県の関与している第三セクターは、現在9社あります。そのほとんどが平成8年前後に設立をされております。先ほど申し上げましたように高い授業料を払ってなお反省もなく設立されているわけです。
県は、その9社に対しおよそ24億円を出資しているほか、平成10年度で補助金、貸付金等で約56億円、平成11年度で同じく30億9000万円というとてつもない膨大な財政支援を行っております。しかもその9社のうち1社以外は赤字会社という実態であります。
そこで、ことしの5月、自治省通達が出ました。「第三セクターに関する指針」、それとの関連で以下質問をいたします。
まず1点目、事業の存続が困難と思われるものについて統廃合を積極的に進めるべきとしております。それについて県は検討をしましたか、その結果はどうですか。
2点目、公的支援のあり方について、県と第三セクターとの間において公営企業繰出基準を参考にしてあらかじめ取り決めるべきとしております。そのことについての検討結果はどうか。
3点目、経営の定期的な点検評価を行う横断的組織の設置が必要とされるとしておりますが、そのことについて県はどう対応しようとしているか。
4点目、県職員が第三セクターの経営者として参画をする場合、経営責任を追及されるので認識しておくべきとしておりますが、これに対する県の認識と対応策はどうか。
次に、個別具体的な課題として2月定例議会においても問題となりました沖縄マリンジェット観光株式会社及びアクアパーク株式会社について見解を求めたいと思います。
まず1点目、議会の附帯決議を受けて経営診断を行いその報告が出されておりますが、報告の結論として収益構造の抜本的改革は見込みがなく、累積赤字がふえることは明らかである。また深刻な経営難にあり再建は難しい。よって損害が小さい時点で撤退をすべきであるとしております。それについての県の対応策を明らかにしてください。
2点目、最近、北部離島振興策の一環として存続の議論があると聞いておりますが――これはマーリンの話です――離島振興、地域振興策は重要であります。行政施策として当然に推進すべきであります。しかしそれは行政事務として行政の責任においてなされるべき事項であり、営利企業である株式会社に肩がわりさせるべきではないと思いますがどうですか。
3点目、累積債務の解消のため今後とも公的資金の投入を考えておられるか。もしそのような場合、下関市の日韓高速株式会社の判例にもありますように違法となり、訴訟に耐えられないと思いますがどうですか。
以上、英断を持って一日でも早い処理策が示されることを要望して質問を終わります。
前発言
次発言
19990705070050