要旨
我が国の農業を取り巻く情勢は、資源・エネルギー高騰による生産資材価格の高止まりが依然として続く一方で、国産農畜産物価格は十分な生産コストの転嫁が進んでおらず、このままでは、多くの地域で営農継続が危ぶまれる状況である。
この状況下、食料・農業・農村基本法が改正され、我が国の食料安全保障や国消国産の考え方の重要性が再認識されるとともに、再生産が確実に担保される適正価格の形成を目指せる法制度の議論が進むなど、次期基本計画の策定において施策の具体化により、将来にわたる食料安全保障の確立を図る必要がある。一方で、農業・農村の現状は、全国的な生産現場の担い手不足、農畜産物の消費・流通形態の急激な変化など構造的な課題を抱えており、本県においても人口流出による農村・離島地域の衰退が県域の均衡ある発展を図る上で極めて重要な課題となっている。
ついては、下記事項の実現に配慮してもらいたい。
記
1 生産コスト上昇に対する支援対策の充実・強化について
(1)生産資材価格の高騰への影響緩和対策が改正基本法に位置づけられる中、持続可能な農業生産を基本とした恒久的な対策を確立すること。また、肥料価格高騰対策については、食料安全保障強化政策大綱に基づき価格急騰時に機動的に講じることができるものとし、あわせて、化学肥料低減に係る取組が生産現場で確実に定着するよう対策を講ずること。加えて、肥料・飼料・燃油など様々な生産資材価格が高止まる中で、地方公共団体が地域の実情に応じて必要な事業を実施できる重点支援地方交付金を引き続き措置すること。
(2)農畜産物や生産資材の輸送コスト支援など離島農業の振興及び地域経済の維持・発展を図るため、各種施策の拡充強化に向けた離島農業振興法の創設に取り組むこと。
2 農畜産物の適正な価格形成に向けた政策支援について
(1)基本法の見直しを踏まえ、食料安定供給に不可欠な人・農地・生産資材等の資源確保や技術開発・実装の促進による生産基盤の強化・生産性向上等により、食料自給率・自給力の着実な向上に向けた基本政策を確立するとともに、生産の持続性を確保する適正な農畜産物価格の形成を図ること。また、 離島県としての本県特有の生産条件不利性等の課題解決に向け、食料安全保障関連予算をはじめとする農林水産関係予算等を確保すること。
(2)農業生産コストの上昇と高止まりが続く中、生産コスト上昇分の十分な反映が困難な状況を打開するため、農畜産物価格の再生産可能な価格形成に向けた消費・小売・流通段階の関係者の理解促進への支援とともに、海外の事例も参考に、再生産を可能とする適正な価格形成の仕組みについて早急に取り組むこと。
3 持続可能な農業経営安定対策の確立について
(1)これまで、沖縄振興一括交付金等を活用した各種事業実施により農業振興発展が図られてきたが、沖縄振興予算の減額に伴い、受益面積が小さい小規模離島等の農業生産基盤整備の計画的執行が困難となり、事業規模の縮小や見直しを余儀なくされ、農業の生産性向上に支障を来していることから、万全な予算確保を図ること。
(2)本県が抱えている地理的な不利性を克服し、本県農畜産物の市場競争力を確保するため、本土市場への輸送コスト等の格差を是正し、他産地との競争条件の平準化を図る農林水産物流通条件不利性解消事業について、近年の輸送コスト上昇等の実情に配慮した事業方式とするべく、早期見直しと万全な予算確保を図ること。
(3)地域における将来の目指すべき農地利用の在り方を明確化する地域計画について、令和6年度中に確実に実効性のある計画が策定されるよう、国及び県による支援の下、策定主体である市町村による一層の推進を図ること。また、耕作放棄地の解消をはじめ、農業用水源の確保及びかんがい排水施設・圃場等の土地基盤整備など、生産条件の改善に必要な施策を推進すること。
(4)品目別振興対策の確立
ア 本県におけるサトウキビ生産においては、生産農家の世代交代期を迎えており、基幹作物としての持続性を確保することが重要課題となっている。本年度で終了予定となっているさとうきび増産基金は、重要なセーフティーネットとしての機能を有することから、事業継続と併せ現場の実態に応じた柔軟な対応を図るとともに、予算措置を延長すること。また、甘味資源作物生産性向上事業は、万全な予算を確保するとともに、その効果が最大限発揮されるよう当初予算での措置を基本とすること。さらに、製糖工場の老朽化問題については、緊急の対応を要する分蜜糖工場の建て替え・整備経費への地元負担の軽減と事業実施に向けた万全な支援体制を講じるとともに、働き方改革への対応については、労働力確保等の課題解決に向けた取組を早期に進めること。加えて、含蜜糖(黒糖)については、含蜜糖生産条件不利補正対策事業の運用の見直しと必要な予算枠を確保し、安定供給に向けた調整保管など、小規模離島のサトウキビ生産を支える仕組みを構築すること。
イ 本県の園芸農業は、台風等気象災害や気候変動に対応した高機能型栽培施設の導入により、生産基盤の強化に取り組んでおり、既存施設の補強・改修ができる事業も含め、生産機能の強化に向けた施設整備への支援措置の拡充強化を講じること。また、特定地域経営支援対策については、今般の施設鋼材等の高騰にも対応し得るよう、万全の予算を確保すること。一方で、花卉生産のさらなる振興を図るため、産地の差別化・ブランド化に向けた花卉の原産地表示の義務化を実現すること。さらに、流通対策においては、施設の老朽化等により機能的な課題を抱えている中央卸売市場について、民間資本の活用も含めた既存施設の建て替え・再整備による市場機能の強化を図り、新たな港湾計画とも連携した農畜産物流体制の構築を図ること。
ウ 本県の畜産業は、急激な飼料価格の高騰、暴落する競り価格の影響等により、生産基盤の維持・継続が危ぶまれていることから、飼料及び電気燃料等の高騰に対する万全な支援策及び生産能力の高い優良種畜の導入促進に向けた取組を支援するとともに、近代的な生産施設の整備と併せて、畜産クラスター事業においては、機械導入に関し使途が限定されていることから、効率的な生産経営が図れるよう柔軟に対応すること。加えて、重要な課題となっている家畜排せつ物処理のための堆肥生産施設を整備すること。 |