平成16年(2004年) 第 2回 沖縄県議会(定例会)
第 8号 7月22日
文教厚生委員長(金城 勉)
 

 ただいま議題となりました乙第8号議案及び乙第9号議案の2件について、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 委員会におきましては、病院管理局長の出席を求め慎重に審査を行ってまいりました。
 以下、審査の過程における執行部の説明及び質疑の概要等について申し上げます。
 まず、乙第8号議案「損害賠償額の決定について」は、平成14年5月22日に県立中部病院で心臓手術を受けた当時16歳の患者が、退院後の平成14年6月10日に体調不良を訴えて来院し、午後0時15分に救命救急センター内の小児発達外来で診察を受けた。患者は、嘔吐や腹痛を訴え脱水症状もあったことから、輸血や血液検査等の所要の処置を施した後、経過観察を受けていたが、午後5時15分に心タンポナーデによる心停止を起こした。直ちに回復処置を施したところ一命は取りとめたものの、脳障害を起こして植物状態となった。本件事故の原因について病院内で事故調査を行うとともに、平成14年12月、病院管理局内に「医療安全推進委員会」を設け、事故調査を行った。
 その結果、患者が来診してから事故が発生するまでの間の一連の診療行為にかかわった医師や看護師等すべてのスタッフが患者の訴える腹痛の症状のみに目を奪われ、心タンポナーデという致死的状況を見落としていたことが今回の事故発生につながったとの結論に至った。
 県としては、事故発生から今日まで、患者の病状の改善のため最善・最新の治療に努めるとともに、患者側に対して事故に関する説明を十分に行い、謝罪をした上で損害賠償に関する交渉を誠意を持って行ってきた。これまでの約2年間、患者側と延べ19回の協議を重ねた結果、賠償金として2億4807万1902円を支払うことで和解に至った。
 なお、本議案は損害賠償の額を決定する内容であり、県の義務に属する損害賠償の額を定めるためには、地方自治法第96条第1項及び沖縄県病院事業の設置及び管理に関する条例第5条の規定により議会の議決を必要とすることから本案を提出するものであるとの説明がありました。
 本案に関し、今回の事故の原因は医師や看護師等の過重労働に起因しないのか、本当に不可抗力であったのかとの質疑がありました。
 これに対し、今回の事故が起こった原因の一つとして医師等の業務繁忙も考えられる。今後は医師等の労働条件の改善に努めたいとの答弁がありました。
 次に、損害賠償額2億4807万円の内訳はどうなっているか、全額を県が負担するのかとの質疑がありました。
 これに対し、損害賠償額は同種の判例等での算式や基準を適用するとともに、実費等を積算して算出している。その内訳は、治療費関係で1688万円、介護費用で243万円、宿泊交通費で187万円、入院雑費で64万円、入院慰謝料で352万円、障害慰謝料で2800万円、遺失利益で8613万円、将来の介護費用で8290万円、車両購入費で481万円、家屋改造費が2086万円である。損害賠償金のうち、保険から最高1億円が支払われる。残りは病院事業の費用で補てんするとの答弁がありました。
 そのほか、適正な職員数、最近の医療紛争発生件数、他県での医療事故の状況、今回と同様なケースの発生事例、今回の事故と刑事事件とのかかわり、医療事故を起こした職員の処分、県立病院と民間病院との役割分担などについて質疑がありました。
 次に、乙第9号議案「損害賠償額の決定について」は、平成11年8月10日に県立那覇病院で脳血管障害を持っている当時82歳の患者が右下肢の麻痺を訴えたところ、左脳慢性硬膜下血腫と診断され、同年8月12日に穿頭血腫洗浄術を受けた。術後、同じ部位に急性硬膜下血腫が生じたため開頭手術を行い血腫を除去したが、常時介護を要する遷延性昏睡、植物状態となった。
 県としては、左脳慢性硬膜下血腫の除去手術後に新たな血腫が出てきたことは、結果的に止血が十分でなかったためであると認め、患者側に対して謝罪し、面談を継続してきた。なお、患者は平成14年4月24日に85歳で死亡している。その後、交渉を行った結果、平成16年3月に賠償金として750万円を支払うことで和解に至ったものである。
 なお、本議案は損害賠償の額を決定する内容であり、県の義務に属する損害賠償の額を定めるためには、地方自治法第96条第1項及び沖縄県病院事業の設置及び管理に関する条例第5条の規定により議会の議決を必要とすることから本案を提出するものであるとの説明がありました。
 本案に関し、事故発生から和解まで時間を要しているが、その理由は何かとの質疑がありました。
 これに対し、事故発生は平成11年8月12日だが、家族側の都合により面談交渉が平成13年から平成15年までの2年間中断していた時期があったことから、長期になったとの答弁がありました。
 そのほか、医療事故の損害賠償額決定と議案との関係などについて質疑がありました。
 以上が委員会における質疑の概要でありますが、採決の結果、乙第8号議案及び乙第9号議案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
 以上、審査の経過及び結果を申し上げましたが、よろしく御審議のほどをお願い申し上げまして報告を終わります。

 
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