要旨
これまで沖縄県内の養鶏農家及び鶏卵を流通させる卸売業者は、JAおきなわが発表する相場で仕入価格及び販売価格が決定される状況にあったが、令和7年6月1日以降、JAおきなわは新聞を通しての相場発表を中止した。その理由の一つに、独占禁止法第8条「実質的な競争制限」に抵触する可能性がある旨の新聞報道があったが、法律に抵触する可能性がある相場発表に至った経緯、これまでの相場設定根拠、今後の対応等についての記者会見や説明会等を行うよう要望しているが、無視され続けている。
沖縄県内の鶏卵自給率は約60%から70%と推測され、残りの30%から40%は卸売業者やスーパー等が独自に県外、特に九州から仕入れを行い、需要を満たしている。全国の自給率がほぼ100%となっている中で、島嶼県である沖縄県は台風等の発生によりすぐ品不足に陥るため、この自給率を上げる必要がある。
しかし、養鶏農家の推移を見ると、平成3年(1991年)の180戸に対し令和6年(2024年)には34戸と、実に146戸の農家が廃業等により減少しており、成鶏(卵を産む鶏)羽数も平成3年の1185千羽から令和6年には1076千羽となっている。また、沖縄県内の養鶏農家1戸当たりの成鶏羽数が31.6千羽に対して、全国平均では79.1千羽と実に約2.5倍もの開きがあり、これまで県内の養鶏農家は小規模で生産の効率化が図られていない。
この原因は、県外の相場と比較して、JAおきなわの相場が相対的に低く設定されてきたからだと考え、JAおきなわに対し、再三発表する相場について福岡相場に海上運賃(1キログラム当たり25円)を加味した相場が適正な相場である旨提言してきた。平成23年から令和6年までの調べでは、相場平均で福岡相場と25円差がついたのは県内で鳥インフルエンザが発生した令和5年以外にない。仮に相場が10円上昇した場合、1日当たり県内推測生産量である5万3063キログラムに10円を乗じて1日当たり53万円、年間では1億9345万円が養鶏農家全体の所得向上につながる。JAおきなわは経営理念で農業者の所得向上をうたっているが、JAおきなわの根拠のない相場が長年養鶏農家が得られるはずであった収入機会を奪ってきたのである。
また、JAおきなわは、鶏卵を洗卵・選別するためのGPセンター機能を有している。洗卵・選別しなければ市場に流通させることはできないため、JAおきなわと取引する養鶏農家はうるまGPセンターへ洗卵・選別依頼を行うが、その手数料についても現在は1キログラム当たり30円となっており、さらに、これまでJAおきなわを通して販売した場合、販売手数料1キログラム当たり8円の費用を養鶏農家が負担している。JAおきなわの相場が200円のときも300円のときも固定手数料として1キログラム当たり38円を負担しなければならず、養鶏農家にとって大きな負担である。
流通面では、弊社のような卸売業者は、令和7年6月1日以降JAおきなわから鶏卵配送料の負担を求められているが、販売価格である相場をJAおきなわが決めており、その相場を販売先も把握していることから販売価格に転嫁することは非常に難しい。そこで、JAおきなわに対し相場発表をやめるよう申出するとともに、取引先等への説明が必要となるため、相場発表をやめる場合、記者会見等を通して今後の対応を説明するよう再三申出をしたが、無視され続けている。
また、JAおきなわには共同購買事業が認められており、GPセンターを利用して鶏卵販売先への配分もJAおきなわが決定している。今後も卸売業者としては、台風等の自然災害や鳥インフルエンザ発生の可能性もあり、JAおきなわからの仕入れを止めることはできない。また、JAおきなわは小売業者への直接販売も行っているため、仕入先でもあり販売面では競争相手でもある。現在、配送料を負担せざるを得ない状況であるが、今後JAおきなわが小売業者への販売を優先した場合、JAおきなわに価格面、鶏卵数量面でも有利な競争環境となる。これまでも発注した鶏卵について数量の大幅なカットや遅延等が頻繁に発生したことから、不公平な取引環境を強いられる懸念が拭えない。県には養鶏農家からの仕入価格及びその販売価格、販売数量の適正化が図られるようJAおきなわを指導してもらいたい。
このように、JAおきなわにより相場が相対的に低く抑えられ、手数料の負担を強いる構造が養鶏農家の収益機会を奪い、生産拡大、効率化を妨げ、養鶏産業の発展を阻み、結果として自給率が上がらないという状況をつくり出してきた。今後、養鶏農家が減少した場合、さらなる品不足に陥り、結果消費者の不利益にもつながる可能性もある。また、今後のJAおきなわの対応が不透明であり、流通業者にとっても安心して取引できる状況になく、不利益が生じている。
ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
記
1 JAおきなわは相場発表をやめたが、新聞での報道だけにとどまり現場は混乱している。県において、法律に抵触する可能性のある相場発表に至った経緯、これまでの相場の根拠、その発表中止に至った経緯、また今後の対応について、記者会見や説明会等を開催し、周知するよう指導すること。
2 県において、JAおきなわが相場発表廃止後、JAおきなわの養鶏農家からの仕入価格やその販売価格が適切な価格となるよう指導すること。 |