平成12年(2000年) 第 3回 沖縄県議会(定例会)
第 4号 9月28日
知事公室長(親川盛一)
 

 上原吉二議員の嘉手納・普天間飛行場周辺住宅防音家屋空調施設維持費等についての質問に順次お答えをいたします。
 まず第1に、成田空港周辺市町村においては、新東京国際空港公団や成田空港周辺地域共生財団から着陸料や助成金を得て補助金交付要綱を策定し、住民負担の軽減対策を講じているが、運輸省と防衛庁の対比をどのように考えているかという御質問にお答えをいたします。
 県は、航空機騒音対策として現に実施されている防衛施設庁所管の基地周辺整備事業と運輸省所管の民間空港周辺における防音工事事業に係る空調機器の維持管理費の助成制度を比較検討するため、防衛施設庁が特定防衛施設として指定する嘉手納飛行場を初め21飛行場と、運輸省が特定空港として指定する成田空港を初め15空港が所在する都道府県及び市町村に対して、一般住宅に対する空調機器維持管理費補助制度の有無について聞き取り調査を実施しました。
 調査の結果、運輸省が指定する特定空港及び防衛施設庁が指定する特定防衛施設のいずれにおいても、空調機器維持管理費の助成措置は、うるささ指数が75デシベル以上の第1種区域に所在する一般住宅のうち、生活保護法に規定する生活保護世帯のみが対象となっていることを確認いたしました。
 また、聞き取り調査で、成田空港周辺において市町村が独自に航空機騒音対策を行っている事例があったことから、成田空港周辺市町村の千葉県成田市、芝山町、横芝町、松尾町及び下総町の1市4町を対象にして去る9月6日から8日までの間に現地調査を実施いたしました。
 本来、国際空港の設置及び管理に関しては国が直轄事業として行うことになっておりますが、今回調査した成田空港については、独立採算制による効率化の観点から新東京国際空港公団が設立され、同公団が主体的に騒音防止対策を含めた周辺対策事業を実施しております。
 また、同空港公団からは、千葉県、茨城県及び両県下18市町村に対して、着陸料収入を財源とした新東京国際空港周辺対策交付金が交付されており、現地調査した1市4町においては同交付金を財源とし空調機器の維持管理費補助を含め独自の補助事業を実施しております。
 以上のことから、運輸省及び防衛施設庁とも国の補助制度としての違いはありませんが、成田空港においては新東京国際空港公団から交付されている新東京国際空港周辺対策交付金を活用してその他の騒音対策事業を広く実施していると認識しております。
 次に、基地から発生する騒音のために空調機器が設置されているが、電気料は一部の地域のみに損失を与えることになっている、公平公正の原則からして早急に問題を提起すべきだがどうかという点と、嘉手納基地爆音訴訟の判例からしてクーラーの電気料金自己負担問題も出てくると予見されるが、行政対応をどのようにするのかという2点について一括してお答えをいたします。
 県は、米軍基地に起因する航空機騒音の防音工事及び維持管理費等については、日米安全保障条約及び日米地位協定の締結当事者である国が負担すべきものと考えており、これまで国に対して、基地周辺整備事業により防音工事を実施したすべての住宅の空調施設に係る維持管理費についても全額国が負担するよう要請してまいりました。
 なお、防衛施設庁が本県の狭隘な県土における住宅事情を勘案し、嘉手納飛行場の第1種区域告示日後に建築された家屋に対しても住宅防音工事の対象とすべく平成13年度予算の概算要求をしていることについては、基地周辺住民の負担の軽減を図る上で一定の前進であると受けとめております。
県は、これまで防音工事対象区域の指定拡大に当たっては、騒音被害の実態、住宅分布状況、地形等を考慮するよう国に要請してきたところであり、今後とも関係市町村及び地元住民の意向が反映されるよう求めていきたいと考えております。
 次に、維持管理費等補助金要綱を制定している市町村と現在準備中のところはどこどこかということについてお答えいたします。
 成田空港周辺においては、千葉県下の成田市、芝山町、横芝町、松尾町及び下総町の1市4町で補助金交付規則や要綱を制定し、一般住宅を対象に空調機器維持管理費の補助を行っております。
 また、同県の大栄町においては、空調機器を設置した共同利用施設に対して維持費の一部を補助しております。
 その他の県外の状況については、民間空港である新潟空港周辺において新潟市が、鹿児島空港周辺においては溝辺町が、また特定防衛施設である新田原飛行場周辺においては新富町が一般住宅を対象に空調機器の維持管理費補助を行っております。
 本県においては、嘉手納町が国の基地周辺整備事業による住宅防音工事に伴い空調機器を設置した者のうち、生活保護者及び生活困窮者に対して予算の範囲内で空調機器の維持管理費の補助を実施しております。
 なお、現在、補助制度の制定を準備している市町村は、県が調査した範囲ではほかに見つかっておりません。
 次に、成田周辺市町村の空調機器等の維持管理補助金に着陸料や補助金が幾ら交付されているかという御質問にお答えいたします。
 新東京国際空港公団は、新東京国際空港の円滑な運営を図るため千葉県、茨城県及び両県下18市町村に対し、航空機の騒音などにより生ずる障害の防止及び空港周辺整備の費用として、着陸料収入を財源とした新東京国際空港周辺対策交付金を交付しております。
 当該交付金は、特別交付金と普通交付金に分けられ、その配分は特別交付金が交付金総額の4割、普通交付金が6割となっております。特別交付金は道路、河川、農業用水路等の特定事業に対し市町村からの申請に基づき事業費の50%を上限として交付されております。
 一方、普通交付金については、使途目的を特定せず、広く航空機騒音等により生ずる障害防止のために交付されていることから、市町村の独自の判断において空調機器の維持管理費を含む騒音対策事業などに充当されております。
 御質問の交付金の交付額は、2県18市町村に対し昭和53年度から平成10年度までに約494億円となっており、平成10年度は約36億4000万円が交付されております。
 なお、平成11年度に成田空港周辺市町村において同交付金を活用して空調機器維持管理費の補助を行った実績については、成田市が約1億5600万円、芝山町が約4700万円、松尾町が約300万円となっております。
 次に、成田空港周辺地域共生財団の構成はどうなっているかという点と、財団の補助金の運用はどうなっているかと、それから沖縄の現状と対比して県の所見を賜りたいということにつきましては一括してお答えをいたします。
 千葉県、新東京国際空港公団及び成田空港に隣接する千葉県下1市7町は、成田空港の第1種区域内において公団の防音防止事業の対象とならない、告示日以後に建築された家屋への防音工事及び第1種区域と同程度の騒音被害が発生する隣接区域における防音対策など現行の法制度では対応できないものに対して、地域の実情に即したきめ細かな騒音対策等の事業を行うことを目的に平成9年7月に成田空港周辺地域共生財団を設立しております。
 同共生財団は、公団50億円、千葉県25億円、成田市16億円、芝山町3億円、他の6町でそれぞれ1億円を出資し、100億円の基金を創設し地域住民の要望に応じた民家防音工事助成や建てかえに伴う防音工事再助成の事業を実施しております。
 なお、事業に要する経費については、基金の運用益のみならず元金も取り崩して充当され、基金がすべて執行された段階で再協議が行われるものと聞いております。
共生財団を設立して地域対策を講じている事例は大いに参考になるものではありますが、同様な対策を講ずるためには当然財団の基本財産として出資する財源が必要であり、その財源確保が大きな課題となります。
 次に、嘉手納、普天間飛行場が存在するために住宅防音工事を余儀なくされ、クーラーの電気料金を負担せざるを得ないが、嘉手納町、北谷町、読谷村、沖縄市、その他の該当市町村で住民が負担させられた電気料のおよその金額は年間どれぐらいかという御質問にお答えをいたします。
 電気料金について、クーラー使用分などの内訳を区分し算定することは困難であることから、嘉手納、普天間飛行場周辺の住民が負担したクーラー電気料金のみの年間使用料は不明であります。

 なお、那覇防衛施設局に照会したところ、世帯当たり年額2万円を上限に生活保護世帯へ空調機器稼働費助成を行っており、平成11年度は嘉手納飛行場周辺の381世帯に対して約378万3000円、また普天間飛行場周辺の19世帯に対して約26万円を助成したとのことであります。
 次に、成田飛行場と嘉手納飛行場の面積を附帯施設も含めて説明してもらいたい、また双方の防音工事対象設置戸数及び人口についても伺いたいという御質問にお答えをいたします。
 成田空港は、同空港の全体計画によりますと4000メートル滑走路1本と2500メートルの平行滑走路1本及び3200メートルの横風用滑走路1本が計画されていますが、現在は4000メートルの滑走路のみが運用されております。エプロンは約190ヘクタールで、112のスポット、3棟の旅客取扱施設が整備されており、空港敷地の全体計画面積は1065ヘクタールとなっております。
 一方、嘉手納飛行場は、約4000メートルの2本の滑走路、管制塔、ターミナルビル、格納庫、兵舎、住宅、学校等の施設があり、施設面積は1995ヘクタールとなっております。
 成田空港第1種区域内における防音工事の対象戸数は4918戸、また嘉手納飛行場第1種区域内における防音工事対象戸数は約4万戸となっております。
 なお、成田空港及び嘉手納飛行場第1種区域における人口について、新東京国際空港公団及び那覇防衛施設局に照会したところ、いずれも不明との説明を受けております。
 次に、成田が特定扱いされるなら嘉手納は超特定の扱いをされるべきであるが、成田と嘉手納の周辺市町村への対策の対比はどうなっているかという御質問にお答えをいたします。
 嘉手納飛行場周辺においては、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」により、また成田空港の周辺においては、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」により、うるささ指数が75デシベル以上の第1種区域において住宅防音工事等が実施されております。このことから、県は嘉手納飛行場及び成田空港周辺においては同等の騒音対策事業が実施されていると考えております。
 なお、千葉県、新東京国際空港公団及び成田空港に隣接する千葉県下1市7町は、現行の法制度では対応できないものに対して、地域の実情に即したきめ細かな騒音対策等の事業を行うことを目的に平成9年7月に成田空港周辺地域共生財団を設立し、地域住民の要望に応じた民家防音工事助成や建てかえに伴う防音工事再助成の事業を実施しております。
このように財団を設立して地域対策を講じている事例は大いに参考になるものではありますが、同様な対策を講ずるためには当然財団の基本財産として出資する財源が必要であり、その財源の確保が大きな課題となってまいります。
 次に、米軍基地内住宅の電気料は、日、米いずれの負担でするのかという御質問にお答えをいたします。
 在日米軍提供施設内における光熱水費については、施設内の住宅を含め平成3年度から日本政府が在日米軍駐留経費、いわゆる思いやり予算として予算の範囲内において支払っております。
 以上でございます。

 
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