平成17年(2005年) 第 1回 沖縄県議会(定例会)
第 4号 2月24日
警察本部長(三浦正充)
 

 都市型訓練施設建設に対する抗議行動におけるトラブルの発生状況等についての御質問にお答えをします。
 米軍キャンプ・ハンセン基地ゲート前においては、地元住民の方々が昨年の5月末以来、連日抗議行動等に取り組んでいることを承知しておりますが、現在のところこうした行動に関し刑事事件として取り扱っているものはありません。
 なお、その周辺に目を広げますと、昨年7月9日に伊芸区内の農道わきに設置してあった区公民館のスピーカーケーブルが切断される事案がありました。県警では被害届けを受理して所要の捜査を実施しておりますが、現時点、被疑者等は判明しておらず、訓練施設への反対運動との関連性も不明であります。
 また、昨年7月22日には、米軍基地内で稼働する米国籍の男性による伊芸区内のガードレール等に掲げられていた「都市型訓練施設建設反対」ののぼり旗8本を持ち去る事案が発生しております。これについては米軍当局の協力のもと、被疑者を任意で取り調べ、昨年の8月13日、那覇地方検察庁に窃盗罪で事件送致したところであります。
 これ以外に刑事事件として認知しているものはありません。警察といたしましては、事件・事故防止の観点から関係者に対して引き続き冷静な対応をお願いしたいと考えております。
 次に、米軍基地内で発生した事件の処理方法の違いとその根拠及びキャンプ・ハンセン内の殺人事件に関する警察への報告についてお答えをします。
 まず、日米地位協定上、被疑者及び被害者の属性の違い、また公務中、公務外の発生の違いによって日米の刑事裁判権の帰属が異なりますので、そのことから説明をいたします。 
 日米両国において裁判権を行使する権利が競合する場合については、日米地位協定第17条第3項に調整の規定があります。この第3項(a)により、2つの類型についてはアメリカ側が第一次裁判権を有することと規定されております。すなわち1つには、被疑者が軍の構成員または軍属であり、かつ被害者がもっぱら軍の構成員や軍属またはその家族である場合などの場合で、もっぱら事件と呼ばれる類型であります。
 それからもう一つは、軍の構成員または軍属による「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」、この2つの類型につきましてはアメリカ側が第一次裁判権を有しております。
 また、次の第17条第3項(b)で、その他の罪については日本国の当局が第一次裁判権を有すると規定されております。
 つまり、軍人間で生じた事件及び軍人・軍属間で生じた事件は米軍側に第一次裁判権があり、軍人・日本人間で生じた事件は、軍人が被疑者の場合は公務中に発生した犯罪を除き日本側に第一次裁判権があることになります。
 また、日本人が被疑者の場合には日本側に専属的裁判権があることになり、米軍側にはそもそも刑事裁判権はありません。
 次に、米軍基地内で発生した事案への対応につきましてお答えをいたします。 
 県警察では、米軍基地内で発生した事案でありましても、我が国に専属的裁判権がある事案、我が国に第一次裁判権がある事案はもちろん、米国に第一次裁判権がある公務執行中に発生した犯罪であっても、日本国または日本国民が被害者となっている事案につきましては、米軍側の協力を得ながら捜査を行っているものであります。
 他方、基地内で発生した米国側が第一次裁判権を有している事件の中で、いわゆるもっぱら事件及び日本側に被害のない公務中の事案につきましては、米軍側が主体的に捜査を行い、県警察につきましては米軍側からの捜査協力要請に基づき、その捜査協力を行っているところであります。
 なお、基地内における警察権に関しましては、地位協定第17条第10項の(a)の規定により米軍側が警察権を行使できることとなっていることから、県警察が基地内において逮捕、捜索、差し押さえ及び検証等の警察権の行使をする際には、いわゆる刑事特別法の第10条及び第13条等の規定に基づき、合衆国軍隊の権限のある者の同意を得るか、もしくはその権限を有する者に嘱託して行うこととなります。
 次に、キャンプ・ハンセン内で発生した殺人事件につきましては、本年2月4日午前0時過ぎ、在沖米海兵隊キャンプ・ハンセン基地内において米軍人の死体が発見され、米軍捜査機関が捜査した結果、米軍人被疑者4名を逮捕した事案であると承知しております。 
 本件につきましては、事件発生当日、米軍側からの捜査協力要請がございまして、これによりまして県警察といたしましても本事案の発生について認知をしたところであります。本件は、先ほど申し上げた分類では軍人間で生じた事件、いわゆるもっぱら事件ということで米軍側に第一次裁判権がございまして、実際にも米軍側が主体的に捜査を行っておりますが、県警といたしましては、殺人事件という事案の凶悪性にかんがみ、引き続き同事案の情報収集に努めているところであります。 
 以上でございます。

 
20050104040070