要旨
高額療養費制度は同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担分のうち、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分を後日払い戻す制度で、全ての世代で1250万人が利用している。現在、厚生労働省において、現役世代の保険料の負担軽減等を目的とした自己負担限度額の引上げ検討が行われており、引上げ額は年収により細かく設定されているが、例えば年収370万円から770万円の層では、最終的に1か月当たり最大5万8500円の負担増となり、月額負担が13万8600円に達する可能性がある。
こうした負担増に対し、がん患者や難病患者で構成される3団体が実施した「高額療養費制度引上げ反対」のオンライン署名では、僅か5日間で7万人を超える署名が集まったと報じられており、また、開業医などで構成される全国保険医団体連合会(保団連)が、がん患者の子育て支援団体キャンサーペアレンツの有志と共同で行った調査では「病気で収入が減る。治療費や子育て費用がかさみ、現状でも家計が厳しい」との回答が5割を超え、医療費負担が増えた場合に「治療中断を考えている」が4割、「治療回数の減少を考えている」が6割、「子どもの進路変更を検討せざるを得ない」が5割を超える等、深刻な実態が明らかになっている。
これだけの影響を及ぼしながら、厚生労働省の試算によると保険料の引下げ額は月90円から400円程度にとどまる見込みである。高額療養費制度は、がん患者をはじめとする重篤な疾患の治療を受けながら高額な医療費を支払う患者・家族にとって、まさに命綱と言える制度である。今回の制度見直しは、その命綱を断ち切るに等しい。多くの県民・国民は生活苦にあえいでおり、今求められているのは医療費の窓口負担の引下げで、負担上限額の引上げの検討を撤回すべきである。
ついては、高額療養費の自己負担限度額の引上げの撤回を求める意見書を内閣総理大臣・厚生労働大臣・衆参両議院議長に提出するよう配慮してもらいたい。 |