要旨
2023(令和5)年現在、我が国の65歳以上の高齢者人口は3623万人と総人口1億2435万人に占める割合(高齢化率)は29.1%となっており(高齢社会白書)、高齢化とともに生じた課題の一つが、高齢層の移動手段である。近年、高齢者の運転による重大事故、あるいは重大事故につながりかねない違反運転も頻繁に報道されている。そのため、運転免許の自主返納が推奨されているが、公共交通機関が脆弱な地域においては、自家用車が移動の主な手段であることから深刻な問題である。
退職者会女性部で70歳以上の会員を対象に行った調査(2017年調査)では、自家用車による通院が64.6%と、病院受診回数が多くなる高齢層にとって自家用車が通院に必要不可欠なものであることが分かった。また、自分で運転し外出する人も54.5%と半分が自家用車利用である。バス、タクシー、モノレールなどの公共交通機関の利用が敬遠されるのは、交通ダイヤや交通網、運賃等が高齢者の生活に沿った整備となっていないことが要因と思われる。調査対象者へのその後の聞き取りでは、免許を返納したためにタクシー利用や家族に送迎を頼むなど、自由に外出ができる環境ではないことが分かった。
また、「女性の移動手段の実態に関するアンケート」(2023年県母連・女団協調査)では、世代を問わず公共交通機関を使用しない理由に運賃が高い、荷物が多い、複数目的地があるなどが挙げられており、全世代にわたって自由度の高い車を移動手段として選択している実態がある。
便利な車社会だが、時代はSDGsで持続可能な社会を目指しており、健康を考え、環境へ配慮するならば、自家用車から公共交通機関へのシフトは欠かせない。
ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
記
1 円滑なバスの乗り継ぎ等を含め、市町村間の連携が取れたコミュニティーバスの活用を推進すること。
2 公共交通機関は、利用者のニーズに合った路線、時間帯、便数を配置し、あわせて定時運行、運賃の値下げや補助等、利用しやすい条件を整えること。
3 バス停留所の上屋などを整備し、バスが止まるだけでなく、バスを待っている人に優しい停留所を造ること。 |