陳情文書表

受理番号第109号 付託委員会経済労働委員会
受理年月日令和6年7月9日 付託年月日令和6年7月17日
件名 パブリックビーチにおけるライフガード業務従事者の雇用確立と質の向上並びに業務受託方式の見直しに関する陳情
提出者一般社団法人 沖縄ライフセービング協会
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要旨


 沖縄県の令和5年度入域観光客数は前年比45%増の823万5100人、国内客は724万人でコロナ禍前の令和元年を上回り過去最多となった。観光客の大きな目的の一つに海水浴やマリンレジャーが挙げられるが、県民の利用者も含めて大変多くの人々が海を訪れている一方、利用者の増加に伴い、水難事故も大きく増加している。県内で発生する水難事故は年々増加し、今年も既に5月29日時点で人身事故が29人と前年同期比で6人多く、令和5年の年間事故者数を上回る勢いである。
 安心・安全なマリンレジャーを楽しむためには、事故が起きないようその安全を守り、万が一、水難事故が発生した際には救助救命活動の初動を担う質の高いライフガードが必要となる。しかし、昨今の人手不足の影響やコロナ禍で離職を余儀なくされた方々の復職率の低さ、短期労働という職業としての社会的地位や待遇の低さなどから、経験や知識・技能を有した人材が全国的に不足している。
 人材不足の要因の一つとして、県内の遊泳期間の設置時期と業務の発注方式が挙げられる。県内のほとんどの海水浴場において遊泳期間が4月から10月の間となっており、通年・永年雇用が困難な上、賃金も最低賃金レベルとあっては、有能な業務従事者を継続雇用するのは実質的に不可能と言える。業務の発注方式については、沖縄県土木建築部が直接公募を行っている海浜公園に関して、直接指定管理者が安全業務を行う「宇堅海浜公園」では費用が約320万円、指定管理者が他社へ業務委託している「安座間海浜公園」では約660万円、同様に他社へ業務委託している「西原マリンパーク」では約980万円と公表された。仮に公表金額全てを7か月間のライフガードの人件費に充当したとしても、果たしてその金額で適正価格と言えるのか疑問である。また、業務に従事するためには沖縄県水難事故の防止及び遊泳者等の安全の確保等に関する条例に定められた水難救助員等の資格習得も必要となるが、その費用まで賄えるとは考えにくい。ライフガード業務は非営利業務であり直接の収益を生まない。本来ならば相応な費用が委託料として支払われるべきだが、施設の利用料金収入及び自主事業収入で運営を行っており、県から指定管理料は支払われていない状況は指定管理者にとっても大変負担が大きい。このような状況を改善するためにも、県が率先してライフガードに関する適切な基準と費用を定め、根本的な待遇改善を早急に行うことが必要である。
 沖縄県において、海浜での質の高い安心と安全の確立は急務かつ不可欠であり、ライフガード業務従事者の継続的な雇用の確立と質の向上が必要となる。
 ついては、沖縄県の青く美しい海の安全・安心を確立し、本県が国際的観光地として国内外から評価され発展するよう下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 県内全てのビーチにおいて適正かつ適切なレベルでの安全管理業務を確立するため、指定管理の枠組みから監視業務を分離し「仕様発注方式」へ変更し、県が必要額を負担すること。
2 ライフガード業務に従事する者が、適正な知識・技術を習得するために、沖縄県水難事故の防止及び遊泳者の安全の確保等に関する条例第8条に定める水難救助員及び監視員に必要な資格習得費用を補助する給付金制度を設けること。
3 パブリックビーチにおけるライフガードが、能力に応じた適正な価格で業務に従事できるよう労務規格に応じたライフガードの適正単価を県が定めること。
4 全てのパブリックビーチにおいて実態調査を行い、安全監視業務委託料金が適正な価格で支出されているか検証すること。