要旨
令和6年1月10日、沖縄県の権限を取り上げた国の代執行により海上作業ヤード建設に着手し大浦湾へ石材が投下された。ここは埋立区域ではないため原状回復が求められるが、事業者である沖縄防衛局は、設計変更時に「原状回復するかどうかは追って検討する」としており、じかに大量の汚れた石材を投入し湾内へ濁りを拡散させ、到底元どおりにはならない大規模な破壊を続けている。さらに令和6年12月末には軟弱地盤改良工事に着手し、生物種が多様でかつ小さな大浦湾が工業地帯と見まがうほどの巨大工事船舶で埋め尽くされている。地盤改良の敷砂や数万本の砂杭には伊平屋島沖や沖縄島周囲から膨大な量の海砂を採取し使用する。そもそも海砂採取が甚大な海洋生態系の破壊であり、また採取に伴う海洋汚染は採取海域にとどまらず広範囲にわたり、必ずや沿岸海域の地形や景観にまで影響が及ぶ。このままでは沖縄の重要な観光資源でもある「美しいサンゴ礁の海と白い砂浜」の消失が危ぶまれる危機的な状況である。
海砂の採取は底生生物と共にバキュームで吸い上げられ、生態系を著しく破壊する。採取時は周囲へ汚濁水を放出するため、拡散した汚濁物が日光を遮り、光合成を必要とするサンゴ礁や海草藻場を死滅させる。また海草そのものが絶滅のおそれのある希少植物である。ジュゴンの生存に欠かせない海草藻場は日光の届く浅瀬の砂地に繁茂し形成される。海砂採取による海底地形の改変は、沿岸部の砂地消滅に直接甚大な影響を及ぼす。底生生物は海洋生物の生存を根本から支えており、ひいては漁業資源の枯渇をも招く。沖縄の重要な観光資源であるサンゴ礁の消滅や砂浜消失など、将来にわたり固有の自然を損なう。沖縄近海の海砂は主に生物由来で、供給は極めて困難であり有限である。陸から1キロという採取許可海域は、元来生物の多様性に富んだところである。慶良間諸島国立公園、沖縄海岸国定公園、ジュゴン生息痕確認区域、生物多様性の保全上重要度の高い海域などの区域内や付近より海砂を採取する本計画は、辺野古新基地建設の環境に及ぼす影響は軽微であると決して言えない。また、政府も国を挙げて取り組む持続可能な社会の実現に逆行する愚行である。
以上のことから、大浦湾の地盤改良や埋立工事に使用する膨大な量の海砂採取で、沖縄島沿岸部の自然環境が壊滅的に、広範囲に著しく損なわれることは断じて許されない。
ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
記
1 沖縄県は速やかに事業者沖縄防衛局と協議し、海砂の採取を中止するよう規制をすること。 |