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昭和61年(1986年) 第 2回 沖縄県議会(定例会)
第 3号 3月 1日
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議 事 の 概 要
昭和61年3月1日(土曜日)
午前10時2分開議
日程第1 代表質問
1 岸本忠三郎君(社会党)
2 古堅 実吉君(共産党)
3 赤嶺 幸信君(公明党)
4 下地 常政君(新生クラブ)
午後4時50分散会
○議長(志村 恵君) これより本日の会議を開きます。
日程に入ります前に報告いたします。
説明員として出席を求めた出納長新垣雄久君及び技監谷本修志君は、別用務のため本日の午前中の会議に出席できない旨の届け出がありました。また公安委員会委員長安座間喜徳君は、別用務のため本日の会議に出席できない旨の届け出がありましたので、その代理として公安委員会委員照屋盛通君の出席を求めました。
○議長(志村 恵君) 日程第1 代表質問を行います。
質問の通告がありますので、順次発言を許します。
岸本忠三郎君。
〔岸本忠三郎君登壇〕
○岸本忠三郎君 社会党の県議会議員団を代表いたしまして、当面する県政の課題並びに西銘県政のこれまでを振り返りながら質問を申し上げたいと思いますので、率直な御答弁をいただきたいとこう思っておりますので、よろしくひとつお願いをいたします。
それで早速質問に入らせていただきたいのでありますけれども、質問の第1点は、政府の地方財政運用に関して知事の基本的な認識をまずお尋ねをしておきたいのであります。
御承知のように、政府は昭和56年に臨時行政調査会を発足させまして、各面にわたる行政改革案を国民に提示をいたしたのであります。この改革案の全体を流れる思潮は、皆さん御承知のように中曽根総理大臣好みの戦後政治の総決算路線であることは各界から指摘をされているとおりであります。この行政改革方針について知事にただしておかなければならない点はたくさんあるのでありますけれども、きょうは地方財政に関する部分についてのみ、ひとつ知事の御見解をただしておきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
そこでまず、この行政改革を推進するという政府は、まず政府よりか自治体の方が財政は裕福である、こういういわば自治体裕福論を表に掲げて地方財政への切り込みにかかってきたということは皆さん御承知のとおりであります。その中身は何かというと、60年度には国庫補助負担率を一律にカットすることによって5800億円余の負担を地方自治体に転嫁をし、そして61年度には1兆1700億円に上る地方転嫁を政府はしたのであります。かくして地方自治体は近い将来、政府はともかくといたしまして地方自治体は借金で首が回らなくなるのではないか、こういうふうなことが関係者の間では非常に憂慮されている、このことは知事も御承知のとおりであります。それで政府はみずから招いたいわば国政運営の失敗のツケを地方自治体の住民に回し、これを合法化し、国民世論を誘導するためにつくられたのが地方裕福論であるということをぜひ御理解をいただきたいのであります。
さて、このような政府方針のためにそれでは我が沖縄県がどれだけの犠牲を受けたのか、どれだけの補助率のカットを受けたのかということを申し上げますと、60年度で県及び市町村合わせて86億円余りであります。そして61年度では同じく77億円であります。沖縄県の経済が財政支出に大きく頼っている現状の中で、見逃すことのできないいわば政府のやり口だとこう思うのであります。
政府の言いわけは、自治体が借金をしなさい、そのことは後で交付税でもって政府が措置をすると、だから安心して借金をしなさい、こういうことを政府は言っているわけでありますけれども、しかし皆さん御承知のように前後の見境なく自治体が借金をするというわけにはまいらないということは御承知のとおりであります。資料によりますと、西銘県政発足後の沖縄県の借金はウナギ登りにどんどんどんどん上昇しております。県税収入は前年比倍率にするとほとんど税収は伸びてないのに借金だけが伸びている、こういうことも事実であります。もちろんこれは沖縄県だけの傾向ではありませんけれども、いわば国が地方自治体に押しつけた財政政策そのものであります。国の負担を軽くするために自治法であるとか、地方財政法であるとかあるいは地方交付税法であるとか、こういうことを無視して地方の負担に押しつけてきたのがこの額ではないのかというふうなことを申し上げたいのであります。
そういうふうに地方自治体には一方的に国の財政不足のツケを回しながら、自治体に対してはそういうふうな負担をかけながら、じゃ政府みずからは何をしているかということになると防衛予算だけは確実にふやしていっている。例えば61年予算では、予算の全体の伸びが3%でありますけれども、防衛予算だけは6.58%、一般予算の伸びの実に倍以上の伸びを防衛予算には与えている。まさにGNP1%を超えるというふうなことがもう目前に迫っている、こういうふうなことが指摘をされているところであります。このような潤沢ないわゆる防衛予算だけはどんどん伸びていく、国防予算だけが伸びていく、軍事予算だけが伸びていく、こういうふうな状況を反映して、それじゃ沖縄県のいわば防衛庁の防衛施設庁の沖縄基地関連公共施設を見ておりますというと、59年の場合でありますけれども、沖縄開発庁関連公共投資よりはるかに防衛施設庁にかかわる公共投資の方が多くなっている。このことを一体どう見ればいいのかというふうなことであります。基地関連予算はふえ続けるけれども、県民生活につながる福祉予算や教育予算は減り続けていっている。
知事は、自治体運営に当たる責任者として、補助率がカットされ、借金体質を強めていく地方財政をどのように見ておられるのか、そのことについてお尋ねをしておきたいのであります。
その次に、県の財政でありますけれども、知事は今度61年度予算に当たって3600億円に上る財政予算を提起をしてきたわけでありますけれども、これはいわば総務部長の言葉をかりると未来に向かって大きくとこういうわけであります。ところがマスコミなりの言い方を聞いておりますというと、極めてお寒い予算とこういうふうに呼んでいるわけであります。したがってお寒い予算であるのか、将来に向かって、未来に向かって大きく羽ばたいていく予算なのか。そのことの議論についてはおいておくといたしましても、補助金が大幅に切り込まれていることは事実であります。そして借金によって沖縄県の予算が編成されているということも事実であります。したがってマスコミの諸君が何を言っているかというと、言っていることと掲げた予算の中身というのは極めて違うではないか、こういうことの冷やかしを実は西銘県政に対してしているわけであります。
それに対して、自民党の諸君は何を言っているかというと相も変わらずよくやったとこう言っているわけであります。
ところが今回の予算を皆さん細かく分析をしていただきますというと、例えば類似県一島根や鳥取や高知やあるいは宮崎、こういうところと比べてごらんなさい。人口が同じで、規模が同じで、沖縄県が好んで使ういわば類似県です。この似類県と比べて沖縄県の予算がどういうふうになっているかというと、1人当たりで見てみますと島根が44万3000円であります。高知も42万5000円であります、1人当たり。徳島の場合でも37万1000円であります。ところが我が沖縄県、1人当たりの予算にすると幾らかというと30万6000円なんです。いいですか、島根に比べて1人当たり14万も少ないんです、当初予算の額が。鳥取に比べて1万5000円少ないんです。宮崎県と同じ額なんです、当初予算。いいですか。「五ノ日の会」だとか、自民党県連が一生懸命やったと。そのことでこの予算を編成したというけれども、中身を見てみると島根や鳥取よりも少なく、そして特別措置法のない宮崎県と同じような額だというふうなことであれば、五ノ日の会や自民党の諸君が声を張り上げて、おれたちは一生懸命やったんだと、こういうことと何が変わりがあるんですかと、こういうふうなことを私は申し上げたい。類似県の中では最低の額だということを皆さんに申し上げておきたいのであります。
特に何よりも、第2次振計の中に盛られた諸施策を政府が責任を持って実行しようとしているのが、こういう予算の中で大いに疑問になる、こういうふうなことであります。
加えて西銘県政は、県立芸術大学や県庁舎建設、コンベンション・ホールや国体施設の事後の管理運営費に莫大な県単独予算を注ぎ込まなければならないという事態を迎えております。モノレールの建設が始まると県財政はさらに窮屈になり、借金をふやし続けなければ対応できないとこういう局面を迎えております。経常経費が幾何級数的にふえるという、そういうことが非常に心配をされているのであります。
その一方で、西銘県政が何をやったかというと、天然ガス株式会社、これを第三セクターでつくると、こう言った。そしてこれに対して1億円のいわば投資をした、途中で断念をいたしました。この1億円をどうするんですか、回収不能であります。アルゼンチン移住をしようやということで一生懸命宣伝をした。鳴り物入りで宣伝をしながら、アルゼンチン移住を今度はだめでしたということでほいとやめてしまう。特に知事の肝いりでもってつくったはずの「沖縄海外漁業」も倒産寸前であります。これに対して県は5000万円の出資をし、1億円の貸し付けをしているわけであります。ところがこの5000万円の出資も、それから1億に上る貸付金も、はて回収がどうなんだいということになると非常に危ぶまれております。
知事はせんだっての所信表明演説の中で、熟慮断行とこういうことを言いました。ところがこういうふうなことを見たときに、熟慮断行だったんですかと、いささか熟慮に欠ける部分があったのではないのかというふうなことを申し上げたいのであります。
国庫補助金は次第に減っていく反面、借金がふえていきます。税収の落ち込みが顕著になる一方で、県民の財政需要はますます増大をするばかりであります。県の財政運営についての知事の対応策と財政見通し、県政についての。それから財政計画、これをひとつお示しをいただきたいとこういうふうに思います。
次に、県経済は極めて深刻な不況に見舞われております。
日銀那覇支店がことしの1月にまとめた金融経済概況によりますと、沖縄県経済が毎年のように落ち込んでいるというふうに読める数字があるわけであります。例えば百貨店、スーパーの売り上げは、昨年、一昨年と連続して減り続けております。自家用車の新車販売台数、家電製品の販売額も2年続きの下落であります。銀行などの実質預金や貸出金なども、これまでの2けた台の伸びが58年以降は1けた台になり、預金は昨年の場合、前年に比べてわずかに4.5%の微増にとどまっているのであります。
また、沖縄開発公庫の資料によりますと、住宅建設については上乗せ融資措置を講じたにもかかわらず昨年は全体として前年を上回り、景気浮揚策のチャンピオンとして期待をされた個人住宅の建設、これも落ち込んでおります。また着工された住宅建設のほとんどが共同住宅やマンション住宅、いわば個人資産の住宅建設そのものではなくて、資産を運用するという形でつくられたのが住宅建設、これが非常に明らかであります。
それに公共工事保証請負額や建設受注額などがわずかにふえているように見えるのでありますけれども、これは防衛施設庁が発注する予算であります。そのことによってふえている。ところが皆さん御承知のように、この防衛施設庁が発注する予算は県内業者にはほとんど発注されない。専ら本土業者に発注をされ、したがって県経済に対する波及効果というのは非常に少ない、このことは皆さんも御承知のとおりであります。
失業率が依然として高水準で推移していることも皆さん御承知のとおりであります。特にこのような経済状況を反映して1000万円以上の企業倒産をここ二、三年で見ておりますというと、59年では270件、去年の場合には60年度で330件に上っております。そしてその負債総額も3年前は258億円であったんでありますけれども、去年は一挙に700億円に上っております。
このような中で、観光客の入域だけは200万人台の大台を突破をし、ホテルの稼働率も80%ということで推移をし、景気支えの非常に大きな底支えになっているということはうかがえるのであります。
ただ、ここで知事にひとつ一遍数字を見ていただきたいのでありますけれども、勤労者の可処分所得が非常に減っている。58年、59年とそれぞれ前年に比べてわずかに0.2%あるいは0.3%のいわば伸びしか示しておりません。昨年の場合には9カ月のうちのわずか3カ月だけは伸びておりますけれども、あとの6カ月はずうっと落ち込んだままであります。加えて所得税減税がいわば見送られ、そのことが消費を抑え込んだ、そのことが県経済の景気を極めて悪くしている、こういうことではなかろうかとこう思うのであります。
同時に、勤労者の家計が非常に苦しい、こういうことも別の資料で明らかになっております。例えば九州経済調査協会の60年度経済白書によりますと、59年度における沖縄の1世帯当たり貯蓄率は215万円、それに対して借金は幾らかというと281万円、貯金を全部はたいて出しても借金が払えないというのが沖縄県の実態だということを知事はやはり認識をすべきじゃないのか。不況が長引くにつれて銀行の融資のだぶつきが非常に目立ち始め、特に経済界にいる人たちは、去年から物すごく景気が悪くなったと、こういうことを言っているわけであります。
県の経済見通しでは、移輸出、それから移輸入、両方ともふえないというこういう見通しを示しております。このアンバランスを補ってきた財政支出はどうふというと、先ほど申し上げたようにいわば国庫の方はもうこれ以上金を出さない、こういうふうなことを言っているだけに、この不況が非常に長いトンネル、そしてこのトンネルから抜け出せるのかというふうな不安が一般の経済人の中にあるということを、ひとつ知事はきちっとやはり認識すべきだとこういうふうに思うわけです。
安定成長という言葉があります。なるほど安定成長という言葉は非常に響きはいいわけであります。安定成長だから、安定して経済が順調に伸びていくというこういうニュアンスを持つのが安定成長という言葉の響きでありますけれども、ところが安定成長というのは成長しないという言葉の裏返しだということを知事は理解をしなけりゃならないと、こういうことを知事は御理解をいただきたいと。そういうことで県経済への知事の認識とその見通し、それから対応策をぜひひとつお聞かせをいただきたいのであります。
その次に、第2次振興開発計画についてお尋ねをいたしますが、まずこの2次振計についての基本的な認識であります。
その最大の特色は、政府みずからが沖縄振興開発の方向とその施策のあり方を明らかにし、これを国の責任でもって実行していくというのが2次振計の最大の特色であります。いわば復帰後の沖縄づくりのプロセスとそのあるべき姿を国がその責任で沖縄県民に描いて見せた、いわば青写真であります。復帰後の沖縄県はこうします、復帰後の沖縄県はこうしようじゃないか、国の責任でもってそれをこういうふうにしますということで青写真でもって示したのが振興開発計画、そのことについては知事も異論はなかろうかとこう思います。
ところが、1次振計はその計画期間が10年であったのでありますから、当然のこととしてその最終年の昭和56年には格差は是正され、自立的発展の基礎条件は整備し終えていなけりゃならなかったはずであります。ところが残念なことにこれは果たせませんでした。そこで国は再び10年計画をつくり、引き続き国の責任において沖縄振興開発の方向と施策を明らかにしたのであります。この2度にわたる10年計画も残された期間は、知事も御承知のようにあと5年であります。果たして残された期間内における施策でもって格差は是正され、自立的発展への基礎条件は整備し終えられるんだろうかとこういうことになると、そのことについては非常に各界から疑問の声が提起されているのであります。
例えば県民所得は、目標年次には類似県の8割程度までやりましょうと、こういうことを国が示してくれた。ところが8割どころか、現在の段階では、あと5年しか残ってない段階でまだ七十四、五%しかいってない。到底到達をし得ない目標だとこういうふうな状況であります。
また、経済成長率は10年間の平均率を5.8%ということに設定したわけでありますけれども、ところがこれも過去を振り返ってみると実績を見てみると、おおよそ4%ぐらいにしかなってない。このことをどうするんですか。
企業誘致は効果をあらわしておりません。その結果、第2次産業における予想出荷額は目標を割り、失業率は高水準で推移し、工業開発地区は指定はしたけれども何らの効果もあらわさないままこのまま推移をしている。この事態は、西銘知事、一体どうするんですか。
それから都市用水の確保であります。
都市用水の確保についても毎年雨が降れば水は出る。雨が降らなければ渇水をする。そういう事態を解消するためには、雨が降っても降らなくても沖縄県民に絶えず水を供給する。それはどうするかということで計画をつくられたのがいわばここにも示されたような水の需給計画でありますけれども、ところがこれについても2次振計の最終年に至っても水の不足は解消されないということが明らかになったわけであります。特に御承知のように北西部河川総合開発事業が今度は予算がカットされました。そのことによって水は2次振計の最終年次に至っても確保されないと、こういうことが明らかになっております。
同時に、農業基盤の整備事業に至っては遠く計画に及ばず、都市計画事業や社会資本の整備についても格差は埋められないとするのが大方の意見であります。社会資本のストックがほかの県に比べて非常に少ないというふうな数字も示されております。
加えて昨今の財政環境の悪化は、2次振計の目指す目標達成にマイナス要因として作用することは必定であります。復帰の時点であれほど情熱をもって沖縄の振興開発を語っていた政治家あるいは行政マン、こういう人たちが沖縄離れを起こし、何を言っているかというと、沖縄の基地の方が重要ですよとこういうことを言っている昨今であります。だとするならば西銘知事、この時点で沖縄開発についての知事の認識が最も重要だということを知事自身が認識をしなければならないとこう考えるのであります。知事はいま一度、沖縄開発における国の責任を明確にした上で政府の一方的な都合で2次にわたる計画の目標が達成できなかった、こういう事態にならないように直ちに万全の対策を講ずるべきだとこう考えるのであります。
特別な措置が行革キャンペーンにのみ込まれてしまって、知らず知らずのうちに一般化され、普遍化されようとする現在の政治の動ぎは、沖縄県民の要求は置いてぎぽりにされて沖縄に対する国の要求だけが通されてくる、こういう事態になりかねないわげであります。政府は、米軍基地というリトマス試験紙を通して沖縄の施策を考える。そして自民党は日の丸、君が代を通して国家に対する沖縄県民の忠誠を試す。このような基本的な枠組みの中でしか沖縄の振興開発を考えないとするならば、沖縄の自立というのはまさに百年河清を待つがごとくにならないのかということを西銘知事や自民党の諸君に問いたいわけであります。
そういう立場で知事は、2次振計の目標達成に向けてどのように考えておられるのかお聞かせをいただきたい。
次に、このことと関連してお聞きしたいのは西銘県政の産業政策であります。
知事は、これまで国際交流事業や人材育成などの対外問題や遠い先のことについてはよく発言をし、それなりの施策の展開が見られるのであります。ところが産業振興政策についての情熱が非常に見劣りがいたします。西銘県政に一体、産業政策ありやというふうなことを問いかける産業人、経済人が非常に多い。このことを西銘知事自身気がついてもらわなければ困ります。
ざる経済だ、こういうことが言われております。輸血経済だ、こういうことが言われております。そして国の財政にどっぶりつかった沖縄県だ、こういうことを政府のいわば役人から言われないためにも、西銘県政は沖縄県の産業政策のビジョンをやはり示すべきじゃないんですか。
知事は、せんだっての所信表明演説の中で、県民に対して自立自助の気概を説いたのであります。ならば、西銘県政における自立自助の気概はこうなんだという産業政策を示して当たり前じゃないですか。そのことを示さないでおいて、いたずらに県民に対して自立自助を説いてみたところで一体何が成果としてありますか。経済の西銘だ、こういうふうなことで大きく構えては見せたけれども、振り返ってその産業政策を見てみるというと、そのポイントは何があったのか。それは人材育成であるとか、国際交流であるとか、いわば対外の問題、遠い将来の話、こういうことしか示し得なかったのが西銘県政じゃないですか。それは西銘県政における政策の主要な柱の中の1つであったかもしれませんけれども、産業政策だということは言えなかったはずであります。
そこで余すところ5年を残すのみとなった2次振計の後期の課題について問題を提起しながら見解を承りたいのでありますけれども、沖縄経済を見た場合、ざる経済であり、輸血経済の域は脱し切れないことも事実でありますが、しかしこの中から県民の必死の努力によって自立への明るい見通しが見えたかなと思うのが農業と観光であります。農業粗生産額は、復帰当時に比べて3倍以上の1000億円を超すまでになっております。観光事業収入も2000億円を突破し、財政支出と並んで県経済を底支えする柱として成長をしつつあります。1次振計の場合には、工業開発主導による経済政策の展開を想定し失敗に終わったのでありますけれども、我が国の投資環境がもはや再び工業開発型に戻ることは考えられないのであります。
そこで知事にお尋ねをするのでありますが、政府はかつて、地域経済の活性化と工場の分散及び投資効果を考えて拠点開発という手法を生み出しました。この手法を沖縄では農業と観光産業に適用し、一層の自立を促進する政策誘導を行うべきだとこう考えるのであります。この2つの産業を自立への戦略産業として位置づけることが沖縄県の産業発展への起爆剤たり得る可能性を大きく秘めているからであります。
そこでいま少しこのことを敷衍して申し上げるならば、農業投資はこれまでかなりの額が投資されてまいりましたが、沖縄農業の発展を強く制約している農業基盤の整備が著しく立ちおくれていることに留意をしながら、同時にまたその採択基準をいま一度見直しながら農家の参加意欲を高め、また農産物の支持価格制度、その枠を広げながら政府に対して我が国唯一の亜熱帯農業の確立を要請して参加を求めていく、こういう主張が西銘県政の中にあっていいはずであります。自立への可能性を大きく秘めた数少ない産業であってみれば、バイオ産業を誘発する効果もまた非常に大きいのであります。要は、為政者の姿勢がその成否を大きく左右することを付言しておきたいとこう考えております。
また、観光産業について申し上げるならば、これまで観光関連産業への補助率規定ばなく一般事業並みに扱われ、特別な配慮がなされてないまま今日に至っております。それにもかかわらず2000億円産業にまで成長できたのは、沖縄の地理的条件とその特異な文化であったとこういうふうに考えるのであります。そしてこの地理的、気候的特性は、これからの高齢化社会の中で特段の魅力を引き出すことが可能であります。沖縄県の場合、残念なことに観光振興を図るべき独立した行政機構は設けたけれども、「仏つくって魂を入れず」という例えどおり、その施策は絶えず後手に回っております。例えば観光振興基本計画はことしの3月でその計画は終わるわけでありますけれども、その後の計画はどうするかということがまだ明らかにされておりません。観光収入を地場産業の振興に結びつける施策も不十分であり、大型ホテルが乱立するという動きがあり、県内のホテル業者が深刻な懸念を表明しているにかかわらず手をこまねいているところであります。そのことについて、いわば農業と観光産業を戦略産業として位置づけることについて知事の御見解をお願いいたします。
それから沖縄県の独自の総合開発計画の策定についてであります。
北海道は北海道開発庁があり、同時に国が北海道開発庁の総合開発計画をつくり、北海道庁は北海道の発展計画をつくったのであります。ならば、沖縄県も同時にいわば沖縄県独自の振興開発を策定すべきだとこういうふうに考えるのであります。そのことについて前にも申し上げましたけれども、そのことについては答弁は要りません。そのことについてひとつ知事の御見解を承りたいのであります。
○議長(志村 恵君) 西銘知事。
〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 岸本議員の御質問に対しましてお答えいたします。
まず、県及び政府の財政運用に対する知事の基本認識について御質問がございましたが、お答えいたします。
我が国の財政事情は極めて厳しい状況にあり、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定向上のためにはなお引き続き財政の改革を強力に推進し、その対応力を回復することが重要な課題となっていることは御案内のとおりであります。このような基本的立場に立って行革が推進される中で、一般歳出の抑制と補助負担率の引き下げ等の措置がなされていることは御指摘のとおりであります。しかしながら本県は第2次沖縄振興開発計画に基づき地域特性を積極的に生かしつつ、引き続き各面にわたる本土との格差の是正を図り、自立的発展の基礎条件を整備する必要があります。
そこで、沖縄振興開発事業費の確保と沖縄振興法に基づく補助負担率の確保を図るべく県選出国会議員を初め県議会議員及び市町村、関係諸団体と一体となって要請を行ってきたところであります。
その結果として、61年度の沖縄振興開発事業費については、道路整備特別会計借入分を含めた実質額は1952億9200万円で対前年度比100.5%、公共関係事業費について申し上げますと対前年度比100.8%となっておりますが、前年度に引き続きマイナス要求基準が設定された厳しい財政環境の中で全国と比較いたしまして沖縄に対する特段の配慮がなされたものと評価いたしております。
また、補助負担率の引き下げ問題については、61年度は全国的に公共、非公共事業問わず、原則として2分の1を超える高率補助について60年度の10%カットに加え、さらに原則10%カットがなされております。また地域特例についても原則10%カットがなされたところであります。このような中で沖縄振興開発事業費については、10分の9以上の事業のみに限定して60年度補助率から5%カットする等異例の緩和措置が講じられているのであります。
なお、61年度においても国庫補助負担率の引き下げに伴う裏負担の増加分については、地方財政対策において地方交付税等により所要の措置が講じられることとなっております。
次、県民会館、県庁舎、芸大等の大型プロジェクトが同時進行しているが、これらのプロジェクトはほとんど県単事業であることからして今後の財政運営が大変心配だと。一体その見通しはどうなっているかと大変憂慮されているわけでございますが、この御質問に対しましてお答えいたします。
県庁舎建設、県民会館、芸大等の主要プロジェクトにつきましては、第2次振興開発計画の主要プロジェクトとして位置づけられておるのであります。目下、これらの事業を強力に推進しているところであります。御指摘のとおりこれらのプロジェクトを実施するためには多額の経費と期間が必要であり、今後の財政運営も考慮しながら推進していく必要があると考えております。
次に、財政の長期見通しでありますが、御承知のように昨今の国、地方を取り巻く財政環境は極めて厳しいものがございまして、二、三年先の動向を把握することは大変難しい状況にあります。しかしながら国体を初めとする各種プロジェクトの着実な推進を図るためにも、将来の財政運営の展望に立った財政収支見通しを持つことは必要であり、現在国の収支試算、県の決算の推移等をもとにいたしまして財政収支見通しを作成し内部資料として財政運営の参考にいたしておるところでございます。
次に、県経済の現状についてこれをどう把握し、企業倒産等の増加、失業率の増加等にどう対処されるかという提言を含めた御質問に対しましてお答えいたします。
最近の県内経済は、県民生活の基盤である消費者物価が極めて安定するとともに、企業設備投資及び公的投資が増加を示しております。雇用失業情勢はこれを反映しながら、厳しいながらも有効求人倍率、失業率ともに改善基調にあると思います。一方、住宅建設及び新車販売は伸び悩み、企業倒産は多い状況でございます。また円高により基地周辺業者を主体に厳しい面も見られるのでありますが、輸入に依存する度合いの高い県経済にとりまして全体として円高によるメリットの方が大きいと見られております。
このように県内経済は景気指標にばらつきが見られますが、景気は全体的に回復基調にあると見ております。しかしその回復の度合いはそう強いものとは見ておりません。県としては、このような現状認識から、景気のより一層の回復を図るため国が推進している円高対策としての中小企業への緊急融資及び内需拡大策としての公定歩合の引き下げ、住宅金融金利の引き下げ、公共事業の前倒し等と相まって公共事業等の県内企業への優先発注及び県産品の優先使用、中小企業者の資金需要に対応する金融政策や信用補完制度の強化、倒産防止対策の充実等々積極的にこれから対処してまいりたいと思います。また観光については各種イベントの実施や新規航空路線の開発等、誘客対策を強力に展開していく所存であります。
次、2次振計は残すところ5年しかないが、目標の達成はできるかという御質問がございましたが、お答えいたします。
第2次振興開発計画については、多目的ダムの建設、道路、港湾、空港等社会資本の整備を初め農業基盤、林道網、漁港、沿岸漁場及び工業団地等、産業基盤の整備は着実に進展いたしております。また学校教育、医療保健及び社会福祉施設並びに下水道、都市公園等の生活環境の整備も計画的に進められております。このように計画の目指す自立的発展の基礎条件の整備は各面にわたって進行いたしております。
なお、計画のフレームについてみますと、我が国の経済基調を反映いたしまして、最近の経済成長率は計画で想定された平均成長率を下回る状況にあります。しかし今後とも生産、生活基盤の整備を初め、特に産業振興を促進する新しいプロジェクト及び施策事業を着実に実施するとともに、民間活力のより一層の発揮による相乗効果を通じまして計画の目標が達成できるように全力を挙げる所存であります。
次に、農業と観光の戦略産業としての位置づけについての御質問がございましたが、お答えいたします。
農業についてお答えいたします。
本県の農業は、亜熱帯の温暖な気象条件を生かした生産振興が図られており、特に冬春期における野菜や花卉は近年生産の伸びが著しく、我が国の供給基地として大いに期待されているところであります。農業振興に関しては、第2次振興開発計画では経済の自立的発展を図るための基礎産業として位置づけられており、生産性の高い亜熱帯農業を確立するため、立ちおくれている農業生産基盤の整備等積極的に振興策を講じているところであります。
次に、観光についてお答えいたします。
観光は、御指摘のとおり本県を支える重要な産業であり、また第1次、第2次産業に対する波及効果が大きいことからいたしまして第2次振興開発計画におきましても重要な位置づけがなされ、最終年次における目標として入域観光客数300万人、観光収入3500億円が設定されております。県は、この目標達成に向け各面の施策を展開してきたところでありますが、関係業界の協力や県民の理解によって昭和59年、60年と2年続けて観光客数200万人台を確保することができたわけであります。今後の対策については、本年度で終了する観光開発基本計画に引き続き第2次の計画を策定し、その中で本県全域の均衡ある発展に留意しつつ、国際的にも通用する本格的なリゾートゾーンの形成を推進してまいりたいと思います。
なお、これらのリゾート開発に当たっては、基盤整備のための公共投資を優先的に行い、民間活力の積極的な導入を図っていく考えであります。
最後に、県独自の総合計画策定についての御提言がございましたが、お答えいたします。
第2次振興開発計画は、その性格上、総合的、長期的なマスタープランであることは御案内のとおりであります。今日のように激しく揺れ動く不透明な経済情勢下におきましては、すべての事業を事前に予定して実施計画、資金計画を作成することは極めて困難であり、現実に即しないと考えております。したがって県独自の総合計画を策定することは望ましくないと思料いたします。
以上であります。
○議長(志村 恵君) 休憩いたします。
午前11時2分休憩
午前11時4分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
西銘知事。
〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 岸本議員の提言の、農業も観光も戦略産業として位置づけて、これに対するより突っ込んだ振興策を立てたらどうかという御提言だと承っております。
先ほど申し上げたとおりでございますが、特に農業関係においては、御案内のとおり野菜、花卉類が冬から春先にかけて相当出ております。現在、出荷額にいたしまして花卉もまた野菜もそれぞれ60数億円の実績を示しておりまして、サトウキビがざっと申し上げまして年間約370億前後でございますが、やがてサトウキビをしのぐ体制ができ上がるのではないか。特にミカンコミバエ、ウリミバエ等の植物防疫体制が確立されますというと300億円に近い体制も期待でぎると考えられるのであります。そういったことで野菜、花卉を中心とするこれからの新しい分野の開拓、これは御指摘のとおりでございまして、そういう点、何も目新しいことはございません。何といっても農業の問題は、これは地力の培養、土壌づくりが基本でございまして、それを中心としてやっていかなければならないことは当然でございます。
また観光につきましても、昨年、日航機事故によって、200万人突破できるか大変心配いたしたのでございますが、幸い2年続きで200万台の入域者を確保することができたわけであります。
問題は、先日、平良哲議員からも指摘されたんですが、国際的にも通用するようなリゾートをこれからどう形成していくか。これに対してどう誘導していくか、これが観光に与えられた当面の政策でございまして、第2次振興開発計画の最終年次において300万人を目標とし、また観光収入を現在の2100億円から、3500億円に伸ばしていこうとこういう計画を持っております。
いずれにいたしましても、現在の段階で観光が2100億円で最高でございます。何としても戦後の沖縄経済を支えてぎた中心的な波及効果の大きい産業であることは間違いございません。そこへもってまいりまして沖縄のいわゆる地域的特性を生かした熱帯農業、果樹栽培、バイオテクノロジー、いろいろございまして新しい展望が開けてきたと。近いうちに3000億になるのも夢ではないとかように考えているわけでございまして、私が産業についてビジョンがないわけではございません。大きいビジョンを持ち、たびたび毎年の施策の中でこれを訴え、具体的な事業施策をその実現に向けて頑張っているところであります。
岸本さんは大変借金することを心配されているわけでごいますが、沖縄の現在の3600億円の予算を1万円に置きかえますというと自己負担率はわずかに1800円内外であります。あとの8000円から8200内は全部国庫支出金あるいは交付税で占められているわけでございまして、残念ながら今の県の負担力をもっていたしましてはどうすることもできないのであります。したがいましてこの財政依存度の強い財政構造、経済構造、この構造的な特質を今ここですぐ急に自立できるような体制に持っていけといったところでできるものではございません。幸い、年次的な予算の獲得によって格差は是正されております。また国民所得も平均して、人口増加が余りにも大きいために前年度を割るような体制にはなっておりますが、県民所得自体は毎年稼いでいるような格好でございまして、その点、格差の是正も順調に進んでおります。自立のための条件整備も順調に進んでおります。
そういうことで財政環境は大変厳しいのでございますが、国庫補助負担率の問題につきましても、振興事業に必要な予算の面からいたしましても、提案いたしました新規事業等の採択の面からいたしましても沖縄に対する配慮が十分なされているということでございます。
さき、水の心配もされておりましたが、もう水は心配ございません。北部5ダムも完成いたしましたし、漢那ダムの建設の見通し、羽地ダムの建設の見通し等々、水のこともそれほど心配することはございません。加えて西系列の河川改修計画等もいろいろあるわけでございまするから……。問題は、市町村、県負担分は地方財政対策の中で交付税を中心として国が面倒を見ることになっております。第2次振計は、御案内のとおり国の責任で、鈴木総理の手によって策定されましたことは御案内のとおりでございます。岸本忠三郎さんも一緒になって、そういう2次振計の完遂に向かって努力しようじゃございませんか。
○議長(志村 恵君) 休憩いたします。
午前11時10分休憩
午前11時18分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
休憩いたします。
午前11時19分休憩
午前11時20分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
西銘知事。
〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 産業政策は第2次振計との関連で質問があったわけでございます。
第1次振計は糖業を中心としていろいろ施策が講ぜられたんだが、第2次振計においては何を目玉にするかということでございますが、そういうことではなくて、第1次振計はその総点検の結果について申し上げますというと、これは港湾、空港、道路、学校建設、こういうハードな面においてはもう本土水準に既に達したものもあるわけであります。特に校舎建設については本土並みの体制に十分入りました。
ただ、第1次振計の結論として言えることは、医療面、福祉面において相当おくれをとったと。いわゆるソフトな面において大変おくれがあったと。そういうことでこの第1次振計の10力年間の経過を顧みてその総点検の上に立って、点検した結果に立って第2次振計が策定されましたことは御案内のとおりであります。したがいまして振興開発計画の目的は、1つには格差を埋めること、2つ目には産業基盤を中心として自立のための条件整備を1つ1つ整備していく、この2つが振興法に基づいて策定された第1次計画であり、第2次計画であります。したがいましてあくまでも振興開発計画というものは、第1次振計で格差の是正できなかったもの、自立のための条件整備についてまだまだ足りないもの、こういったものを重点にしてやるべきであることは御理解いただけると思うのであります。したがいまして第2次振計の中でどの産業を目玉としてやっていくのかということになりまするというと、必ずしも観光にこれを絞り、農業だけにこれを絞るわけにはまいらないのであります。いわゆる産業以外の福祉の関係も、医療の関係もおくれたものはこれをできるだけ本土並みの水準に近づける
と。これがもともとの第2次計画のできた大きな目的でございますので、そういう点で御理解をいただきたいと。
観光も大事だが、同時に今、野菜、花卉が脚光を浴び、なおかつこれがミバエ等の根絶によって相当伸びる傾向にありますから、これも育てていかなければならないとこういうことでございまして、目玉がないといえばそれまでのことでございますが、あらゆる施策についてきめ細かく配慮していかなければならないのが沖縄の現状ではないかと考えております。
○議長(志村 恵君) 休憩いたします。
午前11時23分休憩
午後 1時50分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
午前に引き続き代表質問を行います。
古堅実吉君。
〔古堅実吉君登壇〕
○古堅実吉君 日本共産党県議団を代表して質問いたします。
まず最初に、知事の今回の所信表明についてであります。
知事は所信表明で、就任以来7年の西銘県政の実績を自画自賛されました。ところがあれほどの長々とした選挙向けの自己宣伝を意気込んでなさったにかかわらず人々の心を打つものがなく、県民の共感を呼ぶものとはなりませんでした。
西銘知事は、この7年余、県民の不幸の最大の根源であるアジア最大の米軍基地を一貫して擁護する立場から県民に立ち向かい、悪政を続けている自民党政府への中央直結とその出先の代官的立場から反動的県政を強引に押しつけてまいりましたが、それが知事の座右の銘とする「熟慮断行」の政治姿勢に基づく反動的県政の断行であったことは明らかであります。日米安保条約の堅持、臨調にせ行革、地方行革、戦後政治の総決算路線、それが戦争と暗黒、国民生活と福祉、教育、地方自治等の犠牲、軍国主義の復活強化と民主主義破壊をもたらす道であることは今や歴然たるものがあります。西銘県政の7年余はその悪政への中央直結そのもので、県民本位の県政を願い求める県民の立場からも全く許せないものでありました。
御存じのとおり、今沖縄は米軍基地の20年強制使用の問題、米軍演習と県民被害の問題、米軍のフィリピン基地からの暫定移駐の問題等日米安保条約と平和、県民の生活と権利をめぐり、かつてない厳しい状況下に置かれています。この問題をどう受けとめ、どのように対処するかは我が沖縄県政にとっての基本姿勢にかかわる問題であり、決して避けて通ることのできない重要な問題であります。
しかるに知事は、その県政1年の所信表明において、最も重要な米軍基地、演習、平和問題等について一言も立ち入った発言をされず、あえてそれを避けてしまったのはなぜですか。
知事は、県民の抱える苦悩の前に日米安保条約堅持の立場を踏まえては語れなかったのではありませんか。それとも西銘県政にとっては述べるに足らぬほどに軽視してよいと考えておられる問題なのですか、知事の真意を伺っておきたい。
第2の質問は、人類の死活にかかわる核兵器の廃絶問題についてであります。
周知のように、去る1月15日、ソ連のゴルバチョフ書記長が、15年以内に世界の核兵器を廃絶することについての具体的提案を行いました。日本共産党は、一昨年12月の日ソ両党共同声明を踏まえながら、今回のゴルバチョフ提案について、その15年という期限の長過ぎる問題などはあるが、人類を核戦争の恐怖から解放するための核兵器廃絶の問題を具体的な計画として世界政治の日程に上せたことを歓迎しています。
その国際的反響も当然のことながら大きいものがあります。レーガン米大統領もその声明の中で、1983年、日本の国会で、私は核兵器の完全廃絶を呼びかけたなどと表明し、ゴルバチョフ提案を肯定的に受けとめております。
日本共産党の宮本議長は、このような新たな情勢のもとで、去る1月28日、レーガン大統領に3回目の書簡を送り、米ソの最高責任者が、今、核兵器廃絶を双方から呼びかけているという事実は核兵器廃絶への展望を強めるものであると指摘し、さらに今まさにその言明を実行に移し、米ソ両国が核兵器廃絶の政治合意を形成し、人類の熱望にこたえるときであると強調しておられます。
昨年2月、世界12力国の平和問題の著名な方々が広島、長崎に集い、生きとし生けるものにとっての緊急の課題である核戦争阻止、核兵器全面禁止、廃絶を訴えた「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」を支持する署名は、既に日本全国の地方自治体の4割を超える1500人の首長が署名し、国際的にも145力国で署名活動が広がっています。また国内で非核自治体宣言を行った地方自治体は、1年前の400台からその2倍余に当たる917自治体となり、全国人口の過半数6000万人を超える自治体に及んでいます。県内でも1年前の9自治体から16自治体へと2倍近くにふえました。
このように核戦争阻止、核兵器廃絶の願いと運動は、被爆国日本はもとより、今や世界政治の大きな流れとなりつつあります。
ところで、昨年も一昨年も非核沖縄県宣言を行ってはどうかとの共産党の代表質問に対して、知事は、我が国は非核三原則があり、国是として厳正に堅持されているものと理解し、県は非核宣言を行う考えはないと拒否し続けてこられました。
そこで次の諸点についてお伺いします。
1つ、国是としての非核三原則が堅持されていれば、なぜその非核三原則を踏まえての非核沖縄県宣言ができないのですか。非核三原則の堅持を肯定されるのであれば、むしろ非核沖縄県宣言を積極的に展開してこそ道理ある態度と言えるのではありませんか。
2つ、知事は、非核沖縄県宣言は拒否しておられるが、人類の思想、信条を越えた共通の切実な願いであるすべての核兵器を緊急に廃絶すべきであるとの考えには賛成できますか、それとも賛成できませんか明らかにしてください。
3つ、最近、自由民主党が「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」という題名のパンフレットを発行しています。このパンフレットがそれであります。(資料を掲示) これは全国の地方自治体で広がっている非核都市宣言を敵視し、その中で、「「非核都市宣言」は、米国が日本に差し出している核抑止力を否定することになり、ひいては日米安保条約の弱体化、解体を招く大変危険な運動です。」と述べているように、国民の非核の願いと努力に対する重大な挑戦状とも言うべきものです。
このパンフレットの結びに当たる最後の項はその見出しが、核兵器の廃絶は日本の平和を破壊します、という言語道断のもので、こう書かれています。人類に対して巨大な破壊力をもつ核兵器を廃絶することは、非常に好ましいことのように思われがちです。しかし、核兵器の廃絶が達成されても、通常兵器やBC(細菌、化学)兵器が同時に廃絶されない限り、核兵器の廃絶は逆に世界を戦争に巻き込みかねません。西側の核抑止力の解体は、第3次世界大戦につながる危険な道であることを認識すべきです、などという恐るべき内容です。これが被爆国の政権党の態度として許されてよいでしょうか。
そこで伺いますが、知事が非核沖縄県宣言をかたくなに拒否し続けておられるのは、このような自由民主党の考え方、方針と同様の立場からのものですか。
知事は、このパンフレットに示されている自民党の考え方を支持されますか、それとも支持されませんか明確にしていただきたい。
第3の質問は、米軍基地と那覇空港問題についてであります。
その最初は、天皇の来県によって沖縄の戦後が終わるかということについてであります。
知事は、沖縄国体に天皇の来県を実現し沖縄の戦後を終わらせたいと表明されてきておられますが、一体、天皇が来県されれば沖縄の戦後が終わるんでしょうか。日米安保条約のもとでアジア最大の米軍基地となっている沖縄の現状は、戦後が終わるどころか、再び新たな戦争に巻き込まれる危険な方向に突き進んでいるというのが客観的な事実です。あの悲惨きわまりない沖縄戦から40年が過ぎ、祖国復帰からでも14年になろうとしています。だがしかし日本全国の167分の1、すなわち0.6%の面積でしかない沖縄にいまだに米軍専用基地は全国の75%が置かれ、県民は演習による人身の被害、山火事その他の財産の被害、各種犯罪の続出等米軍基地の重圧からの解放どころか、戦場さながらの様相を呈することさえ少なくない状況下に置かれています。祖国復帰の際、政府は、本土並み基地での返還などと言って県民を欺いたものでした。そして今、軍用地契約拒否地主の土地を20年も強制使用するという言語同断の手続を強引に推し進めています。
知事、あなたは、安保条約堅持の立場から県民意思を踏みにじり、一体いつまでこのような米軍基地下の沖縄の事態を容認し続けるつもりですか。
天皇の名において戦われ、本土防衛の捨て石作戦とされた沖縄戦、そのために悲惨きわめた沖縄、そして今再び核戦場化への危険な道につながれている沖縄の現状、この沖縄に君が代や日の丸を強制するのと同様の反動的政治姿勢に立って天皇の来県を実現すれば、なぜ沖縄の戦後が終わるんですか。
知事は、かつて那覇市長であられた1964年6月4日、あの専制支配をほしいままにした悪代官キャラウェイ高等弁務官に、事もあろうに那覇市の名誉市民の称号を与え、那覇市民章を贈るという屈辱的なことまでやられましたが、それはキャラウェイに代表されたアメリカ帝国主義の軍事的、植民地的支配を賛美する役割を果たし、那覇市民を初め県民を欺くものでありました。そして今度は天皇来県で沖縄の戦後が終わるなどと県民を欺き、天皇の政治的利用をはかろうとしておられますが、断じて許されることではありません。
知事、沖縄戦の悲惨な体験をし、戦後の長期にわたるアメリカの軍事占領下であらゆる苦難を強いられてきた県民は、確かに沖縄の戦後が終わったと言える日が一日も早くやってくることを心から願い求めています。しかしそれは知事が考えておられるように沖縄国体への天皇の来県を強行し、それを君が代や日の丸、自衛隊などの押しつけに結びつけ、軍国主義の復活強化と日米軍事同盟体制国家づくりの政治を推し進めることによって実現できるもめでは決してありません。沖縄の戦後を本当に終わらせる道は、このような反動攻勢を断固として許さず、日米安保条約を廃棄し、核兵器も一切の米軍基地も撤去され米軍もいなくなり、文字どおり再び戦場に巻き込まれる心配から解放され、平和で住みよい沖縄を取り戻す方向に進んでこそ開かれるものであります。
知事は、県民の心からの願いであるこの大道を求めて進む勇気があられますか。それとも県民の願いに背を向けてこの道を拒否されますか、明確な御答弁を求めます。
2番目は、基地の整理縮小と20年土地強制使用問題についてです。
知事は、基地の整理縮小を公約に掲げ、昨年6月のワシントン訪問では那覇軍港や普天間飛行場、伊江島補助飛行場等の返還を要望されました。
ところで政府は、これらの施設の中にも存在する契約拒否地主の土地について、憲法にも反し、いかなる意味合いにおいても許されない不当、不法な20年の強制使用手続を強行しつつあります。知事は、不当にも事実上それを容認する態度をとり続けています。
西暦2007年までの強制使用で基地の恒久化につながる今回の手続を容認することは、知事の公約である基地の整理縮小にも訪米要請の趣旨にも反することは明らかです。知事はそれでも何の意思表示もせず、何の手も打たずに20年強制使用の手続が完了するのを待つという無責任な態度を続けられるつもりですか、はっきりさせてください。
3番目は、那覇空港の安全確保と民間専用化問題です。
年間、およそ600万人の旅客が出入りする那覇空港を、自衛隊との共同使用を廃止して安全な民間専用空港にしてほしいということは全県民の切実な願いです。しかし現実には自衛隊の弾薬庫の増設やF4ファントム機への配置がえ、新自動警戒管制組織(新バッジ・システム)化の準備など自衛隊の恒久基地化の方向に強化されています。これは極めて重大な問題です。
知事は、那覇空港がこのように自衛隊基地として年々強化されてきている事実は認められますか。
自衛隊基地として強化されていく状況のもとで、復帰後自衛隊機等による重大事故が8回も発生していることなどに見られるように、那覇空港の軍民共用による危険性は増大するばかりです。県民は、率直な気持ちでこの軍民共用による危険性について受けとめ、憂慮しています。
ところが、県政の最高責任者たる知事が、この那覇空港の自衛隊との共用問題に対して、いまだに危険であるとの考えさえ表明できないということは極めて重大な問題です。それは知事が自衛隊の立場を優先させ、空港の安全確保という最重要課題を二の次に押しやっているところからきています。そんな態度では、知事が強調してこられた県民本位の県政が推進できるはずがありません。事実、革新県政時代には那覇空港の軍民共用廃止と民間専用化実現のための政府要請が、文書によるものだけでも七、八回に及んでおり、また本県議会も復帰後7回の意見書採択と政府要請も行ってきていますが、残念ながら西銘知事は就任以来7年余に及ぶ今日に至るまで、この民間専用化を主題とする文書要請をたったの一度も行ってないのであります。知事が県議会で那覇空港の自衛隊との共同使用の問題について念を押しての質問をされても、共同使用は危険だと表明することさえできないような政治姿勢では、政府に対してまともに民間専用化を実現するよう申し入れできるはずがありません。
知事のこのような中央直結で軍事最優先の態度は、空港の安全確保を真剣に願っている県民の意思に反し、県民の何ぴとも納得させることのできない政治姿勢だと申さねばなりません。知事はこのような姿勢を直ちに改め、昨年の日航機大事故の教訓にも学び、那覇空港の安全確保のため自衛隊との共同使用の廃止と民間専用空港化への努力を真剣に展開すべきです。
知事、あなたは文書をもって民間専用化を主題とする政府への申し入れをなさいますか、それとも申し入れるつもりはありませんか。知事の県民に対する責任ある態度を明確にしていただきたい。
知事の公約に大那覇国際空港の建設の問題があります。知事は、その問題をどうなされるおつもりですか。
この構想は、自衛隊との共同使用を前提としては成り立たないと考えられますが、専用が前提か、共用が前提かについても明らかにしてください。
第4の質問は、昭和61年度予算と2次振計、県民生活、福祉問題についてです。
去る1月17日、県企画開発部は昭和59年度の県民所得の推計結果を発表しましたが、それによれば、1人当たりの県民所得は142万8701円で、前年度の58年度に比べ4.6%、6万2290円の伸びとなったが、全国平均の1人当たり国民所得との格差は逆に開いてしまいました。すなわち58年度の格差は47万2030円で全国平均の74.3%で、59年度の格差は49万7523円となり、その開きは2万5493円も増大し全国平均の74.2%へと後退したものであります。
これは、沖縄振興開発計画が経済基盤の強化と本土とのもろもろの格差是正を主眼に置いていることに照らしても、2次振計が順調に進展していないことを示すものです。61年度は2次振計の半ばに当たりますが、知事は、2次振計の期間中にこの格差をどれだけ縮めることができると考えておられますか。
また、2次振計の目標に照らし、これでも2次振計は順調に進んでいるとのお考えですか。
さて、2次振計は西銘の手で、などと経済の西銘を売り物にして再選された西銘知事ですが、知事2期目の最後の予算年度という年でありながら、2次振計の中核をなす振興開発事業費の獲得において成功できず、経済の西銘は1期目同様、2期目もついに幻の経済の西銘として締めくくらざるを得なくなっています。
自民党中曽根内閣が強引に推し進めている臨調にせ行革の政治は、軍備拡大を基本にして国民の生活も福祉も医療も教育も大きく犠牲にし、民主主義破壊を進める戦後政治の総決算路線となっておりますが、その犠牲をまともに受けている一つに沖縄振興開発事業予算があるのであります。
知事は、中央に太いパイプ云々しながら、61年度振興開発事業費も60年度と同様ふやすことができずマイナス1.2%となり、3年連続で対前年度比マイナス予算となってしまいました。ただ、61年度は、道路特別会計から32億円を借り入れするという苦肉の策で辛うじて0.5%のプラスとなっただけであります。
知事の任期最後の振興開発事業の対前年度比伸び率を振り返ってみますと、昭和48年度から53年度までは屋良、平良の革新県政時代で、その6年間の平均伸び率が29.6%という高い水準であったのに比べ、54年度から始まった西銘県政はその初年度から思わしくなく、2年度目からはがた落ちの連続となっているのが特徴であります。その年度を追ってみますと54年度が22.7%、55年度ががた落ちの2.0%、56年度が2.5%、57年度がついにマイナス1.7%、58年度がわずかにプラス0.2%、59年度が再びマイナス0.9%、60年度もマイナス1.4%、そして61年度も3年連続マイナス1.2%で、道路特会借入分を加えるとやっとプラス0.5%というみじめな姿です。
このような予算獲得状況のもとで、01年度は借入分を入れても振興開発事業費は1952億9200万円にとどまり、知事の就任最初の54年度の開発事業費1930億5200万円に比べても、この8年間でわずかに1.1%がふえただけであります。
一方、54年度から61年度までの8年間の物価は、61年度の2%の見込みを前提にすれば約26%の上昇ですから、この物価上昇分を差し引けば61年度の開発事業費は逆に1445億1700万円に減ってしまいます。これは西銘知事就任初年度である54年度開発事業費に比べ、61年度開発事業費は実質74.8%まで後退していることを意味します。
このような実態にありながら、知事は今回の所信表明で、事もあろうに振興開発に必要な予算が確保されましたことは何より喜ばしい限りでありますと述べておられますが、全く許せない無反省の態度です。
知事、あなたは物価上昇に見合う開発事業予算の獲得さえできなかったことについて、もっと真摯な態度で県民に対して申しわけないと表明すべきではありませんか。
それともなお、喜ばしい限りだと胸を張ってみせるおつもりですか。
さて、知事は、振興開発予算が思うようにふやせない理由として国の財政事情の厳しさを言い続けてこられました。確かに軍備増強、大企業奉仕の自民党政府の失政のために61年度末で143兆円の借金となります。これは1億2000万国民一人一人が120万円ずつの借金を背負っている計算となり、深刻な財政破綻状況です。しかしそれでもアメリカの要求を受けながら軍備増強には湯水のように予算をふやし続け、そこに振り向ける予算を捻出するために福祉や医療、教育等の予算を犠牲にし、あわせて沖縄振興開発事業予算も犠牲にしているものであります。
知事、このグラフをごらんください。(資料を掲示) これは7年前、知事が就任された初年度である54年度を基準に、政府一般会計、軍事費、振興開発事業費について61年度までどれだけ伸びたかを示すグラフであります。この左側が政府予算で40.1%、真ん中が軍事費で、財政が厳しいと言われながらこの軍事費は超突出となり、59.1%伸ばしました。その軍事費の中でも最たるものは思いやり予算です。在日米軍へのプレゼントに相当するこの思いやり予算のごときは、この7力年間で実に292%、約3倍にもふやしているのであります。しかしながらこの振興開発事業費はたったの1%しかふやさなかったのであります。見えますか。見えないほどに低い、それほどに冷たい仕打ちを受けているのであります。その上に、知事が60年度限りだと強弁された補助金カット問題もそれを食いとめることさえできず、61年度はさらに切り込まれ3年後まで続けられることになってしまいました。
この表を見ても、日本共産党が主張し続けている、軍事費を大幅に削って、国民の生活、福祉、教育に回せということがいかに道理にかなったものであるかがよく理解できるはずであります。
4分の1世紀の長期にわたる米軍占領時代にもたらされた本土との格差是正などを目的としてつくられた振興開発事業は、その目的が達成されるまで国の財政が厳しいからとの理由で手控えされてはならないものであります。ましてや軍備増強に振り向ける予算は突出と言われるほどに確保しながら、振興開発事業費についてはかくも冷たい取り扱いをするという自民党政府の仕打ちは絶対に許されてはなりません。同時に、振興開発特別措置法に基づいて、他県の場合とは性格を異にする高率補助についてそのカットを強行したことは法の趣旨に照らしても二重に許されない問題であります。
知事は、このような仕打ちについてどう受けとめておられるか。
そのようなことを許してしまった知事としての責任をどう考えておられますか。仕方がないとのお考えですか。
これらの問題について、知事は常に県民の立場からではなく、政府の財政も厳しいという政府の立場からとらえて対処してきておられますが、なぜ知事は、沖縄振興開発特別措置法制定の原点に返って沖縄の立場を強力に主張し、政府を納得させるだけの政治力を発揮することができないのですか。西銘知事の政治力の限界として受けとめてよいのですかお答えください。
以上で質問を終わりますが、さきに質問要旨も届けてありますので、知事が態度をあいまいにされずに明確な御答弁をくださるように要望申し上げます。
○議長(志村 恵君) 西銘知事。
〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 古堅議員の御質問に対しましてお答えいたします。
知事の所信表明と県政7年についての御質問がございましたが、お答えいたします。
日米安保条約、米軍基地、平和問題等県政の避けて通ることのできない問題について、知事の所信表明は一言も立ち入った発言をしていない、なぜかという御質問でございます。お答えいたします。
所信表明で、平和で明るい活力ある沖縄県づくりを目標に、新年度におきましても県政運営の重要な6つの柱の1つとして基地問題を取り上げております。すなわち基地については、日米両政府間で返還合意のあった米軍提供施設区域及び地域振興開発の上で必要な施設区域の早期返還の促進を図ることとし、また基地被害を防止するため米軍及び国に対し、基地に起因する被害の未然防止対策の確立を要請するとともに、三者連絡協議会等を活用することで基本的な考えを申し述べたところであります。
次に、核の廃絶についての御質問に対しましてお答えいたします。
国是として非核三原則が堅持されていれば、なぜ県は非核宣言をしないのか、できないのかという御質問に対しましてお答えいたします。
御承知のとおり、我が国は非核三原則を国是としております。国において厳正に堅持されているものと理解いたしております。したがって非核宣言についてこれを行う必要はないと考えます。
次に、人類の切実な願いであるすべての核兵器を廃絶すべきであるとの考えに賛成できるかということでございますが、核兵器の廃絶は御指摘のとおり人類の切実な願いであります。これは私を含めてのことでございます。しかしながら、米ソ両国を初め核保有国が話し合いによって核兵器が廃絶されるのであれば、これにこしたことはございません。問題は、核の恐怖の均衡で平和が維持されている現状も率直に認めなければならないと思います。
次に、核兵器の廃絶問題と関連して、自由民主党から出ているパンフレットについて知事の非核宣言をしないこととの関連があるのではないかという御指摘がございましたが、お答えいたします。
我が国が非核三原則の堅持をはっきりと表明していることから、国において国是として厳正に堅持されているものと理解いたしております。したがって、県は非核宣言についてこれを行う必要はないと考えているものであり、古堅議員の指摘するパンフレットとは関係はございません。
次に、天皇の御来県についての御質問がございましたが、激しい口調で大変非難されておりましたけれども、私の真意は決してそういうものではございません。天皇の御来県は、国民的な行事である国民体育大会の開催基準要項に従って、慣例としてどこの県でも行われる国体には日の丸を掲げ、天皇陛下の行幸を仰いでいることは御案内のとおりであります。言葉をきわめて、天皇の来県を強制してという大変難しい表現をされておるのでございますが、そういうことではないと御理解を賜りたいと思います。
沖縄の基地は、復帰に際し、日米間で締結された沖縄返還協定により本土と同様に安保条約及び地位協定が適用されております。御指摘のとおり本県には広大な基地が集中しておりますので、基地の整理縮小を県政の重要課題として位置づけ、日米両政府に要請しているところであります。
天皇陛下は、戦後、戦災地の復興の状況視察と戦争の痛手から国民を立ち上がらせるため、沖縄県を残し46都道府県を巡行され、さらに植樹祭等もございまして各県をくまなく行幸されております。その間、沖縄県への御訪問の御希望がありながら実現されていないのであります。また、陛下は沖縄県への御関心も深く、事あるごとに御心痛もあったと聞き及んでおります。幸い、昭和62年に海邦国体も開催されることでありまするし、慣例として国体に天皇陛下が御出席されているので御臨席を仰ぐ機会が得られれば、この際ただ1つ残された沖縄県の現状も見ていただき、県民に親しく接していただくことによって陛下の心残りも払拭されるであろうし、心安まる機会が得られるのではないかとの配慮から、陛下に対する御進講の機会がございましたので、その機会を得て、ぜひ沖縄国体に御臨席をいただき日本の戦後を終わらせてくださいと申し上げたのであります。
天皇の御来県によって沖縄の戦後が終わるか。
それは戦争は終わったのでありますから戦後は永久に続くわけでございまして、御来県によって戦後が終わるはずはございません。そういうことで申し上げているわけではございません。
戦後、我が国が平和と繁栄を実現することができたのは、日米安保条約を基盤とする日米友好関係が存在したからであると私は高く評価いたしております。我が国を防衛するための最小限度の基地は必要であると考えております。
なお、我が国は非核三原則を堅持していることから、核は存在しないものだと考えております。
次は、米軍基地と那覇空港問題についての御質問がございましたが、お答えいたします。
20年使用の問題について、何も手を打たずに責任を逃れるのかというお叱りでございましたが、基地の整理縮小は県政の重要な課題でございまして、したがって施設区域の使用期間の長短にかかわらず、返還合意施設と振興開発の上で必要な施設については今後とも引き続きその返還を日米両政府に要請してまいりたいと思っております。
また目下、土地収用委員会で手続を踏んで審理の最中でございますので、これについてコメントすることは適当ではないと思っております。
次に、那覇空港問題について御質問がございましたが、お答えいたします。
那覇空港は、自衛隊基地として弾薬庫の増設やF4ファントム機への配置がえなど年々強化されているが、その事実を認めるかということでございますが、これは認める、認めないもない、事実の問題としてあるわけでございまするから、お答えいたします。
F4ファントムの配備は、F104Jの老朽化に伴う機種変更であり、弾薬庫の増設は安全性の確保のためのものであると聞いております。また新バッジ・システムは侵入機を迅速かつ的確に捕捉するための自動警戒管制組織とのことであり、那覇基地においていろいろな改善が図られているとのことであります。
次に、那覇空港の安全確保と民間専用化問題について、知事は文書による要請は一遍もしてないということでございますが、これは文書ではたった1回しかやっておりませんけれども、機会あるたびに関係要路に対して要請をいたしておるのでございます。これからも機会を得て要請してまいりたいと思います。
文書による要請をやれという御要請でございますが、その件につきましては前向きに検討してまいりたいと思います。
知事公約に大那覇国際空港の建設があるが、どうするか。これは一体、民間専用を前提としてのものであるか、それとも共用が前提かという御質問がございましたが、お答えいたします。
大那覇国際空港については建設に膨大な投資を必要とするため、現下の厳しい財政環境では極めて困難な状況にあると思料いたします。しかし今後とも、21世紀に向けての長期的な課題として取り組んでいかなければならないと思っております。
なお、県が調査いたしました大那覇国際空港構想は、昭和75年における航空旅客需要を2000万人、貨物取り扱い量を56万トン、航空機離着陸回数を14万回と予測いたしております。それに対応するためには那覇空港の沖合を埋め立て、新たに3500メートルの滑走路と本格ターミナルを建設する必要があると結論づけているものであります。これは民間専用を前提に構想したものであります。
次に、61年度予算と2次振計についての御質問がございましたが、お答えいたします。
59年度の県民所得の格差は58年度より開いている。2次振計中にどれだけ格差を縮めていくことができるか。また目標は順調に進んでいるかという御質問に対しましてお答えいたします。
59年度の1人当たり県民所得は、速報段階で全国との格差は58年度より0.1ポイント開いております。これは人口の増加率が全国の0.6%に対しまして、本県は1.3%となり2倍以上となっております。これが大きく影響いたしておりまして、本県の人口がこのように大幅に増加することは、本県経済社会の活性化を意味し喜ばしい現象とも言えるのであります。また第2次振興開発計画の59年度までの実績を見ますと、県の経済成長率は全国の成長率よりも上回って伸びております。この間における人口の伸びも全国に比べまして著しく高くなっております。
一方、多目的ダムの建設や道路、港湾、空港等社会資本の整備を初め農業基盤、林道網、漁港、沿岸漁場及び工業団地等々産業基盤の整備は着実に進展いたしております。また学校教育、医療保健及び社会福祉施設並びに下水道、都市公園等生活環境施設の整備も計画的に進められております。その結果、社会資本や教育施設等の一部においては既に全国水準を上回ったものもあり、あるいは水準に達するなど計画の目指す自立的発展の基礎条件の整備は斉面において着実に進められておるのであります。
次に、61年度予算について、対前年度マイナス1.2%、道路特会借入分を加えてやっと0.5%の増加という厳しさであるが、知事は物価上昇に見合う予算の獲得さえできなかったことを真剣な態度で県民に対してわびるべきではないかと、こういう大変怒りを込めた御質問でございましたが、お答えいたします。
我が国の財政事情は、私が申し上げるまでもなく古堅議員がよく御承知のことと思いますが、極めて厳しい状況にあります。引き続き財政の改革を強力に推進して、その対応力をどう回復していくかに国政の大きな課題があることは私が申し上げるまでもないことであります。そういう中で一般歳出の抑制と補助負担率の引き下げ等の措置がなされたことは御案内のとおりであります。
そこで沖縄振興開発事業費の確保を図るべく、県選出国会議員を初め県議会議員の方々、また全市町村、関係各種団体と一体となって要請を行ってきたものであります。決して私一人で要請したものではございません。その結果、前年度に引き続きマイナス要求基準が設定され、厳しく歳出予算が抑制されるなどの財政状況を勘案いたしますというと、全国と比べまして特段の配慮が払われたものであると私は高く評価いたしているところであります。
そこが見解の分かれるところでございまして、政府の仕打ちと、これに対して一体どう知事はこたえるのかと。
私は、決して手厳しい仕打ちだとは思っておりません。これは沖縄開発庁長官初め各省庁の御理解と御支援によりまして、私を中心に市町村、各種団体が一体となって要請した結果の総仕上げであると御理解を賜りたいと思うのであります。
次、政府は、にせ行革路線で軍事費は突出させ、国民の生活、福祉等は犠牲にして、振興開発予算も犠牲にしている。その上、特措法に基づいて他県の場合とは異なる高率補助のカットを強行したことは許されないと。
古堅議員のまともな、真っすぐな気持ちはよく理解されるわけでございますが、知事はこのような仕打ちにどう受けとめておられるかという知事としての責任を追及されているわけでございますが、今回の補助負担率の引き下げ措置は沖縄振興開発特別措置法の改正によるものではございません。これはあくまでも「国の補助金等の臨時特例等に関する法律」において一括して改正される暫定措置であります。これは沖縄県だけじゃございません。他の県も同様でございまして、したがいましてこの3年間の暫定期間が過ぎますというともとの沖縄振興開発特別措置法の原点に返って補助率が適用されるわけでございますから、この二、三年間はほかの県ともつき合いもしなければなりませんし、そういうことで予算の額の確保もさることながら、この補助負担率をどう守るかということについて山中先生初め自民党の先生方、関係各省の方々と強く折衝いたしましてようやく10分の9以上の高率補助に限定して5%の削減を見たことは、沖縄に対する地理的な配慮がなされたものと評価していいと私は思います。古堅議員の政府の厳しい仕打ちと踏んでおられるわけでございますが、この辺もちょっと見解の分かれるどころでございます。
補助負担率の引き下げについては全国が非公共事業、公共事業を問わず、原則として2分の1を超える高率補助について60年度の10%引き下げに加えて、さらに原則10%引き下げがなされておりまして、地域特例についても同様10%引き下げの厳しい措置がなされております。そのような情勢の中で、沖縄県については、沖縄の経済社会の現状、財政基盤の脆弱さ等を総合的に勘案していただいて、沖縄振興開発事業については先ほど申し上げたような10分の9以上の事業のみに限定して、60年度補助率から5%引き下げる異例の緩和措置がとられたものだと私は高く評価をし、関係者の御労苦に報いなければならないと考えているところであります。
次、振興開発予算が思うように取れない事態に対しても知事は県民の立場からではなく、政府の財政も厳しいとの立場から、いわゆる政府の側に立って対処しておられるが、なぜ振興法の原点に返って沖縄を厳しく主張し政府を納得させるだけの政治力を発揮できないかと。
余り政治力を持っておりませんが、精いっぱい頑張ったつもりでございます。決して政府の立場から申し上げているわけではございません。私は沖縄県民でありまするし、共産党を含めて全部の立場から沖縄の利益を守っていかなければならないと考えております。その観点から絶えず予算の折衝もし、政府に当たっておるのでございます。決して政府の側から考えたことは一遍もございません。私は、これまで沖縄の諸問題解決に当たっては、一貫して県民の立場で対処してまいりました。61年度の国庫支出金についても、このような立場に立って要請を続けてきたところであります。その結果として、申し上げたような予算ができたわけでございまして御理解を賜りたいと思うのでございます。
以上であります。
○古堅実吉君 休憩してください。
○議長(志村 恵君) 休憩いたします。
午後2時47分休憩
午後2時49分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
古堅実吉君。
〔古堅実吉君登壇〕
○古堅実吉君 質問要旨もお届けしたんですが、それに具体的にお答えせずに逃げられるという態度はまことに許せないものがあります。しかも休憩中指摘しましたら、全部答えているなどというふうな形ですり抜けようとされております。まことに許せません。
それでもう一度質問申し上げます。
非核三原則を堅持しているのであれば、なぜ非核沖縄県宣言ができないのですか。
さらに、このパンフレットに示されている自由民主党の考え方にあなたは賛成ですか、賛成でないんですか。
それから戦後を終わらせる道はこういうことなんだと、この大道を歩む勇気があるかという質問をいたしましたが、それにも答えておられない、もう一度お答えください。
あなたは、専用空港化の問題について、それを主題とする文書要請を一度もやってないということを指摘しましたら、一度はあるなどという形でうその答弁もしておられる。それを主題とする要請は、調べた結果、一度もないのであります。それは、それが主題とはなっていない。
異例の措置などという形で、予算書についてなおここで評価されることは県民の立場から許せません。
以上申し上げて、さらに御答弁を求めるものであります。
○議長(志村 恵君) 西銘知事。
〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 大那覇空港の民間専用化について一遍も文書を出してないということでございますが、これはたびたび口頭で機会あるごとに要請はいたしておりますが、昭和54年の7月に、衆議院の沖縄及び北方問題に関する特別委員会の委員長に、要望書として、これは国会も敢府でございまするから、1回もないとおっしゃるんで、1回だけは出してありますが……。(発言する者多し)
問題は、文書によって……(発言する者多し)
○議長(志村 恵君) 知事の答弁ですから静かにしてください。
○古堅実吉君 それを主題とする要請を一度もしてないということですよ。(発言する者多し)
○知事(西銘順治君) その要請してないことで詰められるのは結構ですけれども、あんたが聞きたいことは、次、文書でもって要請するかということが重点でしょう。それはちゃんと答えておるじゃないですか、やりますといって。問題はそこでしょう。
それと大上段から、天皇の来県によって沖縄の戦後が終わるかということで、知事は県民の願いである核も基地もない平和で住みよい沖縄の建設を求めて進む勇気がありますかと。
これには簡単に答えられないですよ。今、核はないんですから。また最小限度の基地は必要だと認めているんですから。私の返答で結構だと私は思っております。
○古堅実吉君 そのつもりはないというお答えですね。
○知事(西銘順治君) いやいや、そうなると県民がどう受けとるか。これは表現にはニュアンスがございまして、例えばあんたが戦後は終わるかと言うんだが、戦後が終わるという意味にはいろんなニュアンスがある。まさかあんたは、天皇陛下が来て沖縄の戦後が終わるとは思ってないでしょう。
戦後はもう永久に続くんですから、それが終わるわけはない。戦後を終わらせてくださいということは、来ていただいて沖縄の実情も見ていただいて、県民を慰めてくださいという意味での日本の戦後、私、沖縄とは言っていませんよ、日本の戦後を終わらせてくださいと言っているんだよ。
それから非核三原則については、毎回あんたに答えている、同じように。国は堅持しているので、県はやりませんと。何で国が立派な政策を持っているのに、まるで国の施策を疑うかのような非核宣言をやる必要がありますか。私は、そういうことで御返事を、あなたの言うとおりの返答はしていませんよ。イエスかどうか、イエスであります、ノーであります。そう簡単に答えられない立場もあるわけですから、これは理解してください。あんたの要求するような答弁をしなくても結構であります。これが1つ。(発言する者あり)
はい、以上であります。
○議長(志村 恵君) 赤嶺幸信君。
〔赤嶺幸信君登壇〕
○赤嶺幸信君 私は、公明党県議団を代表いたしまして、幾つかの問題について所見を述べながら知事にお伺いをいたします。
質問に入る前に、知事も若干血が上ったようでございますので、時間を稼ぐ意味におきまして所信表明に触れる前に、公明党の経済運営に関する基本理念を申し述べてみたいと思います。
今日の日本経済は、国際社会において経済大国日本、黒字国日本というイメージが定着いたして久しいものがございます。同時に、国際社会における経済摩擦もまだ一向に解消の兆しはございません。確かに経済力の量的拡大は目覚ましいものがあり経済大国と言われる形態を整えてはおりますが、国際的経済環境に多くの不安材料が存在することも事実であります。その上、国内における経済システムの弱点も見逃すわけにはまいりません。
経済大国日本として世界の注視を集める経済成長を迎えながら、貧弱な福祉水準、労働分配率が低く、日本の社会保障における国民1人当たりの給付は、先進諸外国に比べ不十分なものがございます。福祉三流国、この評価は既にお聞き及びのことでございます。
さらに大気汚染、水質汚濁、騒音、土壌汚染など公害の量、質、両面における多発、国民の生命、健康、財産への影響が懸念されております。このことは国民生活から遊離した生産優先、大企業優先の高度経済政策によって生まれた結果であるというほかはございません。このような日本経済のゆがんだ発展の方向は、経済面における不公正の拡大となり、政治面では構造汚職として批判を受けておりますが、その根源は政・官・財の癒着による権力体制にあると思われます。
このような経済社会の中で公明党は基本的な経済運営の理念といたしまして、第1に、真に人間を大切にし、人間的価値を最優先する経済社会の確立であります。経済的合理性や経済効率のみを価値基準とする産業的な価値判断だけの経済社会には共鳴するわけにはまいりません。もちろん、一定の範囲で経済的合理性や効率の追求が必要であることは認めますが、しかし経済的合理性や経済効率の追求が唯一の社会では、個人の尊厳や利益よりも、企業や官庁における巨大な管理組織機構の方が優先されることになります。このような経済的合理性、経済効率優先によってゆがめられた経営、官僚組織における学歴偏重主義、そして教育における受験地獄など、人間としての尊厳やバイタリティーを喪失させるような状態を改め、人間尊重の価値観へ転換することを目指しております。
第2は、民主主義原理が貫徹する経済社会の建設であります。
政治領域だけでなく、経済面においても民主主義は守られるべきでありますが、今日まで軽視されてきた嫌いがあります。確かに独占禁止法により、経済支配力の集中及び市場支配力の行使については一般的に制約があります。しかしやみカルテルや価格操作により、消費者と企業間の経済民主主義が侵害される事例はたびたびお聞き及びのとおりであります。また大企業や商社が下請や系列下にある中小零細企業を意のままに操り、あたかも弱肉強食のゆがんだ経済民主主義の様相を露呈いたしていることも事実であります。
第3は、競争原理と計画化の原理が調和して作動する経済社会の建設であります。
公明党が目指す福祉社会の方向は、かつての産業資本主義段階で主張された完全な自由競争の原理の復活や一部社会主義で行われている完全な計画経済の原則のいずれかを選択するというものではなく、完全自由経済の弊害と中央集権的計画経済の欠陥の双方を取り除き、競争の原理と計画化の原理を調和させるものである。自由経済社会、計画経済社会のいずれもが疎外してきた人間を最優先する新しいシステムを持った経済社会を目指すものであります。
以上、簡単に公明党の経済運営の基本的な考え方を申し述べましたが、御質問ではございませんが知事の御所見をいただければ幸いと存じます。
さて、知事は、所信表明の中で、2期目の最後の年として、決意を新たに県民の負託にこたえるべく県政運営に心魂をささげる覚悟を披瀝し、2次振計後期の節目に当たり、これまでの実績を踏まえ計画後期の展望を行うとともに、国が策定を進めている第4次全国総合開発計画に対応して新しい施策づくりに努めなければならない重要な年であると位置づけ、今こそ協調と連帯のもと、自立と自助の気概を持って積極的な地域づくりが必要であり、県勢の発展並びに諸問題の解決に当たっては、他を頼む前に、みずから発想し、計画し、これを実践するとともに、県民一人一人が21世紀の新しい時代を切り開く勇気と自信と誇りを持つことが最も重要であるとの確信に立たれ、県政運営について6つの項目を示しておられます。
決意と意気込みのほどには敬意を表するものでありますが、いささか具体性がなく、説得力に欠ける嫌いはありはしないだろうか。時間の都合で全部をお聞きするわけにはまいりませんが、二、三お伺いし、あとは予算特別委員会の質疑でいたしたいと思います。
まず最初に、バイオテクノロジーについて。
本県は、その地理的、気候的環境から、バイオテクノロジーによって得られる技術を応用する場としては極めて恵まれた位置にあると言われております。その応用により、県内各種産業に与える波及効果ははかり知れないものがあるとも言われております。さらに県内の産業のみならず、国際交流に熱意を持っておられる知事にとりましても東南アジア諸国との協力を考えられるとき、バイオ技術の実証の場として、我が国唯一の実証の適地として、また産・官・学体制を確立し、産業振興の一環として早急な取り組みが望まれますが、その具体的振興策について御説明をいただきたい。
次に、雇用対策についてであります。
若年求職者の職場適応訓練及び職業紹介、新規学卒者の職業指導の強化、高齢者の雇用の延長、沖縄県雇用開発協会の設立がうたわれております。しかしこのことが具体的にどのような雇用対策を進めようとしておられるのか。あるいは基盤整備及び力強い産業の振興開発と安定した働く場の拡充、そのことを雇用対策として位置づけておられるのか御説明をいただきたい。
また、沖縄県雇用開発協会の設置を進めるとありますが、どのような性格で、機能や効果はどう期待をすればよいのかあわせて御説明をいただきます。
さて次は、今日の消費者は、欠陥商品、有害、うそつき商品、ごまかし表示、マルチ、SF商法等の被害を受け、消費生活の中で生命、健康まで侵されかねない状況で消費者主権が著しく脅かされております。
健康で文化的な生活を営む権利を現実のものとするためにも、日常生活の中で消費者主権を確立し、消費者保護を強める必要があると思われますが、消費者保護と物価対策についてどのように取り組んでおられるのか御見解をお示しいただきたい。
文化の振興につきましては、県芸術祭、文化講演会等の開催、県外文化交流の促進、県民アートギャラリー及び沖縄国際海洋博覧会記念公園内の沖縄館の充実がうたわれております。このことにつきましては、もっと積極的な振興策について取り組む考えはないのかどうか。例えば美術館、展示館、さらに前々から大変要望のございます古文書館等の建設、このことについて計画がございましたら御説明をいただきたい。
さらに、首里城復元の事業が動き出しておりますが、首里城復元につきましては、多くの方々が戦後いち早くその復元を願望しあらゆる角度から取り組んでまいりました。第2次振興開発計画発足に当たり、知事がこの席で、振興開発計画の中に位置づけて復元に取り組むと。それから今日まで5年、やっと事業着手にこぎつけたわけでございますが、多くの方々が一日千秋の思いで待っております。今後の復元に対する計画について御説明をいただきたい。
県経済の見通しにつきまして。
今年の我が国経済の特徴を一言で申しますと、対米輸出の拡大によって成長するとの従来の見方、その路線を踏襲することが困難となったこと。あと1点は、内需を中心とした安定成長をどう促進するか、との点では政府、民間を間わず一致しておられるようでございます。
そういうような中で、それでは今年の景気はどうなるのかというと、かなり悪くなる、いやそうではない、そんなに悪くはならない。相当幅広い見方があり、それだけ日本経済の抱える問題も多難なものがあろうかと思います。61年度経済見通しにつきましても政府は実質4%成長を予測いたしておりますが、民間の多くは2%もしくは3%の見方でしかありません。そのような状況の中で4.5%成長、これを皆さんの方で明らかにいたしております。経済見通し、ある面から言えば皆さん方の願望であり、あるいは経済政策の方向性と言ってしまえばそれまでですが、しかしながらそれにしても期待の持てる確たる数字でなければならないと思います。
まず最初に、60年度県経済の消費者物価が安定する中で、需要面では民間企業設備投資と公的投資が好調に推移し、民間及び財政消費支出も持ち直しを見せたものの、住宅投資はほとんど伸び悩んでいる。生産面では、比較的順調に推移したことにより60年度県民総生産2兆1170億円となり、経済成長率は名目で6.2%、実質で4.6%程度が見込まれる。したがって県内純生産は名目で5.7%程度が見込まれるとなっておりますが、これはあくまで実績見込みでしかありません。
それにしても少し数字をひねり過ぎてはいないだろうか。確かに確定数値は使えない。速報値等に基づく嫌いはありますが、例えば59年度の実績見込みと実績について見ましても、実績見込みが名目で7%、実質5.5%に対し、実績はそれぞれ6.5%と5%、おのおの0.5%後退をいたしております。まず、このことを念頭に置いていただきたい。
さて、それでは61年度経済成長は名目6%、実質4.5%を予測いたしております。そのためには経済社会情勢の変化に適切に対応し、振興開発の諸施策の円滑な執行、民間活力の一層の活性化等により消費者物価は安定し、需要面では民間消費及び企業設備投資の増加が見込まれ、生産面においても第3次産業及び製造業を中心に期待をしておられるようでありますが、いささか楽観的な感じがしないではないだろうか。政府が実質4%成長を予測しているのに対し、民間予測は二、三%、先ほど申し上げましたとおりでありますが、このことは円高によるデフレ効果を相当深刻に受けとめている様子でございます。確かに県内経済に及ぼす円高デフレの影響、数値は大して大きくはございません。しかしながらこのことによって一部の景気停滞感、このことの蔓延は免れることはないでしょう。
さらに現状では……
時間がございませんので、あとこの経済問題は予算特別委員会でします。
戦後処理の問題についてに移ります。
第1点は、沖縄戦の終局と同時に米軍による強制的な土地接収によって生業の土地を失った元小作人の権利についてであります。
戦後、日本の民主化に向け財閥解体、学制改革と並んで大改革の1つに農地改革がありました。従来の大地主対小作人の関係が是正され、土地は小作人に払い下げられ、戦後の民主主義の象徴として今日に至っております。ところが膨大な基地に組み込まれた土地については農地法の適用もなく、その土地に存する地上権、永小作権、賃借権等の土地の用益権については何らの救済措置もなされておりません。一方の権利が補償され、一方の権利が補償されないという甚だ理解に苦しむ状況にあります。
そこで我が党の玉城衆議院議員は、去る12月13日、根拠法令と判例をもとに政府に対し、米軍に強制的に使用され、引き続き国が借り上げ米軍に提供している土地の上に存在した借地権等の諸権利は、米軍に供されている期間中はその権利の行使が停止されているのであって、それが消滅するものではない。また借地権等の権利者に対し、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱により所有権者とは別個に損失補償が行われるのが当然であるとの見解を示した質問書に対し、政府は、用益権を現に行使している土地については、駐留軍用地特措法に基づく使用がなされたときは、その使用期間中は消滅時効は進行しない。また国が米軍の用に供するため土地の使用権原を取得することにより、その土地に関して用益権を有する者に損失が生ずる場合は、その損失を補償することとなるとの回答を得たことは既に新聞報道等で御承知のことと思います。
このことによって、用益権の存在を立証すれば当然補償の対象となり得ることは政府の答弁書によって明らかであります。ただ残念なのは、この問題が今日まで正しい角度からとらえられてなかった。そのため解決への糸口を見出し得なかったということにあります。現に知事も昨年2月15日付で、本間題救済措置に関する要請に対し、救済は極めて困難でありますとの回答をいたしております。
借地権者等もその矛先を所有権者に向け、誤解を与えていたことも事実であります。いずれにしろ我が党は、国が米軍に提供している土地の上に戦前存在した借地権等の存続を確認し、その問題解決は可能であるとの見解に立っておりますが、このことについて知事の御見解と今後の対応策、どのように取り組んでいただけるのかお伺いをいたします。
なお、このことは、旧沖縄製糖社所有地のみならず、沖縄市市有地あるいはその他の嘉手納町有地等にも存在いたしております。我が党の調査によりますと沖縄製糖社有地が300ヘクタール、沖縄市20ヘクタール、嘉手納町22ヘクタール等でございますが、個人有地等にもその事例があるかと思いますので、あわせて調査、資料収集等に御尽力いただけるかどうかお答えいただきます。
あと1点は、読谷村の国有地問題でございます。
国は、読谷村内の国有地については、その利活用に当たっては、地元の土地利用構想を尊重しつつ、沖縄振興特別措置法の趣旨を踏まえて対処する、大変地元に理解を示していただいております。しかしながらこのことも旧地主と現黙認耕作者等々の利害が相当絡んでおりますので、県の方で相当力を入れて援助をしていただかなければ問題解決は大変困難でございますので、このことについてもどのように取り組んでいただけるのか御見解を賜りたいと思います。
以上で終わります。
○議長(志村 恵君) 西銘知事。
〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 赤嶺幸信議員の御質問に対しましてお答えいたします。
公明党の経済運営についての基本理念についてるる御説明がございましたが、すなわち第1の真に人間を大切にし人間的価値を最優先する経済社会の確立、第2の民主主義原理が貫徹する経済社会の建設、第3の競争原理と計画化の原理が調和して作動する経済社会の建設等に対しコメントする立場にはございませんが、我が国経済の成長過程において生じた諸問題について公明党が真摯にこれを検討し、その結果、先ほど述べられたように経済運営の基本的な考え方を取りまとめたものといたしまして高く評価し敬意を表したいと思います。
次に、知事の政治姿勢との関連で、バイオテクノロジーについて具体的な振興策をただされたのでありますが、お答えいたします。
バイオテクノロジーの研究開発は、本県にとって大きな可能性を有する分野であります。そのため産・学・官から成る沖縄県バイオマス資源利用促進懇話会を設置し、今後のバイオ関連施策のあり方について鋭意検討を進めているところであります。61年度は、従来進めてきているサトウキビ、パイナップルの育種、優良種苗の増殖試験のほか、約1億円をかけて花卉類の組織培養、牛の受精卵移植試験、酵母菌等有用微生物を活用した技術の開発を行うことといたしております。
次に、雇用対策について、今後これを具体的にどう進めるかという御質問がございましたが、お答えいたします。
本県の厳しい雇用失業情勢、なかんずく若年失業者が多いことにかんがみまして、若年求職者の雇用の場の拡大を図るための職場適応訓練を実施し、また新規学卒者の職業指導を強化することによりましてその就職率を高め、学卒無業者の発生を極力防止していきたいと思います。さらに地域雇用促進給付金制度を活用することによりまして県内の産業開発と安定した働く場の拡充に努めてまいりたいと思います。
次、雇用開発協会の性格と機能や効果についてただされましたが、お答えいたします。
61年度に設立を予定している沖縄県雇用開発協会は、現存する社団法人沖縄県心身障害者雇用促進協会を発展的に改組拡充し、従来の障害者の雇用促進業務にあわせまして定年延長等高年齢者の継続雇用の促進、高年齢者の雇用問題に関する調査研究及び情報資料の収集、事業主及び高年齢者に対する相談、指導助言等高齢化社会の到来に対応したもろもろの事業を実施させるものであります。これによって高年齢者の雇用の促進と安定を図ろうとするものであります。
次に、消費者保護と物価対策についてお答えいたします。
消費者保護及び物価対策については、県民生活の安定向上を図る見地から、消費者保護条例等に基づく各種施策を実施いたしているところであります。61年度においては、引き続き生活関連物資の需給状況、物価動向の調査及び監視指導を強化し、不当値上げ等の防止や悪徳商法による消費者被害防止のための消費者啓発事業を通して、県民みずからがいわゆる賢い消費者として誇大広告や不当表示等に惑わされることがなく、消費生活行動ができるようにきめ細かい施策を展開することといたしております。特にベルギーダイヤ、マルチ商法、豊田商事のような悪徳商法、SF商法等については一日教室、婦人学級、老人クラブ及び市町村を通じて各種懇談会、講演会等を実施し、消費者被害の未然防止に努めているところであります。
次、県民アートギャラリーの利用状況について、また美術館建設計画について質問がございましたが、お答えいたします。
県では、県民の美術作品の展示発表及び鑑賞のための場を提供し、広く美術について理解と関心を深め、本県の芸術文化の振興を図るため56年10月1日、県民アートギャラリーを設置いたしました。その後の利用状況についてでありますが、順調に推移いたしておりまして、利用率も高く美術愛好家から広く活用されております。今後とも県民アートギャラリーの充実強化に努めてまいりたいと思います。また美術館建設については、個性豊かな地域文化の振興のため、芸術文化活動の拠点となる美術館を初め各種文化施設の整備は極めて重要であります。御案内のとおり54年8月、沖縄県立総合文化センター設立審議委員会の答申「総合文化センター」構想の中で美術館建設構想が打ち出されているのでありますが、今後の課題として美術館建設の検討を進めてまいりたいと思います。
次、文書館の建設についての御質問がございましたが、お答えいたします。
文書館は、歴史や行政の文書等を収集保存し、広く活用するために必要な施設であります。このため第2次振興開発計画に位置づけて鋭意努力いたしているところでありますが、用地や財政上の問題等現段階では厳しい状況にありますので、引き続き検討させていただきたいと思います。
なお、琉政文書等については現在70%程度整理が済んでおりまして、当分の間は県立図書館で活用できるようにしていきたいと考えております。
首里城復元計画についての御質問がございましたが、首里城の復元整備は県民の強い要望であることからいたしまして、その実現について国に対し強く要請してきたところであります。昨年、首里城正殿を含め首里城址を国営公園として整備することが採択されました。そしてこれを受けて国では、61年度において首里城正殿の基本調査及び首里地区の地質等の現況調査を実施することにいたしております。67年の本県の本土復帰20周年には、首里城正殿等の完成を見ることができるものと確信いたしております。県は県の立場で関連諸事業の推進を図るとともに、史跡首里城の公園にふさわしい整備を促進してまいりたいと思います。
次に、県経済の見通しと経済成長率についての御質問がございましたが、お答えいたします。
61年度の県経済は、消費者物価が引き続き安定するとともに、需要面では、民間消費及び企業設備投資を中心に増加が見込まれております。また生産面では、観光関連を初めとする第3次産業及び製造業を主体に生産の拡大が見込まれております。
なお、円高によりまして基地周辺業者を主体に一部厳しい面も見られるのでありますが、輸入に依存する度合いの強い本県経済にとりましては全体的には円高によるメリットの方が大きいと見られております。このような情勢から、昭和61年度の県経済の成長を実質4.5%と見込んでいるのであります。これは達成されるものと考えており、適当な見通しであると見ております。
次、戦後処理問題の解決として、嘉手納における借地権のいわゆる損失補償の問題が取り上げられましたが、お答えいたします。
昭和61年1月28日付政府答弁書によりますと、国が米軍の用に供するため土地の使用権原を取得することにより、その土地に関して用益権を有する者に損失が生ずる場合には、その損失を補償する旨述べられております。したがって当該政府答弁書記載の要件を具備しておれば、国によって損失の補償が行われるものと理解いたしております。
旧沖縄製糖株式会社所有地の上だけでなく、市町村有地やその他の個人所有地の上にも元小作人の用益権が存在していると思う。このことについて調査、資料収集等が求められると思うが、どうかという御提言に対しましてお答えいたします。
61年2月28日付政府答弁書によりますと、沖縄県の区域内にある契約土地については、契約締結の際、用益権の存否を調査しており、用益権の存在するものはないと承知している旨述べられております。
次、読谷飛行場の土地問題についての御質問がございましたが、お答えいたします。
読谷飛行場問題については、国は、地元地方公共団体が振興開発計画にのっとった利用計画を作成すれば、現行法に沿ってできるだけ早く払い下げ等の措置をとりたいとの意向を明らかにいたしております。これを踏まえまして読谷村は60年11月に、読谷飛行場転用計画を策定し、同問題の早期解決について国及び県に要望をいたしているところであります。今後、読谷村が旧地主等地元関係者との調整を踏まえた具体的な土地利用計画を作成するときは、県は、読谷村及び国と緊密な連携をとりながら指導助言し、その間題解決に対処する所存であります。
以上であります。
○赤嶺幸信君 ちょっと休憩してください。
○議長(志村 恵君) 休憩いたします。
午後3時34分休憩
午後3時35分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
知事公室長。
〔知事公室長 国吉真暢君登壇〕
○知事公室長(国吉真暢君) 答弁いたします。
その答弁は、喜屋武真栄議員から参議院議長の木村睦男あて、質問に対する答弁でございます。この答弁は、61年2月28日、きのう答弁されています。それによりますと、沖縄県の区域内にある契約土地については、契約締結の際、用益権の存否を調査しており、用益権の存在するものはないと承知しているということでございまして、施設区域内において用益権はないということでございます。
以上です。
○赤嶺幸信君 ちょっと休憩願います。
○議長(志村 恵君) 休憩いたします。
午後3時36分休憩
午後3時37分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
休憩いたします。
午後3時37分休憩
午後3時59分再開
○議長(志村 恵君) 再開いたします。
休憩前に引き続き代表質問を行います。
下地常政君。
〔下地常政君登壇〕
○下地常政君 私は、新生クラブを代表して、県政についての所感を申し上げるとともに、通告の内容に従い知事の県政運営方針についてお聞きし、あわせて幾つかの県政の課題について要請も含めて具体的に質問をしてまいりますので、よろしく御答弁のほど、お願いします。
なお、通告内容のうち、さきの質問と重複する項目の幾つかにつきましてはこれを取り下げます。
まず最初に、知事の県政運営方針についてでありますが、その前に若干の所感を申し上げます。
NHKの「21世紀は警告する」という番組企画によりますと、現在、世界には1500万人という大量の難民がパスポートも、そして帰るべき祖国もなく、地球上をさまよっていると言われます。20世紀はまた難民の世紀、祖国喪失の世紀とも言われております。1917年、ロシアの銃声に始まる革命は、その理念とは裏腹に地球の方々で数多くの体制の異端者を生み出し、そして今なおベトナムからは死を覚悟で小さなボートに乗って荒海に乗り出し、自由を求めて脱出する人々が後を絶ちません。
他方、ブラジルを初め中近東やアフリカの国々の幾つかは途方もなく巨額の累積債務に打ちひしがれ財政破綻を来し、年間のインフレ率200%、失業者率25%という恐るべき状態に置かれております。
私は、これらの現実から祖国の喪失、国家体制の力による変革、国家自治の政治的未成熟、国家財政の破綻等が人々をいかに悲惨な状態に追いやるか痛感いたしますとともに、国家と個人の関係というものを考えずにはいられません。私はしたがって、日本という国の政治の安定と繁栄、その国土の美しさについても改めて認識せずにはいられません。経済的、物質的に充足し、夜も枕を高くして寝られるような市民生活の安全を保障され、まさに暖衣飽食のきわみにあります。このすばらしい国・日本を象徴するのがほかならぬ日の丸であります。
私は、国と国旗は不離一体のものであり、国旗はその国の国土と同様、国の一部であると考えます。日の丸はこれまで長年日本の国旗として使用され、国民の間に定着し、また国際的にも認められてきたもので、これは私たちにとりまして法律に定めた以上に重い意味を持つものであります。
日の丸の旗のもとでは、多くの正義や嵩高な人間愛のドラマが演じられてきました。
他方、残念なことに不正義や残虐非道な行為も展開されました。しかし星条旗のもと、アメリカが例えばベトナムのソンミ村で住民の無差別虐殺を行ったことは今なお私たちの記憶に新しいところでありますし、また、かまとハンマーの旗印のもと、ソビエトが多くの反革命分子を抹殺してやみからやみへ葬り、そして今なお反体制のゆえをもってサハロフ博士ほか多くの知識人の自由を拘束していることも周知の事実であります。
ではありますが、いずれの不正義や非道な行為も国家の責任ではあっても、決して国旗の責任などではありません。そのゆえをもってアメリカやソ連において国旗掲揚を拒否しあるいは国旗を改めようと言い出した者がいることは寡聞にして知りません。それどころか、これらの国の国民は、尊敬と礼節をもってその国旗を取り扱っていることは申し上げるまでもありません。
私たち沖縄県民は、輝かしい沖教組の指導のもと、かつてアメリカ支配に対する抵抗のシンボルとして日の丸を高く掲げ、振りかざしてまいりました。また1960年代、琉球船籍の船舶の安全航行が脅かされたとき「、私たちは日の丸にその保護を求めました。しかし今、自民党政府のもとだからというわけでもないでしょうが、日の丸を掲揚しないという運動が展開されております。これでは国旗をすらイデオロギー闘争の具にしようとするイデオロギー過剰の教条主義、御都合主義のそしりを受けても仕方がないではありませんか。
日の丸については、昨日、平良哲議員が質問の中で資料をもって示されましたが、革新の巨星喜屋武大先生がいみじくも看破されたように、8月15日をもって血塗られた日の丸は生まれかわったというふうに理解するのが庶民の共感を得るでしょう。
私たちは、世界に先駆けて武力をもって他国を侵略しないと誓った新生日本、経済、文化によって世界をリードする躍動日本の輝かしいシンボルとして日の丸に新しい意味を持たせ、役割を課そうではありませんか。民主日本、平和日本のシンボルとして進んで教職員会の集会場にも掲げ、国家主義のイメージを払拭しようではありませんか。国旗は、本来的に掲揚されるべきものであり、その掲揚を拒否すること自体がまさに政治的な行為そのものであると思います。
さて、61年度予算について、知事は厳しい財政状況の中、執行部の幹部及び職員とともに沖縄選出国会議員の支援をいただき、精力的に政府折衝を進め、国の特別配慮を引き出し、必要な予算を確保されました。
端的に言って、各都道府県の予算の伸びは全国平均で4.7%に対し、県予算は5.6%の伸びとなっております。私は、この成果を高く評価し知事の御努力に敬意を表しますとともに、今後ともその政治的手腕を発揮され、引き続き沖縄県発展のために御活躍されるよう強く要望いたします。
今年度予算についても2次振計破綻の予算であると決めつけるなど、それぞれの立場からさまざまな論評が加えられております。しかし沖縄県は日本の47都道府県の中の一自治体であるという前提を欠落させ、他との比較において客観的に把握しているのでなければ、その論議は聞くに値しません。人間の思考の発達段階は、生まれて間もない自己中心の認識段階から、やがて他者との関連で自覚をし事物の認識をするようになると言われております。いわゆる相対的な物の見方、考え方こそ成人を成人たらしめているゆえんではないでしょうか。
ところで知事は、今議会冒頭、議案提案理由説明の中で新年度の県政運営方針を述べられ、県政取り組みについての意欲を県民の前に披瀝されました。その中で、県政全般につぎ多岐にわたってその所信を明らかにされましたが、そのうち幾つかの項目について少々突っ込んでお聞きしてまいりますので、細部にわたる嫌いはありますが、御説明をいただきたいと思います。
1つは、ミカンコミバエについてであります。
国、県の御努力により60年度、八重山をもって沖縄県全域から根絶されることになり、今後の農業発展に大きく寄与することは明らかであります。特に離島に住む者の一人として、知事初め関係者に厚く御礼を申し上げます。
ところで、数百億円をかけたこの事業、ミバエの再侵入対策は十分かと申しますと、これは取り越し苦労かもわかりませんが、久米島あるいは先島の諸島に台風避難の目的で中華民国船籍漁船団が時々入ってきております。これら漁船の投棄物からミバエの再侵入の可能性はないかどうか。またこれら船舶の出入港管理はどうなっているかお伺いいたします。
2つ目は、沖縄経済自立への有効な施策として企業誘致に取り組まれておりますが、これまでどの程度の誘致実績があるか。今後は誘致策そのものを考え直し、例えば識者の提唱する参加誘致方式、すなわち県、市町村が誘致企業に資本、経営参加し、リスクを分担する方式を取り入れる必要があるのではないか。そのためにも市町村の積極的な参加意欲を引き出すよう働きかけるべきであると思いますが、いかがでしょうか。
3つ目、宮古地区の誇るべき観光資源の1つは、やはりそのすばらしい海浜にあります。しかしその海浜を生かした施設がないためこれといった目玉がなく、観光がもうひとつ伸び悩んでおります。知事は、本島においてスポーツ、レクリエーション施設、人工ビーチなどいろいろお考えのようですが、宮古島の観光についてはどのように考えていらっしゃるか、長期的な展望も含めて明らかにしていただきたいと思います。
4、また宮古平良市における公共下水道事業について、地元有志から何らかの非公式要望があったやに聞いていますが、その経緯と今後、正式要望があった場合の対応をお聞かせください。
廃棄物処理につきましては、これを取り下げます。
6つは、行政改革の推進、多くの事業を控えて県の執行体制の強化が必要であると思います。職員の資質向上、モラルの高揚、規律の引き締め等肝要であると思いますが、知事のお考えをお聞きします。
7つに、事業枠を確保し離島振興を図る上からも、2次振計後半のプロジェクトの1つとしてぜひ離島架橋を位置づけていくべぎであると考えますが、これに対しても知事の御見解を賜りたいと思います。
次の円高による県経済への影響につきましては、西田、石川両議員から質問がございましたので、これを取り下げます。
次に、行政改革についてであります。
国であれ地方自治体であれ、行財政改革の必要性については今さらちょうちょうするまでもありませんが、行財政改革というと通常は地方行財政全体にわたるシステム及び政策を改革していくこととしてとらえがちでありますが、しかしより重要なことは、各自治体がそれぞれの行財政運営を創意的、積極的に改革していくことにあると言われています。
同時に、今後の行財政改革としては経営的努力の重要性が提起されております。行財政運営における経営といいますと、専ら人減らし、予算節減のいわゆる減量経営ととられ、職員組合等の反発を受けてきました。しかし今後は自治体が推進していくべき政策を地域の実情、時代の要求に即応して取り上げ、総合的な地域経営の計画的な実施を目指すべきであると言われています。
そこでこのような観点に立ってお伺いしますが、1つは、行政改革の効果的な推進を図るためには推進主体となる組織が確立されなければならないと思いますが、これについて検討されたことがあるか。
2つは、同様に効果的な行政改革推進のためには自治体経営の政策を企画主宰する施策形成能力の向上を図ることが必要で、そのためには自治体内部の情報ネットワークやシステムの整備が不可欠でありますが、情報の収集、分類、提供など情報の管理についてどう考えられるか。また行政改革に対する住民参加についてどのように考えておられるかをお聞かせください。
3つ目に、行政改革と予算は車の両輪であります。ZBBなど理論的には各種の方式が提唱されていますが、県として予算編成方式の合理化について検討されたことはありますかお聞きいたします。
次に、20年土地強制収用についてであります。
この問題は、米軍基地に係る土地収用が国家防衛という高度の国家目的のため許されるかどうかをめぐって、収用者である国と未契約地主が真っ向から対立しておりますが、国の強制収用に対していわゆる1坪地主、この場合は1坪に満たない1平方メートルそこそこの地主でありますが、そういう土地所有の手段によって収用手続に対抗、阻止しようとしております。
ところで、1人の持ち分わずか1平方メートルという土地に関して所有権や占有権、地上権などもろもろの権利を法律で守る実益があるのか。これは法律の盲点をついた権利の乱用ではないか。乱暴な言い方かもしれませんが、一市民の素朴な感情として正直そう思わずにはいられません。
そのような手段によって法律に基づく正当な収用手続を物理的に不可能ならしめようとするならば、収用する側として国の安全を確保するため、これまた法律の許す範囲内で長期安定使用を図ろうとするのは当然の成り行きと言えましょう。
しかし他方では、そういう意図的な共有所有のほかに本来的な土地所有の未契約地主がおります。公共の福祉のための私権の制限は必要最小限度でなければならないことは最高裁の判例でも繰り返し示されています。
そのような見地からすれば、これら地主に対して前述の1坪地主と同列に一方的に20年使用というのは、これまた市民の素朴な感情としてどうかとこう思うわけであります。
しかし目をアジアの軍事情勢に転じてみますと、経過はどうであれソ連はベトナム戦乱に乗じ、カムラン湾基地を手中におさめて米軍防衛区域及び中国の重大な防衛地域ののど元にあいくちを突きつけております。今、世界の平和は、米ソ両国の核の均衡の上に成り立っているという冷厳な事実を無視することはできません。そういう意味でこの審理の行方は重大であります。
そこで、最低次の2点についてお聞きします。
1つは、起業者である那覇防衛施設局が最終的に使用を開始するまでに米軍基地特別措置法に定められた手順はどういうものがあるか。
2つは、収用する土地の面積、全体面積に対する割合、関連地主の人数等はどうなっているか明示していただきたい。
次に、サトウキビ低品質問題についてでありますが、先月27日の琉球新報に報じられておりますように、今期サトウキビのブリックスは県全体として17.53度と去年よりコンマ11度上昇しているのに対し、先島地区は宮古5.92度、八重山16.59度と前年度の落ち込みよりさらに低下しております。
先月、私も砂川武雄副議長とともにその実態を見てまいりましたが、素人の目にも総体に青葉数が極端に少なく、根つきが弱い感じは明らかであります。気候、その他の条件は本島地域とそう変わらないはずですが、2年続いてブリックスが低下している原因は一体何なのか。
宮古では農業の根底深く悪質の病巣が隠れている感じで、これで宮古の農業、ひいては商業経済も壊滅するのではないかと見えない敵におびえております。事はまさに宮古の農業の存亡にかかわる重大なものであります。
県におかれても事態を認識され、内外の専門家を集めて特別チームを組み、早急に原因を究明し適切な措置をとられるよう要請し、あわせて3点ばかりお尋ねいたします。
1つは、県として状況をどのように把握していらっしゃるか。
2つは、宮古地区の中で多良間の状況は様子が多少異なるように聞いていますが、これについてどのように考察されるか。
3つ目は、今期、地区内の各製糖工場の収益見込みはどうなるか。その対策についてはどうか、以上お答えいただきたいと思います。
次に、海外漁業についてであります。
先月発表された沖縄総合事務局の「59年度沖縄県漁業の動き」によりますと、総生産量4万7825トン、そのうち南方基地漁業の水揚げは1万8222トンで全体の38%、約4割を占めております。県の漁業振興上、南方基地漁業を抜きにして考えることができないのは明らかであります。
ところで、南方出漁グループの2つのうち、ソロモンの方は経営、操業ともに一応安定しておりますが、「沖縄海外漁業」の方は経営不振に陥っております。
そこでお伺いいたしますが、1つは、同社の発足以来の操業状況と財務内容はどうなっているか。
2つは、同社運営上の問題点は何か。
3つは、同事業の中断は社会的に大きな混乱を引き起こします。操業継続について努力されるとともに、国の助成策を要請されるおつもりはないか、以上お答えいただきたいと思います。
次に、公共工事額の本土流出についてであります。
知事初め県の首脳や職員の皆さん方が、毎年予算折衝時には大変御苦労なさっていることはよく承知しており、その御苦労に常々敬意を抱いているところであります。
ところが、そのように苦労してせっかく沖縄へ呼び込んだ予算が、執行の段階でざるから水が漏れるように本土の方へ流出しているとしたら、こんな不合理なことはありません。このような状態を打開するため、工連の宮城専務理事も指摘しておりますが、県内における公共工事についてぜひ再検討を加え、県内地元業者の取り分をふやすよう御努力いただきたいと思います。特に財政緊縮の時代に実質予算の伸びと同様な効果をもたらすこの取り組みは喫緊の課題であります。
そこでお伺いいたします。
1つは、復帰後、沖縄に投ぜられた公共投資額は膨大な額に上るものと思われますが、それはどの程度県内に滞留したかが問題であります。そこで特に発注量の大きい県、総合事務局及び防衛施設局の59年度分について発注額と県内外企業への発注割合を教示していただぎたい。
2つは、公共投資額の相当部分が県外に流出するというこの現象は、一体その要因は何か。またそれらの要因に対してどう解決努力するつもりか、お伺いいたします。
次に、栄丸遭難事故についてであります。
昭和20年11月1日、終戦の年末、台湾基隆港外で機帆船栄丸、これは36トンでございますが、座礁沈没し、乗組員、船客ともに140余名のとうとい人命が失われました。この事件は、日本政府が軍事目的に基づき、これら人々を強制疎開させたために起因するものであり、何らかの公的救済策があってしかるべきであると考えます。このような政府命令による疎開に係る船舶事故に関してはほかに救済の例があると聞いています。この救済策がもし不平等に行われるとするならば、故人の魂は浮かばれません。
そこでお伺いいたしますが、1つは、第2次大戦に関連するこの種船舶事故の例について御教示ありたい。
2つは、それらに対する国、県の救済策はどうなったか。
3つ目、本件に関する現段階での見解をお聞かせいただきたい。
最後になりますが、宮古―東京直行便についてであります。
このことにつきましては知事の特別の御配慮をいただいており、特に新年度の県政運営方針の中でもあえて言及いただき、引き続き実現に向けて努力される御決意をお示しくださったことに対してまずお礼を申し上げます。
ところで、南西航空は去る1月31日、鹿児島路線の申請を発表しておりますが、この申請は宮古―東京直行便問題と何らかのかかわりがあるのでしょうか。
2つは、宮古ではさきにミカンコミバエが根絶され、61年度中にはまたウリミバエが根絶の予定です。これに伴い地元では花卉、果実類の栽培の機運が盛り上がっておりますが、これら生産物の移出はもちろん航空機によらなければなりません。直行便の必要性は一層高まり、その実現は急務となってきましたが、知事のお考えをお聞かせください。
以上、答弁をお願いします。
○議長(志村 恵君) 西銘知事。
〔知事 西銘順治君登壇〕
○知事(西銘順治君) 下地議員の御質問に対しましてお答えいたします。
ミカンコミバエの再侵入についての御質問がございましたが、お答えいたします。
去る2月4日をもって本県から根絶されたのでありますが、今後の課題はその再侵入を防止することであります。そのため全県下に500個余のトラップを設置し侵入警戒調査に当たるとともに、港湾及び住宅地域の警戒防除を継続的に実施しているところであります。また台湾漁船等による再侵入対策としては漁船員にチラシ等を配布するなど指導を強化するとともに、国の関係機関とも連携をとりながら防止対策を実施しているところであります。
企業誘致についてお答えいたします。
企業誘致については、企業誘致業務計画を策定し、企業訪間、立地説明会などを実施して本県への理解と協力を求めている状況であります。
本県の立地条件は厳しい状況にありますが、復帰後これまでにバイオ関連産業、観光関連産業などの立地を見ており、最近では本土大手ソフトウエア産業、溶融亜鉛メッキ工場の新規立地を見るなど実績を上げております。今後の新たな企業誘致の展開に当たっては、本県の持つ自然的、地理的条件を生かしたバイオテクノロジー、研究開発型企業、高度情報化社会に向けた情報処理産業の立地にも努めてまいりたいと思います。
特に本県は、亜熱帯地域に位置し、太陽エネルギー、海洋水産資源など先端技術に関する研究開発分野が多く新技術開発について調査研究をし応用する場にも恵まれております。このため現在、産・学・官で構成する地域産業技術振興協会で未利用資源活用についての企業化の提言もなされておりますので、地場資源活用型の立地に努めるとともに、研究機関の誘致にも取り組んでまいりたいと思います。さらに市町村との連携を強化して受け入れ態勢の整備を図るため、市町村工業導入計画の策定と工業適地基盤整備費助成を行い、地域特性を生かした本県への立地を促進してまいりたいと。
宮古の観光振興についてお答えいたします。
宮古には本県屈指の海浜や景勝地などのすぐれた観光資源があり、最近、これらの資源を活用した海浜リゾートが与那覇前浜において立地したことにより、これを核とした宮古全域の観光が活気を見せ始めております。昭和60年の入域観光客数は初めて11万人を突破しております。このリゾート地においてゴルフ場を初めとする各種レクリエーション施設の整備計画があり、県としてもこれを推進し本格的なリゾート形成を図ってまいりたいと思います。また宮古島及び周辺の島々を結ぶ観光ルートの形成を推進するなど、宮古全域の観光振興に努めてまいりたいと思います。
宮古平良市における公共下水道についてお答えいたします。
県としては、平良市の住環境の整備と海岸の水質保全を考えているところであり、同市の公共下水道事業については、最近の地元団体による下水道研究活動の活発化等の機運も高まりつつありますので、市当局との調整を図り、要請があれば第6次下水道整備5力年計画の期間中、早い時期に着手できるよう検討いたします。
職員の資質の向上、モラルの高揚について御質問がございましたが、お答えいたします。
職員研修の充実により職員の資質の向上に努めてきたところでありますが、今後とも県行政の能率的な運営を、図る観点から職員研修に力を入れていく考えであります。このことが限られた職員での執行体制の強化にもつながるものであると考えております。また行政執行に当たっては、いささかも県民から不信や疑念を持たれることなく行政サービスに努めるよう、機会あるごとに職員の綱紀の保持と服務規律の確保について職員への周知徹底を図り、モラルの高揚に努めているところであります。
離島架橋についてお答えいたします。
離島架橋については、離島苦を解消し生活条件を改善するとともに、離島の振興を図る上で極めて重要であります。このようなことから、第1次振興開発計画において野甫大橋及び伊計大橋等を整備し、第2次振興開発計画の中では瀬底大橋が完成し、外地橋及び池間大橋を継続して整備をいたしているところであります。離島架橋については建設費が膨大であること等からいたしまして、現在進めている離島架橋の進捗状況と財政事情の動向を見ながら引き続き積極的に取り組んでいきたいと思います。
次、行政改革を効果的に推進するための組織の改正についてお答えいたします。
本庁、出先機関の組織については、昭和58年度に部の再編等を行い、その簡素合理化を図ったところでありますが、行政改革大綱の中でも示してありますようにトップマネジメントが十分に発揮し得る機構であること、新しい行政課題に機敏に対応し得る機構であること、簡素で効率的な機構であること等の観点から総合的検討を行い、今後その合理化に努める所存であります。
文書管理の効果的な運用についてお答えいたします。
文書管理の効果的な運用を図るためには、引き続きファイリングシステムの推進、文書発送の集中化及び例文処理等の促進を図り、科学的な文書管理、検索システム等の推進体制づくりに努めてまいりたいと思います。
県行政の推進に当たって県民の意見等をどう反映させるかという御提言がございましたが、お答えいたします。
県政の推進に当たっては広く県民の参加を求め、県民のニーズや意向を県政に反映させるとともに、県政に関する適切な情報を提供する等広報公聴活動のなお一層の充実強化を図りまして、県民参加のシステムづくりに努める所存であります。
予算編成方式の合理化について検討したことがあるかという御質問がございましたが、お答えします。
予算編成の改善合理化については標準予算の導入、要求基準の設定、諸様式の簡素化等改善合理化に努めてきたところでありますが、さらに改善合理化をすべく努力してまいりたいと思います。
20年土地収用について、土地収用法の一般的手続について御質問がございましたが、お答えいたします。
一般的手続について申し上げます。
土地収用法の一般的手続は、起業者からの裁決申請があり、収用委員会の受理会議を経た後、市町村において公告、縦覧に付されます。その間、地主等の意見提出があり、その後裁決手続開始の決定、審理、調査を経て裁決がなされます。収用委員会の裁決に基づき、起業者による地主等への損失補償金の支払いがなされた後、権利を取得することになるのであります。
次に、強制収用する土地の面積、全体に対する割合、地主の数は幾らかという御質問がございましたが、お答えいたします。
那覇防衛施設局によりますと、昭和60年12月31日現在、契約されている駐留軍用地の契約人数が約2万6000人であります。その面積が1万6763.8ヘクタールとなっております。今回の駐留軍用地使用裁決申請に係る地主数が2092人、これは153人が2092人となっております。面積が65.4ヘクタールでございます。したがって今回、使用裁決申請の対象となっている未契約駐留軍用地は全体に対し面積で0.39%、地主の数で8%となっております。
次、サトウキビの品質低下についての御質問に対しましてお答えいたします。
今期のサトウキビは、降雨等の気象条件に恵まれ、農家の営農努力と相まって順調な生育を遂げ、その生産量は177万トン、10アール当たりの収量が7.6トンと復帰後最高の豊作が見込まれております。しかしサトウキビの品質については2月20日時点、沖縄地区では平均ブリックスが18.2度と良好な状況にあります。しかしながら宮古地_区では15.9度、八重山地区では16.6度と著しく低い状況にあります。また製糖歩どまりについて申し上げますというと、沖縄地域の11.84%に対し、宮古地域では9.31%、八重山地域では10.27%と極めて低く憂慮されるべき状態であります。特に宮古地区においては栽培基準の遵守、病害虫防除等直ちに実施できる緊急対策を実施するほか、堆肥製造施設の設置等長期対策を図るとともに、根の枯死及び葉枯れ等の原因究明に当たっているところであります。
次に、宮古地区の中で多良間村における状況についての御質問がございましたが、お答えいたします。
多良間村における今期のサトウキビ生産は3万5400トンと史上最高の豊作が見込まれております。品質につきましても宮古本島とは異なり、ブリックスは18度に達し良好な状況であります。これは緑肥作物による土づくり、肥培管理の徹底等営農努力によるものと考えております。
今期製糖工場の収益見込みについて御質問がございましたが、お答えいたします。
宮古地域の製糖企業では、今期の損益として2社合計で約18億円、沖糖、歩どまり9.2%の場合5億円、宮糖、歩どまり9.3%の場合13億円、合計18億円の赤字が見込まれております。その対策でありますが、サトウキビの品質向上を図ることを基本に糖業振興臨時助成金による対応、融資のあっせん、経営の合理化等を行う必要があると考えます。
海外漁業についての御質問に対しましてお答えいたします。
沖縄海外漁業株式会社による第1次の操業は昭和59年8月から12月まで、漁船が8隻、母船が1隻から成る船団によって行われております。操業成績は漁獲量2745トン、販売額3億2900万円でありましたが、漁獲量が当初計画を大きく下回ったため、59年度の同社決算は累積で2億6890万円の損失となっております。第2次操業は、漁船9隻と母船1隻の船団で60年3月から11月まで行われております。漁獲量について申し上げますと9036トン、販売額は約10億3000万円となっております。
なお、60年度決算はまだ出ておりませんが、会社は船主への多額の立てかえ金のほかに、魚価安によりまして現地会社のPNGツナ・フィッシャリーズヘの売掛金の未収等の問題を抱え資金繰りで大変苦慮している状況にあります。
今後の操業管理についてでございますが、会社においては今後操業を継続すべく具体的計画案を作成しておりますが、その実現を図るためには運営資金の調達、操業形態の選択、漁業協定の見直し等解決すべき多くの問題を抱えているため、現在関係者で検討をしているところであります。
同社運営上の問題点は何かという御指摘がございましたが、お答えいたします。
南方基地漁業の操業には、出漁準備金を含め多額の資金が必要とされております。このため第1次の操業に当たって漁船の出漁準備等に要した経費は、沖縄海外漁業株式会社が船主にかわって立てかえし、これらの立てかえ金は船主からの魚の買い上げ代金によりまして相殺精算することとなっております。しかしながら漁獲が低調であったために多額の立てかえ金が未精算のまま残る結果となっております。第2次操業については漁獲量はある程度の成績を上げることができたのでありますが、立てかえ金に加えまして魚価が大変安かったため、現地会社のPNGツナ・フィッシャリーズヘの、これは現地会社でございますが、これへの売掛金に多額の未収が生じたため、会社の資金繰りがますます苦しくなった状況でございます。
これについて国の助成策を仰ぎ、支援を要請することはできないかという提言がございましたが、お答えいたします。
国の関係機関に相談いたしましたところでは、同社の経営については国による制度上の助成方法はないが、国の外郭団体である海外漁業協力財団には現地の漁業関係の施設整備に対する相手国への援助等の制度があるので、その面の協力については今後の方針等を踏まえて同財団への要請について検討いたしたいと思います。
次、公共事業に関連する資金の本土逆流についてお答えいたします。
御質問の59年度における公共事業の実績については、県の発注額が855億7100万円で、そのうち県内企業が88.7%、県内と県外のJVが11.2%、県外企業で0.1%となっております。また資料によると、総合事務局においては発注額560億8400万円、そのうち県内企業46%、防衛施設局は発注額348億7100万円で40%が県内企業への発注となっております。
公共投資の県外流出対策の1つといたしまして、大型プロジェクト工事等の関連で特殊技術、特殊機械等を使用する分野があり、県内企業のみでは対応できない事業等があるためであります。県としては、県内企業で対応困難な分野であっても、県内企業の育成と技術的経験の蓄積を促進するためJVを組ませること等により可能な限り県内企業への受注機会の確保に努めているところであります。今後とも県内企業への「優先発注等基本方針」、これに基づき、その効果的な推進を図り、国の出先機関等に対しましても県に準じた対策を講ずるよう引き続き積極的に対処してまいりたいと思います。
次に、栄丸遭難事件の救済についての御質問がございましたが、お答えいたします。
去る第2次大戦において、米潜水艦等の攻撃を受け撃沈されたなどのいわゆる戦時遭難船舶の状況についてでありますが、遺族からの申し出や県民からの情報等に基づく県内関係の遭難船舶は対馬丸、赤城丸、開成丸、湖南丸、台中丸、嘉義丸、栄丸など合わせて32隻となっております。
その被災者の救済についてお答えいたします。
県としても、これまで厚生省及び総理府にその援護措置を求めてきたところでありますが、軍人軍属としての身分、公務性を有していない一般被災者に対しての援護法の適用は困難となっております。しかし戦時遭難船舶のうち対馬丸については、学童疎開という特殊性からいたしまして遭難学童遺族に対して特別支出金が支給されているところであります。
本件栄丸遭難遺族に対する援護措置についてでありますが、その補償については、終戦直後の台湾引き揚げ途中の遭難であり御遺族の心情を思うとき忍びがたいものがありますが、他の戦時遭難船舶同様、現行の援護法適用は困難となっております。しかしながら県としては関係遺族会からの要請等もあることから、国において現在実情調査をしている「戦後処理問題に係る特別基金に関する実情調査」にこの件を含めて調査、検討方の要請をしていきたいと考えております。
東京―宮古直行便についてお答えいたします。
南西航空は、那覇―鹿児島路線に就航する予定で現在関係機関と事前調整を進めている段階であります。この鹿児島乗り入れは、同社の経営基盤を強化するために行う路線拡張の一環であり、宮古―東京直行便とは直接関係はないものと考えております。
宮古―東京直行便との関連で、ミカンコミバエ等が根絶され、61年中にはまたウリミバエが根絶される予定となっておりますが、花卉、果樹類の栽培の機運が盛り上がっている。したがってこれらの生産物の移出はもちろん航空機に頼るのが一番でございますが、そういうことで直行便の実現は急務となってきたが、知事の考えを聞かせてくださいということでありますが、県は、地元から強い要望のある宮古―東京路線の開設に向けてこれまで鋭意努力を重ねてきましたが、残念ながら羽田空港の厳しい離発着枠との関係からまだ実現を見ていないのであります。県としては当該路線の必要性を十分理解しておりますので、羽田空港の動向等を踏まえながら、その早期の開設に向けて今後とも鋭意努力を重ねるつもりでございます。
以上であります。
○議長(志村 恵君) 以上をもって代表質問は終わりました。
本日の日程は、これで終了いたしました。
次会は、明後3日定刻より会議を開きます。
議事日程は、追って通知いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後4時50分散会
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