平成18年(2006年) 第 2回 沖縄県議会(定例会)
第 9号 3月 8日
前田 政明
 

 私は、日本共産党県議団を代表して、ただいま議題となりました乙第43号議案指定管理者の指定について、奥武山総合運動場の件につきまして反対討論を行います。
 指定管理者制度は、2002年12月にオリックスの宮内義彦氏が議長を務める総合規制改革会議が、官製市場への民間の全面開放を求め、また続いて日本経団連の奥田会長が2003年の奥田ビジョンで官製市場の開放を求めたことを受けて、同年6月に地方自治法が改正され、指定管理者制度が導入されました。
 この経過が示すとおり、公的責任を放棄して基本的には地方自治体の施設を民間に開放し、収益事業の場を提供しようというものです。特に、官から民への規制緩和路線の公的責任、これを放棄する中身が国民生活に重大な被害を与える事例として、皆さん御承知のように耐震偽装事件があります。特に官から民への規制緩和路線の公的責任、これを放棄する中身が国民生活に重大な被害を与える事例として、皆さん御承知のように耐震偽装事件があります。
 この耐震偽装事件は、規制緩和路線の破綻とその危険性を示しているものであります。耐震偽装により自宅マンションが突然使用禁止と宣告され退却を求められた被害住民の生活は厳しさを増しています。
 被害住民が一番悩まされている問題は、事件の責任、補償の相手先はだれに、どこまで求めたらいいのかが定まらない、こういう中身であります。しかし、今回の耐震偽装マンションの建設にお墨つきを与えた建築確認は、国民の生命、健康及び財産の保護をうたう建築基準法に基づくものです。
 今回の官から民へのこの事件は、98年の建築基準法改悪で建築確認の仕事を民間検査機関に丸投げをする下請ができるように規制緩和し、安全が置き去りにされた結果です。
 このことに対して日本共産党は、建築確認を民間に委託することは公的責任を踏みにじるものであるということで反対をいたしました。
 このように、この規制緩和万能論そのものが、いわゆるこういうような耐震偽装問題も含めた官から民への公的責任の問題として、今鋭く提起されているということを私は注意する必要があると思います。
 日本共産党は、本来の公的責任を放棄する公の施設を民間に管理委託をする指定管理者制度に反対してきました。同時に、法改正が行われたもとで個々の施設への導入に当たっては、住民の福祉の向上を図るという観点から個別・具体的に是非を検討するという立場に立っています。とりわけ、公共的役割の強い福祉施設や社会教育施設への適用については、施設によっては直営に戻すことも含めた検討が必要であると考えております。
 地方自治法では、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」ことが求められています。この「住民の福祉の増進」などの役割を果たすために、地方公共団体は各種公の施設を設置して広く住民の利用に供するとともに、設置者である地方公共団体がその管理を直接行うことが原則とされています。
 しかし、地方自治法の改定により現行の公の施設の委託施設はすべて直営で運営するか、指定管理者で運営するかの見直しが必要となっています。新地方自治法第244条の2第3項では、「法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの」、指定管理者に管理を行わせることが規制緩和として認められました。
 緩和の1つは、従来できなかった株式会社など営利法人やNPO法人、さらに法人格を有しない民間団体にまで門戸を開放したことであります。
 2つ目の緩和は、単なる業務の委託ではなく、管理と称して施設全体の維持管理や行政処分など、これまで自治体が行ってきた業務まで任せることであります。指定管理者制度では、住民の負担する税金で建設された公共施設が特定民間企業の営利追求の手段とされてしまいます。参入した民間企業が人件費を削減してもそれが住民に還元されるわけではありません。
 指定管理者は、自治体との協定等により通常一定の管理料の支払いを受けるとともに、条例の範囲内で地方公共団体の承認が必要ですが、利用料金を定め、みずから収受できます。職員の賃金、労働条件や契約形態を事業者に有利に定めることなどにより指定管理者制度は公の施設を収益事業の対象とするものです。
 この議案になっております奥武山総合運動場の指定管理者の指定を受ける4社の共同企業体の利益というのはどのくらい見込んでいるかとの私の質疑に対して、教育委員会は、1621万6000円の剰余金が出る収支計算でありますとの答弁でありました。
 4社企業共同体が奥武山総合運動場から1600万円の利益を出すために、奥武山総合運動場の本来の公の施設としての管理運営をしていく上で、企業の利益を優先して本来の公の施設の運営の趣旨がおろそかにされないか危惧されるものであります。
 公の施設とは、地方公共団体が設置する、「住民の福祉を増進する目的を持つてその利用に供するための施設」という立場から、その運営は基本的に直営で当たるように努めるべきであります。
 以上述べまして、日本共産党県議団は、乙第43号議案奥武山総合運動場の指定管理者の指定について反対をするものであります。

 
20060209010110