平成15年(2003年) 第 1回 沖縄県議会(定例会)
第 4号 2月24日
宮里 政秋
 

 私は、日本共産党県議団を代表して質問します。
 最初に、アメリカのイラク攻撃について伺います。
 今、世界の圧倒的多数の国がアメリカの一方的な武力行使に反対し、国連憲章の枠組みでの平和的解決を求めています。
 イラク問題でひたすら戦争に訴えようとするアメリカが孤立を深めています。戦争に反対し、平和解決を求める世論と運動が史上空前の広がりを見せています。今月の14日から16日にかけて5大陸78カ国、600を超える都市で1000万人以上の人々が戦争反対の声を上げ、行動しました。これほどの反対運動が広がること自体、空前のことと言われています。
 イラクは査察に誠実に応じよ、戦争反対・査察を通じて平和解決を、これが国際社会の圧倒的世論であります。
 今、国際社会が求めているのは、あくまでも査察を継続し、平和的な手段でイラクの大量破壊兵器の廃棄を実現することであります。国連安保理では、12対3の圧倒的多数で査察の継続が支持されました。国際紛争は、武力によらず平和的に解決するというのが国際社会で確立された公理であります。これは、人類が2つの世界大戦の多大な犠牲の上にかち取った成果であります。この国連憲章の理念を、より徹底して自国の憲法に明記したのが我が国の憲法第9条であります。日本は、戦争をしない国として世界に誓いました。したがって、アメリカに武力行使はさせない、この努力こそ日本はやるべきであります。
 ところが、小泉内閣はイージス艦をインド洋に派遣しました。そのことは、日本がアメリカの武力行使を視野に入れてアメリカと一体化して戦争をしかける立場に立っていることを国際社会に明らかにしたことを意味します。イージス艦派遣について識者は、テロリストたちは日本に注目し、日本をテロのターゲットにするようになるでしょう。アメリカによい顔をしようとして国民を危機にさらすもので、イージス艦派遣は最悪の選択だと、このように述べています。
 イラク戦争が始まれば、沖縄県民は、沖縄基地がその出撃拠点となることに大きな不安と懸念を抱いています。アメリカが「ならず者国家」と呼ぶ国や「悪の枢軸」と決めつける国を攻撃し日本が後方支援をすれば、当然反撃を受けることになります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 日本は、戦後50有余年、他国を侵略したことも、侵略されたこともなく今日に至っています。それは憲法9条の理念を貫いてきたからではありませんか。日本は、憲法9条に基づいて外交努力をしてこそ国際社会に名誉ある地位を占めることができるのであります。
 稲嶺知事は、昨年、復帰30年を記念して次のようなメッセージを発しました。復帰30周年の記念すべき年に沖縄平和賞を授与し、平和を希求する沖縄の心を世界に向けて発信したいと述べられました。アメリカがイラクを攻撃したら50万人のとうとい命が失われ、200万人の難民が生じると国連は予測しています。
 平和が危機にさらされようとしている今こそ、声を大にしてイラク戦争反対、沖縄からの出撃反対の平和を希求する沖縄県民の平和の心を世界に発信すべきではありませんか。稲嶺知事の御答弁を求めます。
 次に、違法献金疑惑について伺います。
 最近、公職選挙法違反の疑いで逮捕される事件が相次いで起きています。昨年2月の長崎県知事選挙をめぐり、特定寄附の要求などの疑いで元県議らが逮捕されました。本県でも宜野湾市長選挙で現職の比嘉盛光市長の後援会が市発注の公共工事を受注した業者に寄附を要請し、3社から計約300万円を受け取ったとして公職選挙法違反容疑で後援会長ら幹部4人が逮捕されました。20日に仲村正治衆議院議員の政策秘書が逮捕され、21日には県商工会連合会の前会長がそれぞれ公職選挙法違反容疑で逮捕されました。
 今回の一連の被疑事件の特徴は、公職選挙法違反容疑で政治献金を摘発したことにあります。選挙にかかわりない政治献金を装い、政治資金規正法で届けているからと規制を逃れてきたことがもはや通用しなくなったことを意味します。
 政治と金をめぐる問題は根が深く、昨年は秘書給与や口きき疑惑などで4人もの国会議員が辞職しました。これらの教訓を生かし、少なくとも公共工事を受注する企業の政治献金は禁止すべきであります。ゼネコンの関係者は、企業にとって献金は背任と贈賄のはざまを綱渡りするようなものだと述べています。政治倫理の確立こそ国民・県民の政治不信解消のために最も急ぐべき改革ではないでしょうか。
 そこで知事に伺います。
 長崎県知事選挙、宜野湾市長選挙における公職選挙法違反被疑事件について知事の御見解をお聞かせいただきたい。
 昨年の県知事選挙で稲嶺知事候補の選挙母体「21・沖縄の未来をひらく県民の会」に沖縄県経営者協会ほか113の企業の連合体が、「私達はいなみね惠一を支援します」と名を連ねています。
 そこで知事に伺います。
 昨年の県知事選挙でいなみね惠一後援会が県の公共工事の受注業者から献金を受け取ったことはないと言えるのか。受け取っておれば、知事はどう責任をとるのか、お答えいただきたい。
 次に、県選挙管理委員会に伺います。
 県選管として、宜野湾市長選挙及び県知事選挙に際し、公職選挙法第6条に基づく指導を行ったのか、お答えいただきたい。
 宜野湾市長選挙で現職の比嘉盛光市長の後援会幹部4人が公職選挙法違反容疑で逮捕されました。政治資金規正法違反容疑も視野に捜査が進められていると報道されています。県選管として今後どう対処されるのか、お答えいただきたいと思います。
 次に、髙橋県警本部長に伺います。
 宜野湾市長選挙に絡む違法献金事件で県警は、比嘉盛光市長の後援会幹部4人を逮捕し、20日には仲村正治衆議院議員の政策秘書、21日には県商工会連合会の前会長をそれぞれ公職選挙法違反容疑で逮捕しました。相次ぐ逮捕事件の概要について髙橋県警本部長の御説明を求めるものであります。
 次に、那覇軍港浦添移設の日米合意について伺います。
 政府と沖縄県、那覇、浦添両市は1月23日、那覇港湾施設移設に関する協議会を開き、軍港湾の位置と形状を確認しました。軍港湾は、岸壁の総延長は現行の1900メートルと同規模ですが、逆L字型を採用することにより現行の直接岸壁では不可能だった複数の艦船の同時出入も可能となり、水深も10.4メートルから12メートルにする計画です。接岸可能な艦船については、軍事専門家は、キティーホーク8万3960トンクラスの空母を含め基本的にすべての船舶が接岸できると述べています。
 今回明らかになったのは全体計画の一部ですが、浦添の移設が新軍港の機能強化につながることは
明白であります。今回の計画は、かねてからの米国の要求に沿って国民の税金で老朽化した那覇軍港を最新鋭の港湾基地に切りかえるものにほかなりません。防衛庁は、米軍艦船を恒常的に展開する計画や原潜を運用する計画は承知していないとしています。まさに県民を愚弄するものと言わなければなりません。
 日本政府は、過去に米軍の行動に規制を加えたことは一度もありません。それどころか、危険な米軍の相次ぐ事件・事故に対してさえ中止・廃止を言う立場にないとして米軍の演習を容認してきました。下地島空港は、軍事目的には使用させないとの確認書も県の自粛要請も、米軍はこれを無視して強行に離発着を繰り返しているではありませんか。米軍は、自由・無制限に基地を使用しています。
 したがって、基地の自由使用に背く基地の使用協定を結ぶ意思は米軍にはありません。また、基地使用協定は何らの歯どめにもならないことは沖縄の現実が示しています。
 今回の計画は、キャンプ・キンザーと連結してすべての米艦船が接岸できる最大で最新鋭の基地が浦添にでき上がることになります。まさに有事法制の先取りではありませんか。有事体制がしかれたら、この港湾施設は米軍基地最大の出撃拠点となることが予想されます。沖縄経済の振興につながるとの幻想を振りまき、米軍が計画した軍事基地を誘致する乱暴なやり方は直ちに中止すべきであります。
 知事の御答弁を求めます。
 乳幼児医療費の無料化拡大について伺います。

 我が党は、代表質問、一般質問で繰り返し乳幼児医療費の無料化枠を3歳未満児から小学校入学前の6歳未満児まで拡大するよう求めてきました。これに対して稲嶺知事は、実施主体である市町村の意向を尊重し、予算措置などの条件が整い次第、早期に実施したいと前向きの御答弁をなさいました。
 実施に当たっては、制度改善も含め次の4点について実現されるよう求めるものであります。
 (1)つ、乳幼児医療費の無料化を6歳未満児まで実施すること。
 (2)つ、自己負担なしの入院・通院の区別をせず助成すること。
 (3)つ、支払い方法を現物給付(窓口無料)にすること。
 (4)つ、乳幼児医療費無料制度を国に求めること。
 以上、4点についてそれぞれ御答弁を求めます。
 次に、県民の暮らしと県経済についてお伺いいたします。
 深刻な不況が続く中、昨年はお年寄りの医療費の自己負担が値上げされました。今年は、4月から多くの自治体で介護保険料の引き上げが予定されています。健保本人の3割負担に加え、年金制度始まって以来の1%給付カット、雇用保険給付、生活保護、児童扶養手当等軒並み切り下げようとしています。
 こうした小泉内閣の悪政は、県経済を直撃しています。日本一高い失業率、大型ホテルの閉鎖・倒産、農水産業の低迷、沖縄の経済はますます深刻になるばかりであります。
 自殺者の多いのも沖縄です。国保税を払えない世帯が何と3割以上という深刻な事態です。短期資格証明書発行で治療を中断し病気が進行し、手おくれとなるという痛ましい事態も生まれています。高齢者の84%が非課税世帯です。納税の義務を免除しなければ生きていけないお年寄りからも、現行の介護保険料3618円を5324円とまさに1.5倍の引き上げではありませんか。長生きしたお年寄りは、罰金を取るぞと言わんばかりだと悲痛な叫びも聞かれるのであります。
 失業や倒産、生活に苦しむ県民の不安に対してどう対処するのか。稲嶺知事は、解釈するのではなく解決すると公約されました。基地問題でも経済問題でも解決するどころか、事態は一層深刻になるばかりです。
 我が党は、基地とリンクしない3つの経済提言を行ってきました。すなわち、沖縄の特性を生かし地元経済の足腰を強め、地元が潤う振興策をどう展開するか、ここに沖縄の経済振興に欠かせない観点があると考えます。
 県外、外国の企業に依存する経済ではなく、地元の産業経済の足腰を強くする産業構造に切りかえ、そのために県がいかに行政力を発揮するか、また沖縄の農水産物、畜産物の販路拡大と価格の安定を図るために県がどのように支援していくか、このことが今強く求められています。
 我が党県議団は、農水産業者と農水産物の「おきなわブランド」化の確立、付加価値の高い商品開発、販路拡大と生産物の地産地消の促進等について意見交換を行い、現場調査もいたしました。それに基づいて次の5点について提起いたします。御答弁を求めるものであります。
 イ、市町村と協力して全小中学校の給食の食材に地元の農水産物を積極的に活用すること。そのための農水産物加工場をJA、漁協などに設置し県が必要な財政支援を行うこと。
 ロ、県観光協会やホテル・旅館業組合、JAおきなわ、畜産組合、県漁連などと連携して必要な組織をつくり、沖縄の生産物の観光分野での消費拡大を図ること。
 ハ、農林水産部内に生産者及び生産者団体と観光関連産業、本土市場を結ぶ生産物情報ネットワークをつくるなど、市場ニーズに対応できる県の体制を整えること。
 ニ、生産者の要望の強い営農、経営指導員をふやすとともに、県立農業大学、農業・畜産・水産試験場など研究機関の充実・強化を図ること。
 ホ、本部の栽培漁業センターの養殖種苗の専門家を増員し、養殖業における稚魚疾病対策等の指導強化を図るため魚類防疫士を増員すること。
 以上、関係部局長の御答弁を求めます。
 次に、基地問題についてお伺いします。
 海兵隊は、県議会、県執行部及び地元名護市の意向を無視して訓練の再開を強行いたしました。レンジ10は、構造的欠陥の施設であることを米軍自身が認めています。被弾事件も究明されない中で訓練再開を容認した施設局は許せません。
 農家の皆さんは、チムドンドンして仕事が手につかない、いつ弾が飛んでくるのかわからないので畑に入れないと不安と怒りの声を上げています。身の危険を感じながら農作業を余儀なくされている県民がどこにいるでしょうか。沖縄はアメリカの植民地ではありません。危険な演習施設は、県外移転ではなく廃止以外にありません。
 我が党は、県民の意思を全く無視する米軍に厳重に抗議するとともに、演習の即時中止と施設の廃止を強く求めるものであります。
 知事の御答弁を求めます。
 15年使用期限問題について伺います。
 1月28日に代替施設建設協議会が発足しました。この協議会は、環境影響評価、基地の使用協定、着工から完成に至るまですべてを含んで協議する場となっております。
 ところで、稲嶺知事の公約である15年使用期限問題は協議事項から外されています。15年問題の解決なしには着工はあり得ないと主張する稲嶺知事が、15年問題が棚上げされたまま着工から完成に至るまでの協議の場に臨むこと自体、公約の破綻をみずから認めたことになるのではありませんか。御答弁いただきたい。
 稲嶺知事は、2月2日の川口外相との会談で、15年使用期限問題は「「高度な政治的問題だ」と指摘し、「外務省のみならず日本政府として、しっかりと態度を決めないと解決しない」」と要望されています。
 そこで質問いたします。
 高度な政治的問題である15年問題は、代替施設の建設協議会で結論を出せる問題ではないと知事は認識しておられるのか、お答えいただきたい。
 15年問題が話し合われない代替施設建設協議会に稲嶺知事は出席すべきではないと思いますが、どうですか。お答えいただきたい。
 15年の使用期限を政府の方針として閣議決定したことがありますか。御答弁を求めます。
 自民党の政調会長が15年問題で、世間では通用しないと発言しました。稲嶺知事の公約が破綻していることを政権党の政策責任者が明らかにしたものではありませんか。稲嶺知事はどのように受けとめておられますか、お答えいただきたい。
 最後に、日米地位協定の見直しについて伺います。
 日米地位協定の刑事裁判手続に関する特別委員会で、米軍人による殺人、女性暴行という凶悪犯については起訴前の身柄引き渡しについて「好意的考慮を払う」と日米合同委員会で正式に合意しました。しかし、昨年11月2日に発生した女性暴行未遂という凶悪な犯罪容疑者であったにもかかわらず、日米合同委員会は、米側は身柄引き渡しを拒否しました。その理由は一切明らかにしていません。
 日米地位協定の本質を端的にいえば、在日米軍に全面的な行動の自由を保障するために我が国の主権を制限し、国民の基本的人権の制限の上に成り立っている極めて屈辱的な不平等条約だということであります。
 本県議会は、日米地位協定の見直しを全会一致で決議を繰り返し採択して関係要路に要請してまいりました。外務委員会でも全国知事会でも同様な決議がなされています。
 しかるに、日本政府は日米地位協定の見直しを米側に対し改正を要求したことはない、このことが国会答弁で明らかになりました。沖縄県以外の都道府県で日米地位協定の見直しを決議したところは1県もないという現状であります。日米両政府の厚い壁を突き破るのは県民の世論と運動を背景にした強力な折衝以外にありません。県議会のすべての会派は県民大会開催で意見一致しています。稲嶺知事も県民大会開催に前向きの姿勢を示しております。議会と執行部が共催で県民大会を開催すべきだと思います。
 知事の御決意をお聞かせください。
 以上、答弁によって再質問を行います。

 
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