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平成22年(2010年) 第 6回 沖縄県議会(定例会)
第 1号 12月10日
玉城 ノブ子
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おはようございます。
私は、日本共産党を代表いたしまして、平成22年度4回議会認定第1号「平成21年度沖縄県一般会計決算の認定について」、反対の討論を行います。
政府の「構造改革」路線は、国民・県民全体の各階層、各分野、地域全体に耐えがたい痛みをもたらしました。さらに、金融・経済の危機が今なお深刻の度を増し、労働者、業者を初め国民への打撃が日々一段と広がり、深まっています。
平成21年度の県決算は、この政府の構造改革路線を踏襲し、行財政改革で、暮らし、福祉・医療、教育を後退させる一方で、無駄な大型公共工事に税金を使い続ける決算となっています。
今、貧困と格差が広がり、県民生活は非常に深刻になっています。ことしの県内の自殺者は400名を突破し、高過ぎる国保税を納めることができず、健康保険証がないために病院に行けず死亡する事例も生まれています。介護現場では、重い利用料を負担することができない高齢者が、介護サービスから排除されるという事態が起きています。
日本共産党が行ったアンケート調査では、実に76%の高齢者が介護サービスを受けることができません。特別養護老人ホームに入所できない高齢者は、県内だけでも1900名に上っています。子供の貧困の問題も深刻になり、教師へのアンケート調査で8割が、生活や経済状況が厳しい子がふえたと答え、食事は給食だけで済ませる子供や、経済的理由で虫歯の治療ができず、眼鏡が買えないなどの深刻な実態も明らかになっています。
県民所得は全国平均の7割、失業率は8.1%と全国一の水準です。特に若年層の失業率は15.4%と全国の2倍です。不安定雇用が増大し、働く人の約5割が年収200万円以下、非正規雇用が40%で、若年層では46.6%という深刻な実態であります。特に、県が財政支援を行っているコールセンターの非正規雇用が全体の81.3%に上り、そこで働く若者たちの労働条件も劣悪な状況になっていることが明らかになっています。
また、県民の福祉や教育、県民生活を守るための公務労働者が非正規に置きかえられ、特に教育現場では教員定数に対する臨時教員の割合が全国一で、全国平均よりも10%も高く、5人に1人が臨時教員になっており、子供たちの教育環境に大きな障害をつくり出しております。本県の病気休職者が毎年ふえて388名で、うち精神疾患が164名にもなっています。
県経済は、基地、企業誘致、カジノ頼みで、県経済の基本をなす地元企業、地域産業、農業・漁業への支援策が大きく立ちおくれ、極めて厳しい状況をつくり出しております。沖縄全体の10%、本島の18%に米軍基地が置かれ、広大な土地を基地に奪われた沖縄では、農業や漁業、産業振興が大きく立ちおくれ、沖縄経済発展の阻害要因をつくり出してきました。農業従事者は、復帰時から今日まで11万5000名も減少し、農家戸数は3万6000戸減少しています。県内食料自給率は30%まで低下し、さとうきびを除くと6%という深刻な事態になっています。
仲井眞県政は、県経済の振興策として法律でも禁止されている賭博を沖縄に持ち込むためのカジノ導入のために調査費として4200万円も投入しました。カジノ検討委員会の報告書でも、カジノは青少年の健全育成への影響やギャンブル依存症の問題等が指摘されております。カジノは、沖縄の観光産業そのものを台なしにするものであり、経済振興になり得ないことは明白であります。
現県政は、県民の暮らしや福祉に冷たい姿勢をとりながら、泡瀬干潟の埋立事業や那覇港湾の開発事業、ヤンバルの林道工事などの無駄な大型公共工事に県民の税金を使い続けております。特に、泡瀬干潟埋立事業について、高裁判決は一審判決同様に、「経済的合理性がない」と沖縄県に対して公金支出の差しとめを命じています。しかし、沖縄市は市民に十分な説明もないまま「東部海浜開発計画の土地利用計画見直し」案を作成し、政府に提出、県は「経済的合理性を有するものと考える」と表明し、事業を推進しようとしております。しかし我が党の嘉陽議員が指摘したように、需要予測の手法が科学的根拠に基づいていない、産業連関表も結論ありきのものとなっています。経済波及効果の算出も需要から行うべきものを供給から行われ、「経済的合理性がある」とは到底認められないものになっています。
環境省もラムサール条約の基準を満たした国内の湿地172カ所に県内から名護市東海岸の大浦湾や泡瀬干潟を合む中城湾北部など24カ所を選定しています。泡瀬干潟湿地を埋め立てて貴重な湿地をつぶすのではなく、県民の貴重な財産として守り、次の世代に受け継いでいくことが大事です。走り出した公共事業はもうストップすることができないということではなくて、本当に必要な事業なのか、いま一度検証して自然再生型の公共事業に切りかえていくべきであります。
林道事業については、県が行った便益集計表は、その計算の基礎になっている数値に重大な誤りがあると指摘され、費用対効果のない林道事業を続けることは問題があると事業は中断しています。名古屋で開かれたCOP10では、沖縄のヤンバルの森、辺野古の海、泡瀬干潟等を含めた沖縄の生物多様性に富む自然豊かな環境を保全すべき地域として世界各国から大きな注目を集めております。特に、生物種の絶滅を食いとめるために、緊急に保護が必要な最優先地域として沖縄県北部の森林地帯ヤンバルが挙げられています。ヤンバルは保護の手がほとんど及んでいないということで、保護対策を強化すべきとの声が高まっています。環境省は、国立国定公園の指定候補地としてヤンバルを発表しています。今、必要なことは林道事業を進めることではありません。自然豊かなヤンバルの森をどう保護し、再生をさせていくかということです。林道事業は中止して、本来の林業事業に転換を図っていくべきであります。
特別自由貿易地域の122.4ヘクタールについても、沖縄県の産業振興を図るためにと事業は進められてきました。ところが、用地を企業に売却して返済する計画であったが、用地売却は思うように進まず、県は714億円の借金を返済するために地代を大幅に値下げしてまで売却する努力をしてきたが成功せず、沖縄県の一般財源から支出して買い取っています。そのため一般会計は、財政上の大きな負担を強いられる結果となっています。今必要なことは、無駄な大型公共事業は見直しを行い、貧困と格差で苦しむ県民生活を応援する政策を実施することであります。
全国と比べても1床当たりの一般会計からの繰入額が極めて低い県立病院への繰入額をふやし、県民の生命のとりでである県立病院を守り、県議会が2度にわたって存続決議をしている浦添看護学校を存続させ、高過ぎる国保税、介護保険料の軽減、乳幼児医療費の中学校卒業までの無料化、少人数学級の実施、待機児童の解消、高齢者や障害者が安心して暮らせる福祉の充実、地元企業、地場産業、農業・漁業への振興策の抜本的な充実を図ることが求められております。県民の命と暮らしを守るのが地方自治体が果たすべき大きな責務です。しかし、決算は県民のこの願いにこたえるものにはなっておりません。
よって、認定第1号「平成21年度沖縄県一般会計決算の認定について」に反対する立場を明らかにして討論を終わります。
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