平成22年(2010年) 第 6回 沖縄県議会(定例会)
第 5号 12月22日
仲村 未央
 

 おはようございます。
 乙第1号議案「沖縄県立看護学校の設置及び管理に関する条例を廃止する条例」に関して、反対の立場からの討論を行います。
 学生や同窓会、後援会の必死の訴えも届かず、2万5576人もの署名に寄せられた県民、学生たちの願いに向き合うこともなく、このように見切り発車で県立看護学校の廃止が当局から提案されていることが残念でなりません。
 平成17年に行われた県議会の2回にわたる全会一致の存続決議、あわせてその前年16年には、「県立浦添看護学校での看護師、助産師の養成に関する意見書」が全会一致で可決されていますが、この中には、県として取り組むべき施策として、県知事に対し重大な要請事項が含まれています。それは、准看護師が正看護師になるための進学課程の新設を求めるものです。
 県内の養成校では毎年准看護師が養成されており、県内で働く看護師のうちのおよそ4分の1、約2600名が准看護師と言われています。現場の看護師から話を伺う中では、看護師として働く日常の仕事は、正看護師と准看護師で違いはなく、もちろん准看護師の中にも看護部長に適任だと思うほどのキャリアを積まれている方々が往々にいて、けれども正看ではないためにそういった地位につくことができないということ。また、賃金格差も深刻で、正看に対して准看は7割程度であり、同じように現場を支え、専門的労働を提供する中で特に所得面での違いは切実な課題です。働き続ける上で、このような処遇の改善、キャリアアップも含め、できれば正看の資格を得たいというのが多くの准看護師の方々の希望です。
 今、県立看護学校には、准看護師が正看護師となるための全日制の進学課程があります。しかし、定員40名の狭き門である上、民間養成所で唯一進学課程を持っていた那覇看護専門学校では、その課程を廃止することが決まり、昨年、学生の募集停止をしました。正看を目指す人にとって、県内唯一となった浦看の進学課程は、一層限られた枠です。また、その上に全日制となると一たん仕事を中断しなければならないため県議会の意見書にあるとおり、通信制の設置は非常に高い施策として求められています。とりわけ、沖縄県のように島嶼県であればなおさら通信制の需要は高く、全日制に通うために本島に出てこなければならず、さらに子育て中で仕事を休んでとなるとどれだけの決断と経済的負担、家族への影響があるか想像にかたくありません。しかし県は、通信制の設置を今日まで行ってきませんでした。通信制は必要だと思うとの認識を持ちながら、コストがかかるから限られた資源を考えると取り組めないというのが当局の言い方です。
 九州の専門学校にかけ合って、出張講座、いわゆるスクーリングを沖縄で開講してもらうようにお願いしたのが県としては精いっぱいの対応だというのですが、現地スクーリングといっても40日間の那覇のみでの講座と、そのほかにも本土の学校へ直接出向かなければならない授業が5日間ほどあり、その旅費、滞在費はもちろん別途かかります。授業料自体も全日制と変わらず、年間100万円、2年間では200万円以上かかることになります。正看になりたいと思う県民の果たしてどれだけがこのような機会を手にすることができるでしょうか。
 島嶼県沖縄県の人材育成、医療行政のあり方としては、むしろ那覇に出てこなくても済むように離島でスクーリングを実施するぐらいの取り組みが求められています。知事は、県民所得の向上を公約に掲げるならば、このような県民が具体的に所得向上できる道を一つ一つ手がけることこそ大事ではないか。働き続けられる、働くことに希望が持てる沖縄づくりは県民の最大の願いです。
 今議会で、当局が資料として出したペーパーには、浦看を廃止するに当たっての「今後の課題」として、「民間活力による通信制の導入促進」と書かれています。県議会の全会一致の要請があっても、そして県みずから通信制は必要だと認識しながらも、結局、コストがかかるからできないとして公的機関ですらやらなかったものを民間にやってくれと言える立場でしょうか。民間養成校で進学課程そのものが廃止されている現状を見れば、通信制の導入はより厳しい課題であると認識しているはずで、結局は単なる先送りということにしかなりません。県立看護学校の志願率は6倍近くの高い倍率です。あすの看護師を目指して頑張ろうと意欲に燃える人材を目の前にして、行革を理由に学校を廃止しようという提案がなされているのは返す返すも残念です。
 県は、徹底した定数管理によって行政運営のスクラップ・アンド・ビルドを各部に求めていますが、福祉保健部に与えられたノルマは平成25年度までに52名の人間を減らすこと。一律10%削減を全庁の目標にする中で庁内どの部署も現場の実態や需要とはかかわりなく、机上の数字ありきで削減枠が決められています。福祉保健部にとって浦看の廃止による28名の削減は、削減目標52名のうちの大きなウエートを占め、まさに福祉保健部としてのノルマ達成の成否を左右するに欠かせない要件になってしまっています。だからこそ県当局には、県議会決議も県民の声も学生の署名も届かないのです。沖縄県のあり方として本当にそれでいいのでしょうか。
 看護師不足はなお続いており、人材の安定的確保、離職防止に向けてコストがかかり、採算に見合わないような通信制の設置など、県が公的責任を果たすべきこと、やるべきことはまだまだあるはずです。学生たちの進学の機会を保障し、人材を養成していくことは、事島嶼県沖縄にあっては、地域医療を守ることそのものです。
 その立場から我々社民・護憲ネットは、県立看護学校の存続を求めます。引き続き学生たちが充実した環境の中で育ち、沖縄の医療を支えるたくましい人材となって活躍していくことを心から願い、同議案への反対を表明いたします。(拍手)

 
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