平成20年(2008年) 第 1回 沖縄県議会(定例会)
第11号 3月26日
前田 政明
 

 私は、日本共産党県議団を代表して、ただいま議題となりました乙第12号議案「沖縄県後期高齢者医療財政安定化基金条例」、乙第13号議案「沖縄県立看護学校の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例」、乙第15号議案「沖縄県国民健康保険調整交付金条例の一部を改正する条例」、乙第18号議案「沖縄県学校職員定数条例の一部を改正する条例」について反対討論を行います。
 まず最初に、後期高齢者医療制度に関連します乙第12号議案「沖縄県後期高齢者医療財政安定化基金条例」と、乙第15号議案「沖縄県国民健康保険調整交付金条例の一部を改正する条例」について反対討論を行います。
 自公政権が強行した医療改悪法により、4月から後期高齢者医療制度が導入されようとしています。75歳以上の方々に後期高齢者医療保険手帳――ピンク色――が郵送されています。75歳以上の人を後期高齢者と呼んで他の世代から切り離し、際限のない負担増と差別医療を押しつける制度です。
 今、後期高齢者医療制度の中身が知られてくる中で、高齢者、国民、自治体、地方議会、医療関係者などから一斉に批判の声がわき起こっています。
 福田内閣、自民・公明の政権与党も、現行制度で健保の扶養家族の人から新たに保険料を徴収することを半年程度延期する、70歳から74歳の医療費窓口負担を2倍に値上げすることを1年程度延期するなどと、医療改悪の一部凍結を言い出さざるを得なくなっています。
 2006年の通常国会で強行した制度の破綻をみずから認めたものにほかなりません。
 しかし、政府・与党の方針は、対象となっている高齢者の一部の人の負担増をほんの少し延期するだけで、凍結とは名ばかりのごまかしにすぎません。国民健康保険に加入している人は凍結の対象ではなく、後期高齢者の約8割程度に当たります。
 小泉・安倍内閣の6年間、高齢者は、所得税・住民税の増税、国保料・介護保険料の値上げ、医療の窓口負担引き上げなど、相次ぐ負担増に悲鳴を上げてきました。政府が、お年寄りの置かれている状況に十分配慮し、きめ細かな対応に努めると言うなら、小手先のごまかしではなく、制度実施そのものを中止すべきであります。
 後期高齢者医療制度、75歳以上の人を切り離し、まともな医療を受けられなくする大改悪の後期高齢者医療制度に国民の批判が広がっているのは、この制度が75歳以上の人を国保や健保から追い出し、高い負担を無理やり徴収しながら必要な医療を受けられなくする空前の大改悪だからです。
 新制度が導入されると、75歳以上の人は今加入している医療保険を脱退させられ、新しい後期高齢者だけの医療保険に組み込まれます。そこで高齢者を待っているのは高い保険料の情け容赦のない徴収です。
 沖縄県の場合は、平均保険料は8万1602円で、法定軽減後の平均保険料は6万1085円となっています。月額平均5000円余になり、介護保険料と合わせて毎月平均1万円余が年金天引きで4月15日から徴収されます。新保険料が現行の国保料・国保税を超える人も少なくありません。
 しかも、保険料額が2年ごとに改定され、医療給付費の増加や後期高齢者の人口増に応じて自動的に引き上がる仕組みとなっています。制度スタート時に保険料を低く抑えた地域も将来の値上げは確実であります。
 さらに、後期高齢者医療制度の導入に便乗して、前期高齢者の65歳から74歳の国保料・国保税も年金から天引きすることになりました。年金が月1万5000円未満の人などは窓口納付になりますが、保険料を滞納したら保険証を今回から取り上げられます。
 これまでの老人保健制度では、75歳以上の高齢者は国の公費負担医療を受けている被爆者や障害者と同じく保険証の取り上げが禁止されていました。医療を奪われたら直ちに命にかかわるからであります。
 今回、老人保健制度を廃止し、後期高齢者医療制度にかえることで低年金・無年金者から容赦なく保険証を取り上げることになっています。
 日本の健康保険は年齢に関係なく加入できるわけですが、これからは75歳になったら全員が脱退させられるわけです。家族みんなが一緒に入っていた保険から追い出してしまう。75歳以上の高齢者だけはなぜ外さないといけないのか。75歳を過ぎた親をなぜ扶養家族にしてはいけないのかという声も寄せられています。
 厚生労働省は、社会保障審議会の審議の中で、後期高齢者医療のあり方に関する特別部会で論議し、骨子をまとめ、75歳以上の後期高齢者の特性として、第1に、老化に伴う生理的機能の低下により治療の長期化、複数疾患への罹患、特に慢性疾患が見られること、第2に、多くの方々に認知症が見られること、第3に、後期高齢者はいずれ避けることのできない死を迎えることなどとして、長期化する、複数疾患、認知症だ、いずれ死が避けられないと一くくりにして、一つの差別医療保険制度に投げ込んで年齢による医療の差別を持ち込むという国際的にも例のないひどい制度にしようとしています。過酷な保険料徴収の一方で、保険で受けられる医療の内容も差別・制限されようとしています。
 新制度では、後期高齢者と74歳以下の人は、診療報酬(医療の値段)が別建てになります。これは委員会審議でも明らかになりましたけれども、後期高齢者の診療報酬を包括払い(定額制)とし、保険が使える医療に上限をつけようとしていることです。月額6000円ということであります。後期高齢者に手厚い治療を行う病院は赤字となり、医療内容を制限せざるを得なくなります。
 また、厚生労働省は、終末期医療でも75歳以上の患者には特別の診療報酬体系を持ち込むとしています。過剰な延命治療を行わないという誓約書をとったり、終末期の患者に在宅死を選択させて退院させた場合には、病院への診療報酬を加算し、一層の病院追い出しを進めようというわけです。
 現在、在宅で死を迎える高齢者は約2割、これを4割にすれば5000億円の医療費の削減になるということを議論しています。こうした報酬体系をつくり、75歳以上の高齢者への保険医療を制限し、医療給付費の抑制を図るのがこの後期高齢者医療制度を導入した自公政府のねらいであります。
 政府は、医療費の今後の削減の見込みを2015年には3兆円の医療費の削減を予定していますが、そのうち2兆円の削減は後期高齢者からです。2025年には8兆円の医療費の削減を予定し、そのうち5兆円が後期高齢者の分であります。
 皆さん、今度実施される医療改悪は、さらに70歳から74歳の窓口負担が1割から2割へと2倍に引き上げられます。長期療養の人が入院する療養病床を23万床削減し、病院追い出しを進める改悪もこれから本格化をしていきます。
 高齢者を別建ての医療保険とすることには何の道理もありません。ヨーロッパ諸国など国民皆保険が確立している国の中で、年齢で被保険者を切り離し、保険料や医療内容に格差をつけている国はほかにありません。
 しかも、自公政権が導入しようとしている後期高齢者医療制度は、元厚生労働省幹部やメディアなどがうば捨て山と呼ぶように、医療費がかかるといって高齢者を邪魔者扱いにし、暮らしも健康も破壊していく最悪の制度と批判しているのは的を射ているのではないでしょうか。
 今の高齢者はもちろん、将来高齢者となるすべての国民から医療を奪い取る大改悪です。また、高齢者を扶養している現役世代にも重い負担がのしかかることになります。
 日本共産党は、後期高齢者医療制度に危惧を抱き、見直しを求めるすべての政党、自治体関係者、高齢者団体、医療関係者などに制度の中止に追い込む一点での共同を呼びかけております。
 全国の自治体から政府に寄せられた中止・見直しの地方議会の意見書は、530以上の自治体で可決されています。沖縄県内では、現在41市町村のうち26市町村議会で意見書が採択されています。国会では、日本共産党、民主党、社民党、国民新党の野党4党が共同でこの後期高齢者医療制度を廃止する法案を提出しています。
 日本共産党は、世界にも例のない年齢差別の医療制度に反対し、撤回・廃止すべきと考えています。そして、後期高齢者医療制度の実施を中止した上で、だれもが安心してかかれる医療制度にする改革案、1、窓口負担増をやめさせ、国際的にも異常に高い窓口負担を引き下げる、2、公的医療保険の解体を許さず保険医療を拡充する、3、減らし続けた医療への国庫負担を計画的にもとに戻し、保険料負担の軽減、医療保険財政の立て直しを図ることを提案しています。
 本来、75歳以上の方々はあの戦争を生き抜いて、今日の沖縄、日本をつくるために必死に頑張ってこられた方々であります。75歳になったら、おめでとうございますという形で医療費を無料にしてあげるのが国の施策のやるべきことではありませんか。
 財源はあります。米軍犯罪の温床である海外侵略の米軍基地の建設などの米軍再編費に3兆円、米軍駐留経費6000億円、米軍への思いやり予算は2000億円を超え、国民生活を守るためにこれを充てれば暮らし、福祉、医療改悪をやらなくても済むではありませんか。庶民大増税ではなく、大企業への大幅な減税をやめさせれば、10年前の税率に戻すだけで約4兆円の財源を確保することができます。消費税増税も必要ありません。
 日本共産党は、国民皆保険制度を破壊する後期高齢者医療制度の中止・廃止を実現するために、国民・県民とともに奮闘する決意を表明するものです。
 以上の立場から、乙第12号議案「沖縄県後期高齢者医療財政安定化基金条例」、乙第15号議案「沖縄県国民健康保険調整交付金条例の一部を改正する条例」に反対をするものです。
 次に、乙第13号議案「沖縄県立看護学校の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例」について反対討論を行います。
 今回の条例の一部を改正する条例は、授業料を現行の8万4000円を11万8800円に、実に41%の大幅値上げとなっています。現在の県民生活の極めて厳しい状況のもとで、このような授業料の値上げを行うべきではありません。
 浦添看護学校については県立で存続すべきことを県議会としてもこの間2度にわたり決議を行ってきました。沖縄県医師会等も県立での存続を強く求めています。しかし、沖縄県は、民間でできることは民間に任せるとの立場から、浦添看護学校の民間譲渡を進めていることは、県立病院の看護師養成等を直接責任を持って行う責任を放棄するものと言わざるを得ません。
 浦添看護学校の場合は、入学金もなく、3年課程で3年間で35万円あれば卒業できます。民間の看護学校の場合は、入学金、授業料で約250万円かかるとの説明でありました。県民生活の格差と貧困が進む中で、生活困窮世帯の、頑張って看護師になりたいと願っている子供たちの看護師になれる県立看護学校としてその役割を放棄すべきではありません。
 日本共産党県議団は、県立看護学校を民間移譲することに反対をし、それを前提とする授業料を8万4400円から11万8800円への大幅値上げに関する乙第13号議案「沖縄県立看護学校の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例」に反対するものであります。
 次に、乙第18号議案「沖縄県学校職員定数条例の一部を改正する条例」に対する反対討論を行います。
 少人数学級のための加配定数を活用して、今回30人以下学級が1年生で77%の学校で実現の見込みとなったことについてはその努力を評価するものであります。しかし、小学校すべてで30人学級を4年間で実現するというのが知事の公約であります。
 私は、この本会議でも知事に、山形県の知事が30人学級実現を公約して、子供たちの将来のために道路その他の予算は削ってでも、「さんさん」プランで4年間で公約を実現した具体的な例を知事にも紹介してきました。
 委員会質疑の中で、私の、知事の公約どおりすべての小学校で6年生まで30人学級を実施するという場合、教職員の人数についての問いかけに、仲村教育長は、教職員増としては674人です。年間43億円必要になりますとの答弁でした。
 また、30人以下学級を実現するための施設・教室の数とそのための予算は幾らぐらいになりますかとの質疑に対して、仲村教育長は、単純に言って、674名の増ということは674教室が必要ということなんです。市町村がどれくらい空き教室があるのかというのは我々としても調査してございません。1年生導入については調査をして、今回、27校で29教室とやっておりますけれども調査してございませんとの答弁でありました。
 小学校での30人学級の実現は県民の切実な願いであり、知事の公約であります。知事の公約実現の具体的な実現のための教職員の大幅な増員が必要とされるときに、今回の学校職員の定数の改正は極めて不十分なものになっております。
 知事公約の30人学級の実現を求める立場から、日本共産党県議団は、乙第18号議案「沖縄県学校職員定数条例の一部を改正する条例」に反対するものであります。
 議員各位の御賛同をお願いいたします。

 
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