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平成15年(2003年) 第 5回 沖縄県議会(定例会)
第 8号 12月 8日
小渡 亨
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一般質問の前に、県議会の同期であり政治活動の仲間であった渡久地健さんの余りにもあっけない逝去に接し、人生の無常を今改めてかみしめております。沖縄県政にとって大きな人材を失ったと思うと同時に、健さんの志を受けて一生懸命政治をやっていかなければならないと決意を新たにしているところであります。渡久地健さんの御冥福を心からお祈りいたします。
質問に入ります。
イラクの再建復興支援について。
さきの通常国会において、イラク人道復興支援特別措置法が成立しました。しかしイラクへの自衛隊派遣がおくれております。最大の理由は、イラク戦争が終了した後、現在に至るまでイラク国内の治安状況が悪く戦闘が終わってないと言われていることであります。自衛隊派遣の根拠となるこの特措法は、戦闘行為が行われていない地域で自衛隊が米軍などの後方支援をしたり、インフラの整備をすることを定めております。
イラクでは、フセイン政権を支えていた勢力、特にスンニ派、バース党等で1万人程度と言われておりますが、それとアルカイダなどの国際テロ組織が結びつき、米軍兵士のみならず国連機関や国際赤十字までもがターゲットにされ、無差別なテロ攻撃により連日死傷者が出ております。
このような情勢を見て、国際社会の十分な理解が得られないまま武力攻撃に踏み切ったことからこのような結果になったのだ、このことは十分予想されていたことだ、明らかにアメリカの失敗だという声と同時に、イラクに自衛隊を派遣できる安全な地域はあるのか、派遣して犠牲者でも出したら国内世論がもたないとか、また自衛官の犠牲を政治問題化しようとする動きがあります。極めて残念なことであります。
そして先週、イラク北部のティクリットで外務省の職員2名が車で移動中殺害されました。奥克彦参事官と井ノ上正盛書記官です。特に奥参事官は、イラクの国連事務所が自爆テロにより24名が犠牲になったのを受け、日本の復興支援の必要性を強く訴えておりました。我が国にとって極めて惜しい人材を失ったものと私も思います。お二人の御冥福をお祈りいたします。
そこで現在、米国主導で行われているイラクの再建復興が万が一失敗したらどうなるだろうか。
第1に、拉致・不審船をみずから認めた無法国家である北朝鮮、テロ支援国家と言われているイラン、シリア等の国々が勢いを増し国際テロ組織の活動が活発化し、世界はいつ、だれが、だれから、なぜ、どこで、どのようにして攻撃を受けるのか全く予断を許さない状況に陥ることが考えられます。
冷戦時には米ソ2カ国しか保有していなかった弾道ミサイルが現在では46カ国にまで拡散しており、さらに急速に核兵器、生物兵器、化学兵器と言われる大量破壊兵器も拡散しており、国際安全保障環境は今より一層混乱することは間違いありません。
第2に、米国を中心とする復興支援に当たっている諸国がイラクをイラク人の手に任せて現状のまま撤退すれば、この地域は民族、宗教、宗派が入り乱れていることから、イラク国民自身が自力で統合・再建することは不可能だと考えられます。特に、クルド族を初め幾つかに分裂し周辺諸国の軍事介入を招き、その結果、パワーバランスが変化し中東地域全体の不安定性が増大します。これはすなわち石油エネルギーの安定供給に大きな影響を与えることになります。
第3に、ソ連崩壊後起こった局地紛争の中で国連安保理による外交手段では解決できなかった事案、例えばクウェートの侵略の排除、あるいはセルビアのミロシェビッチによるボスニア・イスラム勢力並びにコソボにおけるアルバニア人の虐殺等の阻止などはすべてアメリカ中心の多国籍軍やNATO軍であり、国際社会は国連軍なるものを編成することができずアメリカの力に頼らざるを得なかった。これは、アメリカが好きだ嫌いだという問題ではなく現実の事実であります。もし、アメリカが国際安全保障の関与を弱めモンロー主義とも言われたかつての孤立主義に回帰するようなことになれば世界が一層不安定となり、国際テロリストの活動が活発化し経済が混乱し、世界平和が脅かされるのは必至であります。
このように考えてみますと、イラクの再建復興の成否は我が国にとって対岸の火事どころではなく、今後の我が国の安定や繁栄に直接影響を与え、国際安全保障環境に与える影響もはかり知れないものがあると私は考えます。
以上のことから、私は、我が国の対応としては、イラクの再建復興に速やかに可能な限り協力をすべきであると考えます。
その理由として、第1に、国際社会における責任ある貢献であります。資源の乏しい我が国が狭い国土に1億2000万人もの人口を抱え、世界第2位の経済大国になり今日の平和と繁栄を享受できたのは、一部革新勢力が言う、口癖のように言っている平和憲法があったからではなく、国民みずからの努力と安定した国際社会の大きな恩恵にあずかってきたからだと考えます。
第2に、日米同盟の強化です。国連は、一連のイラク危機において常任理事国間の利害が対立するような事案の紛争処理においては限界があることを今回いみじくも露呈しました。万が一、無法国家である北朝鮮が暴走した場合、イラクと同じことが繰り返されないとも限りません。直接影響を受けるのは韓国であり我が国であります。国連常任理事国のロシアや中国が、暴走した北朝鮮に武力を行使してまでもとめるとは考えられません。日米同盟の強化こそ北朝鮮の暴走への抑止力であり、あるいは暴走の報復力になると考えております。
ことし3月のイラク戦争以来、米国は北朝鮮へ誤ったシグナルを送らないためにアメリカ本国西海岸から太平洋艦隊、そしてアジアに展開している在日・在韓米軍を全く動かさなかった事実を真摯に受けとめる必要があると考えます。
このような情勢の中で、本県において米軍の訓練機能の集約にもなる金武町の米軍演習場内における陸軍複合射撃訓練場の建設や、あるいは久米島鳥島射爆場における、我が国が装備している海上自衛隊ヘリに搭載する、不審船にも対処できる空対艦ミサイルの性能確認のための実験発射にまでも反対を唱え始めた井の中のカワズたちがボイルドフラッグにならないことを祈るだけです。
第3に、中東地域の将来にわたる安定の確保です。我が国は、最も重要なエネルギー源である石油の90%近くをこの中東から輸入しております。そのため、この地域の安定・確保は我が国の死活問題と言っても過言ではありません。湾岸危機や湾岸戦争のときのように資金協力だけでは国際社会の理解は得られません。人的協力ができるか否かを国際社会は注目しております。我が国には世界に誇る平和憲法があるから、平和を心から祈念するだけです、どうか理解してくださいでは、一部国内では理解されても国際社会では全く通らない話です。
私は、現在、イラクの自衛隊派遣は最終段階に来ていると思います。確かに戦闘行為ではない、テロ行為という犯罪行為により死傷者が出ているイラク情勢は予断を許しません。しかしながら、イラクのようなインフラの不十分な厳しい環境下で衣食住すべてを賄えて相当規模の人的協力ができるのは、我が国においては自衛隊しかおりません。もちろん危険な中に出ていくわけでありますから、身を守る、部隊を守る安全策には万全を尽くさなければなりません。可能な限り精鋭部隊を指定し、政治の責任でROE(交戦規定)等も定め、それに慣熟するための訓練を十二分に行うことが重要であります。
私は、自衛隊がひるんだり、ちゅうちょしているのではなく、政治が判断し切れないのが現状だと考えております。政府は、イラクの再建復興の成否が国際安全保障に与える影響や、さらに我が国の対応のあり方をはっきり国民と自衛隊に説明し理解を求めるべきであります。危険なところには出しませんというわけのわからないことを言うのではなく、特に自衛官とその家族には、我が国の平和と安定のため、我が国の国際社会における名誉や信頼を得るために、イラクの再建復興支援への協力はどうしても必要であることを明示し、あくまでも理解を求めていくべきであります。そして現地において起こるすべてのことは政府が責任を負う。隊員とその家族の名誉や処遇は政府が最善を尽くす。しっかり頑張ってきてくれということを明言して送り出すべきであります。そして、国民もまた出ていく自衛隊に最大の敬意を払い、できる限りのバックアップをする必要があると思います。
自衛官に死傷者が出たら政府を追及し、政治問題化しようとする一部政党や政治家がいることはまことに卑劣であり残念であります。また、それをあおり立てる一部マスコミ関係者がいることも残念でなりません。
沖縄の方言で「命ドゥ宝」という言葉があります。大変重い意味を持った言葉だと思います。しかし私は命より大事なものもあると思います。
意見の最後に、私が防衛大学校を卒業した昭和51年3月18日、その日に海上自衛隊に入隊し宣誓をした自衛官の宣誓文を紹介しておきます。
宣誓 私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守 し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみ がき、政治的活動に関与せず、強い責任感をもって専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険 を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応えることを誓います。
以上が自衛官が国家並びに国民に対して行う宣誓です。
最後の一小節を繰り返しますと、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応えることを誓います。」。これは、制服をつけるすべての自衛官が入隊日のその日に行い署名します。
そこで質問に入ります。
(1)、今回の自衛隊派遣について知事の考え方を示してください。
(2)、一連のイラク問題について在日米軍、在韓米軍等の動きに対する知事の評価は何ですか。
(3)、核武装あるいは核開発を始めた北朝鮮の脅威に対する在沖米軍に対する知事の評価は。
(4)、昨年来知事が提唱している沖縄平和賞の理念で、このイラクに平和が訪れると考えますか。
我が党の代表質問に関連して1点だけ質問します。
中城湾港新港地区にある特別自由貿易地域のモデル事業と言われたオートバイのエンジンを製造していたスピード社が営業不振でとんざしております。その経過と県の対応について説明を求めます。
1回目終わります。
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20030508060030