陳情文書表

受理番号第112号 付託委員会土木環境委員会
受理年月日令和7年6月10日 付託年月日令和7年6月17日
件名 海砂採取の規制を求める陳情
提出者沖縄平和市民連絡会
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要旨


 現在、沖縄県が直面している深刻な環境問題の一つが沿岸海域での海砂採取問題である。海砂採取は、海底の泥を根こそぎポンプで吸い上げ、砂だけをふるい分けた後、礫・泥等を高濃度の濁水とともに海に戻すという方法で行われるため、自然環境や水産資源、さらに海岸の浸食・砂浜の流出等、深刻な影響を与える。
 ついては、海砂採取問題について下記事項につき配慮してもらいたい。
                  

1 県は、市民からの海砂採取の総量規制を求める要請に対して、海砂利は建設用骨材などとして必要不可欠として慎重に検討していきたいとしていた。しかし、西日本各地では既に多くの県が環境保護のため海砂採取を全面禁止、または年間採取量の総量規制を行い、全面禁止・総量規制を行っていないのは沖縄県だけである。県土木建築部長は2月14日、本会に対して「現在、海砂採取の年間総量規制に係る調査を実施しており、既に総量規制を実施している他県の情報収集を行うとともに、海砂採取に伴う影響について漁業協同組合等の関係者ヘヒアリング等を行っている」と回答した。他県の総量規制に係る調査や関係者へのヒアリングの概要等を明らかにし、速やかに総量規制を実施すること。
2 他県では既に建設用骨材は海砂に頼らず、石を砕いた砕砂や再生骨材等を使用することが主流となっている。今後、沖縄県でも海砂の採取を制限し砕砂・再生骨材等の使用に切り替えていくこと。
3 海砂の深堀りに関し、県の海砂利採取要綱では部分的な深堀りは禁止されているが具体的な内容の定めがない。昨年7月「深堀り防止のため海砂採取の許可申請時に提出させている等深線1メートルごとの深浅測量図を海砂採取後についても提出させること」を陳情したが、県の処理概要は、深堀りに関する規制については、他県の状況を確認するとともに、採取事業者や関係機関への意見聴取も踏まえ、今後、どのような対応が可能か検討するとのことだった。その後の検討状況を説明し、速やかに採取後にも深浅測量図を提出させること。
4 海砂採取場所の大宜味村、国頭村、東村や名護市東海岸等では砂浜が消失し、海岸部の構造物の基礎が損壊するなど海砂採取の影響と思われる被害が生じている。海岸部の砂浜消失や構造物基礎の損壊状況調査、原因究明を行うこと。
5 沖縄の海砂はサンゴ由来であり資源量に限りがある。県として専門家に委託し、海砂の資源量の調査を行うこと。
6 4月29日、久米島近海で遊泳中のジュゴンの映像が撮影された。環境省や沖縄県の最近の調査でも伊是名島、屋我地島、先島一帯でジュゴンのはみ跡が確認され、県も、県内の広い範囲にジュゴンが生息している可能性は極めて高いとの見解である。県海砂利採取要綱では岸から1キロメートル離れれば海砂採取を許可しているが、辺野古新基地建設事業では、作業船の航行に当たっては、ウミガメ類やジュゴンが頻繁に確認されている区域内をできる限り回避し、沖縄島沿岸を航行する場合は、岸から10キロメートル以上離れて航行することとされており、県も海砂採取の認可書にその旨を特記事項として指示している。作業船の航行を禁止している海域で海砂採取を認めることは矛盾している。ジュゴンのはみ跡が確認された海城では、岸から10キロメートル以内は海砂採取を許可しないこと。また、翌月5日までに提出させる報告書類に、採取船の航行履歴が分かる資料を添付させること。
7 県海砂利採取要綱では、海砂の「採取区域」として「自然公園区域(海中公園区域の周辺1キロメートル以内を含む)自然環境保全区域地域及び鳥獣保護区域でない区域であること。ただし、自然公園法等に基づき必要な許可等を受けたものについてはこの限りではない」としている。そのため、現状では慶良間国定公園の海域公園地区から1キロメートル以上離れた普通地域内での海砂採取が行われている。自然公園区域(国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園)の普通地域を含む全域で海砂採取を許可しないこと。また、環境省が指定した海洋保護区である共同漁業権区域での海砂利採取を許可しないこと。
8 現在、海砂採取時に採取船周囲の海面の汚濁が再三、確認されている。海砂採取認可申請書には水質汚濁・騒音・粉じん飛散防止対策等を記載した公害防止計画書が添付されており、水質汚濁防止対策として「排水による汚濁防止のため、濁水還流ポンプ装置を設置し、濁水を海底方向へ排水する」とされている。濁水還流ポンプが稼働していれば海面に汚濁が広がることはあり得ない。砂利採取法第34条第2項では知事が立入調査できると定められている。採取の状況、騒音、濁水の発生状況等を確認するため、現場への立入調査を行うこと。
9 現在の海砂採取認可書では12項目の許可の条件が付され、許可条件に違反したときは認可を取り消すことができるとされている。しかし、許可条件以外にも市町村からの要請(名護市長は、月に1回、海岸線の状況を写真撮影すること等を要請している)や積載量の遵守、権利の譲渡禁止、特記事項等を指示している。許可条件そのものも時代によりその内容は変化している。市町村からの要請や特記事項等も許可条件と同様の拘束力を持たせること。
10 以前の海砂採取許可書には「許可条件 3認可の取消し等」として「①公害を与え、又は与えるおそれがある」「②海岸の状況の変動又はその他の許可後に起こった事実により取消し又は停止の必要があると知事が認めたとき」等には「採取許可の取消し又は採取行為の停止を命ずることができる」と記載されていた。この記載を復活させること。