平成13年(2001年) 第 2回 沖縄県議会(定例会)
第 4号 2月26日
知事(稲嶺惠一)
 

 糸洲朝則議員の御質問にお答えいたします。
 最初は、平和・人権・国際交流についてでして、国連アジア本部誘致体制の確立に向けた決意と予算計上をどのように活用されるかについてお答えいたします。
 国連機関を本県に誘致することは、我が国の南における交流拠点の形成を目指す本県にとって大きな意義を持つものであると認識しております。国連機関の誘致の可能性を検討する一環として、平成13年度に国連機関が設置されている地域における設置の経緯、活動状況、組織運営方法等について調査することとしております。誘致体制の確立につきましては、当該調査や国の調査などを踏まえ、今後検討してまいりたいと考えております。
 次に、同じく平和・人権・国際交流について、人間の安全保障についての御質問にお答えします。
 「人間の安全保障」については、1994年の国連開発計画が提起した「人間開発報告書」の中で、「経済の安全保障」、「食糧の安全保障」、「健康の安全保障」、「環境の安全保障」、「個人の安全保障」、「地域社会の安全保障」、「政治の安全保障」の7つに区分されていることを認識しております。
 また、従来の国家安全保障の概念に対して人間レベルでの安全の達成を重視するという認識が高まり、「人間の安全保障」の概念が生まれてきたと理解しております。「人間の安全保障」は新しい概念ではありますが、「国家の安全保障」と同様に「人間の安全保障」も大事なものだと考えております。
 次に、基地問題について、代替施設協議会での説明及び今後の取り組み、情報公開についての所見を伺いたいとの御答弁でございます。
 普天間飛行場代替施設の基本計画の策定を協議する代替施設協議会はこれまで5回開催され、軍民共用飛行場としての民間機能の位置づけ、建設地点の地形・生物分布等の状況、航空機騒音等生活環境への影響、代替施設の各工法の概要などについて協議されております。次回以降の協議会においては多角的、総合的な視点から検討を行うことになっており、次回の協議会では基本計画策定に必要な主要事項全般についての意見交換を行うことになっております。
 県としては、第2回代替施設協議会において説明した軍民共用飛行場としての民間機能の位置づけを踏まえ、滑走路については中型ジェット機が就航可能となるようにしたいと考えております。
 また、移設先及び周辺地域の住民生活に著しい影響を与えない施設計画とし、住民生活への配慮や自然環境への影響を極力少なくすることや、代替施設の民間機能を地域産業の拡大や新たな産業の創出につなげ、地域経済発展の拠点を形成すること等について名護市及び東村、宜野座村と連携し取り組んでいきたいと考えております。
 なお、これらの協議内容については、名護市から地元3区(名護市3区合同委員会行政連絡会議)に説明されているほか、国(首相官邸)のホームページでも公開されております。
 基地問題についてのうち、基地の固定化を避ける意味で15年使用期限の設定は重要であると、決着をどの時点と考えているかという御質問にお答えします。
 普天間飛行場代替施設の15年使用期限問題については、戦後、日本の平和と経済繁栄の中で、沖縄が56年間にわたり過重な基地負担をしてきている状況にかんがみ、基地の固定化を避け、基地の整理縮小を求める県民感情から使用期限を設け、国に強く求めているものであります。15年使用期限については政府において解決に向け努力されていることを承知しておりますが、県は、基地の提供責任は日本政府にあることから、過重な基地負担を担ってきた県民の意向を踏まえ、政府が責任を持って早期に解決すべきものと考えております。
 なお、代替施設の15年使用期限問題については、県が移設に当たって整備すべき条件としており、また名護市が受け入れ条件としていることから、着工までに何らの進展もなしに全く棚上げされたままで進むことはあり得ないものと考えております。
 次に、代替施設が返還されたときの地域活性化構想をどのように描いているかとの御質問にお答えいたします。
 普天間飛行場代替施設については、軍民共用空港を念頭にその整備に向けた取り組みが進められておりますが、同空港を民間空港として利用できるよう、空港ターミナル等空港利用施設の整備に向けた諸条件の整備を国に求めていきたいと考えております。
 同空港を活用した振興策については、空港関連産業等の育成・誘致、観光・リゾート産業の推進、情報通信産業の集積、農林水産業等既存産業の新たな展開を図ることとしております。
なお、同空港の返還後については、民間空港としてより一層の利活用が図られるよう取り組んでいきたいと考えております。
 次に、基地問題のうち、浦添市長選挙の結果を受けて今後どのように展開されるのかという御質問についてお答えいたします。
 浦添埠頭地区を含む那覇港を「ハブ機能を有する国際流通港湾」として整備するためには、県、那覇市、浦添市3者による那覇港管理一部事務組合の設立が不可欠であります。このたび浦添市長に就任した儀間光男氏とは、那覇港の整備方針やSACO合意事案の推進に関して基本的に認識が一致していると考えております。今後は、3者で構成する「那覇港管理一部事務組合設立に関する推進協議会」を立ち上げ、3者覚書の締結、那覇港湾施設の移設の合意、一部事務組合の早期設立に向けて積極的に取り組んでいく考えであります。
 次に、同じく基地問題で、海兵隊の訓練施設をグアム等の国外へ移設することによって、現在6カ月のローテーションで配置される人数が削減可能と考えられるがどうかという御質問にお答えします。
 沖縄に配備される海兵隊の一部は、部隊配備計画(UDP)に基づき米本国、沖縄の基地及び洋上に展開している米艦隊に6カ月のローテーションで配備されていると聞いております。県としては、ジョーンズ米海兵隊総司令官が下地衆議院議員との会談で、訓練の一部を沖縄からグアムに移すよう検討を指示した旨発言しておりますので、沖縄県民の基地負担の軽減を図る観点から6カ月のローテーション訓練のグアムへの移転についてもその可能性があるかどうか、政府を通じて打診してみたいと考えております。
 次に、基地問題について、地位協定の見直しについて河野外務大臣が前向きな発言をしているが、県としてはどう考えるか、今後の対応はどうなるのかについてお答えいたします。
 私は、去る2月14日、今回の放火事件に関連して被疑者の即時引き渡しと日米地位協定の見直しなどを関係大臣に要請しました。
 その際、河野外務大臣から、平成7年10月の日米合同委員会で合意された身柄引き渡しに係る「特定の場合」を例示してもうまくいかないときは日米地位協定の見直しも検討しなければならない旨の発言があり、また2月15日の衆議院予算委員会において、日米地位協定の見直しも視野に入れてよいと思っている旨の答弁がありました。さらに2月21日には福田官房長官が県議会の要請団に対し、日米地位協定の問題を含め沖縄の問題に前向きに取り組む考えを表明しております。また昨日、河野外務大臣が来県され県庁で懇談した際にも大臣から、基地問題に絡んで県議会や市町村議会でさまざまな決議がなされたことは重要であり、日米地位協定について運用の改善で問題が改善されなければ地位協定の改定を視野に入れて米側と話をしなければならない旨の発言がありました。
 政府関係者のこれらの発言は、日米地位協定の見直しを求める県民の熱意が国の前向きな対応を促進しつつあるあかしであると考えており、県としては、今後とも日米地位協定の見直しを早急に協議するようあらゆる機会を通して日米両政府に対し強く求めていきたいと考えております。
 次に、地球環境問題の取り組みについてでございます。
 地球環境問題について、その1つの沖縄県環境保全率先実行計画の推進について、次の「ローカルアジェンダ21」の策定について、その次の「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想の推進について、3つの御質問に一括してお答えをいたしたいと思っております。
 地球温暖化やオゾン層の破壊などの地球環境問題は、自然環境や人の健康、経済基盤などさまざまな分野にその影響が及ぶと予測され、私たち人類の生活と将来の人類の生存にかかわる深刻な問題となっており、県としても重要な課題として位置づけております。

 このようなことから、県では平成11年5月に「沖縄県環境保全率先実行計画」を策定し、あらゆる事務・事業において環境に配慮した行動を全庁的に推進しているところであり、その結果、ごみ処理量が減少するなど成果があらわれてきているところであります。
また、21世紀の沖縄が環境の保全と産業振興のバランスの上に美しい自然と豊かな暮らしを両立させていくための第一歩となる「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想が平成12年3月に策定されたところであります。この構想は、沖縄の特性、優位性に着目して自然環境に配慮した県土の保全整備や自然エネルギーの導入の促進など環境と産業が両立する施策の基本方向を体系化し、具体的施策の展開により環境共生モデル地域の形成を目指すものであります。
 さらに、地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な社会を実現していくため県民、事業者、行政等がそれぞれの立場に応じてあらゆる活動を見直し、連携して取り組むための行動計画「ローカルアジェンダ21」を策定中であります。
 地球環境問題といっても、その要因は大量生産、大量消費、大量廃棄に支えられた我々の日常の生活や経済活動に起因するものであります。このため解決策の多くが地域的な解決に根差すものであり、あらゆる主体が一体となって地域に根差した取り組みを進めていくことが大変重要であります。これらの計画や構想等をもとに、今後一層地球環境問題への取り組みを強化していきたいと考えております。
 次に、福祉・医療についてでございまして、本県における児童虐待の現状と対策について、また拠点施設設置の見通しについて伺いたいとのお答えでございます。
 児童に対する虐待は全国的にふえつつあり、本県においても同様で年々増加しております。
 児童虐待の対応については、これまで虐待防止のための手引等を作成し、関係機関による地域ネットワーク連絡会を開催するなど早期発見、早期対応及び被虐待児童の保護を図ってきたところであります。また各児童相談所に児童虐待対応協力員を配置するとともに、児童養護施設においては心理療法担当職員を配置し、虐待を受けた児童に対する適切な処遇体制を確保するなど対応してきたところであります。
児童虐待の防止等に関する法律の施行に伴い、県においては児童相談所の児童福祉司を増員し職員の専門性を高めるための研修等を充実させます。また保護者へのカウンセリング等を行う精神科医を配置することとしております。
 さらに、一時保護の児童に安心感、温かさを感じさせる雰囲気の施設とするため一時保護所を含む中央児童相談所を全面改築することとしております。
なお、国においては児童相談所等への情報提供や職員研修などの技術的支援を行う「虐待・思春期問題情報研修センター(仮称)」を設置することとしており、今後情報を収集してまいります。
 その他の御質問につきましては、関係部局長等から答弁させます。

 
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