陳情文書表

受理番号第122号 付託委員会文教厚生委員会
受理年月日令和2年7月7日 付託年月日令和2年7月13日
件名 新型コロナウイルス問題に伴う差別・偏見の防止、救済を求める陳情
提出者国立療養所沖縄愛楽園自治会
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要旨


 今般の新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、県内でも感染者や医療従事者及びその家族等への深刻な差別や人権侵害が起きている。加えて、これまで社会的障壁のあった人々に対して既存の構造的差別や社会的矛盾が顕在化する形で、より深刻な差別が助長されている。
 感染症対策には市民の参加・協力が不可欠であるが、差別・偏見によりこれが阻害されるということは、これまでのハンセン病問題やHIV・AIDS問題などの解決に向けた取組から学ぶことができる教訓である。私たちは、感染症対策における人権問題への取組は、予防・検査・治療と同等に重要であると考える。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 各地で発生している「新型コロナ差別」の実態の早急な把握について
(1)県内の感染者、医療従事者及びその家族等への差別や人権侵害の事例を集約すること。
(2)市民の「新型コロナ差別」と人権に関する意識調査を実施すること。
(3)新型コロナ関連対策から排除される市民や、対策の結果生じる格差など、生活・経済・労働・教育等の実態調査を実施すること。
2 実態調査の結果を踏まえ「沖縄県新型コロナウイルス感染症等対策に関する条例(案)」の中に「新型コロナ差別」の問題を明確に位置づけ、必要な予算措置など差別の防止と被害者救済のための実効性ある取組を実施すること。
3 感染症問題、生活・経済問題だけでなく、差別や人権侵害に関わる相談体制を県内市町村とも協力して確立し、感染者や元患者、その家族、医療従事者、長距離運転手などエッセンシャルワーカーをはじめ市民が安心して相談できる「新型コロナ相談窓口」を整備すること。
4 ハンセン病問題、HIV・AIDS問題など誤った感染症政策や精神障害者の私宅監置政策等の過去の教訓を、新型コロナ対策にしっかりと反映させるために、当事者の意見を積極的に聴取すること。
5 新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識の普及と、差別や偏見に対する啓発キャンペーンを強力に実施すること。
6 学校において誰も排除されないインクルーシブ教育と人権教育を推進するための具体的施策の実行とともに、当事者と協働しオンラインなどを活用した多様な人権教育教材を作成すること。
7 感染者の個人情報保護を徹底するとともに、感染者情報の公開に際しては個人の特定やプライバシー侵害、偏見や差別が助長されることのないよう最大限配慮すること。また、「新型コロナ追跡(接触確認)システム」を導入する場合でも、収集した個人情報がどのように管理され、適切に利用されているのか等を監視するとともに、個人情報の保護、漏えいや人権侵害の防止・救済のための第三者機関の設置を検討すること。
8 障害者、HIV・AIDS陽性者、トランスジェンダー当事者などが、心身の健康上必要とされる医療へのアクセスが制限され、命の選別がされることがないよう対策を講ずること。
9 政府や地方公共団体が実施するコロナ関連対策から外国人やホームレスなどマイノリティーが排除されないようにすること。情報提供や情報発信、医療、教育、就労、生活などの相談に当たって外国人や障害者等への合理的配慮を徹底すること。独り親家庭や生活困窮者らが、憲法に保障される「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を決して侵害されることがないよう詳細な実態把握と緊急の支援策を講ずること。
10 感染者やその家族、医療従事者やエッセンシャルワーカー、外国や県外から来た人の差別、排除、嫌がらせ、「自粛警察」という名の暴言・暴力が相次いでいる状況を踏まえ、あらゆる差別を網羅する差別禁止条例の整備を急ぐこと。
11 1から10までの取組を非常時であるかどうかにかかわらず効果的かつ強力に推進していくために、沖縄県において「人権」を冠する部署を新設すること。また、感染症対策、経済対策と同等に当事者も含めた人権対策の有識者会議(チーム)を組織し、調査、具体的施策の立案運営、相談対応、人権救済措置、啓発事業を総合的かつ一体的に講じられるよう必要な予算を措置すること。