平成15年(2003年) 第 5回 沖縄県議会(定例会)
第10号 12月17日
総務企画委員長(具志孝助)
 

 ただいま議題となりました議員提出議案第2号イラクへの自衛隊派遣に反対する意見書について、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 委員会におきましては、本案について提出者を代表して平良長政委員、高嶺善伸委員、宮里政秋委員及び当山全弘委員から説明を聴取し慎重に審査を行ってまいりました。
 以下、審査の過程における質疑の概要等について申し上げます。
 本案に関し、軍人や戦闘員でもない外交官が襲撃された事件をどう思うか、なぜ2人がテロの対象になったと思うかとの質疑がありました。
 これに対し、そもそも今回のイラク戦争は、アメリカがイラクは民主国家でないとか大量破壊兵器を持っているとかいって始めた大義なき戦争である。その結果、アメリカはイラクを占領するが、これはイラク国民にとってはアメリカの違法、無法な占領であり、イラク全土で怒りが広がった。そのため、現在テロ・ゲリラが行われているものと思う。このような中で日本が自衛隊を派遣すれば、日本はアメリカの占領政策を助けているものとみなされることになる。今回の襲撃もそのような考えから行われたものと思われる。このことは、医療や給水などのボランティア活動を展開しているNGOなどが襲われていないことからも明らかである。イラク国民は、軍隊とボランティアを明確に区別していると理解しているとの答弁がありました。
 次に、今回の自衛隊派遣は人道支援に限定しての派遣であり、戦争を行うために行くわけではない。イラクの国民のため、イラク国民と一緒になって医療、教育、道路、橋など広範囲な支援を行うものであるが、これをどのように考えるのかとの質疑がありました。
 これに対し、問題は、軍服を着て無反動砲のような重装備で行くことにある。たとえ自衛隊が水道布設など人道支援を行ったとしても、イラク国民にとっては軍隊が来たとか、アメリカを助けるため来たとしか理解しないことにあるとの答弁がありました。
 次に、イラク国内の治安が悪い中で自己の安全確保ができない民間技術者やNGOを送り込むことが果たして可能か、無謀ではないか、復興に必要な大量の資材を迅速に運搬するとともに、組織的かつ大規模・高度なレベルで復興支援を行い、さらに自己を守っていくことができる自己完結型の組織は自衛隊以外にないと思われるが、どう思うかとの質疑がありました。
 これに対し、アメリカを初め世界各国が拠出している復興援助資金は入札により民間企業が受注し、民間企業の技術者が道路や橋等を建設している。NGOは確かに大規模な復旧はできないが、民間組織を活用すれば復興は可能であり、軍隊を派遣する必要はないと思うとの答弁がありました。
 次に、沖縄県は去る大戦で唯一地上戦が行われ、県民のとうとい生命が多数失われたという悲惨な過去があり、戦争を行うべきではないという県民の切実な思いがある。しかし、我が国が国際的な責任の一環の中で義務を果たさなければならないのであれば、人道復興支援という一つの大きな枠内でイラクの支援を行うべきであると思うがどうかとの質疑がありました。
 これに対し、県内52市町村長の中で早急に自衛隊を派遣すべきとしているのは2人で、残りは慎重な検討を求めている。アナン国連事務総長は、イラク国内の戦争状態はあと1カ年程度かかるとの見通しを明らかにしている。したがって、今慌てて自衛隊を派遣する必要はない。民族の自決論を重視する立場やイラク国民が真に望む支援のあり方について慎重に検討すべきである。このため、県議会はもっと意見交換を行うべきであるとの答弁がありました。
 採決の結果、本案は、賛成少数により否決されました。
 以上、審査の経過及び結果を申し上げましたが、よろしく御審議のほどをお願い申し上げまして報告を終わります。

 
20030510030110