平成 1年(1989年) 第 4回 沖縄県議会(臨時会)
第 2号 6月 9日
第 2号  6月 9日
 

議 事 の 概 要
平成元年6月9日(金曜日)
午前10時0分開議
日程第1 朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する意見書
日程第2 朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する抗議決議
日程第3 沖縄県のサンゴ等自然保護に関する意見書
日程第4 乙第1号議案(文教厚生委員長報告)
午前11時16分閉会
 
○議長(平良一男君) これより本日の会議を開きます。
 この際、日程第1 議員提出議案第1号 朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する意見書 日程第2 議員提出議案第2号 朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する抗議決議及び日程第3 議員提出議案第3号 沖縄県のサンゴ等自然保護に関する意見書を一括議題といたします。
 各議案に関し、委員長の報告を求めます。
 文教厚生委員長。
   〔文教厚生委員長 嘉数昇明君登壇〕
○文教厚生委員長(嘉数昇明君) ただいま議題となりました議員提出議案第1号、議員提出議案第2号及び議員提出議案第3号について、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 昨日開かれました委員会におきましては、3議案について慎重に審査を行ってまいりました。
 まず、議員提出議案第3号について、文中、乱開発を規制し、海の汚染を防ぐ抜本的対策とはどういうことかとの質疑がありました。
 これに対し、抜本的対策とは、ゴルフ場等を建設する場合に開発行為を許可する監督庁が土どめ工事、公害対策等抜本対策を講ずる必要があるとの意味であるとの答弁がありました。
 次に、議員提出議案第2号について、文中、プレス・オンブズマン制度を採用するとあるが、アメリカのプレス・オンプズマン制度の実態を調査したことがあるかとの質疑がありました。
 これに対し、プレス・オンブズマン制度につきましてはジャーナリズム用語関係集から調べた範囲でしかお答えできませんが、アメリカの場合はワシントン・ポスト紙がオンブズマン制度、すなわち内部監察制度があって、監察員の立場にある人たちが読者からの苦情を聴取しながら、新聞の報道に社会的中立性を守らしめるためにうまく機能せしめているとの答弁がありました。
 そのほか、企業である朝日新聞社及び社団法人日本新聞協会あてに県議会としての決議をするのは望ましい姿ではない等の意見がありました。
 なお、採決に入る前に議員提出議案第2号について、社会大衆党所属委員から反対の意見表明がありました。
 以上が委員会における審査の概要でありますが、審査の結果、議員提出議案第1号及び議員提出議案第2号は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定し、議員提出議案第3号は賛成少数をもって否決すべきものと決定いたしました。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げまして、報告を終わります。
○議長(平良一男君) これより質疑に入るのでありますが、ただいまのところ通告はありません。
 質疑はありませんか。
   〔「質疑なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平良一男君) 質疑なしと認めます。
 これをもって質疑を終結いたします。
 これより討論に入ります。
 討論の通告がありますので、順次発言を許します。
 照屋寛徳君。
   〔照屋寛徳君登壇〕
○照屋寛徳君 私は、日本社会党・護憲共同県議団を代表して、議員提出議案第1号朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する意見書、議員提出議案第2号朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する抗議決議に反対し、議員提出議案第3号沖縄県のサンゴ等自然保護に関する意見書に賛成する討論を行います。
 今回の朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ落書き報道は、極めて不幸であり残念な事件であると私は考えております。
 事件の経緯については既に詳細に報道され、今さら繰り返して論ずる必要はないものと思います。
 当該カメラマンはその非を認め、既に懲戒処分に付され、朝日新聞社の社長も引責辞任されており、既にけじめはついているものと考えるものであります。
 さて、議員提出議案第1号の意見書には、今回の朝日新聞社の公器としての使命を放棄した一連の行為に対し強い怒りを覚えるものである。また議員提出議案第2号の抗議決議には、今回の朝日新聞社の一連の行為に対して厳重に抗議するなどと記述されております。
 既に関係者並びに関係機関によって明らかにされた事実によりますと、今回の事件は、朝日新聞社の本田カメラマンによる単独犯であることは明々白々であります。しかるに議員提出議案第1号、議員提出議案第2号の意見書、同抗議決議は、事実を無視し、殊さら朝日新聞社の一連の行為云々と誤った表現をなしているのであります。
 いやしくも沖縄県議会の意見を表明する場合、明らかに事実に反する記述や表現は厳に慎むべきであり、ましてや故意に非難中傷するがごとき態度はとるべきではないのであります。
 私は、去る6月7日の本会議で議案提出者代表にそのことをただしました。だが提出者代表は、一連の流れから組織的に加わった疑いがあるとか、ある程度疑いがあるなどと答弁するのみで明確な答えは得られておりません。
 一連とは、一つながりになっていることを指すのであります。提案者は私の質問に対し、本田カメラマン個人による事件であったことを認めているのでありますから、朝日新聞社の一連の行為などと表現し、あたかも朝日新聞憎し、マスコミ憎しの反朝日、反マスコミのキャンペーン的態度と思われても仕方がないようなことは即刻やめるべきであります。
 次に、議員提出議案第2号の抗議決議においてプレス・オンプズマン制度の採用を求めております。
 そもそも抗議決議の中でプレス・オンブズマン制度の採用を求めること自体、自家撞着であると断ぜざるを得ません。それに提出者は、プレス・オンブズマン制度の採用を求めながら、求めているプレス・オンブズマン制度について確たる制度概念や知識を有しておらないのであります。
 提出者は、アメリカ型の社内オンプズマン制度を考えているかのごとき説明を本会議でなしておりますが、一方でスウェーデン型のオンブズマンの概念を詳細に繰り返し述べているのであります。
 そもそもオンブズマンとは、国民にかわって行政苦情の解決や行政の適正運用の確保を図るために活動する人のことであります。つまり行政監査専門委員とでも訳されましょう。
 オンブズマン制度の発祥は、提出者が説明したとおりスウェーデンであります。もともとはゲルマン民族の一部で不法行為によって被害を受けた者にかわって、不法行為者から補償金を取り立てるために中立の団体から選任された者を指すのであります。新聞社や報道機関においてオンブズマン制度を採用するかどうかは、新聞社や報道機関の自主的、主体的な選択に任すべきであります。しかもスウェーデンやアメリカにおいても、長い長い歴史の中でさまざまた経緯を経てそれぞれのオンブズマン制度が確立されているのであります。してみれば、我が国の新聞社や報道機関がどのようなオンブズマン制度、あるいはそれに相当する制度を採用するかどうかは独自の判断に任すべきであります。
 その点において議員提出議案第1号、第2号の意見書や同抗議決議は、さきに私が本会議の質疑の際に申し述べたように角を矯めて牛を殺す結果になるでありましょう。
 それに、抗議決議は、あて先に社団法人日本新聞協会会長を名指ししております。
 何ゆえに朝日新聞社カメラマンの不祥事で日本新聞協会会長が沖縄県議会から抗議を受けなければならないのでありましょうか。万一、この抗議決議が多数決で採択され、沖縄県議会の意思として表明されるならば、県議会が日本新聞協会会長に対し無礼なことをすることになるのであります。
 私は、抗議のあて先について再度提出者に再考を強く促し求めたいと思います。
 また、提出者は、アメリカ型の社内オンブズマンの採用を求めるというのでありますから、社団法人日本新聞協会会長をあて先にするのは、その点においても間違いであります。

 スウェーデン型のように個々の会社を越えた業界全体の機関としてのオンブズマン制度ならまだしも、アメリカ型の社内オンブズマン制度であれば、日本新聞協会会長に制度の採用を求めるのは筋違いと言わざるを得ないのであります。
 けさの琉球新報朝刊に、鳥取部邦夫編集委員の署名入りのオンプズマン制度に対する解説記事が掲載をされております。この中で鳥取部編集委員は、次のように述べております。「サンゴ事件を起こした朝日新聞社に抗議をするのはいいだろう。しかし、県議会が朝日新聞と日本新聞協会にオンブズマン制度の採用を求めるのは筋違いではないのか。新聞のチェック機能をどのような制度で行うか、各社の判断に待つべき性格のものである。言論の自由にかかわる問題だけに県議会も慎重な対応が望まれる。」と記載しております。
 以上申し上げましたように、抗議決議においてプレス・オンブズマン制度の採用を求めるのは余計なおせっかいであります。それどころか民主主義社会の根幹をなす報道の自由に対する不当な干渉であり、新聞社に対して萎縮を強いる不当な圧力行為であります。
 日本国憲法には、報道の自由を名指して保障する規定はありませんが、国民主権の原理及び表現の自由を初めとする基本的人権の保障規定から、報道の自由もまた憲法によって保障される権利として解されているのであります。
 主権者としての国民が、その権能である参政権を有効に行使するためには、国政に関するさまざまな情報が常に十分に与えられていなければなりません。国民主権の原理は、国政に関する事項を国民が判断し決定するために、その素材としての情報が豊富に与えられていることを当然の前提としております。言いかえますれば、国民主権の原理の発現としての民主政治は、国民の知る権利の保障に重要な基盤を有するものであります。
 国民の知る権利が充足されるためには、常に自由で豊かな情報の流れが確保され、国民各人がこの中から自由に情報を取得できることが必要であり、この過程における公権力の規制その他の障害は排除されなければならないのであります。ここに表現の自由の存在理由があることをみんなで思いをいたさなければなりません。
 この情報の流れは、現実には主としてマスメディアの報道活動に依存するもので、報道の自由の保障は表現の自由の重要な核をなすものとなるのであります。
 私は、個人であれ行政主体であれ、何者も貴重なサンゴを損ねることは許されないと考えております。それ以上に新聞社やマスコミに対し不当に干渉し、威圧を加え、結果的に報道の自由に対する規制と国民の知る権利を奪うことは絶対に許されないものであります。
 私は、沖縄県議会が国民主権の原理を担保する報道の自由を侵害し、国民の知る権利を奪うことにつながる議員提出議案第1号、同第2号の意見書並びに抗議決議に断固として反対の意思を表明し、石垣島白保のサンゴ保全や沖縄の自然環境保全を求める議員提出議案第3号に賛成の態度を表明して、討論を終わります。
○議長(平良一男君) 下地常政君。
   〔下地常政君登壇〕
○下地常政君 私は、言論の自由という視点から、報道機関のあり方に焦点を当て、議員提出議案第1及び第2は当然というよりも絶対に採択されるべきであるとの立場から私見を申し上げますが、その前に、公明党を除く野党の皆さんが、なぜこの決議案に反対するのかがよく理解できかねますので、その点について見解を申し上げます。
 きのうの提案者に対する質疑を聞いておりますと、皆様、一様に冒頭で、許しがたい暴挙あるいは不幸であり残念な事件であると強い調子でその反社会性、違法性を指摘しながら、しかし、ときて、決議案の内容を繰り返し論難し、そして問題の本質をすりかえた形で議員提出議案第3を提案いたしております。これは我々の決議案を葬り去ろうとしているのと同じであります。
 これでは、今回の事件の経過を明確にするとともに、その社会的責任を糾弾し、二度とこのような悪質な行為を起こさせないようにしたいという我々の要請を阻み、朝日新聞社を擁護しようとするにもひとしく、冒頭の不幸であり残念な事件云々という意味の発言は、住民の眼前から真実をすりかえようとするためのカムフラージュにすぎないと言われても仕方がないように思います。
 今やマスコミは、立法、司法、行政に次ぐ第4の権力とも言われ、その社会的影響力の大きさははかり知れないほど絶大であります。
 現代社会においては、報道されたもののみが起こった事象であり、報道されなかったものは生起しなかったにもひとしいと言われております。
 だれもが認識しておりますように、民主主義の基盤は言論の自由であり、その言論の自由は報道、これはメディアそのものと、その報道のあり方、この両方に対する揺るぎない信頼の上に成り立っているものであります。
 ところが、この報道に対する信頼を打ち砕き、言論の自由のよって立つ基盤を崩壊させようとするような事件が、事もあろうに新聞界の盟主を自認する──これは評論家の片岡という方が言っていることですが──朝日新聞によって引き起こされたのです。
 すなわち、4月20日付夕刊東京本社版で報ぜられたサンゴ礁の落書きKYが、朝日のカメラマンの自作自演であるというショッキングな事件であります。
 この事件に対する朝日新聞の対応は、最初にKYという傷がぼんやりしていたので指でなぞったと弁明しましたが、地元のダイバーによって、サンゴに傷がつくほど指でこすると指から血が出るはずだと指摘されると、今度はストロボの柄でこすったと言い、さらにもともとKYのイニシャルなどなかったことを指摘されると、ついには取材カメラマンの故意の損傷であることを認めました。
 第一線記者、あるいはカメラマンの取材した写真もしくは原稿等の素材は、編集、整理、調査、校閲等の段階を経て活字となるのでありますが、一たん報道された写真や記事は、それが捏造された、読者を欺くものであれば、たとえそれぞれの部門で作為がなかったとしても、そのことによって各部門の責任が免責されるものでないことは当然であります。
 いわんや、これは取材カメラマンの個人の責任で済むものではありません。
 そのゆえにこそ、朝日新聞社自体は16日付朝刊でおわびとして、身内に甘く結果的に誤りであった。あるいは問題の重大さについての認識が私たちの組織に足りなかった。また社内連絡が悪かった。あるいは事実調査のふなれ、不徹底、おくれなどと反省の語句を連ね、本社の組織に何らかの問題があるのは確かであると断定しているのです。
 また、同業他社の過失を不問に付すという傾向のある中で、読売新聞の副社長は、今度の事件は環境保全関係者、さらに沖縄県政、国政を傷つけて被害を与え、みずから捏造した証拠でもって犯罪を捏造しようとしたと厳しく批判しています。
 朝日新聞社は、このように組織全体の責任を認めた上で、まず当のカメラマンを懲戒免職に相当する退社処分、同行したカメラマンを3カ月停職処分、編集局長と写真部長を更迭、そして最高責任者としての社長は引責辞任するという一大処分を決定いたしました。
 しかし、一度傷つけたサンゴは100年を待たないと回復しません。
 一方では朝日新聞社は、昭和25年、地下潜行中の共産党幹部伊藤律氏との虚偽会見記事をでっち上げ、昭和46年、公害工場問題で自社公害発生の隠ぺいをした等、その他誤報、でっち上げ等があると言われており、同社みずからが認めているように組織として体質的なものがあるように思います。したがって、一連の人事の処分で問題が解決されるとは思いません。
 同紙の5月20日付夕刊の「素粒子欄」で、おわびの中身をたゆまず実行しようと決意しているのですから、私たちもこれに対しては明確に怒りを表明し、今後の体質改善と事件発生の防止を強く求めていかなければならないのは当然です。
 ところで、朝日新聞及び新聞協会あて同抗議書案で触れているプレス・オンブズマン制度ですが、これについては検閲につながりかねないという指摘があります。
 確かに、それが内部の自主的制度ではあっても、いや自主的制度であるからこそ、外部から要請して設置させること自体が一種の外圧となる危険なしとは言えません。

 ただ、日本新聞界最高の組織と万全のチェック体制を有しながら、なぜでっち上げ、捏造等という事件が後を絶たないのか。チェック機能が十分に機能しないのなら、あるいは社の体質──これはさき申し上げましたように朝日新聞社自体が認めているんですよ──であるなら、やはりこの種の新たな制度を検討する必要はあるのではないかと言えるかもしれません。
 何はともあれ、報道に対する国民の信頼を回復し、民主主義の根幹にかかわる言論の自由を守るという高い次元からの見解を表明することは、事件そのものが発生した我が沖縄県の議会の責務であり、誇りであると考え、この提出議案に賛成するものであります。
○議長(平良一男君) 島袋嘉盛君。
   〔島袋嘉盛君登壇〕
○島袋嘉盛君 本員は、沖縄社会大衆党県議団を代表し、ただいま議題となっております議員提出議案第2号朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する抗議決議について反対の討論を行います。
 先般発生した朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ落書き写真捏造事件は、沖縄県民はもとより、国民並びに報道界や環境保護団体を初め関係各方面に大きな衝撃を与えた。
 同事件は、去る4月20日付朝日新聞夕刊の「サンゴ汚したK・Yってだれだ」との自然保護に関する写真と記事が、実は同社カメラマン自身の落書きに基づくものであることが地元関係者の調査で発覚し、その事実を同カメラマンや朝日新聞社も認めたものであります。
 この事件の発覚後、朝日新聞社には千数百件に上る抗議の電話が殺到し、また多数の手紙が寄せられたという。当然のこととはいえ、世論の批判が集中したのであります。
 事の重大性を深刻に受けとめたのでありましょう。朝日新聞社では、事件の発覚後5月15日以降、紙面では繰り返しおわびを掲載するなどして、当該カメラマンの退社処分を含む関係者の処罰、編集長の解任、社長が引責辞任することでこの事件に対するけじめとするに至ったと報じております。
 このように当該カメラマンの心ない所業は、国民世論の怒りを喚起し、朝日新聞社はともかく、他のマスコミ界までも深刻な打撃を与え、中でも事実を迅速かつ正確にという報道の使命の重要性をかんがみたときに、当該カメラマンの所業は社会への背信であり、その責任は重大であることは論をまたないものであります。
 しかし我が党県議団は、本抗議決議に反対の態度を明確にしなければなりません。
 反対の理由の1つとして、本抗議決議の中にプレス・オンブズマン制度の採用を求めていることであります。
 我が党県議団は、このことを最も重視しているからであり、あて先にも示されているとおり、朝日新聞社並びに社団法人日本新聞協会に対し、その制度の設置を強要することになると解するからであります。
 また、準公的使命の企業とはいえ、営業権への侵害、憲法で保障された表現の自由に対する不当な侵害につながるおそれが懸念されるからであります。
 ちなみに我が党県議団の調査資料によれば、米のプレス・オンブズマン協会加盟の状況は米国から31社、カナダから5社加盟し、全米日刊紙千数百社からすると極めて少ないと紹介しているのであります。
 我が国は民主主義国家であり、国民の知る権利、表現の自由は保障されており、特色ある企業活動は各自に任されなければならない。
 いやしくも沖縄県議会の名において決議する以上、議会の名誉にかかわることであり、慎重を期さなければならないと思います。
 この種の抗議決議は、恐らく全国で類例を見ない行為でありましょう。日本国憲法第21条は表現の自由を保障しており、何人もこれを侵してはならないからであります。
 以上申し上げまして反対の討論にかえます。御清聴、ありがとうございました。
○議長(平良一男君) 高良政彦君。
   〔高良政彦君登壇〕
○高良政彦君 朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する議員提出議案第1号の意見書及び議員提出議案第2号の抗議決議について、本員は、公明党県議団を代表して賛成の討論を行います。
 4月22日、朝日新聞社夕刊に、「だれだ 「K・Y」巨大サンゴに落書き」と、沖縄県西表島西端の崎山湾の巨大アザミサンゴに落書きされていることが報道されました。地元のダイバーたちの調査によって、1週間後にようやく朝日新聞社のカメラマンが故意に損傷させたことが判明し、大きく問題化したのであります。
 今、地球規模で人為的なさまざまな自然破壊が進んでおり、これによって逆に人類は自然界から大きなしっぺ返しを食い、あるいは人類は滅亡してしまうのではないかと不安におののいているのが現実であります。
 私たちの住んでいるこの日本、とりわけ我が沖縄県は、海の美しさでは類例のないすばらしい自然環境を持っている地域であります。それだけに開発か環境保護かの問題は、我が県の経済発展のおくれもあって全県民的な重要な課題であります。
 ともすれば開発が優先し、自然保護がなおざりにされがちな現代社会において、朝日新聞社は環境保護の重要さを熱心に取り上げ、国民的規模で環境保護について大きな関心を抱かせたのはマスコミならではの大きな使命を果たしているものであり、敬意を表するものであります。
 しかしながら、自然保護を訴える記事を書くためにわざわざみずからその自然を破壊する行為は言語道断であり、許されるべきものではありません。自然環境は、国民共有の貴重な財産であり、国民がこぞって保護をすべきものであります。
 今回の朝日新聞社のカメラマンによる貴重な巨大サンゴヘの損傷事件は、公器としての使命を逸脱したものであり、強い憤りを覚えるものであります。
 今回のこの事件については、幾つかの重要な要素が含まれていると思います。
 第1は、当アザミサンゴは水深が16メートル、高さが4メートル、周囲が20メートルにも及ぶ世界的にも認められた貴重なサンゴ群であり、国によって昭和58年6月28日に同地域の128ヘクタールを崎山湾自然環境保全地域・崎山湾海中特別地区に指定されているということであります。このような最も美しい、また貴重なサンゴ群のモデル地域ともいうべき場所であえて故意にサンゴを損傷させたことは、重大な問題と言わなければなりません。
 2つ目は、環境保全を訴える企画の中であえて環境を破壊したことであります。
 朝日新聞社のカメラマンが損傷させたサンゴの傷は、物理的に見れば実際は氷山の一角であり、白保のサンゴに限らず観光客などによるサンゴの破壊あるいは開発行為による赤土の流出によるサンゴの死滅等は、もっとひどいものがあることもよく承知しております。
 しかしながら、あえて今回のアザミサンゴ損傷事件を意見書や抗議決議までして問題にするのかと申しますと、巨大な影響力を持つ、しかも大手の新聞社の自然保護を訴える企画の中で起きた事件だからであります。
 このことは、明らかに一観光客や一ダイバーがサンゴを損傷させたということとは大きな意味合いが違います。報道の内容いかんによって自然保護に対する国民の考え方にも大きな影響を及ぽし、また開発行為のあり方やあるいは政治の政策決定にも大きな影響を及ぽす巨大な力をマスコミは持っているからであります。
 申し上げるまでもなく、新聞の使命は、事実をありのままに早く正確に伝えることにあります。これによって国民が正しい世論を形成し、この世論が正しい政治を生み出す土壌になるからであります。
 朝日新聞社は、事の重大さに責任を感じ、一柳社長の辞任を初め当カメラマンの退社処分等社内においてけじめをつけております。
 社長みずから責任をとって辞任をするなど社内でけじめをつけたのだから、またこの事件によって朝日新聞社は相当信用を落としダメージを受けたのだから、もはや抗議をする必要はないとする意見もありますが、しかし現代社会におけるマスコミの影響力の甚大さを考えたとき、自然保護を訴えるのにみずから自然を破壊してまで記事を捏造する、そのような体質を生み出した会社の責任者たちが、みずから責任をとって今後の信頼回復に備えることは当然のことであります。

 そのことによって自然保護のモデル地域ともいうべき場所で貴重なサンゴを破壊された我が沖縄県が、これに対し何ら遺憾の意思表示もしないとするならば、これこそ議会の使命を放棄したものと県民からおしかりを受けることは当然であります。
 文教厚生委員会におきましては、プレス・オンブズマンについて議論が闘わされました。
 我が公明党は、このプレス・オンブズマンについては次のような見解を持つものであります。オンプズマンについて簡単にその概念を述べておきたいと思います。
 オンブズマンを必要とした要因には、政治的要因と法的要因、そして社会的要因の3つが挙げられると言われております。
 そして具体的には、政治的要因としては議会型オンブズマン、法的要因としては行政救済型オンブズマン、社会的要因としては苦情処理型オンブズマンであります。議会型オンブズマンがオンブズマンの原型と言われております。
 発達した立憲国家では、大別しますと大統領制か議院内閣制かのどちらかの形態で統治機関相互のコントロールを行っております。すなわち議会は、行政側の提出する議案の否決、質問、調査、特別職の任命に対する許諾等によって行政をチェックする機能を果たしております。
 しかし、発達した現代社会における膨大な行政行為の結果出てくる日常的に派生する国民の苦情や不満に対し、議会が必ずしも専門的な知識と専門的な技術で細々とすべてを的確に対応しているとは言えないのであります。
 オンブズマンの基本的な理念は、行政による不当な取り扱いに関する苦情を司法手続に訴えることなく調整することであり、議会がそのための専門的、技術的用意を欠き、時間的余裕を持たない細かい行政コントロールの仕事から解放されることであると言われます。
 国民や住民全体の代表として、だれからの差別なくその苦情を処理するために国会や地方議会の権威のもとに行政を監督し査察する権能を持った専門機関を国会や地方議会に置いてはどうかという考えが必然的にわいてきます。これが議会型オンプズマンの発想の由来であります。
 これらのオンブズマンは、1965年ごろには既にフィンランド、デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド、西ドイツ等で導入されており、また英国とスイスでも検討がなされていたと機関間コントロールについて、比較憲法の上から詳細な研究をしたカール・レウェンシュタインの現代憲法論に述べられております。
 国のレベルにおいては、司法、立法、行政の各機関が相互に憲法上の権限を行使することにより機関間のコントロール機能が働き、それによっていずれかの統治機関が暴走し国民が被害をこうむらないようになっているわけであります。いわゆる抑制と均衡の原理であります。しかし現代は古典的な三権分立の時代と異なり、三権の中でも行政権の組織と機能、そしてそれが国民に及ぼす影響が突出して肥大化しているということであります。
 今、世界各国で採用されているオンブズマン、あるいはオンブズマン類似機構は、すべて行政行為によって派生するさまざまな不都合な問題に臨機応変に対応し、行政が暴走して国民に被害が及ばないように伝統的な三権分立の組織と機能のほかに、強力な発言権を持った監視機構の存在が必要であることを各国がそれぞれ行政環境の中で自覚してきたあらわれであるということが言えるのであります。
 正しい行政を行わせるためのオンブズマン的な存在としては、市民運動等による政治活動もありますが、現代社会にあってはマスコミの存在が行政に対して大きなオンブズマン的機能を果たしていることは否めません。
 言論の自由、報道の自由は、人間の基本的な権利の中でも最も大切な侵すべからざるものであります。欧米の自由主義の先進国においては、何百年もの長い年月をかけて幾多の紆余曲折を経て、そして多くの人民の血を流してかち取った人間の最も大切な権利の一つであります。
 この言論の自由、報道の自由に裏打ちされた批判力旺盛な強大なマスコミの存在そのものが、権力闘争に明け暮れし、ややもすれば国民不在の政治になりかねない権力者にとっては大きなオンブズマン的存在と言えるのであります。
 したがって、このような言論の自由、報道の自由をいささかでも阻害したり、抑制をすることは絶対にあってはならないし、ましてや他の機関によってマスコミがチェックされたり、統制をすることはマスコミが政治権力に利用されることであり、これは再び人類を誤った不幸の方向にひきずり込むことを意味します。
 その強大な影響力を持つ現代のマスコミは、マスコミ自体がそれを自覚し、常に報道のあり方についてみずからがそれをチェックする自浄作用の機能を持つ責務があります。
 アメリカにおけるプレス・オンブズマンが最もよく機能を発揮していると言われる部数76万のワシントン・ポスト紙の初代オンブズマンのリチャード・ハーウッド氏は、オンプズマン制度の導入のきっかけは、アメリカの新聞は権力を持ちながらだれからも批判されない、これではいけないという考えが社内に1960年代からあったと述懐しております。
 また、部数120万のロサンゼルス・タイムスは、オンブズマン制は採用はしていないが、編集長と編集人計13人がオンブズマンの機能を果たしていると述べております。
 日本においては、新聞協会が昭和63年2月に調査した結果では、同協会に加盟している新聞、通信社117社中62社が社内に紙面審査機構を持っており、どこの社でも記事内容の正確度、用語、用字、数字の正確さ、見出し、レイアウトの巧拙、ニュース価値、書かれる人々への人権の配慮、他紙との記事掲載の関連性といったポイントを中心に紙面を審査しており、これらを踏まえてどのような配慮や工夫が必要か、また読者を満足させられるかをアドバイスしたり、アイデアを提供したりしているとのことであります。
 しかしながら、ワシントン・ポストのハーウッド編集局総務は、そのような助言、提案は、編集者同士の当然の仕事だと述べております。取材と紙面づくりに熱中するのが編集局で、編集に携わる者同士が紙面をチェックするといっても実際は不十分な面が多々出てくる。だからこそでき上がった紙面を隅々まで読者の目で対応するセクションがないと、新聞の品質の維持と向上を図る自制力が社内に醸成されない。ここにオンプズマン制度の重要さが出てくるのであります。
 全米1730社のうち35社にオンブズマンがあり、また明確にオンプズマンと呼ばれないにしても、大多数はこれに近い機能を持ったセクションを置いているのが普通であります。
 抗議決議書の中に、プレス・オンブズマン制度を採用するなどして、とありますが、プレス・オンブズマン制度がよいか審査機構制がよいのか研究の余地がありますが、しかし良質の信頼できる報道紙面を読者に提供をするという目的は同じであります。
 カナダのラバル大学の研究グループが昨年12月、トコント・スター紙とガゼット紙の記者432人に、オンブズマンの存在は日常の記者活動にとって有益かというアンケート調査の結果、トコント紙で57.8%、ガゼット紙で32.8%の記者が有益と回答しており、煙たがられながらもオンブズマンの重要さを認めております。
 四十数年前、我が国は言論の自由は封殺され、また報道の自由もなかった。そのため国民は世界の情勢と日本の置かれた立場を正しく判断することができず、一部の軍部の権力者によって戦争へ突入し悲惨な結果となりました。
 そして今、言論の自由、ひいては報道の自由は憲法でも保障され、国民は迅速で正確な情報をマスコミから得ることができます。これが常に国民世論となって政府を動かし、日本の今日の繁栄の大きな原動力となったことはだれも否定はできません。
 前述しましたように、今日の現代社会ではマスコミの力は強大なものであり、時と場合によって報道される側の組織や個人の生殺与奪すら握っていると言っても過言ではありません。それだけに記事や報道される内容が恣意的であったり、捏造されたものであったりすると国民の受ける被害もまたはかり知れないものがあります。
 このような報道のあり方がもし日常茶飯事化するようなことになると、逆に公権力に何らかの規制をさせる口実を与えることにもなりかねません。マスコミにとって言論の自由、報道の自由はまさに命とも言うべき土壌であります。

 もし、マスコミにとって言論の自由、報道の自由を今後も引き続き保障されるものがあるとすれば、それは常にマスコミがみずからその存在の重要さと影響力の甚大なることを自覚し、報道の内容にみずから厳しくチェック機能を持たして国民から信頼されるものにすることであります。ここにオンブズマンの底に流れている理念があるわけであります。
 今回の朝日新聞社のカメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に対し、以上のような観点から当事県として環境保全への警鐘とし、また朝日新聞社に強い反省を促す意味において意見書と抗議決議をすべきであると、このように考えるわけでございます。
 以上でございます。
○議長(平良一男君) 外間久子君。
   〔外間久子君登壇〕
○外間久子君 日本共産党県議団を代表し、議員提出議案第3号沖縄県のサンゴ等自然保護に関する意見書案に賛成し、議員提出議案第1号及び第2号朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する意見書、抗議決議両案に反対する討論を行います。
 4月20日付の夕刊朝日新聞に掲載された写真、「サンゴ汚したK・Yってだれだ」が、実は同社カメラマンが自分で無傷のサンゴに文字を彫り、心ない落書きとの告発記事に仕立てた全くの捏造写真記事であったことは、沖縄県民はもとより全国民、読者に深い衝撃を与えました。
 朝日新聞社は、5月20日付2度目の謝罪で「深くおわびします」で、元からあった傷に手を加えた行き過ぎ取材とした16日付のおわびの釈明を全面的に訂正し、捏造の事実を認めるに至ったものです。
 事件そのものの悪質さ及び事実確認における朝日新聞の対応は、二重三重に読者を裏切るものであり、朝日新聞も自認していますようにその責任は重大であります。
 そもそも報道とは、あくまでも事実から出発し、その事実を通して現象を貫く普遍的な本質、真実に迫る、これが鉄則でなければなりません。各新聞がみずからの規範とする新聞倫理綱領でも、報道の原則は事件を正確、忠実に伝えること、故意に真実から離れようとするなどは新聞道に反すると厳に戒めているはずです。
 今回のサンゴ落書き写真捏造は、事実報道の原則に反するばかりか、キャンペーンの目的であるはずの守るべき自然をみずから破壊し、自然環境保全法違反にも問われるほどの本末転倒、言語道断の行為でありました。
 加えて、5月20日付同紙の社説で、問題の重大さについての認識が私たちの組織に足りなかったと。同じく「読者の皆さんへ」で、社の組織自体に問題があったと認めているように、写真掲載から「おわび」までの経過を見ても社のあり方が問われて仕方のないことです。各新聞も厳しい口調で朝日の姿勢を批判していますが、しかしこれが朝日だけの問題として済ますわけにはいかないことも指摘しておかなければなりません。
 ある著名なジャーナリストは、今回の写真作為について、突然始まったことではない。写真週刊誌ブームに見られたより衝撃の強い写真、映像へと走るセンセーショナリズムが新聞報道の世界にも広がり、事実を見詰め、伝えることについての哲学の弛緩の延長線上に起こるべくして起きたと指摘しています。
 売らんかなの商業主義が記者やカメラマンの競争や功名心をあおってきたと明言する元朝日の記者もいます。今、特に掘り下げる必要があるのはこの点ではないでしょうか。
 なぜそうしたセンセーショナリズム、極端な商業主義が蔓延しているのか。最大の問題は、何のために、だれの立場に立って報道するのかというジャーナリズムの本来の使命、自覚がマスコミ全体に弱まっているごとではないでしょうか。
 新聞倫理綱領は、訴えんと欲しても、その手段を持たないものにかわって訴える気概を言っています。言いかえれば、あくまでも読者、国民の立場に立ち、必要とあらば権力の横暴とも敢然と闘う使命感、自覚であります。今日、マスコミが全体としてこの気概からいかにも遠く離れてはいないか憂慮するものです。
 今回の事件もそうした商業主義、センセーショナリズムのエスカレートの中で起こったところに問題の深刻さがあると言えます。
 センセーショナリズム、商業主義は、容易に為政者の世論操作に利用され、国民を取り返しのつかない道に駆り立てかねません。戦前のマスコミが侵略戦争に国民をあおり立てた苦い歴史をこの際思い起こして、今回の事件をジャーナリズムのあり方への深い自省にまで掘り下げてもらいたものです。
 プレス・オンブズマンとは、読者の立場に立つ新聞監視人と訳されるようですが、今回の事件の本質についての論証を抜きにして、いきなり横文字制度の採用などということは、不見識とのそしりを受けかねないものにしかすぎないことをつけ加えておきます。
 ところで、西銘知事は去る4月26日、突如として新空港建設予定地を、白保海域から4キロメートル北側のカラ岳東海域に変更することを発表しました。
 環境庁長官は、この県の発表を英断とたたえるとともに、新予定地については、サンゴ礁等自然保護上の問題はないと判断されるという評価を行っています。
 しかし、白保地域住民や自然保護団体等の間では、新たな計画の自然保護上の問題点についてさまざまな疑問や意見が起こっています。
 我が党も国会議員団に嘉陽議員も加わって独自に現地を調査しましたが、新予定地の海域も白保海域と同一のリーフの中にあること。4キロメートル離れたといっても、旧予定地の北端と新予定地の南端とは1.5キロメートル程度しか離れていないこと等から見ても、科学的な調査、検討を抜きにして自然保護の問題はないと断定することはできないと考えます。
 白保海域のサンゴは、同日発表されました環境庁の調査結果の槻要からも明らかなように、高被度のサンゴ礁の広がりと連続性、他に例のないアオサンゴ、塊状ハマサンゴ等の特異な群集の存在、またこれが一つの礁池のユニットの中にまとまって存在し、その他のサンゴを全体として健全で特異な生態系を維持している極めて貴重なものであります。
 これまでの西銘県政によるアセスメントの中では、こうした白保のサンゴの価値を正当に評価しなかったことから見ても、今後の新空港建設計画の検討において埋立面積が50ヘクタール未満であるという理由で自然環境への影響評価を沖縄県任せにして、国の責任を回避することは極めて問題と言わなければなりません。
 石垣島への新空港建設は、現空港の安全等からいっても必要であります。
 しかし、重大なことは、西銘知事が環境庁、運輸省の事前了解を盾に住民の合意抜きにして新予定地の発表を行ったために、地元住民の間では航空騒音、農業、漁業への影響等生活環境破壊への強い危惧の念が寄せられていることであります。
 ここで我が党県議団は昨年12月の定例会で、平和をつくる百人委員会から出されました新石垣空港建設計画についての陳情に対する賛成討論の際、上原亀一郎議員が詳細に論究した国際自然保護連合の提案決議について、改めて西銘知事と自民党の皆さんに注意を喚起し反省を促すものであります。
 国際自然保護連合(IUCN)は、国際教育科学文化機関ユネスコの支援を得て設立された、自然保護について世界各国が協力していくための国際組織です。111力国と118の政府機関、498の自然保護団体が参加をし、我が国でも環境庁、日本学術会議のほか自然保護10団体が加盟をしています。
 同連合は、昨年2月のコスタリカにおいて第17回総会で、沖縄県石垣島白保のリーフは、北半球において今までに発見された中で最大かつ最古のアオサンゴを含め、科学的に貴重な多くの自然相を有する豊かなサンゴ礁群落の特に顕著な例である。白保のリーフは、これまで維持しつつ活用するという原則にのっとって、リーフと調和のとれた関係を維持してきた白保の地域社会にユニークな文化的、社会的、経済的かつ精神的な恵みを与えている。白保リーフの生態系は、健全な状態である限り遠海魚の卵、幼魚、サンゴ及びその他の生物を育て、隣接するリーフや漁場に放出する再生産の根拠地として機能する。白保のリーフに
ジェット空港を建設する計画は、リーフの生態学的過程と生物学的多様性に対し回復不能なダメージを与える。轟川流域の土壌を継続して浸食すると、白保リーフの生物学的共生域を低下させ圧迫する。IUCN、SSC──種の保存委員会──は、目下、白保リーフの国際的な科学的影響評価を実施していることにかんがみ、日本政府は白保リーフ海域に空港を建設することについては、この種の開発行為がリーフに及ぽす重大な環境上の影響を考慮して、現計画を再考するための手続を直ちにとることを強く求めています。

 さらに日本政府は、白保リーフが活力ある生態系として将来も生存可能であることを保障するために、日本の国内法のもとで可能な限り白保のリーフに対し最大級の保護策をとるよう要請しています。
 特に、日本政府は、あらゆる生物部門の研究を含む白保サンゴ礁の調査計画を立案し、サンゴ礁の生態系の調査と維持管理を進め、日本におけるサンゴ礁の全般的現状を監視し、サンゴ礁破壊と衰退の原因を明らかにすることを提案するという、こういう決議を採択しました。
 つまり、沖縄県の白保の海は、世界の財産であるとの歴史的、画期的な国際的宣言であります。したがいまして空港建設で回復不能なダメージを与えてはならない。直ちに再考する手続と最大級の保護策をとり、調査計画を立案して世界の財産を守れということです。
 西銘知事の突然の位置変更は、沖縄県民にとって歓迎すべき、かつ惜しみなき謝意を表すべき国際的宣言提案から少しも学ぽうとせず、これまでの強行策についての何らの反省も見られません。
 今回のアザミ損傷事件を県議会の意見書とするものであれば、新石垣空港の位置変更でもなお世界の財産が回復不能なダメージを与えかねない全県的、国際的な大問題を不問に付すということでは片手落ちというにとどまらず、沖縄県の意見書としては県民の意思に従わない甚だお粗末と言わなければなりません。
 これが議員提出議案第3号に賛成し、第1号及び第2号に反対する根本的な理由であります。
 以上をもって討論を終わります。
○議長(平良一男君) 以上で通告による討論は終わりました。
 これをもって討論を終結いたします。
 これより採決に入ります。
 まず、議員提出議案第1号朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する意見書及び議員提出議案第2号朝日新聞社カメラマンによるアザミサンゴ損傷事件に関する抗議決議の2件を一括して採決いたします。
 各議案に対する委員長の報告は、原案可決であります。
 お諮りいたします。
 ただいまの議案2件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(平良一男君) 起立多数であります。
 よって、議員提出議案第1号及び第2号は、委員長の報告のとおり可決されました。
○議長(平良一男君) 次に、議員提出議案第3号沖縄県のサンゴ等自然保護に関する意見書を採決いたします。
 本案に対する委員長の報告は否決でありますので、原案について採決いたします。
 お諮りいたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(平良一男君) 起立少数であります。
 よって、議員提出議案第3号は、否決されました。
○議長(平良一男君) ただいま可決されました議員提出議案第1号及び第2号については、提案理由説明の際提出者から、その趣旨を関係要路に要請するため議員を派遣してもらいたいとの要望がありました。
 よって、お諮りいたします。
 議員提出議案第1号及び第2号の趣旨を関係要路に要請するため議員5人を派遣することとし、その期間及び人選については議長に一任することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平良一男君) 御異議なしと認めます。
 よって、さよう決定いたしました。
○議長(平良一男君) 休憩いたします。
   午前11時10分休憩
   午前11時11分再開
○議長(平良一男君) 再開いたします。
 日程第4 乙第1号議案を議題といたします。
 本案に関し、委員長の報告を求めます。
 文教厚生委員長。
   〔文教厚生委員長 嘉数昇明君登壇〕
○文教厚生委員長(嘉数昇明君) ただいま議題となりました乙第1号議案「専決処分の承認について」について、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 委員会におきましては、教育長の出席を求め慎重に審査を行ってまいりました。
 以下、審査の過程における執行部の説明及ぴ質疑の概要等について申し上げます。
 本案は、昭和58年4月18日午後6時40分ごろ、県立石川高等学校体育館2階の武道場内で、同校レスリング部員渡久地政明君当時同校2年生一が、バレーボール顧問でレスリソグは未経験者の数学教諭を相手にスパーリングの最中、頸椎骨折等の傷害を負ったものであります。
 本事件について、被害者本人及び両親が、県を被告とする損害賠償請求の訴えを那覇地方裁判所沖縄支部に提起したところ、平成元年5月25日、沖縄県に損害賠償責任があるとの判決があり、同日、判決書の送達があったものであります。
 当該判決は、仮執行が可能な内容となっていることから、その対抗要件として早急に強制執行停止の申し立てをする必要に追られ、5月30日に知事の専決処分により控訴したものであるとの説明がありました。
 本案に関し、県は5月30日に専決処分をして控訴しているが、相手方はどのような動きをしているかとの質疑がありました。
 これに対し、相手方の具体的な動きについては確認してないとの答弁がありました。
 次に、レスリングの担当でないバレーボール部の顧問教諭がスパーリングの相手になったことが事故の原因になったと思うが、どうかとの質疑がありました。
 これに対し、経験のない先生が練習相手になっても、そのことが事故を起こしたことにはならないということは裁判所でも認めているとの答弁がありました。
 次に、レスリングの経験者がおりながら、そこに立ち会えない理由があったのかとの質疑がありました。
 これに対し、事故発生前までは当該顧問教諭が練習相手になっていたが、しばらく休憩するということで、かわりの教諭に依頼して練習している最中での事故であったとの答弁がありました。
 次に、裁判の判決が下って控訴までの期間が2週間ありますが、議会を招集せずに専決処分することは議会軽視にならないかとの質疑がありました。
 これに対し、専決処分したことについては、当該事件の判決に仮執行宣言が付されていることから、相手方が強制執行を申し立てる以前に強制執行停止の申し立てを行う必要があったことから、当該控訴について議会を招集するいとまがなかったことが理由であって、決して議会軽視を前提とした対応ではないということを御理解賜りたいとの答弁がありました。
 そのほか、原告と被告の責任の度合い、部活動に携わる担任者の立場、部活動に及ぽす影響等について質疑が行われました。
 以上、委員会における審査の経過を申し上げましたが、審査の結果、乙第1号議案は委員長裁決をもって承認すべきものと決定いたしました。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げまして、報告を終わります。
○議長(平良一男君) これより質疑に入るのでありますが、ただいまのところ通告はありません。
 質疑はありませんか。
   〔「質疑なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(平良一男君) 質疑なしと認めます。
 これをもって質疑を終結いたします。
 これより乙第1号議案を採決いたします。
 本案に対する委員長の報告は、承認であります。
 お諮りいたします。
 本案は、委員長の報告のとおり承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(平良一男君) 起立多数であります。
 よって、乙第1号議案は、委員長の報告のとおり承認することに決定いたしました。
○議長(平良一男君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 今期臨時会における議会活動状況は、後ほど文書をもって報告いたします。
 以上をもって本日の会議を閉じます。
 これをもって平成元年第4回沖縄県議会(臨時会)を閉会いたします。
   午前11時16分閉会

 
19890402000010