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平成13年(2001年) 第 4回 沖縄県議会(定例会)
第 7号 10月15日
伊波 洋一
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私は、沖縄社会大衆党・結の会連合を代表し、甲第4号議案平成13年度沖縄県病院事業会計補正予算(第1号)について、県執行部が審議に必要な資料を県議会文教厚生委員会に提出しなかったために不十分な審議のままの採決になり、文教厚生委員会で我が会派委員から提出された閉会中継続審査を求める動議にもかかわらず、多数与党によって採決可決され本会議に送られてきたことから、県執行部の意図的な資料不提出によって議会での審議が不十分であるだけでなく、ほとんどの内容について実質的な審議ができなかったことを討論で明らかにし、出席している議員諸君が議会に与えられた権能と職責に基づき継続審査にすることを求め、本会議でこのまま可決することに反対する立場で討論を行います。
甲第4号議案平成13年度沖縄県病院事業会計補正予算(第1号)に含まれているのは、県立那覇病院の移転・建設に伴い新たに建設される子ども病院、すなわち小児総合医療施設と母子総合医療センターを含む仮称「高度多機能病院」の基本設計予算9000万円と実施設計分の平成14年度債務負担行為2億1043万1000円であります。
さて、沖縄母子総合医療センター(子ども病院)設立推進協議会が取り組んだ沖縄県立子ども病院建設を求める県民署名は、当初目標の10万人を大きく超える19万人もの署名が集まり稲嶺知事に届けられたのが昨年2000年9月21日でありました。
その4年前にも「全国心臓病の子供を守る会沖縄県支部」が中心になって母子総合医療センター・子ども病院設立を求める署名運動に取り組まれ4万3747名の署名が集まり、1996年9月19日に当時の大田県知事と県議会議長に要請書、請願書が提出されました。県議会の10月25日の文教厚生委員会で全会一致で請願は採択されましたが、県医療計画の中での基幹病院構想や県立中部病院の改築問題などが絡み、母子総合医療センターをどのように位置づけるのかが定まらず持ち越されてきたわけであります。
その後、一日も早く子ども病院の設立を求める多くの医療関係者や難病に苦しむ子供たちの父母等の11団体は、1997年4月に「母子総合医療センター(子ども病院)設立推進協議会」を設立し、97年7月の第1回シンポジウム「なぜ、沖縄に母子総合医療センターが必要か」を開催して県に提言書を提出し、今日まで子ども病院設立のために取り組みを続けてきました。
推進協議会では、全国各地の子ども病院の視察・調査を行い、99年5月に第2回シンポジウム「沖縄県にどのような母子総合医療センターが必要か」を開催して提言書を稲嶺知事に提出。2000年9月に第3回シンポジウム「どうしたらできる沖縄子ども病院」を開催し、県民への子ども病院建設の理解を広げてきました。
さらに、国、県、市町村議員や医師会や医療関係者の参加を求めて本土の子ども病院関係者を招いた勉強会などを多数開催して、県民への啓発とあわせて医療関係者への子ども病院への理解を深めてきました。
県内マスコミでも子ども病院についての報道や特集、連載が取り組まれ、県内小児医療の現状や難病に苦しむ子供を抱える家族の悩みや医療関係者、県行政の考え方など何度となく報道されました。
このような沖縄母子総合医療センター(子ども病院)設立推進協議会の粘り強い熱心な取り組みによって19万人を超える県民署名が寄せられ、沖縄県としても県立那覇病院の移転・建設に伴う高度多機能病院建設において、子ども病院を含む母子総合医療センターを含めることになったわけでございます。
県の取り組みとしては、19万人分の署名が届けられた昨年9月21日の前日の9月20日に県医師会長や3市村長、民間経営者など17人で構成する「地域医療を支援する高度で多機能な病院検討委員会」が発足し、県素案をもとに、1、救命救急、2、臨床研修、3、総合母子医療、4、離島支援、5、国際協力、6、その他災害対応などの6機能を検討しました。
そして、昨年11月13日に中間報告、ことし3月19日に最終報告書を稲嶺知事に答申しました。
報告書は冒頭で、「沖縄県保健医療計画においては、特に人口の集中する南部保健医療圏における高度医療や救命救急医療、母子総合医療等に対応できる高度で多機能な病院の整備が求められている。」。さらに、全県を対象とした母子総合医療センター設置の要望があると、高度で多機能な病院整備の必要性を明らかにして本県医療の現状と課題を列挙し、新病院のあり方を示しました。
ちなみに、南部医療圏は本県の130万人口中、その50%を超える66万7000人もの人口が集中している地域でございます。
その内容は、すなわち、1、新病院の役割として、ア、地域医療支援病院として医療ニーズの高い急性期疾患に対応するチーム医療の実施、イ、救命救急センターを設置し南部医療圏を対象とする二次、三次救急等の高度救命救急の実施、ウ、民間で困難な母子総合医療等の高度・特殊医療の実施、エ、同一医療圏の県立病院間の機能再編、オ、450程度の病床数。2番目に地域医療連携室の設置、3、二次、三次の高次の救命救急センターの設置、4、政策的医療として母子総合医療センターを設置し、独立した管理責任者の配置と運営予算の適正な確保、5、臨床研修制度の実施、6、離島医療を支援する役割の実施、7、国際医療協力の実施などを求め、建設場所については南風原町の農業試験場本場跡地を候補にして早期建設を求めました。
さらに附帯意見として、1、医師等医療技術要員の十分な配置、2、財政支援の強化が必要であるとし、さらに3、離島医療支援機構及びドクタープール制の導入など離島医療支援策の強化、4、地域医療情報ネットワークシステムの構築について積極的な検討を求めました。
ただいま議案となっている甲第4号議案平成13年度沖縄県病院事業会計補正予算(第1号)の中身は、母子総合医療センター(子ども病院)を含む仮称「高度多機能病院」の基本設計予算9000万円と実施設計分の平成14年度債務負担行為2億1043万1000円でありますが、県執行部が県議会文教厚生委員会に提出した資料は、ことし3月20日に県医師会長や3市村長、民間経営者など17人で構成する「地域医療を支援する高度で多機能な病院検討委員会」が県知事に答申した地域医療を支援する高度で多機能な病院検討委員会報告書だけであります。
本来ならば検討委員会の答申を受けて、県としての病院建設基本構想と基本計画を策定して県議会及び県民に対して、新たに建設する仮称「高度多機能病院」の建設理念や概要を明らかにするべきであります。
私は、委員会審議において、本当に検討委員会報告書以外にペーパー資料はないのかと問いただしましたが、福祉保健部長は、検討委員会報告書がすべてであるとして基本構想や基本計画は策定していないと答弁をいたしました。
私は、沖縄社会大衆党・結の会連合の基本的な立場と見解として申し上げますが、3月の検討委員会の答申からやがて7カ月を経過しようというのに、そして今議会に基本設計予算と実施設計の支出負担行為の2件、総額で3億円もの予算を議案として提出しているのに、新病院建設のための基本構想も基本計画もできていないというのは全くおかしいことであると思うのであります。
与党・自民党会派は、3次振計の高率補助を受けるためには今議会での可決が必要だということを委員会において強調していましたが、そのことは既に昨年9月定例会の文教厚生委員会の審議でも出されたことであります。
昨年10月2日の文教厚生委員会において、当時の平良福祉保健部長が私の質疑に対して、「3次振計が、平成13年度で最後の年を迎えるわけですが、高率補助制度を活用して何とか3次振計の活用できるタイムリミットの中で、この問題を提起できないかということで一生懸命作業しているわけでございます。」と答弁をいたしました。続いて新田病院管理局長も、私が「平成13年度までで切れる第3次振計の範囲の中で、今のスケジュールで実現が出来るというふうに病院管理局長は考えておられるんですか。」と質疑したことへの答弁で、「実質的に予算が13年度その切れるまでの予算をその時期に計上するというのは非常に難しいだろうと思います。ですから次期振計に繋いでいかないといけないんじゃないかなという感じがするんです」、「3次振計の切れるまでに事業着工というのは、非常に厳しいんだろうと思います、」と見通しを示しました。
ですから県執行部は、当然3次振計が切れる13年度末のタイムリミットを意識しつつ作業を進めてきているはずであります。そのような中で、検討委員会の答申を受けて県内部での作業は精力的にやってきたはずなのです。
5月23日のマスコミは、県病院管理局は母子総合医療センターを120床、病床数を現行の434床、敷地面積を5万7000平方メートル、総事業費245億円とする整備計画案をまとめたと報道しました。さらに8月6日の2002年度の国庫支出金要請では、総事業費試算約250億円で高度多機能病院の整備経費の国庫支出金総額33億2000万円を要請。このように具体化しているにもかかわらず、県執行部は県議会に対して新病院についての資料を提示しないのはおかしいのであります。
なぜ、県執行部は新病院に関する資料を議会に提示しないのか。与党議員の多くの皆さんは、文教厚生委員会で福祉保健部長や病院管理局長が答弁したように、現時点では県には前年度の病院検討委員会が提出した「地域医療を支援する高度で多機能な病院検討委員会報告書」だけしかないから、3次振計の高率補助期限に間に合わせるためには基本設計をさせながら基本構想や基本計画をするしかないと考えているのではないでしょうか。
私は、文教厚生委員会で与党が多数決で可決した後にこの甲第4号議案に係る子ども病院分を含む高度多機能病院に関して県執行部がこの6カ月に何をしてきたのかを調査いたしました。その結果、大変驚くべきことが判明したのであります。
その第1点は、県病院管理局は、高度多機能病院(仮称)基本構想と基本計画の素案を前年度でつくっていたということです。その内容は、新病院の建設整備計画案も含まれており、新病院の建築レイアウトや各機能の配置までも及んでいます。計画病床数は434床で、延べ床面積が3万9000平方メートルとされていますから、1床当たり約90平方メートルとなります。
この基本構想、基本計画は、県病院管理局が平成12年10月12日に社団法人病院管理研究会と業務委託契約を締結して作成したものであります。私の手元にこの基本構想と基本計画書があります。さらに整備計画案があります。これらの資料は委員会の後に入手したものでありますけれども、残念ながら県議会に対してはこのような資料は提出されていないわけであります。
今議会は、乙第1号議案で情報公開条例の全面改正を求める議案を提出をしておきながら、このように大変重要な議案であります子ども病院を含む高度多機能病院に関する県の内部資料を一切公開せずにこのような審議に付しているということを私は大変残念に思うのであります。
第2点は、平成13年度に入り病院管理局は基本構想・基本計画案をたたき台にして県立病院の医師等専門スタッフを含めたプロジェクトチームで7回の新病院建設検討会議を開催して病院現場の意見を反映させてきました。7月2日の第4回会議からは、要望のあった「母子総合医療センター(子ども病院)設立推進協議会」と歯科医師会からも代表が参加するようになりました。
その検討内容は、新病院に設置されるさまざまな機能をどのように配置し、どれだけの面積にしていくかということでありました。当初、病院管理局が示した1床当たり約90平方メートルの総延べ床面積は、検討の結果、1床当たり約94平方メートルになったのです。
例えば、救命救急センターの関連ではカンファレンスルーム――会議室でありますが――や急患搬送の救急隊員や実習学生のための部屋、国際医療協力などの関係が指摘され、933平方メートルを1100平方メートルへと167平方メートルふやされました。
放射線診断部門では、放射線治療の実施について琉大とも話し合っており、供給部門のエネルギー別棟建設とあわせた放射線治療部分の増を求めたほか、大腸ファイバーの透視室へのトイレやシャワーの設置、カンファレンス室の設置、一般撮影室の1増など約600平方メートルの増を求めたわけでありますが、認められずに基本計画どおりの1400平方メートルにとどまりました。
臨床検査室については、病理部門の2階への移動と更衣室40平方メートルの地下共同ロッカールームへの移動で当初の1300平方メートルで足りるとしております。
一方、病理部門の2階への移動や地下ロッカールームの使用は、それぞれの場所での増となるわけでありまして、地下更衣室は他部門からの増を含めて321平方メートルから460平方メートルへと139平方メートルの増となっているのであります。
管理部門の所要面積は、部門では最大の800平方メートルも足りないことがわかり、エネルギー棟の分離によってあく地下に幾つかの部門を移すことになりました。その後、最終検討では医局や図書室、会議室、当直室10室など計1167平方メートルを2階に上げることになったのであります。
子ども部門については、外来部門でホール型の待合スペースの改善、専用設備の必要な耳鼻科、眼科の診療室の設置、広い処置室――60平方メートルでありますが――の確保などで当初の581.8平方メートルから771.4平方メートルへと189.6平方メートルふえたのであります。
周産期部門、小児科ICU部門では、NICUを40床800平方メートルへと200平方メートルの増、PICUを6床400平方メートルにすることになったわけでありますが、必要な部分は産科病棟から持ってくることになり、子ども部門での計は389.6平方メートルの増となったわけであります。
そのほかに、地域支援センターが新たに100平方メートルで追加をされました。
基本設計と財政措置のために必要な新病院の建築延べ面積の検討は、7月27日の新病院建設検討会の最終会議までにどうしても必要な延べ床面積は4万126.9平方メートルになったのであります。1床当たりの床面積にすると92.46平方メートルになるわけでありますが、その会議の中で、さらにさきに述べたような救命救急センターを1100平方メートルへと167平方メートルの増、子ども病院の増、さらに地域支援センターの追加設置などによって656.6平方メートル、約700平方メートルの増となり、総延べ床面積が4万783.5平方メートルとなったのです。1床当たりの床面積にしますと93.97平方メートルであります。
そこで病院管理局は、1床当たり94平方メートルで試算し、7月じゅうに9月補正予算要求書をまとめて総務部に提出をしながら、平成14年度国庫支出金要請を1床当たり94平方メートルで試算し、総事業費250億円、国庫支出金要請額の総額を33億2000万円、来年度分を8億3000万円としたのであります。
7月末までの新病院建設検討班にかかわったのは総勢60名で、その多くは県立病院の医師であります。この皆さんが7回の検討会議を経て県民に求められている高度多機能病院をさまざまな制約の中でも、できるだけ実のあるようなものにするために検討したことを県知事も県議会も受けとめなければならないのであります。
しからば、ただいま提出されているのはこのようにしてでき上がった県民が求める子ども病院建設の願いをかなえることができ、南部医療圏の二次、三次の救命救急を実施し得る新病院の予算なのでしょうか。さらにまた離島医療の支援や新たな臨床研修制度を実施できる新病院のための予算なのでしょうか。
私は、今回提案をされている予算は、県民の思いや県立病院医師の皆さんの検討結果を打ち砕く予算なのだということを明らかにいたしたいと思います。
すなわち、甲第4号議案は、434床の新病院1床当たり84平米とするものなのであります。7月末までには7回の新病院建設検討会議が出した1床当たり94平方メートルと比べると、1床当たり10平方メートルの減、全体で4340平方メートルの規模縮小であります。病院管理局の出した当初基本案の1床当たり90平方メートルと比べても6平方メートルの減、全体で2604平方メートルの規模縮小であります。このような規模縮小は医療を担う県病院管理局の検討によってではなく、総務部の財政査定という形で突然9月13日に決まったわけであります。余りにも情けないことではありませんか。
そしてこれらの決定は、今日、この検討にかかわった60名余の医師の皆さんにはまだ知らされてないわけであります。与党県議の何名がこのようなことを知っているのでしょうか。議会の議決を経た後に、県執行部も県議会与党も新病院の建設規模縮小を求めたという説明を病院管理局は関係者にするのでしょうか。
皆さん、病院管理局長は文教厚生委員会でも明らかにいたしましたが、9月13日までは1床当たり94平米の県案を求めていたわけであります。そしてそれは財政的にも裏打ちがあり、基本的に基本構想や基本計画も十分つくられているわけでございます。
ことし3月に県知事に提出された「地域医療を支援する高度で多機能な病院検討委員会報告書」でも附帯意見として、財政支援の強化が必要であると指摘されているのであります。また、主要な7つの機能を明確にして高度で多機能な病院の必要性を明らかにするとともに、母子総合医療について特に政策医療として取り組むことを強調し、財政負担の強化を求めています。
今回の議案の提案で稲嶺知事がどのようにかかわったのか明らかではありませんが、稲嶺知事は提案者でありますから、当然稲嶺知事は、県民の19万人を超える子ども病院建設の願いや、寄せられた署名の病院建設の願いや新病院建設検討班の7回に及ぶ熱心な検討結果のみならず、県病院管理局の基本案まで否定したことは、稲嶺知事には子ども病院建設や高度多機能病院建設への熱心な意欲が全くないということを示しています。
また、県執行部内部での検討結果を明らかにすることなく、県議会に対しても資料を提供しないで予算案可決を求めることは議会無視のみならず、熱心に新病院のための検討会議のために取り組んだ県立病院の医師の皆さんに対しても失礼なことだと思うのであります。
沖縄県のように子ども病院を建設しようとしている宮城県では、浅野史郎知事が先頭に立って子ども病院の基本構想や整備基本計画を明らかにし、医療関係者のみならず、幅広く県民の意見を聞いて基本計画、基本設計、実施設計を3年かけて策定し、その都度県民から意見を広く聞いてまいりました。何という違いでしょうか。
私は、本議案を今議会で可決せず、閉会中の審議を通して県執行部が提案をしている1床当たり84平米で果たして母子周産期医療センター、子ども病院を含む高度で多機能な病院を建設することが妥当なのかどうかを審議することが議会の責務と思うのであります。
最後に、少なくとも与党は採決前に休憩でもとって県執行部に事実関係をただしていただきたいと思うのであります。本議案の採決においては、議案に賛成することなく議会が職責を全うし、実質的な審議を行えるように議案に反対していただくよう求めて反対討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。
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20010407030130