陳情文書表

受理番号第107号 付託委員会土木環境委員会
受理年月日令和7年6月10日 付託年月日令和7年6月17日
件名 与那国町による比川湾港の整備要請に関する陳情
提出者与那国島の自然と共に生きる会
********
要旨


 与那国町が発表した比川地区港湾整備計画は町民にとって寝耳に水で、与那国島の現状に合ったものとは到底考えられない。このままでは多くの島民が計画に賛成しているかのように受け取られかねず、県が計画実施の許可を出してしまうかもしれないとの危機感がある。島の規模に合わない大規模な自然環境の破壊を伴う新港湾の整備を望んでいない町民の声を受け止めてほしい。
 町長や議員が述べている新港湾整備の要請理由の一つに、大型客船を誘致して地域経済の活性化を図るというものがあるが、これは与那国町の経済規模に到底見合わず現実的ではない。現在、与那国町は深刻な働き手不足の状態で、与那国町役場をはじめ町内のあらゆる業種が充分な人員を確保できないまま、かろうじて業務を行っている。町営住宅の建て替えも一向に進まず、島外から人員を呼び寄せようにも住むところもない。不相応な規模の観光客の誘致のために、与那国島の重要な観光資源である豊かな自然環境を破壊するなど到底許容できない。
 新港湾計画地である比川周辺の海岸には、ほかでは見られない特徴的なサンゴ礁地形が確認されており、ダイビング等の観光資源としての価値がある。本計画の工事により周辺のサンゴ礁や生態系への悪影響は避けられない。また本計画地付近の外周道路は人気テレビドラマのロケ地でもあるが、予定地に港湾ができると道路が寸断され、観光客が期待している美しい島の景観が大きく損なわれることが予想される。
 さらに、本計画は国から重要湿地に選定されている樽舞湿原全域を破壊するものであり、ここに生息する絶滅危倶種や希少種を含め、生物多様性に深刻な影響を及ぼすことが予想される。樽舞湿原を含む与那国島の自然環境は、固有種や固有亜種等、独自の生態系を内包し、ヨナグニサンをはじめとするそれらの生物たちも島を訪れる人々を引きつける要素になっているほか、与那国島は日本屈指の渡り鳥の渡り場でもあるため多くのバードウォッチャーを引きつけている。与那国島を訪れる観光客は、日本最西端という地理的特性と美しい景観、手つかずの自然環境、そこに内包される豊かな生態系を求めてやってくる。独自の自然環境こそが観光資源であり、それを大きく損なうような計画はあってはならない。
 あわせて、天然の防波機能を有するサンゴ礁が大規模に破壊される本計画に対して、沿岸の比川地域では防災上の懸念の声が上がっている。加えて、与那国島の地質は基盤として硬質な八重山層群が分布しており、その地質的な特性によってもたらされる豊富な地下水脈に産業や生活の全ての水源を頼っているため、大規模な地層の破壊が水源の喪失という取り返しのつかない事態を招く可能性がある。地質的にこの地層の掘削が可能であるのか、並びに掘削がどのような影響をもたらすのかという点について、専門家による詳細な調査をお願いしたい。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                  

1 県において、与那国町が沖縄県庁で要請した「比川地区への新たな湾港の整備」を認めないこと。
2 県において、計画実施の可否について検討する際には、必ず地質を含む適切な環境アセスメント調査を実施すること。