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平成17年(2005年) 第 3回 沖縄県議会(定例会)
第 9号 7月14日
嘉陽 宗儀
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私は、日本共産党県議団を代表し、乙第10号議案沖縄県国民保護協議会条例と乙第11号議案沖縄県国民保護対策本部及び沖縄県緊急対処事態対策本部条例に反対する討論を行います。
この2つの条例は、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」の規定に基づき、組織及び運営に関し必要な事項を定めるためのものであります。
この国民保護法は、有事関連七法案の目玉として出されてきました。有事関連七法案は、国民保護、米軍行動円滑化、特定公共施設利用、外国軍用品等海上輸送、捕虜等の取り扱いなどでありますが、その内容の大きな特徴は、米軍支援を軸とした軍事優先の国内体制づくりのねらいがあります。日米安保条約のもとでいつでもアメリカのしかけた戦争に日米共同で軍事行動がとれるような態勢をつくる、そのために我が憲法を改悪し、とりわけ第9条をねらい打ちにする、戦争する国づくりの動きの中でそれへの対処として国民保護法は出されています。
我が国が武力攻撃をされた事態のもとで、いかに国民の被害を最小限に食いとめて保護するかということが中心問題でありますが、これには実に多くの解明すべき点が含まれていますし、県議会での質疑でも当局が答弁できない状況で審議は打ち切られてしまいました。
私は、幾つかの問題点に絞って討論します。
初めは、モデル計画についてです。
武力攻撃された場合に国民を避難させるために、それを閣議決定された基本指針をもとにモデル計画をつくり、それをもとに各県の計画をつくるようにというのが政府の方針になっています。
基本指針が想定するのは武力攻撃4類型。その内容は、着上陸攻撃、航空攻撃、ミサイル攻撃、ゲリラ攻撃で、緊急対処事態4類型では、航空機テロ、化学薬品散布、原発破壊、交通機関占拠の8類型であります。
これらの想定自体が本当に国民を守ることができる内容かといえば、全くの虚構でしかないことが明らかであります。
特に、このモデル計画について各議員の皆さん方もこれを持っておられると思うんですけれども、(資料を掲示) この中身を逐次読んでみますと、こんな無責任な立場で武力攻撃事態になって国民が守れるかという非常に欺瞞的な内容になっています。
そういう意味では、先ほど自民党代表の討論がありましたけれども、本当にこれを十分に熟知されたのかと、そういう懸念を持たざるを得ないそういうものでありました。特に、基本指針がつくられておりますし、その基本指針に基づいてこのモデル計画がつくられていますけれども、(資料を掲示) その大もとは何かということですけれども、その大もとは、国民保護の基本指針とモデル計画の基本指針はあくまでもあの沖縄戦の教訓だというわけであります。その沖縄戦の教訓をもとにして国民保護計画、モデル計画がつくられていますけれども、これはあの沖縄戦を県民の立場からあの戦争を総括するのか、そして旧軍隊の日本軍の立場から総括するか、大きな問題点が問われますけれども、この保護計画はあくまで日本軍の戦争を推進してきた立場から総括を行って、この中に生かされているという重大な問題があります。
それで、その沖縄戦について注目すべき総括があります。軍部の中で「沖縄作戦 第二次世界大戦史 陸戦史研究普及会編」というのがありますけれども、これは何で戦史を研究するかというと、こう述べています。
「戦史を研究する目的の一つは、過去の史実を通じてその状況の中に身を置き、事の因果成否を検討して教訓を得ようとするところにあります。同時に過去の諸問題を深刻に研究することによって、新しい戦法の創造も可能となり、また、困難な任務・状況に対処して最良の方策を考案する能力をも養うことになりましょう。この意味において、陸戦史集が国土防衛を職とする自衛官にとって、数多くの教訓を学びとる好資料になりうる」ということで、戦史の目的を書いていますけれども、それでは、その中で、なぜ沖縄戦かということについてこう述べています。
「圧倒的な物量を誇る米軍に対し、日本軍は沖縄県民と真に一体となり、死力を尽くして長期持久作戦を遂行した。遂に敗れたとはいえ、この軍官民一体の敢闘は、米軍に多大の出血を強要してその心胆を寒からしめ、もってその本土攻撃を慎重にさせ、我が本土決戦作戦準備に貴重な日時を与えた。」、沖縄捨て石作戦、非常に明確になっています。
特に可憐な男女中学生を含む県民の敢闘は――これはひめゆり部隊、健児之塔――この敢闘は、当時国民に深い感銘を与えたものであり、長く青史にとどめられるべきものであろう。本書は、この沖縄作戦について、南西諸島の防衛を担任した第32軍の新設から、組織的戦闘が終了するまでの、作戦戦闘の実相を述べて研究したものであると。
あくまでそれに基づいてこの国民保護法案はつくられているということをしっかり抑えておく必要があると思います。
私どもは今、戦後60年、二度と再び戦世を繰り返してはならないと。安里議員も新聞にも出ていましたけれども、同じ自民党の議員も含めてあの沖縄戦は何だったか改めて振り返る。その振り返る場合でも県民の立場からか、軍の立場からかということが今度問われているんですけれども、改めてこの沖縄戦の中身がどうだったかということについても見ておく必要があると思います。
それで、旧日本軍が沖縄戦の疎開作戦をどういうぐあいにとっていたかということで資料が入っていますけれども、まず60万県民を幾ら疎開させるかと。それを10万人にしようと。全部助けることはできない。そういうことで沖縄から本土に8万人、台湾に2万人の計10万人を7月じゅうに疎開させようと。実際は本土に8万人、台湾に2万人の計10万人は7月じゅうにやるということになったんですけれども、実際はそうならなかった。
それから何を利用するかというと、沖縄に軍の部隊や軍需品を輸送した帰りの船を利用すると。沖縄に軍需物資を運んだ船を使って疎開させると。
業務の中身にもたくさん問題点がありますけれども、老人、幼児、婦女子だけは疎開地で生活させると。何のためか。戦闘地域から住民を除外するためだと。それから食料確保ということです。だから疎開させる目的も住民を守るというのが目的ではなくて、あくまで戦闘をしやすいような状況をつくること、それから旧日本軍の食料を確保する、それが目的だということがこの総括の中でも非常に明確に出されているわけです。これについては、住民虐殺の問題からいろんなことがありますけれども、この沖縄戦の最大の教訓は、兵隊と住民が混然としていたと。十分分けられなかったということも反省の中に入っていますけれども、ところが実際上、軍隊が住民を避難させる、疎開させるということを言いながら、いざ戦闘になったら防空壕から軍隊が住民を追い出して敵の機銃弾にさらしたと、そういうのが実態でしょう。だから実際上、沖縄県民を守る32軍が配備されてきましたけれども、実際上、行軍で、沖縄県民を守るためではなくて国体護持のために32軍は沖縄に配備されて、その結果、県民を守るんじゃなくて県民を犠牲にしたと、これが歴史の教訓です。
今度のこの国民保護法案、これも教訓からいえばああいう混然としたような状況をやめると、そういうことしか書いてなくて、沖縄県民を本当に守る計画になっているかというと、そうなってない。
先ほど平良長政議員からもありましたけれども、核戦争になった、核攻撃された、どうするか。雨がっぱをつけましょう、被災しないために手袋をつけましょうと。こんなことで本当に核攻撃されて県民の命が守れるということを考える人はだれもいないと思うんです。ところが、その内容が堂々とこの基本方針やモデル計画には貫かれている、そういうわけです。
特に沖縄戦の教訓については、多くの県民が戦後60年――今、思い出したくないけれどもやはり還暦ですよ――60年でまたいつか来た道、戦争への道に逆戻りするんじゃないかというような危機感から、今、改めて多くの人が証言しています。改めて私どもは県議会としても沖縄戦を本当に正面からとらえて、いかにすれば県民の命と暮らしを守ることができるかということについては、やはり調査・分析してまとめていく必要があると思います。
この保護計画では、できるだけ多くの県民を守るという配慮そのものが出されていますけれども、しかしそれもまやかしであります。
まず、武力攻撃を沖縄が受けた際に、米軍や自衛隊の任務は何かといえば、第一に戦闘に参加することです。沖縄が武力攻撃された場合には、米軍や自衛隊は沖縄県民の生命財産を守るのが任務ではない。第一に戦闘に参加することです。県民を避難させる任務は全くありません。しかも、周辺事態法で明らかになったように、当面の周辺事態に台湾有事が想定された場合に、湾岸戦争並みの部隊が投入されたと想定すると、最も近い沖縄が後方支援基地にされる危険性があります。そうなったら、軍事専門家の分析では、湾岸戦争並みになると56万人の軍隊と13万の戦闘車両の出入国や移動はすべて直接軍事基地を使用するとなると、控え目に見積もっても700万トンの軍需物資が民間港である那覇港で荷揚げされることになります。
那覇港は、年間の荷揚げ実績が940万トンであり、700万トンの物資をおろすには年間ほぼ9カ月にわたって民間の船舶を締め出すことになります。水とトラックはホスト国でというが、56万人といえば沖縄県の県民の人口の半分近い数字であり、水を供給する自治体は大混乱に陥ることは必至であります。また、沖縄県内には営業用のトラックは4290台しかなく、湾岸戦争のように4500台を確保するとすれば、県内のすべての民間トラックを徴用することになると専門家は試算しています。
私が委員会で、130万人の県民を疎開させるとなると具体的にはどういうことになるのかと質問しましたら、民間の空港と港湾を使うという答弁でした。そうなると、武力攻撃を行った場合に使えるのは、那覇空港は自衛隊が使用することになり、飛行機を使用しての避難はほとんどできないことになります。港湾を使用するだけになると、避難は一部の県民しかできないということになります。だから犠牲はやむを得ないと、こういうことが堂々と口に出てくるわけです。
かつては、「死なばもろとも」というのがありましたけれども、周辺事態で武力攻撃されたら助かる道はない。しかも米軍基地が集中している沖縄が最大の攻撃目標にされますから、130万県民が避難することはまず不可能なことです。
国民保護法は、現在の憲法との関係でも明確に違反する内容になっていますし、憲法で保障されている国民の諸権利が侵害、じゅうりんされるようになっています。その具体的な問題点については時間の都合で言及できませんが、今後とも議会として十分に議論を深めていく必要があると思います。国民基本方針や保護モデル計画の中身についてはぜひ議員諸兄の皆さん方も深めていただきたいと思います。
それから、私は議会としてどうしても大きな問題にしなければならない問題があると思います。
この国民保護法は、広く県民の声を聞くということになっていますが、その措置が全くとられていません。私は、委員会でも質問しましたけれども、県民意思の代表は、県民意思の最高議決機関であります県議会でありますが、県議会の意見を反映する道は保護計画の中には全く閉ざされています。ありません。県民保護の計画は、自衛隊などが専門家の立場で中心的に作成していくことになります。
だから私は、そうなるとあの第二次大戦で沖縄県民を守ると言いながら、いざ銃弾が飛んできたら沖縄県民を防空壕から追い出したあの旧軍隊。そういう皆さん方の手によって、あの戦争は正しかったという立場から保護計画がつくられていく。県議会はそれで責任を持てるかということが実は問われているわけです。そして、県議会にはあくまで事後報告ということになっています。これでは県民に責任を負う県議会議員としては沖縄県民保護協議会条例を制定させることはできません。どんな避難計画を作成しても、訓練されていない県民が毅然と避難できるわけがありません。この保護協議会を設置しない方が県民を戦争に巻き込む危険性は減少します。つくったら戦争への道、沖縄県民を戦争に巻き込む、そういう道につながっていきます。
そういう意味では、特に今、武力攻撃事態法の話がありましたけれども、なぜこういうことが起こったか。9・11、あのときの沖縄の米軍基地がどうだったか、皆さん方、よく記憶に新しいと思います。
今、イラクでアメリカがああいう侵略戦争をやっています。注目すべきアメリカの映画がつくられていますけれども、「テロリストは誰だ」というのが出ていますけれども、旧CIAをつくった皆さん方とか、旧アメリカ軍の政府高官がどんどん登場して、アメリカが世界で行った犯罪行為ということで暴露していますけれども、あれを見ると非常に恐ろしい。世界各地で地域紛争が起こるのは全部アメリカがしかけて、CIAが全部しかけてきたという。そのCIAのしかけた張本人たちが登場して、アメリカというのは大変な国だということを言っているんです。
今、私どもが攻撃されるという、武力攻撃されるという事態になっても、これはどこから攻められてくるかといえば、アメリカが今イラクで行っているように不法な戦争をやって、その結果、我々が攻撃されるということになるんです。
なぜアメリカがしかけた戦争で沖縄県民を戦争に巻き込む必要があるんですか、皆さん。そういう意味では、今度の憲法改悪も含めて本当に日本の大きな戦争への道の足音が聞こえて残念でなりません。
私は、もともと高校の教員をしておりました。当時、安保闘争もいろいろありましたけれども、教員をして真っ先にやったのは、二度と再び戦争への道を許してはならない、教え子を戦争に送るなと、こういう誓いのもとにこういう政治活動にも参加してまいりました。そして一生懸命憲法改悪反対、教育基本法を守るその戦いもしてまいりましたけれども、まさかそういうために青春をかけて頑張ってきたこの私自身の立場で、沖縄県民を戦争に巻き込むおそれのあるこういう保護協議会をつくろうなんていうのは夢にも思いませんでした。そういう意味では、改めてこういう事態になってみんなの力を結集して、本当に沖縄県民が戦争に巻き込まれない、その戦いを大きく構築していく必要があると思います。そういう意味では、ぜひ議員諸君の皆さん方の賢明なる判断でこの協議会設置を中止させていただくように要請いたしまして討論といたします。
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