平成11年(1999年) 第 6回 沖縄県議会(定例会)
第 7号 10月15日
新垣 米子
 

 私は、共産党県議団を代表して議員提出議案第2号普天間飛行場の早期県内移設に関する要請決議に反対する立場から討論いたします。
 まず最初に指摘しなければならないのは、今回の要請決議が最終本会議に提案され、十分な審議の保障の問題など議事運営の手続上も無理な日程に強引に持ち込み、このような深夜、徹夜審議という異常な事態に持ち込んででも県内移設促進要請決議を強行しようとしていること。また96年6月定例議会における普天間飛行場の全面返還を促進し、基地機能強化につながる県内移設に反対の全会一致の決議をいとも簡単にひっくり返す今回の決議の強行に県民の名において強く抗議をするものです。
 県民が眠っている深夜に、県民に隠れて何が何でもこの促進決議を数の力で押し切ろうとするねらいは何なのか。
 クリントン米大統領の普天間基地問題が解決しなければ沖縄には行きたくないとの発言や、米政府・軍高官などの頻繁な来県と知事訪問、SACO合意の早期実現要求などにこたえたものであることは明らかです。
 来年7月サミットまでに基地問題の解決を至上命題として突きつけられた日本政府が、ことしじゅうに移転先の選定発表を稲嶺知事にしてもらわなければならない、そのためにも今議会での促進決議はやらなければならないタイムリミットだからではありませんか。
 7月19日ワシントンで、海上基地の発案者であるアーミテージ元米国防次官補の沖縄問題に関する発言の中で、97年12月に行われた市民投票で名護市民がきっぱりと反対を意思表示した「名護市とその沖合」が最適だとあくまでも固執しているのはなぜか。
 辺野古の海兵隊水陸両用部隊基地のキャンプ・シュワブと金武町の海兵隊地上部隊基地のキャンプ・ハンセンを結ぶ恒久的な大規模な海兵隊基地をつくり、MV22オスプレイの配備など、市街地にあって老朽化した普天間基地ではできない練度の高い訓練をやるための新たな基地建設が米国の要求であることは米高官の発言や米軍の資料で明確です。それを基地の整理縮小につながるから県内移設は賛成とする理由は県民を欺くものであり、また全会一致の県議会決議をも踏みにじるもので到底容認できません。
 今回の普天間飛行場の早期県内移設に関する要請決議の提案は、同飛行場の移設候補地と言われる県内各地で住民と自治体の強い反対運動や関係議会の反対を無視しての提案であり、住民意思と民主主義を否定し、地方自治に対する重大な介入と干渉だと言わざるを得ません。
 また決議案は、SACO合意に基づく普天間飛行場の県内移設が基地の整理縮小につながるとか、在沖米軍基地と日米安保条約が我が国の安全及び極東アジアにおける平和と安全の維持に寄与しているかのように言っていますが、とんでもない事実認識の誤りと言わざるを得ません。

 ことし8月20日付の沖縄地元紙は、在沖米軍を管轄する米太平洋軍の高官が、「米軍普天間飛行場の移設問題に関連して「(移設後も)現在の普天間飛行場と同じ運用能力を維持することが不可欠だ」」、「「運用能力が維持されるなら、どこに移転されても構わない」」と述べるなど、基地の移設による基地機能の縮小や後退は認めない旨を強調しています。
 さらに、日米安保条約と米軍駐留について米国防総省や政府高官などは次のように述べています。
 97年3月14日にフォーリン・プレス・センターで行われたブリーフィングでキャンベル国防次官補は、アジア・太平洋地域に対する我々のかかわり、関与、何か無私の行為ではありません。実際それはまた、それが明らかにアメリカの利益になるからですと公然と述べています。
 95年9月4日、当時の米国務次官補のジョセフ・ナイ氏は、日本外国特派員協会での演説で、アメリカがアジアに関与するのはノスタルジアあるいは創造性の欠如のためでなく、我々の国家的利益がそれを要求するからである。そうした利益とは何であろうか。第1は安全保障であり、第2は社会的結びつきだと指摘した後、第3は経済である。東アジアは、現在世界で最もダイナミックな経済地域である。既にアメリカの貿易の50%以上がアジアとの貿易である。そしてその貿易は300万人のアメリカの雇用をつくり出すのに役立っている。アジア・太平洋におけるアメリカの貿易相手国は、来世紀初めには世界の経済活動の約3分の1を占めるものと考えられていると発言しています。
 さらに1995年9月12日、当時のペリー米国防長官はニューヨークのジャパン・ソサエティーの年次総会で、日本はアメリカとの一層緊密な安全保障関係を維持していくことを明確に約束している。日本は自国自身の安全のためにも、また自国の近隣諸国の安全のためにもこの地域における我々の前進プレゼンスを支援し続けている。この支援の最も具体的な措置は、米軍の日本駐留経費の70%以上を提供するという日本の約束である。これは我々の即応態勢を支援するものである。なぜなら海外に部隊を配備するためには極めて多くの費用がかかるからである。さらにそれは域内の安定と安全を保ち、それによってアメリカの商品と思想が自由に流入できるようにすることによってアメリカの国家的利益に役立つものであると演説しています。
 さらに、ナイ国防次官補によれば米軍駐留経費の70%以上を日本が負担することになり、日本は最も気前のいい我々の同盟国とも言っています。
 米軍のアジア・太平洋地域への前方展開と日本駐留の目的がこれらの発言などで明らかではないでしょうか。
 コーエン国防長官は、日米安保は米国のアジア安保政策の中心と言っています。米国のアジア安保政策の中心とは何か。アメリカは、東アジア戦略で次のように言っています。
 アジアは、今日新たな重要性を持っています。その役割は、より開かれた国際経済システムを追求する上で死活的である。アジア・太平洋地域は現在世界で経済的に最もダイナミックな地域であり、そのことだけからもその地域の安全保障はアメリカの将来にとって死活的である。つまり経済的に世界で最もダイナミックなアジア地域は、国際経済システムにとって死活的であり、だからアジアの安全保障はアメリカにとって死活的だと強調している。そのアメリカの死活的権益をアメリカと一緒に守るのが日米安保であると。
 皆さんは、日本とアジアの安全保障、安全と平和を守るために米軍がいる、そしてまた今後も必要だと、このことを最大の根拠にしてまいりました。
 米軍が、米国が日本のためではなく、米国自身のためであるということをみずからの発言で皆さんのこの根拠を否定しています。
 提案者の皆さんは、軍民共用空港は一定期間に限って共同使用する、基地の整理縮小であり固定化につながらないと言っています。アーミテージ元米国防次官補も、東アジアに平和と安定が保たれれば多分海兵隊は米国に帰ることができると言っているが、果たしてそういうことがあり得るのか。アメリカの死活的権益がアジアに存在する限り、アメリカが、海兵隊がみずから撤退することはあり得ないというのが軍事専門家の常識であります。
 提案者の皆さんは、本当に一定期間区切って共同使用できると考えているのですか。知事選直後に稲嶺知事の15年間限定して共同使用を提案したときに当時の野中官房長官は、国際情勢があるのでそれは約束できないと突っぱねました。提案者の皆さんはこのことをどう考えているのですか。期限を限定してとか、県内移設は固定化につながらないとか皆さんは言っているが、何の根拠もないどころか、アメリカの東アジア戦略はそれを全面的に否定しているのではありませんか。
 我が党の嘉陽議員が、今回の皆さんのこの提案、暴挙は、県民の立場、沖縄の立場ではなくアメリカ言いなりの態度ではないかと厳しく批判しましたが、私も同じ思いです。
 日本共産党は、議案に反対するとともに、その撤回を強く求めます。
 現在、アメリカが最も恐れているのは沖縄県民の米軍基地に反対する闘いです。フィリピン国民が米軍基地を撤去させたように、アメリカの全面占領支配を打破した県民が今こそ党派を超えて団結して立ち上がれば普天間基地の全面撤去の道は切り開かれます。
 我が党は、県民と団結して普天間基地の県内移設を許さず、その全面撤去のために闘い抜く決意を表明して反対討論を終わります。

 
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