平成13年(2001年) 第 4回 沖縄県議会(定例会)
第 5号 10月 3日
教育長(津嘉山朝祥)
 

 教育行政について、ガス吸引による死亡事故や児童生徒を巻き込んだ性に関する事件、殺傷事件など教育を取り巻く状況が深刻な問題になっているが、県教育委員会の現状認識と対策はどうなっているかとの御質問にお答えいたします。
 報道等で御承知のとおり、LPガス吸引による死亡事故や性に関する事件、殺傷事件の発生は、児童生徒の健やかな成長を図る上から極めて憂慮すべき状況にあると受けとめております。一連の事件・事故の背景には、学校教育や家庭教育の問題、児童生徒を取り巻く社会環境の悪化、心の問題などが絡み合っていると考えております。
 青少年の健全育成を図るため、学校、家庭、地域等がおのおのの役割を果たしつつ、連携を一層強化し一体となった取り組みが極めて重要であります。これらのことを踏まえまして、県教育委員会は9月11日にすべての保護者や学校関係者、大人及び子供たちに「県教育長緊急メッセージ」を発するとともに、緊急対策会議の開催や危機管理マニュアルの作成など事件・事故の未然防止に努めているところであります。
 また、学校においては、道徳教育等の充実を通して豊かな心をはぐくむとともに、自己存在感や有用感を高め、みずからの夢や希望に向かって一歩一歩着実に歩んでいく児童生徒の育成に努めてまいりたいと考えております。
 次に、同じく教育行政について、大阪府の池田小学校や本県の佐敷町で起きた殺傷事件を踏まえ、学校の安全管理はどのようになっているかについてお答えいたします。
 県内外のたび重なる児童の殺傷事件を受けてますます危機管理の強化を図る必要があると考えております。各学校においては立て看板の設置や来校者の確認、校内巡視及び防犯訓練を行うなど幼児・児童生徒の安全確保に努めております。各市町村教育委員会におきましても携帯ブザーの配布、看板の設置、門扉の整備や巡回警備等独自の取り組みをそれぞれ行っております。
 県教育委員会としましては、学校における安全管理についてより一層の周知徹底を図るとともに、新たに不審者の侵入等に対する危機管理マニュアルを作成し各学校へ配布する予定であります。また、特殊教育諸学校等に監視カメラ、警報ブザー等を設置するため9月補正予算に計上したところでございます。今後とも学校、家庭、地域社会、市町村教育委員会、警察等関係機関との連携を強化し、事件・事故の再発防止に努めてまいりたいと思います。
 同じく教育行政について、兵庫県の中学校教諭がツーショットダイヤルで知り合った中学生の少女を高速道路に転落させ死亡させた事件、このような不良教師を出さない対策はどうなっているかとの御質問にお答えいたします。
 教職員による不祥事は、児童生徒と教師の信頼関係や県民の教育に対する信頼を損なうなど、その影響ははかり知れないものがあります。このため、県教育委員会としましては、全学校に「人権ガイドブック」を配布し、「人権委員会」の設置、「人権を考える日」の設定等教職員の人権意識の高揚を図り、不祥事の未然防止と自浄作用のある職場環境づくりに努めるよう指導しております。また、教職員の初任者研修や教職5年経験者研修、教職10年経験者研修、職務研修等すべての研修を通してセクシュアルハラスメントの防止や体罰の禁止、その他の不祥事について注意を喚起し服務規律の確保に努めております。
 なお、教職員の不祥事に際しては本人及び管理者の責任について従前にも増して厳しく対処しているところであります。今後とも、教職員一人一人がその職責を一層自覚し、絶えず自己研さんを含め全体の奉仕者として職務に専念するよう強く指導していきたいと考えております。
 同じく教育行政について、名護聖人程順則の「六諭衍義」の教えを副読本として発刊し普及・啓発すべきだと思うが、教育長の見解を伺いたいとの御質問にお答えいたします。
  本県は、古くから海上交通を発展させ、東南アジアを初め諸外国との交易を背景に琉球王国を形成し、独自の薫り高い文化を生み出してまいりました。その間多くの偉人を輩出したことは本県の誇りであります。中でも「六諭衍義」の教えを広めた程順則は名護聖人と呼ばれ、200年以上を経た今日でも県民に親しまれているところであります。
 県教育委員会におきましても、道徳教育用郷土資料「守礼」の中で程順則を初めその他の先人の生き方を取り上げ、「守礼の邦」沖縄で大切にされてきた「礼節を重んじる心」、「ユイマールの心」及び「進取の気性」などを培い、道徳性の育成に努めているところであります。
 また、県指定「心の教育」研究校名護小学校においては、学校長を先頭に「六諭のこころ」の実践を通して「未来を拓く心を育てる教育活動の在り方」をテーマに研究に取り組んでいただき、大きな成果を上げております。今後、郷土資料「守礼」の一層の活用を通して郷土の発展に尽くそうとする児童生徒の心情や態度を育てるとともに、名護小学校の実践に学び、その成果を広く県内外に普及し「心の教育」の充実に努めてまいりたいと思います。
 同じく教育行政について、県立名護商業高等学校の再編と統合案についての御質問にお答えいたします。
 県教育委員会では、平成14年度を初年度とする新たな「県立学校編成整備計画」の策定に先立ち、今年9月に全体計画の骨子となる「県立高等学校編成整備実施計画中間まとめ」を公表したところであります。
 この中間まとめの中で、名護商業高校については、北部工業高校と再編・統合することにより商業と工業の融合を図り、情報教育を中心とする新しいタイプの総合実業高校──仮称でございますが──として位置づけております。この新たな学校では、北部圏域で進められている国際的金融情報拠点の形成など情報通信関連産業の振興や加工製造業などの新事業の創出を担う創造性豊かな人材の育成を図ることとしております。これまで計画策定の過程において校長会、PTA関係団体、産業団体、教職員団体など広く意見交換をしてきましたが、引き続き各地域に設置いたしました「教育施策に関する地区協議会」や関係団体等と調整を図りながら、計画の策定完了を平成13年度中を目途に作業を進めてまいります。
 なお、編成整備計画策定後におきましても、児童生徒数の増減等著しい状況の変化があった場合においては、適宜必要な見直しをするなど適切に対処していきたいと考えております。
 以上でございます。

 
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