平成21年(2009年) 第 6回 沖縄県議会(定例会)
第 3号 12月 3日
新里 米吉
 

 社民・護憲を代表して質問します。
 橋下大阪府知事の発言は、全国の知事に沖縄の基地問題を考える契機になったと思います。仲井眞知事もこの機会にベストに絞る必要が出てきたんではないかと思います。これだけ条件が整ってきて、いまだに苦渋の選択を言っていてはいけないのではないか、このように考えるのであります。政治家としての判断が問われています。
 自民党の幹事長からもありましたように、野党第一党の書記長からも一歩踏み出すことをお願いするものであります。
 沖縄タイムス、琉球新報の記者は、在日米軍再編についてすばらしい調査と資料を収集しています。屋良記者の「砂上の同盟」と、新報の守屋元防衛事務次官日誌や取材で得た情報等には頭が下がる思いです。私は、その資料も引用しながら所見を述べ質問します。
 2005年10月、米国防次官リチャード・ローレスが北海道を選挙区にする外相町村信孝に、「駄目だというなら北海道はどうか」と切り出した。町村氏は、「ほっ、ほっ、北海道っ」と北海道という地名を繰り返し言葉を失った。翌日、町村外相は、米側に北海道知事も受け入れられないと断った。しかし、町村外相は、北海道は断りながら、辺野古への基地受け入れ説得に奔走しました。町村氏の「ほっ、ほっ、北海道っ」はペンタゴンでも有名な話だと言われています。
 米軍基地を沖縄に集中させる政策を正当化してきたのは、「戦略的地理的優位性」という言葉であります。しかし、沖縄の米海兵隊がグアムヘ移転する理由を米太平洋司令部の関係者は「政治が決めたから」と答えています。軍事アナリスト退役軍人カール・ベーカーは「機動性に富む海兵隊にとっては、どこでも良かったのです。九州でもグアムでも海兵隊は同じように任務を遂行する能力がある」と述べている。しかし、防衛白書は「沖縄には地理的優位性があるからです」と書き続けています。
 2002年、ホノルルにある米国防総省のシンクタンク「アジア太平洋安全保障研究所」での安保問題セミナーで、「九州でも北海道でも日本政府が訓練場や必要施設を用意すれば、海兵隊はそこへ移ることは可能ですか」との屋良記者の質問に海兵隊司令官は「イエス。沖縄でなくても構いません」と答えている。
 ところで、2004年10月7日、小泉首相は「沖縄の負担を分かち合うなら、国外移転、本土移転の両方を考えていい」と発言し、米側は大いに歓迎し、沖縄県民も期待した。ところが、小泉首相は8カ月後の2005年6月23日の沖縄戦没者慰霊祭に来県し、記者の質問に「総論賛成、各論反対。自分の所にはきてくれるなという地域ばかりだ」と答え、県民を失望させた。
 稲嶺惠一氏は、このことに関し、「問題点として投げかけてみたものの、猛反対にあって早々とあきらめたというのが実際のところだろう。非常に失望した。みずからリーダーシップを発揮することなく、官僚に丸投げしたのだろう。」と述べています。
 海兵隊内部では、「司令部と戦闘部隊を関東周辺に移転させ、陸自との連携を緊密にしていく」という計画も練られました。また、米軍再編の日米交渉に直接携わった米外交官は、普天間飛行場を佐賀空港に移転させるアイデアを米側から日本へ提起した。「佐賀空港は発着便が少ない。周辺に住宅もない。沖縄の海兵隊飛行場を移転するのにもってこいだ」。佐賀空港のメリットは、佐世保の艦船とあわせて機能を集約できる。九州には自衛隊の訓練場が幾つもあるので狭くて演習の制限が多い沖縄にこもるより条件がいい。滑走路は有明海に面しており、ヘリコプターは海上を飛べば騒音問題が少ない。佐賀空港から強襲揚陸艦の母港佐世保まではほんの55キロ、九州には演習場も多く、佐賀県内には大野原演習場があるほか、大分に足を伸ばせば西日本最大の日出生台演習場がある。
 しかし、米側から出された佐賀空港移転案に日本政府の担当者は「ただ黙って聞いているだけで返事がなかった」という。
 2004年11月、元太平洋海兵隊司令官のスタックポール中将は屋良記者の「なぜ沖縄か」の質問に「日本本土にアメリカ海兵隊を歓迎する県がありますか。ありませんね。軍部の意思ではありません。すべては政治なんですよ」と答えた。
 このように自民党の政治家と官僚たちが沖縄へ米軍基地を押しつけたことは明白であります。
 一方、民主党は、鳩山、岡田、前原氏などの幹部がこれまで普天間飛行場を県外・国外へと発言し、県民は民主党中心の政権誕生で沖縄の基地問題が大きく前進すると期待した。しかし、鳩山首相の態度も不明確な上、岡田外相は嘉手納統合案、北澤防衛相は現行案を主張し閣内不一致でぶれている。しかも、岡田外相は選挙中の発言は公約ではないと開き直り、普天間飛行場の県外・国外移設についても「少なくとも私の頭の中には具体的なものはない」と述ベ、一切検証しておらず県内移設ありきの姿勢である。岡田外相はこれまでのみずからの発言に政治家として責任を待つべきである。また、民主党の沖縄ビジョンに県外・国外と明記し、幹部が県外・国外と発言してきたことから、普天間飛行場の県外・国外の検証と検討がなされるべきであり、私は県民大会要請団の一員として武正副大臣にそのことを強く要請しました。
 このようにヤマトの政治家たちの無責任ぶりと沖縄差別に県民は失望、落胆、不信、不満と怒りが大きくなっている。
 松沢神奈川県知事の身勝手な発言も同様である。県外・国外への移設は不可能、今の辺野古しか解決策は見えない。神奈川にとって、厚木の空母艦載機の岩国移転に普天間の影響でおくれてしまう可能性があるなどと述べ、貴殿に辺野古しかないなどと言われるゆえんはない。言語道断とはこのことだと、県民大会要請団に抗議されるのは当然であります。
 本土大手の新聞社には社説で、「鳩山首相は早急に現行計画支持を決断すべきだ」と沖縄への基地押しつけを誘導しているものもある。
 この新聞は、「きしむ日米」と題して10月24日付の朝鮮日報を紹介し、沖縄の米軍基地には「韓国を保護する役割がある」として朝鮮半島の安全保障への影響を案ずる見方を伝えたと報道している。しかし、米軍再編で在韓米軍は約2万5000人大幅削減し、在韓米軍を1万3000人から1万5000人にして沖縄の基地には「韓国を保護する役割がある」と朝鮮日報に言われるゆえんはないのであります。そして、このような朝鮮日報を紹介して沖縄へ基地を押しつける本土大手新聞に不信と怒りを持つものである。
 このように、まさに沖縄差別の精神構造が見え隠れするヤマトの政治家、官僚、大手新聞の沖縄への米軍基地押しつけに対し、私たち沖縄県民が団結して県民ぐるみの運動を展開し、県外の良心的政治家、国民と連帯して基地問題の解決を図らなければならない。
 そこで、質問します。
 1、知事の政治姿勢について。
 (1)、小泉首相(当時)の「総論賛成、各論反対」発言に見られるように、自公政権は県外の候補地を十分に検討せず沖縄に米軍基地を押しつけた。知事の所見を伺いたい。
 (2)、民主党幹部はこれまで「県外・国外」と発言しながら、政権発足後は鳩山首相の姿勢が不明確で外相と防衛相は沖縄へ押しつける発言をしている。知事の所見を伺いたい。
 (3)、アメリカにおける松沢神奈川県知事の発言について、知事の所見を伺いたい。
 (4)、11月8日の県民大会について、知事の感想を伺いたい。
 (5)、鳩山首相の「友愛」は沖縄にとって「少なくとも県外」との発言を実現することだと思う。知事の所見を伺いたい。
 (6)、鳩山政権の外務・防衛両大臣の発言に対し、多くの県民は怒りと危機感を持っている。今こそ、県民ぐるみで「県外・国外」を実現させる運動が求められていると思う。知事の所見を伺いたい。
 (7)、知事の公約について。
 知事就任から3年が経過し任期はあと1年である。
 以下の主な公約について、現状と見通しを伺いたい。
 ア、完全失業率の全国平均化。
 イ、ノービザ特区の導入。
 ウ、普天間飛行場の危険性除去。
 エ、毎年100人の学術及び語学留学生派遣。
 オ、小学校における1クラス30人学級の導入。
 2、基地問題について。
 (1)、県民の約70%が県外・国外を求める県民世論について、知事の所見を伺いたい。
 (2)、県内の首長アンケートで41名中35名が県外・国外を求めたことについて、知事の所見を伺いたい。
 (3)、最近の世論調査によると「県外がベストだが、県内もやむなし」とする仲井眞知事の政治姿勢に54.5%が支持しないと答え、支持するのは31.1%である。知事の所見を伺いたい。
 (4)、11月のマスコミ各社の世論調査で「見直して再交渉」や「県外・国外を目指して米国と交渉」が多数になっている国民世論について、知事の所見を伺いたい。
 (5)、SACO合意から13年が経過した。辺野古への基地建設は実現していない。知事は13年たっても進まない現実をどのように認識しているのか伺いたい。
 (6)、去る11月27日に鳩山首相と仲井眞知事の会談が行われたことが明らかになった。新政権の基地政策に注目が集まる中でひそかに会ったことに疑惑が持たれており、内容を明らかにすべきではないか。
 (7)、事業仕分け作業による在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の基地従業員の給与見直しについて、知事の所見を伺いたい。
 (8)、L字案合意を受け、ゼネコン7社の「受注割り振り」ともとれる概略施工検討資料に関することが報道されている。国の関与が疑われる内容であり、知事の所見を伺いたい。
 3、「沖縄21世紀ビジョン(仮称)」(素案)について。
 (1)、安全保障は基地というハードパワーで貢献するのではなく、中国との歴史的関係性や今時大戦で受けた甚大な被害というアジア諸国との歴史的共通性を生かし、危機管理、紛争解決等の緩衝地としての「東洋のジュネーブ」というソフトパワーで貢献するについて、知事の所見を伺いたい。
 (2)、米軍基地のない沖縄をあるべき県土の姿としながら、引き続き基地の整理縮小を進めるについて知事の所見を伺いたい。
 答弁の後、再質問します。

 
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