前発言
平成15年(2003年) 第 2回 沖縄県議会(定例会)
第 3号 6月30日
浦崎 唯昭
次発言
★ここをクリックすると、この日の発言が全て表示されます。★
おはようございます。
またかと耳を疑いたくなるような相次ぐ事件・事故、それに対して県議会を初め県内52市町村議会、全国知事会、全国都道府県議長会、県市議会議長会及び日本青年会議所等々から日米地位協定の見直しを求める決議が次々と採択され、国民世論が高いうねりとして盛り上がったにもかかわらず、依然として運用改善での対応としてその姿勢を変えようとしない政府の対米追従の外交に業を煮やした稲嶺知事の全国行脚の旅の御労苦に対して心より敬意を表し、さきに通告した発言書に従い県民の会を代表して質問を行います。
1、基地問題について。
去る5月23日に開催された小泉・ブッシュ日米首脳会談において、県民は基地問題で何らかの進展があるものと大きく期待をして見守っていたわけでありますが、残念ながら県民の求める日米地位協定の改定問題や米軍普天間飛行場の代替施設の15年使用期限問題については何ら触れられず、対米追従の外交姿勢だけが印象づけられた感がいたします。
私は、日米地位協定問題を論ずるときに脳裏に浮かぶのは、明治時代、不平等条約改正問題で御奮闘された陸奥宗光外務大臣であります。
時は明治初年、イギリス人による13歳に満たない少女暴行事件が発生し、日本の裁判で犯人を裁くことができなかった当時の不平等条約に対して国民の怒りは頂点に達し、条約の改正を求める世論が高まる中、陸奥宗光外務大臣は日本と条約を締結していた欧米15カ国の中で最も改正に反対していたイギリスとの交渉に全精力を傾ける一方、国内世論を喚起するために次のような歴史的演説を行ったと言われております。
「条例改正の目的、否、日本外交の目的は、国として受くべき権利は受け、国として尽くすべき義務を全うする事にあります。外交政策というものは多くの場合、国民の気性を反映するものであります。かつて幕府は、鎖国攘夷という気風に影響されて、一々外国人との接触を制限する方針をとったのであります。気宇の大きい外交方針をとることは忍耐力があり、進取の気性のある人民をもつ国以外にはできないのであります。いわゆる条約励行とかそれに付随する議案は、維新以来の国是に反するものであり、政府はこの国是に反するものは、これを排除する責任があります。ここに政府の外交方針を闡明してもって諸君の反省を求めるものであります。」と述べ、国民世論をまとめると同時にイギリスとの交渉に粘り強く当たり、ついに明治27年(1894年)不平等条約を撤廃させ、日英通商航海条約の締結を見たのであります。イギリスに続いて欧米15カ国の国々も次々と条約改正に応じ、それまでだれもなし得なかった条約改正の偉業をなし遂げたのであります。
陸奥宗光氏が最後に残した言葉があります。「政治はアート(芸術)なり、サイエンス(科学)にあらず、巧みに政治を行い巧みに人心を収めるのは、美学をもち広く世の中のことに習熟している人ができるのである。決して机上の空論をもてあそぶ人間ではない。」。
歴史を動かした人物にふさわしい言葉として今日なお人々の心の中に深く刻み込まれているのであります。
第2次伊藤博文内閣の外相としてイギリスとの条約改正を成功させ見事な外交手腕を発揮し、明治日本の生存と尊厳を守り抜いた外相陸奥宗光氏の外交姿勢を、岡崎久彦氏著書「陸奥宗光とその時代」の中から引用して紹介しましたが、今日の日本外交と重ね合わせて考えるときに、いみじくもブッシュ米国大統領が小泉総理との会談後の記者会見で「日米同盟は地球規模」と述べ、米国傾斜を深める日米外交、その言葉の奥に潜む日本外交の弱さを指摘せざるを得ないのであります。運用改善という机上の空論をもてあそぶ政府の外交姿勢を喝破し、稲嶺知事にすばらしいアート(芸術)を描いてもらいたいのであります。
そこで知事に御提言を申し上げたいのであります。今や北朝鮮拉致問題は世界共通の問題として取り上げられるようになりました。日米地位協定の問題も拉致問題と本質は何ら変わらないと私は思います。すなわち、この協定によって県民はもとより国民すべてが拉致されているという認識に立つのもあながち言い過ぎではないと思うのであります。
そうであるならば、沖縄の基地問題も拉致問題と同様に日米間の大きな問題として取り上げてもらうことが今求められる大事なことであり、そのためには総理訪米の際に同行して米国大統領に虚心坦懐に知事が話し合いをすることが解決へつながる一つの大きな一歩だと思いますが、知事の御所見を承りたいのであります。
このことにつきましては、2月の定例会でも全く同様な内容の質問をいたしましたが、定例会後、知事があらゆる方策を駆使しながら地位協定改定へ向けて東奔西走することを評価しつつ、いよいよ訪米の時期を探る時期に来たのではなかろうかと感じ、あえて質問をした次第であります。
(2)点目に、6月9日付の米紙ワシントン・ポスト紙は、米国防総省が在沖海兵隊部隊のフィリピンへの配置を模索しているとして、米側はフィリピンに再び米軍基地を建設する可能性もあわせて検討していると報じております。
米軍当局は、県当局の問い合わせに対し事実関係を否定したと言われておりますが、事実関係は別としてそういう話がマスコミから報じられた以上、県民として無関心でいられるはずがありません。
そこでお伺いをいたします。
マスコミで報じられた米軍基地の海外移設問題を県はどのようにとらえ、今後対処していかれるつもりか、御見解を求めます。
新型肺炎に関する問題について。
21世紀最初の大規模感染症新型肺炎は、中国を初めとする東アジアを中心に世界的に猛威を振るい、とりわけ沖縄県と経済や文化の交流の多い台湾での感染拡大は県民に深刻な不安を与えることとなりました。
その結果、WHOは新型肺炎で初の警報を出した3月12日からちょうど100日目に当たる6月19日を前に、新型肺炎については現在はまだその初期段階にすぎないが、世界規模の感染拡大は明確な抑制方向に向かいつつあると発表したが、一方、新型肺炎が再発したり、特定地域の風土病として定着するかどうかを見きわめるためには少なくともあと1年は監視体制の継続が必要だと警告しています。感染症対策として何よりも大事なことは、ウイルスの侵入を水際で阻止することであります。
2点目に、不幸にして侵入という事態を招いた場合には、二次感染を最小限に食いとめること及び県民への情報の公開、プライバシーの保護という正しい予防対策を徹底し混乱を防止することであり、今後とも危機管理体制の強化が強く求められることは当然のことであります。感染症に対する抜本的な対策をお伺いいたします。
次に、台湾との関係についてでありますが、5月9日にWHOが台湾の台北を流行地域指定を「中度」から「重度」に引き上げたことに伴い、県や那覇市においては重度地域である台湾の航空会社や船会社に対し入港等の自粛を要請するとともに、県や県市長会、さらに県経済団体会議から中琉文化経済協会に対し見舞金を送ったとのことであります。
WHOでは、6月13日に台湾におけるSARSによる流行地域指定を「重度」から「中度」に変更し、6月17日には台湾に出されていた「渡航延期勧告」を解除したと発表しています。また、外務省には6月17日の夜に台湾全域に出していた危険情報を、「渡航延期勧告」から「十分注意」に引き下げております。これらのことは、台湾の皆様方が困難な状況の中で新型肺炎の診断や患者の隔離、感染経路の特定等を中心とする封じ込め等に取り組まれた結果であり、心から敬意を表するものであります。
沖縄県と台湾との間の国際交流については、石垣市と台湾省宜蘭県蘇澳鎮、与那国町と台湾省花蓮市が姉妹提携を結んでおり、琉球大学は台湾の留学生を受け入れているとともに、台湾師範大学に留学生を派遣しています。また、県内の他の大学にも多くの留学生がいると言われております。
さらに、これまで経済団体や観光団体を中心にさまざまな交流が行われ、本県に来る海外からの観光客の大半は台湾からの観光客であり、本県の観光の振興の面からも大きく貢献しているところであります。まさに台湾との文化的・歴史的なきずなはかたく結ばれているのであります。
そうした中で新型肺炎の影響で渡航自粛を要請された台湾の皆様の心情を察するときに、複雑な思いをするのは私一人ではないと思います。スタークルーズ社の台湾支社の盧冠群支社長は、6月26日のマスコミとの記者会見でその心情を吐露しております。
1つに、自粛要請、正直に言うと心外だった、1つに、友人であれば隣人が困った場合や問題が発生したときに、果たして来るなと言うだろうか、1つに、国民感情につながりかねないので小さな傷を早く治療することが大切だと思う。SARSは短期で友情は長期だ、1つに、感情的に残るしこりのようなものは時間が解決する。ただ、その解決方法を早目に示すことも必要だろう、1つに、今後もSARSの警戒はしっかりやっていくので、ぜひ温かく迎えてほしい等々の発言をされておられます。
知事も当然そのことを十分過ぎるほど理解していながら、行政のトップとして判断をしなければならなかった苦しい胸のうちも十分わかりますし適切な判断だったと思ってはおりますが、しかしながら文化・歴史ではぐくまれた友情はこのことでゆがめられてはなりません。
そこで、一日でも早く「雨降って地固まる」との格言のごとく、知事が先頭になってその友情の輪を広げる努力をすべきだと思いますが、御所見をお伺いいたします。
次に、さらに恐い感染症エイズ対策について。
人が生きていくための最も大切な機能の一つである免疫を冒す疾患であるエイズは、現代の医学の最大の課題の一つと言われております。1981年、アメリカ合衆国で最初の症例が報告されて以来その広がりは世界的に深刻な状況で、我が国においても1985年3月に最初の患者が発見され、国民の身近な問題として急速にクローズアップされたと聞いております。本県におきましても、医療会を中心に深刻な問題として大きな不安となって広がっておりますが、そこで、県内におけるエイズ対策についての現状と課題についてお聞かせください。
4番目、オニヒトデ対策について。
沖縄本島周辺の海ではオニヒトデが異常発生し、沖縄の貴重な資源であるサンゴ礁が食い荒らされる被害が出て深刻な状況にあります。異常発生の詳しい生態がほとんど解明されていないため、人海戦術による駆除に頼っているのが現状であります。
特に、沖縄本島のサンゴの供給源とも言われる県や環境省などが設置したオニヒトデ対策協議会が最重要保全地域に指定している慶良間諸島近海では、地元のダイビング協会のメンバーが連日のようにボランティアの駆除作業を行っているのが実情であります。
こうした状況から、2002年の沖縄振興特別調整費のうち4700万円が駆除作業に充てられてきたものの、その予算も昨年12月で底をつき、再びボランティアの駆除活動を余儀なくされている現状であります。
こうした中、去る5月27日、政府の大臣政務官会議が首相官邸で開かれ、県内で異常発生しているオニヒトデ問題に対して関係省庁が協力して対策に当たることが確認されております。さらに、QAB(琉球朝日放送)でもオニヒトデ駆除支援のためにニュース番組を通して現状を訴え、さらに「美ら島募金」を呼びかけかなりの成果をおさめ、関係者の間から喜ばれていると承っております。
このように海のギャングオニヒトデの駆除に向けた各関係機関の取り組み、ボランティア活動等機運が盛り上がっております。ここに改めてオニヒトデ駆除のために御尽力されている関係機関の皆様を初め多くのボランティアの皆様、QAB「美ら島募金」に対して心より敬意を表するものであります。しかしながら、実態は依然として厳しい状況にあります。
沖縄のサンゴ礁は、沖縄のシンボルであり、かけがえのない財産であります。世界自然保護基金(WWF)がまとめた報告書によると、全世界のサンゴ礁がもたらす経済効果は年間300億ドル、約3兆6000億円と言われ、そのうち日本が受ける経済的利益は年間約16億7000万ドル、約2000億円と試算されております。
国内のサンゴ礁面積の9割が分布し、観光をリーディング産業と位置づける本県にとってサンゴ礁から受ける恩恵は推して知るべしであります。したがって、いつまでもボランティアの方々の善意に頼っているときではないと思います。この際、県がリーダーシップを発揮し、オニヒトデ駆除に向け強力な取り組みの必要性を訴えるものであります。
そこで伺います。
陸の嫌われものハブ駆除のためにハブ条例を制定し相当の効果を上げている市町村がありますが、それに倣い仮称「オニヒトデ駆除条例」を制定する考えはないか、お尋ねいたします。
5番目、都市モノレール事業について。
県民・那覇市民待望の沖縄都市モノレールが8月10日の開業に向けて連日試運転が続けられ、いよいよ現実のものとなってまいりました。去る5月28日には運賃認可申請が行われバス路線再編案も公表され、開業に向けた体制が着々ととられております。交通渋滞の緩和や沿線開発による地域活性化、利便性の高い公共交通網の構築が大いに期待されております。思えば長い道のりでした。
昭和47年、那覇市において都市モノレール事業が打ち出されて以来、その導入をめぐって賛否両論に分かれ侃諤激論が交わされてまいりました。我が会派の平仲善幸議員は那覇市議当時、都市モノレール事業対策特別委員長としてその取りまとめで大変御苦労なされたお一人でございます。導入のために御尽力された歴代の那覇市長、知事、議員、行政関係者の皆様に対して改めて心より敬意を表するものであります。
私も那覇市議時代から今日までずっと関心を持って見守ってきた一人でありまして、今、市内を走る戦後初の軌道交通機関「ゆいレール」を目の当たりにして感慨を新たにしているところでございます。
しかし、浮かれてばかりはおれません。都市モノレール事業となると全国的に経営が厳しいと言われ、必ず出てくるのが採算性の問題であります。特に、当初の計画に比べて運賃設定を25%引き下げ、需要予測も1日平均3万5000人に下方修正してのスタートで経営はますます厳しくなるのではと懸念するものであります。
そこで、次の点についてお伺いいたします。
(1)点目に、ずばり言って採算性は大丈夫か、その見通しと今後の経営方針について御答弁をお願いいたします。
(2)点目に、バス路線再編で都市モノレールとの競合路線が廃止されることになり、バス利用者からの苦情が聞かれておりますが、それについて御答弁をお願いいたします。
沖縄県立芸術大学の移転問題について。
沖縄県立芸術大学について、北中城村の喜屋武馨村長は6月19日の定例村議会で、米軍泡瀬ゴルフ場跡地に県立芸術大学を誘致する方針を明らかにし、県への要請を行うこととされています。
また、新聞に投稿された芸大関係者の県立芸大の現状と課題の中で、県立芸大の第1キャンパスの管理棟と一般教育棟、音楽棟、それに第2キャンパスの図書館、美術棟、体育館及び奏楽堂を除くすべての建物が老朽化していると指摘されております。
このようなことから、現在の狭隘・分散型のキャンパスから移転し、統合された真に高等機関にふさわしいキャンパスを確保するという構想は、県立芸術大学の評議会でも決議され、県との交渉に入ったが進展がないとのことでありますが、現状はどうなっているでしょうか。
さて、沖縄県立芸術大学は、当時の西銘順治沖縄県知事が沖縄県の誇る伝統芸能文化のレベルを高めることにより、日本国内だけでなく世界に通用する一流の伝統文化に持っていきたいとの強い決意のもとに整備が進められたと伺っております。また、県立芸術大学の設置場所については、1800年ごろの尚温王のときに首里王府の最高学府である国学が設置され、琉球王朝を担う人材が確保・育成されたということであります。このようなことから、明治以降その場所に沖縄県立師範学校が設置されたのも理解されるわけであります。
このような由緒ある場所が人材の育成を目的とする沖縄県立芸術大学の設置場所としてふさわしいということになり、少々狭いところではあるが沖縄県立芸術大学が設置されたとも伺っております。また、当時はまだ首里城が整備されてなく、首里城が整備されればさらに風格ある場所として沖縄県立芸術大学がクローズアップされることが大きく期待されたものと考えています。そのようなことからすれば、老朽化した建物であればその建物をどうするかが次の課題になるのであります。こういった経緯を抜きに移転の議論をするのはどうかとの考え方も成り立つわけであります。
そこで伺いますが、もし移転するとした場合、移転先の選定と綿密な移転計画をつくる必要がありますが、それについてお伺いいたします。
また、大半の建物は築後20年も経てない建物でありますので、何か跡利用を考えているのかお伺いをいたします。御答弁いただきたいと思います。
以上です。
前発言
次発言
20030203010020